霧島、騎士団にいったってよ にっ!
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「つまり、イヅナは本当は35歳で召喚の影響で子供になったと?」
金獅子と思われる同い年らしい王子団長さんが困惑気味に訪ねてきた。丸みのあるお耳には赤い宝石のはまったピアスとカフスがつけられていて、カフス同士は金の長い鎖でつながっていて耳の間を8の字に巻かれている。
さながら王冠のようにも思えて、その鎖には大小の宝石が揺れている。日の光を浴びるたびに煌めいて綺麗だなぁ。とぼんやり思いながらも、質問にコクンと頷いた。
「からだがこどもだからしゃべりとうごきはにぶいですが、ちゃんとみなさんのいってることはわかります。」
「確かにそれならこの落ち着きも頷けますね。」
美人のネージュさんが向かいのソファでやたらと頷いている。毛量の多い髪が腰まで伸びている。……触りたい。
じぃぃっとその手触りの良さそうな肩の辺りを見ているとなぜか頬を染められてニコリと微笑まれた。
美人の笑顔ごちそうさまです!
「ネージュ……。」
「ネージュさん抜け駆けはだめですぉ。」
口数の少ないリオンさんはただ名前を呼んだだけだが、アルタさんはしっかり非難を込めた物言いで、一体どうしたんだろう?と首をかしげたら何故かリオンさんの尻尾が腰に巻き付いた。
わ、わ、わわ!逃げませんよ!どうしたんですか!というか、こんなに触ってくれるということは触り返しても良いと言うことですか?
思わず隣のリオンさんを見上げたけどこちらを見ることなく涼しい顔をしている。しかし、私は見逃していない。あのキュートな褐色のお耳がこちらを向いている。
つまら私の動向を多少なりと気にしているということだろう。
地下では分からなかった褐色の横顔は思ったより怖くない。や、同じライオン系という意味ではライオネル王子より多少見劣りはするがイケオジの範疇だろう。
まぁ、私も人の造姿について偉そうに。言える立場でないので黙っておこう。
視線を下げれば、さぁ、カモン!と言わんばかりにするんとした尻尾の先に黒いふさふさがへその辺りでゆらゆらしてる。
「おやおや。」
「あ”!ずるぅ〜!」
発言元はライオネル王子とネージュさんの隣に腰掛けたアルタさんである。
魅惑のふさふさを優しく撫でる。黒い房は片手より少し大きいくらいなのでストロークが短いのが残念ではあるが、このコシのあるふわふわはたまらん。
両手で包んでもふもふしたり、梳くように指を入れたりと夢中になっていると、向かい側からクスクスと笑い声が聞こえる。
「リオンそんなに気持ち良いのですか?」
「煩い。」
なんだろうと再び見上げると、じっと目を閉じたリオンがいた。特に不快な風ではないし、尻尾も取り上げられないので 大丈夫だろう。
そういえば、近所の野良猫用に買ったスリッカーブラシと獣毛ブラシをかばんに入れてたはず。いつ遭遇してもいいようにカバンに入れてたのだが、あいつら手で撫でるのはいいのに道具出すと逃げるので一度も使っていない。
囲むように回された尻尾の中で向きを変えてごそごそと鞄から2種類のブラシを取り出す。
「イズナそれは?」
出された道具に興味津々でアルタが身を乗り出す。
「これは、すりっかーぶらしとじゅうもうぶらし。」
聞き慣れぬ単語だったのか、四人の目が私の手元に集中しているが、かまわずスリッカーブラシでふさふさのを梳いていく。よく手入れがされてるるのだろう。引っかかることもなくスルスルとよく通る。
「ん”……。」
「うわぁ〜。」
「そんなに気持ち良いものなのか……。」
「そういえば先程喉を鳴らされていましたね。」
「リオンが喉を?それはすごいな。」
うん。スリッカーブラシすごい。もうするするですよ。
それから獣毛ブラシに持ち替えて表面を撫でれば艶が出てくる。それが楽しくてブラッシングをしていれば、頭上から声が掛かる。
「い、イズナ、そろそろ……。」
三度見上げれば、なぜか片手で目を覆い天井を仰ぐリオンさん。手で隠してたら天井見えないのに……。疲れてるのかな?
「え、はい。ごめんなさい、たのしくてつい。でも、ふわふわのツヤツヤになったから!ほおずりしてきもちいいぐらいのしあがりにはなったとおもう!」
夢中になりすぎてやりすぎたのかもしれない。慌てて自己弁護しながら尻尾を手放す。
すると何かおかしなとこがあったのか、アルタさんは吹き出して笑い出すし、ネージュさんは体を捻ってソファの背を掴んだ肩が震えている。
角を挟んだ隣にいるライオネル王子は両手で口を塞いでいるがその両目には涙が滲んでいる。
「笑いたければ笑えばいい……。」
身動ぎしないリオンがため息混じりに呟けば3人は堪えることなく笑い出した。
状況がいまいち分からないので4人を代わる代わる見つめていると、目尻を拭いながら持ち直したライオネル王子がつぶやく。
「俺も毎日子どもたちにやってもらうからコミュニケーションの範疇だろう?ほ、微笑ましいではないか。」
あ、最後の方笑いかけましたね王子。
「そうですね。幸いイズナは見た目どう見ても子供ですから親子のコミュニケーションと言えなくもないと思います。普通の親子がそれほど濃密にするとは思えませんが……。」
笑ったことなど無かったかのようにすました顔で茶をすすりながらもちょっと早口気味でネージュさんが宣った。
「養い親になるなら早速仲睦まじくていいじゃないか。」
ネージュさんと同じように茶をすするライオネル王子だがその目は完全に笑っている。
コミュニケーション?濃密ってなに?仲睦まじいって仲良しに見えるってこと?
わからないことだらけすぎて頭の上にたくさんのクエスチョンマークを浮かべてると、やっと笑いを収めたアルタさんが教えてくれる。
「イズナ、獣人にとって耳や尻尾は弱点なので親兄妹でも矢鱈滅多に触ることはないんだぁ。……種族や個人によっては性感帯だからねぇ〜。」
「それから、人前で毛並みについてあまり口にしてはいけませんよ?毛並みとは獣人の身だしなみであり時に健康状態すら測れる器官です。それを人前で言うということは……。」
さり気なく言われた言葉に目を見開いて動けずにいると、隣から深いため息が聞こえて慌ててそちらを振り向いた。
「ご、ごめんなさい!」
つまり、私はあなたの尻尾は毛艶が悪くて身だしなみがきちんとされてなかったから整えました。健康で見栄え良くなったでしょう?と言ったも同義。
しかもネコ科は尻尾が敏感だったはず。つまりはアルタの言うそういうことだろう。
私に置き換えて言うならば、人前で胸もんで触った挙げ句に不健康だしもっと見た目を良くしろ。と言われたようなもんである。失礼どころかそんなやつ死ねばいいと思う。
ってそれをしたのは私だぁぁぁ!誰か殺してくれぇぇ!
恥ずかしいやら申し訳ないやら、どうしていいかわからず赤くなったり青くなったりしながら謝罪の言葉を口にしたものの、5歳児の精神に引っ張られて視界が滲んできた。
バカッ!泣きたいのはリオンさんなのに私が泣いてどうするんだ!しっかりしろよ5歳児!
「ご、ごめ、ごめんなさ……しら、な、くて」
決壊した涙が止めどなく溢れる。声もちゃんと喋れなくて最後は下を向いてしまった。
「あ〜。リオンが泣かせたぁ。」
「お前たちが追い詰めるからだろうが!」
どうにか涙を止めようと手の甲でぐいぐい拭うと、つややかなもふもふが頬をなでた。
「あまり擦ると腫れるぞ。」
ビックリしてリオンさんを見上げるとその表情は柔らかくて、両脇に手を差し込まれると筋肉のついた少し硬い膝に横向きで座らされると、支えるように抱きこまれて、背中をトントンとリズムよく優しく叩かれる。まるで撫でられるように心地良い。
「大丈夫、気にしていないし、イズナが知らなかったのも当たり前だ。お前に泣かれるとどうしていいかわからず困る。」
優しく耳元で囁かれると、暖かな腕が気持ちいい。こんなふうに誰かに抱き締めてもらったのはいつが最後だったろうかこんなに安心できる居場所に留まったのはいつぶりだろう……。
困らせてごめんなさいと言いたいのに急に襲ってきた眠気に言葉にならず、コクンと頷きだけ返して暖かな体に身を預けて意識を手放した。
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