霧島、食堂に行くってよ
お越しいただきありがとうございます。
また、誤字報告、感想ありがとうございました。
なんとアクセス総数が3000を超えました!やったー!
「w」と「↑」「←」「↓」が壊れかけたキーボーボを卒業したので誤字が少なくなるよう気をつけます!ww
食堂はどうやら独立した建物らしく、1階と2階は調理場以外全面ガラスで開閉自由らしい。なんでも内戦が絶えなかった時代に騎士がすぐ出動できるようにしたらしい。
入り口は正規のものが3箇所あるがガラスを開けて入ってくる人も多々あるので入り口などあってないようなものだと知性派のネージュさんが教えてくれた。
その3箇所には蛇口が10個ずつあり、そのそれぞれにネットに入った石鹸がぶら下がっていた。
遥か遠い日に通った小学校思い出すな。と遠い目になったのは秘密である。
10この内2つは低い作りになっていた。私には有難いなぁって思ったけど、なんでかなって首をひねっていたら小動物系の獣人さんもいるからなんだとか。ありがたや〜。
ポシェットからハンカチタオルを取り出して広げて肩にかける。一度手を濡らし石鹸を泡立てて指の間、爪の隙間に手首までアワアワにしていると怪訝な顔をしたアルタさんがこちらを見下ろしていた。
「そんなに洗ってふやけないか?」
「しょくじまえにてをしっかりあらわないと、びょうきやふくつうのげんいんになるよ?」
「だから石鹸なのか?」
「せっけんはめにみえないよごれまでとってくれるから……。ぎゃくにみずだけであらうとシワやすきまにはいっていたよごれをうかべちゃうからよくないってわたしのせかいではおしえてた。」
「そうなのか?」
それを聞いたアルタさんが再び蛇口を捻って石鹸を泡立て始めた。その隣で几帳面なネージュはより丁寧に洗い始める。
「にんげんはつめのすきまとか、よごれもはいりやすいからとくにこうやって……。」
言いながら掌に爪を立ててクルクルすると、なぜか爪の形状の違うアルタさんまで真似ている。多少擽ったそうだが意外にも肉球の隙間の毛まで洗えるのが気に入ったようで鼻歌が飛び出した。
納得したならまぁいいか。
大柄なリオンさんの腕から眺める景色は子供になる前の私よりも高くてとても見晴らしの良い景色でした マル
な〜んてことを現実逃避気味に思うくらいには視線が痛い。何事かと好奇心を寄せる人、なんで騎士団に子供がいるのかと訝しむ人、単純に人族子供属性が珍しいらしいのか観察するような視線を向けるもの。
手を洗うときは下ろしてくれたのに、食堂に踏込もうと一歩足を出す前に再び抱きあげられた。さり気なく首のあたりにリオンさんの髪が擦りつけられて、本当に猫なのだなぁ〜なんて考えていたら、一箇所を指して尋ねられた。
「イズナ、どれくらい食べれる?」
「えっと……ロールパンいっこと、なまやさいのサラダとチキンソテーが3きれくらい……かな?スープもたべたいけど、たぶんそんなにたべれないとおもう」
形式としてはビュッフェスタイルのおかわり自由って感じで入って数メートル離れたとこに段の作ってあるクロスをかけた長テーブルには山盛りの肉がいろいろな調理法で大皿にもられている。有名アニメ映画の温泉街にある食べ物屋さんも顔負けである。
どこかの魔法学校を彷彿とするようななが〜〜い木のテーブルに意外にもお行儀よく座る獣人騎士のみなさんは大皿に盛り盛りの肉を頬張っていらっしゃる。
なかにはパンやサラダを取っている人もまばらにあるが、やはり肉を山にしてる人が圧倒的に多いのだ。そのせいかサラダとパンは情けない程度にしか置いていないが、なぜか一角に人参尽くしの皿があったのはきっと好みの人がいるのだろう。
人参……。うさぎか馬だろうか。ちょっとグラッセ食べたら怒られるかなぁ?
「イズナ?なにか食べたいものでもあったか?」
手足の短い私に代わってリオンさんが小さめの皿に言ったものを乗せてくれている。なんと片手は腕に私のお尻を乗せているのに手では皿をしっかり持っている。力持ちってすごい。
「あそこのにんじん……でもあそこにあれだけあるってことはにんじんすきなひとがいっていすういるってことでしょう?わたしがよていがいにたべたらたべれなくなるひとがでてかなしいきもちになるのはもうしわけないからいらない。」
「イズナは優しいですね。」
そう言って優しく頭をネージュさんが撫でてくれた。夢で見た撫で方とはちょっと違うけど優しくて暖かな肉球がふにふにの手だ。
「そんなことないよ。わたしのはやさしいじゃなくてもうしわけないの。」
「どう違う?」
コテンとリオンさんが首を傾げた。くっ!可愛いがすぎる。
「かりにわたしがにんじんをとってもちゃんとたべられるかわからなくてのこしちゃってすてちゃうとするでしょ?そうなるとたべたくてもたべられなかったひとにもうしわけないし、ちょうりしてくれたひとのまごころにももうしわけないし、にんじんをそだててくれたひとにももうしわけないもの。だれかのくちにはいるはずのものがわたしのせいでごみになってしまったらもうしわけないの。」
日本では一粒の米に七人の神様が宿ってるって教えられるくらい食べ物の大切さを教えるもんね。残すなんてこと選択肢にないのだ。
「つまり君は人参ひと切れに少なくとも三人に対して思いを砕いたということだろうからはやり優しいということだろう。だからこそぜひたべてほしいと思う。ここのグラッセはとても美味しいんだ。」
言葉と同時にリオンさんの持つ皿に細長く角の面取りされた人参がひと切れ乗せられた。
リオンさんの腕に座る形となっているので、声の主に背中を向けているので誰なのかわからない。
落ちないようバランスに気をつけながら上体をひねって声の主に視線を向けようと体から上の方に滑らせると長くて白いふわふわの耳と真っ赤な瞳、ヒクヒク動くピンクの鼻が見える。
「うさぎさん……。」
「はじめましてお嬢さん、鈴のような愛らしい声で可愛いことが聞こえたので思わず手が動いてしまった。私は第一師団配属のラパンというんだ。」
「あ、えっと、はじめましてきょうからおせわになってます。イズナといいます。」
うさぎにしては細身でとても身長が高い。いうなら細マッチョなうさぎさんである。
やっぱりここは異世界だなぁって改めて実感した次第です。
ご覧いただきありがとうございます。
まだ序盤で動きがしばらくありませんがお付き合いいただけると幸いです。よろしくお願いします。