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アシンメトリス




 アシンメトリス。裏世界で、彼らを知らない者はいない。

異世界と呼ばれるこの世界では、その名を聞くと大体の

無法者は苦虫を()み潰したような顔をする。彼らの

実力を認めているからこそなのだがやはり関わりたくは

ないのだ。


 メンバーの基本情報は不明だが、彼らの仕事ぶりは

有名で、彼らの()()()()()

どんな仕事でもやる。しかも人探しから情報操作、

暗殺等々、大概の事は出来てしまう。


 彼らの前で、少々ふざけた場合どうなるか。

こうなる。



「盗もうとしたものはこれで全部か?」



 何もない殺風景な部屋で縄で縛られ、元の顔が

分からないほどぼこぼこにされた中年の男の頭を、

黒い仮面をつけた若い男が踏みつけている。

彼が、アシンメトリスのリーダー、トリスタン。

素顔は見えないが、男に冷たい視線を向けているのは

明らかだ。



「ぐぁ・・・・・。ごれば、ぢg」


「質問に答えろ。これで全部か?」



 男は静かに頷く。それを待っていたかの様に

後ろから赤髮の青年──フレムがすっ飛んできた。

彼は吸血鬼と淫魔(サキュバス)のハーフ。

少年の様な可愛らしい顔立ちをしているが、

メンバー内では「殺人狂(マーダー・ジャンキー)

という呼び名があるほどの危険人物である。

にこにこと笑う彼の右手には、ナイフがしっかり

握られている。



「終わった?おもちゃにしていいい?」


「身ぐるみ剝いでからな。」


「やめろ!!死にだぐないーー!!!」



暴れだした男を見ても、フレムは驚かない。



「あーあー。そんなに暴れたら縄ほどけるって

 ・・・ん?」


「・・・・フレム?」


「いや、背中に変なふくらみがあるなー

 って。」



フレムのその一言に、男の顔がサーッと

青くなった。

つまりは、そういう事である。

その後、この男が身も心もボロボロにされた挙句、

人の寄り付かないような

森の奥に埋められたのは、言うまでもない。


~~~


「・・・あー・・・かったrはぁ?!何?!

 どういう状況?!つか、地面血まみれだけど

 何やった?!」


「泥棒軽くボコっただけだよ?ねぇ?」


「拘束、(むち)打ち、顔面殴打

 ・・・あぁ、電気ショックもやったな。」


「いや全然軽くねぇ!!」



 正面のドアが開かれるや否や、キャスケット帽を

かぶった青年──イズターは、二人にツッコミを入れた。

彼は運転手として、この風変りというか少々過激な組織に

属している。驚く事に、この組織は10代後半の

男女五人組がメンバーなのだ。今話している三人は18、

残りの女性メンバーである双子の姉妹が17である。


 何とか床を掃除し、男とのひと悶着の際に

木片と化したイスを片付け、一休み。フレムが

トリスタンの肩にもたれかかり甘える。二人は

恋人同士でもあるのだ。フレムを抱き寄せつつ、

トリスタンがイズターに問う。



「で?要件は?」


「いや、ただ単に暇だから散歩でも行こうと

 思ってドア開けたらこれなんだが?!」


「サー君、僕たちがいる場所とメンバーの家の

 玄関のドア繋げたら集まるときも楽でいいな

 って、能力使って繋げてたじゃん。」


「ああ、そういえば。」



 フレムとトリスタンの発言に、イズターは驚いた。

トリスタンの能力は分かるだけでも、


・瞬間移動(回数、場所の制限なし。)

・空中浮遊(高度制限なし。)

・未来予知(10分先まで、本人の意向らしい。)

・透明化(物体もすり抜けられ、攻撃も無効。)

・千里眼(制限なし。)

・透視(制限なし。異性の裸体?興味ねーよ

    byトリスタン。)

・サイコキネシス(小さな島でも余裕で

         持ち上げられる程。)

・亜空間創造(保存上限なし。)


と、どれもかなりのチート能力。それなのに加えて、

空間同士を繋げる能力まで持っているとは。

何なのだろうかこの男。


ちなみにサー君とは、フレムがトリスタンに

付けたあだ名である。



<天は二物を与えずって、噓だよな・・・。>



ため息をつきつつ、イズターは思うのだった。


~~~


「あら、皆様ごきげんよう。イズターさんの

 言う通りですわね。」


「すごーい!本当に繋がってるー!」



 次にドアを開けたのは、双子の姉妹だった。

二人共、黒いゴスロリチックなドレスワンピースを

着ている。お嬢様口調のロングヘアの方が

姉のエレーナ、目を輝かせて周りを見渡す、

ボブヘアの方が妹のエリーナである。



「そういえば、ここどこですの?前に集まった時は、

 もっと家具があった様な気がするのですが。」



エレーナの素朴な疑問に、トリスタンはけろっとした顔

(実際してるかどうか分からないが)で答えた。



「適当なボロアパート一棟、乗っ取ってリフォームした。

 前の部屋は、管理人にバレかけたから建物ごと

 ぶっ壊したよ。」


「・・・家賃を払って住んでたわけでは?」


「ない。そこそこ広そうな部屋使ってる住民襲って、

 部屋乗っ取った。」


「なるほど、そういう事でしたの。」


「元の住民はうざかったから、二人で

 お掃除したよ☆」


「えぇいいなぁ!私もやりたかったぁ。シェリーの

 お友達も出来るし、今度そういうの

 あったら呼んで!」



 念のため書いておくが、フレムとエリーナの言う

「お掃除」とは対象の殺害の事。


 エリーナもフレムほどではないがヤバい人物で、

シェリーと呼ぶ人形は彼女の魔法で出来た、

人間の死体を原料とするもの。

いわゆる、ネクロマンサーと呼ばれる術者である。


友達同士で遊びの約束をするように物騒な会話する

フレムとエリーナを微笑ましく見るエレーナ。

それを当たり前の様にスルーし、亜空間から話の

邪魔にならない場所に置ける家具(泥棒を尋問するうえで

邪魔だからと一旦避難させたそう)を取り出し、

サイコキネシスで部屋に元の様に置いていくトリスタン。


とんでもねぇ組織に入ったな、

と少々後悔するイズターであった。

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