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変わった客①


 その日、フレムの姿は人間界のスーパーにあった。

数日前、トリスタンがふと、


<俺たちのいる世界の他に、世界ってあんのか?>


と思い立ち、適当にワープホールを作った所、

繋がったのが人間界だったのだ。


 この世界が気に入った他のメンバーも、

よく行くようになり、

元々人間のイズターを除く四人は、変装しながら

人間界を楽しんでいる。


 上機嫌でスキップする彼の両手には、買ったであろう

商品が沢山入ったエコバックが。


「ふぅ、こんだけあれば足りるかな。あーあ、こんなに

 沢山持って帰るの大変だなー。ねぇ、イズター?」


<・・・やっぱりバレてたか・・・。>


 バイクで立ち去ろうとしたイズターの肩に優しく

手を置き、思い切り掴むフレム。もちろん笑顔は忘れずに。


「ねえねえ、元の家に戻りたいから乗せてって?

 バイクで来たんでしょ?ねぇ??」


「分かった!分かったから手ぇ離せ!肩が砕ける!!」


「やったぁ!ありがとイズター☆」


~~~


 元のアジトに戻り、フレムは買ってきた商品を

キッチンの近くのテーブルに並べる。三分の二が食材、

残りは金属製のお盆一枚と調味料、生活用品などだ。


「ずいぶん買ったな。今日誰か誕生日だったっけ?」


「サー君の知り合いが来るんだよねぇ。

 食材は余ったら、普段の料理に使えるから、

 多めに買ってきたの。」


「料理すんの?」


「するよ!イズターみたいに炭の塊作らないし。」


「ぐっ・・・。」


 一瞬キレそうになったイズターだったが、何とかこらえる。

歯向かっても倍返しにされるのは目に見えているし、

何しろ彼氏の方を怒らせたら困る。


生活用品をしまい終えた所で、トリスタンが帰ってきた。


「サー君お帰り~♡ねぇあの二人、

 アレルギーとかないよね?」


フレムの言うあの二人というのが、今回の客のようだ。


「特にないな。よほどヤベェ料理じゃない限り

 食べるんじゃない?」


「イズターの炭クッキーは?」


「それは吐く。」


「何しれっと人の料理ディスってんだ。

 アレ失敗しただけで、本当はもっと上手くでき」


「「野菜炒め。」」


「ぐはっ・・・。」


 説明しよう。イズターは野菜炒めを作ろうとして

思い切り焦がし、しかもボヤ一歩手前まで行ったのだ。

以来それは、彼の黒歴史の一つになっているのだ。


「さ、何から作ろっかなー。」


「予定より早く着くらしい。」


「そうなの?じゃあすぐ作れるような

 料理にしよっか。」


────フレムとトリスタンには関係ないようだが。


~~~


 一方そのころ、大きなカバンを持った一人の男性が、

三人のいるアジトに近づいていた。


 少し背の高い、フクロウがあしらわれたマントを羽織った、

いかにも怪しげな雰囲気の男だ。青のメッシュが入った

彼の黒髪が、風に揺れている。


「このあたりですか・・・ずいぶん殺風景な場所に

 建っているんですね。治安が心配だ。」


 男の持つ少し大きめの丈夫そうなトートバッグが

ガタガタと揺れ、小さく声の様な音が漏れる。


「メシ・・・メシ!」


「こら、暴れない。貴方が出てきてしまったら

 面倒な事になりま」


バリッ


「あぁ・・・また直さなければ。」


「デタ!メシ!!メシ!!!」


「カバンから腕だけ出してどうやって

 食べるんです?全く・・・。

 ・・・おや、あの建物ですね。」


 男が三人のいる二階の部屋のチャイムを鳴らす。

それが鳴り終わる前に、イズターが玄関のドアを開けた。


「あ、こんちわ。初めましてっスね。」


「えぇ、あなたとは。お会い出来て光栄です、

 イズター様。」


 なぜ名前を知っているのかと驚いたイズターだったが、

ひとまず男を室内に入れた。


「お邪魔します。」


「どうぞどうぞ!おーい、来たぞー。」


 二階の真ん中部屋に当たる部分の

右の壁は、リフォーム(という名の魔改造)の時に

壊されているため、二階は少し広い部屋と普通の部屋の

二部屋状態だ。


テレビやソファなどがあるリラックスする為の

スペースとリビングダイニングがこの部屋で、依頼者との

面会をするスペースが普通サイズの左の部屋だ。


ちなみに一階も二部屋に改造されており、左の広い部屋が

薬やポーションを作るスペース、右が物置だ。



リビングまで男が入ると腕の生えたバッグの動きが

さらに激しくなった。


「!!!メシノ匂イスル!!!クレ!!!」


バリッ


「あああ・・・足まで・・・。とんだ珍生物が

 誕生してしまいましたね・・・。」


「メシィイィイイ!」


 トートバッグから生えた黒い腕と足が、ただひたすらに

ジタバタする様は、かなりシュールだった。

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