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しっぽは特別なんだってよ!

お越しいただきありがとうございます。


なんと評価が1000を超えました!ありがとうございます!!

つたない作品にもかかわらずこうして評価していただけるとは作家冥利に尽きます!ありがとうございます!



 「ん、ん~。」


 手に何か柔らかい感触がある。


 モールよりは柔らかくてタオルよりは硬くて艶がある。


 なんだろう?


 筒状の柔らかいやつ。


 手触りが良くてつい手を左右に振って撫で摩ってしまう。


 「い、イズナ!?起きたっすか?っていうか起きていい加減その手を離してほしいっす。」


 あれ?アルタさんの声がする。でももうちょっと待ってもう少し寝たいのです。そういえば抱き枕ほしいなぁ。いつもなら被り布団を二つ折りにして全身で挟んでギュウギュウするんだけどここは薄いんだよね。物足りないし、ひんやりした気持ちよさもないし。


 そういえば握ってるこれは手触りいいぞ。細いから顔に寄せたら気持ちいいかもしれない。


 「おや、ずいぶん好かれましたねアルタ。」


 手にしたそれを顔のそばに持ってくるがそれ自体が近づくというよりも手を滑らして先端を顔に向けた方がいいだろう。


 その柔らかさが頬に触れて予想通りの気持ちよさに思わず頬ずりする。


 お日様の匂いがする。


 気持ちいいなぁ。


 「イズナ?!起きてないんすか!?ほんとにそろそろ!?」


 「そんなに騒ぐと本当に起きてしまいますよ。かわいそうじゃないですか。」


 「や、だからってしっぽっすよ!?」


 「お前のしっぽなんてシーズンごとにメスに触われるでしょう。覚えたての餓鬼じゃあるまいし。何をそんなに焦ってるんですか。」


 「や、そんなこと言っても。」


 「大体相手は子供ですよ?」


 「~~~っ!!そうすっけど!」


 さわさわさわさわさわさわさわさわさわ


 「ふぁ!はぁ、わっくぅぅ!」


 「私の執務室で気持ち悪い声出さないでもらえますか。」


 「そんなこと言ったってしょうがないじゃないっすか!ってかそんなに言うなら代わったらどうっすか!」


 「私は仕事中です。」


 「俺だって仕事中っすよ!」


 なんだこのポンポンと繰り出される会話。


 テンポ良い会話が面白くて耳から先に目が覚めた。察するにここはネージュさんの執務室らしい。いつもする紙とインクのにおいがする。


 おかしいなぁ?訓練場でラパンさんと遊んで?いたはずなのに。ここまで届けてくれたのかな?


 うっすらと目を開けると縞々のしっぽの先がピコピコと揺れている。


 かわいい。けしからん、誰のしっぽだ責任者出てきなさい。撫で繰り回してやる。


 「~~~っ!イズナ、もう散々撫で繰り回してるんだが。」


 「っははは!イズナそれはアルタのしっぽですよ。」


 どうやら全部この素直なお口が垂れ流していたらしい。


 「そうですか、アルタさんは虎さんなんですね。」


 縞々を離すことなく反対の手で目元をこしこししながら起き上がる。


 せっかくなのでしっぽをたどって根元から先まで手をわっかにしてスルスルと撫で上げる。


 「~~っあ゛ぁ゛!」


 「……ごめんなさい。」


 獣顔なので色味まではわからないがその目は何かに耐えるようにぎゅっと閉じられている横顔はうつむいていてこちらを向いてくれず、アルタさんの背中がかすかにふるえている。


 なんだか申し訳ない気がしてそっとしっぽから手を離して誤ってしまう。


 そういえば獣人定番ものってしっぽと耳は他人のおさわり禁止定番どころであることを思い出してさぁっと血の気が引いてしまう。


 「アルタ、そろそろ団長が会議の時間です。資料を届けてください。」


 「あ、ああ。」


 さっと立ち上がったアルタさんがさっさと部屋を出て行ってしまう。


 「ねていたとはいえ、しつれいなことをしてしまった。」


 「成体まえの幼女に何をしてるんですかねあの男は。……よく寝ていたようで安心しましたよイズナ。調子はどうですか?」


 ここにきてから私が三十分程度の睡眠くらいしかとっていない様子を一番間近で見ていたネージュさんはほっとした表情でお昼寝の定番スポットとなりつつあるソファに寄ってきた。いつの間にか毛布まで掛けてくれていたらしい。


 「だいじょうぶです。すいませんごめいわくをおかけしました。」


 「迷惑なんてことありませんよ。」


 「でも、アルタさん……しっぽほんとはダメなんですよね?」


 「だめということはありませんけど……まぁ、特別な相手以外にはふつう触らせませんね。でも我々ネコ科は他の獣人の様に一定パートナーではありませんし、ましてイヌ科のように生涯の番は作らない種ですからある程度の人数には触られやすい分耐性があるはずなんですよ。」


 「そうなんですか……。」


 やっぱり猫のように無駄玉打とうとどこかで当たる!な感じなんだろうか。


 「あとでごはんのときにあやまります。」


 「そうですか。」


 それ以上は何も言わずただネージュさんは頭を撫でてくれた。


アルタ「やばかった!マジでやばかった!なんすかあのビリビリしびれる感じ!人生で始めってすよ!つか出さなかった俺マジ偉い!ってかもう限界!無理!」


 その日の夕刻前全力疾走で廊下を駆け抜けトイレに駆け込むアルタが目撃されたとか見られたとかなんとか。


哀れアルタ。


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