Nora、その後――――
――――素敵な人を見つける、旅に出る。
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ゆうちゃんと別れた僕は、そして、ゆうちゃんと共にいた町にも、別れを告げた。
町を後にした日の空は、いつかのあの時と同じ、雨上がりの、夕焼けの色をしていた。
僕は、歩いた。ゆうちゃんが探すことのできないくらいの、距離まで。
そうして僕がみつけた新しい住処、それは、海辺の小さな町。
きらきら光る海の、その水面。其処に、ゆうちゃんと過ごした日々が、情景が、まるで切り取った写真のように、次々と浮かんでは消えてゆく。
初めて出逢った、ゆうちゃん3歳の夏。
落ちてたんだよ、ほら、貴方に似てるでしょ!
そう云って、壊れかけの猫のぬいぐるみを僕に見せてくれた、4歳の春。
風邪をひいた僕を、一晩中抱きしめ続けてくれた、5歳の冬。
ほら、見て見て!
そう言って、初めて抜けた歯を、大事そうに握りしめてやってきた、6歳の春。
一緒に木登りをして、僕が転げたのを涙をためて笑い転げていた、7歳の初夏。
そして――――、8歳の秋。
最後に見た、僕の知らない、ゆうちゃんの笑顔。
僕は、勇気をもらった。
そう、最後の笑顔は僕の知らないものだったけれど其処に至るまで、ゆうちゃんの成長を、こんなにも覚えていることを、改めて確認することができたから。
僕の記憶の中のゆうちゃんは、8歳のままでもう、動かない。
だけど、8歳までのゆうちゃんの笑顔は、確かに僕だけのもの。
それは―――――・・・誰にも譲れない。
たとえそれが・・・・・・、今の大切な人だったとしても。
そう。
今僕は、新しい大切な人のもとで、暮らしている。
心の底から、幸せだと言えるよ。
でも、ゆうちゃんのことを、忘れたわけじゃない。
ほんとは、ほんとうは、ゆうちゃんと一緒にあの海で、あのときみたいに過ごしたい。
できたらな・・・って、毎日思ってる。
いまの大切な人と、重ねて見たりする。
だってね。その子は9歳。とっても印象的な、そして、ゆうちゃんと同じ茶色い髪に、大きなまるいどんぐり形の瞳。
そして、その子の名前はね・・・・・・
結ちゃん、って、いうんだよ。
――― いつかその影が 寄り添うように 二つ並ぶといいね ―――
最初、作詞、AZUKI七さんの「4番、5番と書いてみたい・・・」という言葉を読んだ時から、続編を書いてみたいなぁと思ってました。
でも、AZUKIさんの、「Nora」の世界観に、傷をつけていいのかな…、そう思ってました。
なので、ある人に、書いてみたいな、と、相談のつもりで言ってみたんです。見てみたいとおっしゃってくださったので、書いてみました。
幸せにしてあげたいな・・・そういう想いでハッピーエンドにしました。
結ちゃんの、「結」は、「ゆうちゃん」と、「猫」の、絆を「結」ぶ、と、かけています。
「海」は、こっそり「空色の猫」とかけています(笑)