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柊様の秘密  作者: 咲紫きなこ
柊様の秘密
8/12

8話

 文化祭の準備で忙しいこの頃、渚咲は気づけば作業に夢中になっていた。

 外はもう真っ暗で、時計に目をやれば、もうすぐ十九時になる。


「こんな時間になってしまい、もうしわけありません。優葵さん、たけがみくん」

「俺は別に良い。――渚咲、家に連絡してっか?」

「うん、さっきメールは一応した」


 柊にタメ口は使えないものの、渚咲は武神に対してタメ口を使えるようになっていた。


「今日の作業はここまでにしましょう。僕とたけがみくんが、優葵さんを家まで送りますよ。ね? たけがみくん」

「おう」

「えっ、そんな……悪いですよ」

「大丈夫ですよ。――僕は家に電話をしますので、少し待っていて下さい」


 そう言って柊は教室を出た。


「あいつ、疲れた顔してんな」

「柊様?」

「おう」

「最近忙しいもんね。トップである柊様は、俺達よりもやること多いだろうし」

「だな。少しでも楽になる様、俺達も頑張ろうぜ」

「うん」


 そんな話をしていると、柊が戻ってきた。


「お待たせしました。さて、帰りましょうか」

「はい」

「おう」


 教室内の戸締りをしっかりした後、職委員室へと寄り、鍵を返し、三人は帰路に着いた。


 渚咲を家まで送った後、柊と武神は二人で道を歩いていた。


「学校からそんな遠くなかったな」

「そうですね」

「まぁ、俺達もそんな遠くねぇけど」

「――たけがみくん」

「どうした」

「今日……泊めてくれませんか?」


 武神はその言葉を聞いて、その場で足を止め、柊を見た。


「――おう」

「ありがとうございます」


 そう言って、二人は武神の家へと歩みを進めた。


              *


 二十四時頃、武神の部屋に布団を敷いて、柊は横になっていた。

 武神が電気を消すと、武神もベッドに横になった。


「最近どうだよ」

「どうって……かわりありませんよ。あまりね」

「そうか。トップとしても大変なのに、家でも休まらねぇとなると、お前、いつかぶっ倒れるぞ」


 真っ暗の中で、表情は(うかが)えないが、武神の声色は心配の色が混ざっていた事を、柊は理解していた。


「心配してくれて、ありがとうございます。――トップをとらないと、お金も免除になりませんし、街で話題になる事もなくなります。なんとしても、トップで居なければなりません」

「前、俺が休学で通ってない時、トップから落ちたんだってな。小夏から聞いた」

「そうですね。――もう、疲れてしまって、何もかも諦めてしまおうと思いました。――でもね、優葵さんが、僕を救ってくれたんです」


 柊は渚咲の顔を思い出しながら、柔らかな笑みを浮かべた。


「渚咲が?」

「はい。――僕は、あの人の為に、あの人を傍に置く為に、トップに戻りました。――トップであると大変ではありますが、友達の事も守れて良いですね」

「――お前には感謝してる。俺は自分が女である事が腑に落ちねぇ。お前のおかげで、学ラン着てズボン穿いて登校できる」

「では、これからも僕は、たけがみくんを守りますね」

「ありがとよ。――俺も、学校でのお前の事、守ってやるからよ。――お前の【秘密】も、誰にも言わねぇ」

「ありがとう。たけがみくん」


 そこで会話は途切れ、二人は眠りについた。

読んで下さりありがとうございます。

よろしければブックマークや評価の方、よろしくお願いします。

次回更新は明日、7月8日の0時からです。お楽しみに。

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