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甘い時間
間接的に聞いた姫の願いとは、
私のよとぎである。
言っておくが外交という建前の売春ではない。
そもそも「私」が派遣されたのは、
姫が私のうわさを聞いたから。
半分がひとではないことを内心
気にしているのかもしれない。
だから、この島にはいない
"額に角がある物書き"に惹かれたのだろう。
どうせ調べが入るなら、
アリアス・サカユがいい、と姫が言った。
私が少し前に出版した本を、
王の慈悲でいただいたらしい。
だから「私」を知っていた。
そして姫の寝所を訪問するにいたり、
もうすぐ寿命を迎える姫が
私のために
サプリメントで甘い香りを放っていたことを
ひとりの男として
意外にも嬉しく思ったことは記しておこう。