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彼女の父親の言う事が正しすぎて、泣いてる本人以外は笑うしかねぇ

作者: 孤独
掲載日:2023/05/24

そうか、……あれからもう、5年くらい経ったのか。


「うわあああぁぁ」


朝からなんだよって感じにロッカー室で騒ぐ男性社員。……今年入って来た新人さんが、なんか朝から絶叫していた。


「昨日まで3連休してたのになんだよ」


こっちはその間、働いていたんだよって顔で声を掛けた先輩の矢木。

叫ぶような奴じゃないのだ。普通の子。大卒したばかり……


「も、もう、……仕事辞めますぅっ……うううぅっ」

「はぁ?」


なんだよもう。最近の子って、なんかよく分からない事で仕事を辞めるのか?いいなぁ、若いなーって思いつつ、


「事情分かんねぇよ。何があったんだよ、3連休で」


えっぐ、ひっぐっ……と、すでに出社の時点から泣きまくっていた彼。

嗚咽と共に


「き、昨日。か、彼女にフラれて……その子に父親にば、罵声を浴びて……、き、金曜日から、ディズニー、ランドで楽しく、初めて2人だけで遊んでたのに……2年も付き合ってたのにぃぃっ」

「……そ、そりゃあ、残念だったな」


3連休で彼女と旅行をして、その最終日に彼女の家に行って、お付き合いを伝えにいったら……まさか、その父親から反対されてフラれるということ。

そりゃあ悲しい事だなって、


「仕事休ませてくださいぃっ、もう何も信じられませぇんっ!!」

「そんな簡単に仕事休めたら、俺は365日彼女を作って、フラれる事で永久機関を作る」


おっ。それいいな。

毎朝、(脳内)彼女を作って、出勤直前にフラれて、メンタルやられたんで仕事ができる状態じゃないだけです。って職場に通したいな。仕事ができない・ない言い訳としての新ジャンル。



「ま、落ち着け。仕事でもして、時間を潰せ」

「うううぅぅっ」


マジでその父親に何を言われたのか。こんなに女にフラれるというのは、大ダメージなのだろうか。友達の裏切行為なんざ、怒りは出てくる。それほどにこいつが彼女に思い入れがあったんだろう。

ロッカー室で泣くもんだし、強面の矢木が話を聞いてるもんだから、矢木が泣かしたみたいに思われてもいた。矢木はイライラしつつも先輩としてよしよしとしながら、ようやくのこと、


「2年も付き合ってたんですぅっ。凄い好きっ好きでぇぇ!一緒にいたのにぃぃっ!!」

「分かった分かった」

「け、結婚を前提に、……もうぅ、付き合ってるって伝えたのにぃっ、それなのにっ……順序が違うだろってぇっ……半年前から同棲してるのにっ!旅行もぉっーおおぅ、してるのにぃぃっ!!今更ああぁぁっ、ああ」


……いや、それは彼女の父親の言う事が正しくねぇか!?

なんで付き合いを報告してねぇのに、同棲とかまでしてんだ!?半年もしてたのか!結婚するから、報告しますって順番おかしくないか!?


って彼が言った時点では驚きもしたが、ここは解釈違いだとみんな分かった。

彼女はただ、お前の家にたまに転がり込んでただけだし、友達同士で飲むときにお前の家を使っていただけに過ぎなかった。お前が勝手に同棲してると思ってただけ。


「た、沢山遊んで傍にいたのに、フラれるなんてぇぇっ!映画に旅行、買い物、勉強……いっぱいバイトして金稼いで、留年しかけても遊んでっ、彼女のために!!費やした2年間!思い出す!!」


『あの……言い辛いんだけど、……私とお付き合いするよりも大事なことがあると思いますけど?』


「それでも僕は君が好きなんだ!!!」


本人はこんな告白をしたこともあって、脳内を焼かれているようだ。

クソカッコいい事を言ってるとこ悪いんだが、彼女はお前のことが好きじゃねぇんだよ。

意外に知らない相手の本性を知るというのは、関わらないのなら面白いんだけどな。


「彼女がそう言ったんだ。無理はよくねぇだろ。ましてや交際関係だ」

「仕事も同じじゃないですかあぁっ!!無理しろって言ってくるじゃないですか!!付き合ってくださいよ!結婚を認めてください!!僕は彼女が好きなんですううっ!」


もう半狂乱状態。

自分が付き合ってくれって、こんなにもしてるのに……彼女とその家族が自分の付き合いを認めない。仕事の無理と、交際の無理の分別がつかない状態だ。

こんな状態で仕事を休ませてくれとか、何しでかすか分かったもんじゃない。ここはもう無理でいいから、仕事に縛り付けてやる方が矢木の知らない彼の彼女のためになる。


「女なんて、とっかえひっかえしろ!お前、自分で何を言ってるか、冷静になれ!!」


言葉を抑えた。これはもう、ストーカーのそれ……あるいは、逆恨みの愛情をぶつけかねない。


「僕の事をあの父親は、ストーカー紛いとか言ったんですぅ!!無理に言い寄ってくる男だとかああぁっ!!僕にそんな気持ちはないしっ、彼女だってもう僕の家に来てるんですうぅっ!彼女も僕に気が合うんですうぅっ!あんな父親にぃっ、言葉を縛られてぇっ……可哀想だよぉっ!」


お前が怖ぇぇよ!!完全にストーカーだよ!

っていうか、彼女の父親からストーカー紛いって言われるって……お前、彼女に嫌われてる自覚を持てよ!っていうか、凄い度胸ある彼女だな。よくこいつと3連休の旅行をやったよ。夜とか大丈夫だったのか!?



「しょうがねぇもんは、しょうがねぇ!!忘れろ!泣いたら、仕事して、辛い現実の1つと思って、受け止めて忘れろ!!絶対に今日は働け!!」


今日、休ませたらマジでヤバイ(その彼女が)。行動がエスカレートするだろ。職場に来ただけでもラッキーと思わなきゃな。少しは人の幸せを考えろ。って。

矢木の言葉は、周りから見れば、とんでもない勇者らしいものだ。ここで優しさを見せれば、犯罪の片棒を担ぐに等しい。耐えろ、矢木。クレーマーを相手にしている時を思い出せ!


「あ、あ、あなたに何が分かるってんですか!!!この不細工っ!!」


グサッ


「僕はあなたと違ってイケメンなんだ!!若いんだ!!知った風に言うなぁっ!!負け組のおっさん!」


グサッグサッ


「彼女の気持ちがぁっ!!彼女もいないお前がっ、僕の辛さを理解するなああぁっ!!底辺奴隷!!奴隷だ奴隷!!お前等奴隷と僕を一緒にするなーー!!」


グサッグサッグサッグサッ



◇       ◇


……結局のとこ、彼は次の日。仕事を辞めた。

マジで彼女にフラれたという理由で仕事を辞めた。みんなポカーンとしていたし、仕事を辞めてストーカー行為はすんなよと釘は刺してた。

説得を任された山口部長と、最初に話をした矢木は、もう……う~~~んって表情が続いていた。


「山口部長、どう思います?お子さんも成人してる父親として」

「俺のは息子の方だが、……絶対に娘をあんな奴にはやらんな」


とにかく、彼女の事が好きなのは分かるんだ。ただ、彼女がどーにも彼を好きじゃないのは、出会ってなくても分かってしまう。お前、彼女のことを知らなすぎるのが問題だ。

彼女は、ちょっとした会社の社長の娘さんなのだ。そもそも敷居のあるお嬢様らしい。そいつを相手に強引にデートしたり、旅行をしたり……


「結局、友達までとしか思ってなかったんだろうな。……体の付き合いと、家庭としての付き合いは別って事だ」


その分別がつかず、結婚までしようとした。大学卒業したばかりの社会を知らない者が結婚前提に付き合いを、社長やってる父親に言ったら……そりゃあ、怒るだろ。というより、彼女が今後付き合わないように計らった可能性もある。

年収は少ないし、社会的な地位も経験もない男が、娘さんを幸せにするので結婚をさせてくださいってお願いしに来たら、キレるの当たり前だろ。ヤった後かもしれないのに報告とか、ヤバ過ぎる。


「はぁぁ~~……俺なんか、彼女いた事ねぇから分かんねぇよ」


女に不細工とか言われるのは、100歩譲って構わないが……。フラれた男にあんなこと言われたら、ブチギレたくなった。よく抑え込んだよ、ホント。


「悪かったなー。イケメンじゃなくて!あー、分かりませんよ!ホントに!!」

「お前らしくない言葉を吐くな。ムダな付き合いはするタイプじゃないだろ。……女も子供も、面倒なんだよ」

「両方持ってる上に、年収もある山口部長が言うと腹立つな~、自慢かよ」


ま、あえて思う事があれば


「フラれたくらいで取り乱す男なんて、その程度という事だ。ストーカー紛いはともかく、仕事ができるかどうかといえば、あれはNOに近いな。ストレス耐性がない。……転職だけなら若いし上手くは行くだろうが……明日にはあいつの顔も忘れてろ」


ホントにその通り。

辞める前にも山口部長は彼に言ったが、職場の人間関係は転職サイトさん達には関係がない。自分自身がなんとかするしかない。チヤホヤされるのも1週間程度。見極めて去るのもそれは良しとする。だが、誰も信じられないなら無理だろうけど







最近、知った(1年前ぐらいらしいけど)



この子が自殺してた……。


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