8話
文化祭の準備で忙しいこの頃、渚咲は気づけば作業に夢中になっていた。
外はもう真っ暗で、時計に目をやれば、もうすぐ十九時になる。
「こんな時間になってしまい、もうしわけありません。優葵さん、たけがみくん」
「俺は別に良い。――渚咲、家に連絡してっか?」
「うん、さっきメールは一応した」
柊にタメ口は使えないものの、渚咲は武神に対してタメ口を使えるようになっていた。
「今日の作業はここまでにしましょう。僕とたけがみくんが、優葵さんを家まで送りますよ。ね? たけがみくん」
「おう」
「えっ、そんな……悪いですよ」
「大丈夫ですよ。――僕は家に電話をしますので、少し待っていて下さい」
そう言って柊は教室を出た。
「あいつ、疲れた顔してんな」
「柊様?」
「おう」
「最近忙しいもんね。トップである柊様は、俺達よりもやること多いだろうし」
「だな。少しでも楽になる様、俺達も頑張ろうぜ」
「うん」
そんな話をしていると、柊が戻ってきた。
「お待たせしました。さて、帰りましょうか」
「はい」
「おう」
教室内の戸締りをしっかりした後、職委員室へと寄り、鍵を返し、三人は帰路に着いた。
渚咲を家まで送った後、柊と武神は二人で道を歩いていた。
「学校からそんな遠くなかったな」
「そうですね」
「まぁ、俺達もそんな遠くねぇけど」
「――たけがみくん」
「どうした」
「今日……泊めてくれませんか?」
武神はその言葉を聞いて、その場で足を止め、柊を見た。
「――おう」
「ありがとうございます」
そう言って、二人は武神の家へと歩みを進めた。
*
二十四時頃、武神の部屋に布団を敷いて、柊は横になっていた。
武神が電気を消すと、武神もベッドに横になった。
「最近どうだよ」
「どうって……かわりありませんよ。あまりね」
「そうか。トップとしても大変なのに、家でも休まらねぇとなると、お前、いつかぶっ倒れるぞ」
真っ暗の中で、表情は窺えないが、武神の声色は心配の色が混ざっていた事を、柊は理解していた。
「心配してくれて、ありがとうございます。――トップをとらないと、お金も免除になりませんし、街で話題になる事もなくなります。なんとしても、トップで居なければなりません」
「前、俺が休学で通ってない時、トップから落ちたんだってな。小夏から聞いた」
「そうですね。――もう、疲れてしまって、何もかも諦めてしまおうと思いました。――でもね、優葵さんが、僕を救ってくれたんです」
柊は渚咲の顔を思い出しながら、柔らかな笑みを浮かべた。
「渚咲が?」
「はい。――僕は、あの人の為に、あの人を傍に置く為に、トップに戻りました。――トップであると大変ではありますが、友達の事も守れて良いですね」
「――お前には感謝してる。俺は自分が女である事が腑に落ちねぇ。お前のおかげで、学ラン着てズボン穿いて登校できる」
「では、これからも僕は、たけがみくんを守りますね」
「ありがとよ。――俺も、学校でのお前の事、守ってやるからよ。――お前の【秘密】も、誰にも言わねぇ」
「ありがとう。たけがみくん」
そこで会話は途切れ、二人は眠りについた。
読んで下さりありがとうございます。
よろしければブックマークや評価の方、よろしくお願いします。
次回更新は明日、7月8日の0時からです。お楽しみに。