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リオンSide 月が見えない夜に

お越しいただきありがとうございます。

お待たせしました!しました?

春は異動の季節で人見知り系一匹狼にはつらい季節です(ぐすん)

なにか集まりがあるとなるとあらたな顔ぶれにちょっとしたストレスから持病が……。

負けないように更新頑張るぞぉ~


 それは午後の訓練が終わりちょっとした眠気と書類と格闘する夕刻のことだった。


 「隊長!今城から使いがまいりまして、イズナが熱を出したので本日は城で預かると。」


 焦ったような慌てたような部下の言葉に脊髄反射で立ち上がる。どうやらそれはネージュも同様だったようで、この男がそこまで動揺を示すのは珍しいことだが、正直俺だってそれどころではない。


 「城へ行く!馬車を出せ何かあればアルタに指示を仰げ、それでも判断しかねる場合は団長に回せ!」


 荒い仕草で上着をつかみ取ると廊下に飛び出す。本当なら魔馬に乗って行きたいが病気のイズナを連れ帰ることを思えば馬車である方がいいに決まっている。


 焦れる思いを隠すことなく膝の上でトントンと指を動かす。


 同じ城内とはいえ、騎士団の詰め所と城の最奥にあたる王族のプライベート空間は真反対に当たる。おまけに今は夕刻の帰宅時間とあって馬車の往来も激しくなかなか進まない。


 やっとの思いでたどり着いた時には日もとっぷり暮れていた。


 挨拶の口上もすっ飛ばして最初に出てきた言葉は「イズナは無事か!?」だった。思い返せば間抜けな話だ。熱があるということは無事とはいいがたいだろうに。


 それなのにいつの間にか帰宅している団長であり従兄のライオネルの姿に少しの苛立ちを覚えつつもとにかく姿を見なければ何とも言えない。


 客間の寝室に寝ているイズナとそれに寄り添う従兄の息子に何とも言えない不快感を押し込めて見なかったことにし、ライオネルに向かい合う。


 「イズナは連れて帰るここではゆっくり休ませられん。」


 はっきりとした俺の声にライオネルが目を見開きその妻君はオロオロと惑っている。


 「なに馬鹿なこと言ってるんだ!熱があるんだぞ。せめて治まってから動かすべきだろうが!」


 そんなこと俺にもわかる。その方がきっといいだろう。だが、なにか胸騒ぎがしてとにかく今夜は連れ帰らなければいけないような気がする。


 「だから連れ帰ると言ってるだろう!」


 まるで子供のわがままだ。わかっているのに理性が効かない。


 しまいには喉からグルグルと威嚇までし始める始末だ。


 そうこうしているうちに寝室から声が聞こえてイズナが目が覚めたのだと気づき大人たちがなだれ込む。


 「苦しいの?さびしいの?だいじょうぶ、僕がいるよ。さびしくないよ。」


 そういいながらイズナの頬をグリグリと擦るレーヴェの姿。その手をたたき落としたい衝動を実行しなかったのはイズナの眉間にしわが寄っていたからかもしれない。


 少なくともそんな大人げないことをしなくて済んだ。


 先ほどからの言動のおかしさを思ったのかそれとも彼女の眉間のしわに気づいたのか、ライオネルは息子に手を放すように伝えると、レーヴェは大人しくそれに従った。


 かわいそうに、その頬が赤みを帯びていて痛々しい。思わず伸びた両手で柔らかく包み込むと眉間のしわが伸びて眉が下がったがやはり熱のせいか呼吸が荒い。


 その姿に幾分か冷静になりやはり今夜はここに置いていくべきかもしれないと手を離し、ライオネルに向き合おうとした時だった。


 クン


 決して強くはない。弱弱しくも確かなそれが俺の動きを止めた。


 「おいて……いか、ないで……。」


 かすかでとぎれとぎれの声。だがその小さな声をこの獣の耳は確かにとらえた。それは室内にいた全員だったようで息を飲む気配が満ちた。


 目じりからあふれた雫が愛おしくて掛けてあるシーツをめくり、室内だからと脱いでいた上着で包み込むとしっかりと抱き上げて、安心させるように耳元でささやく。


 「置いて行ったりしない大丈夫だ。一緒に帰ろう。」


 その言葉に安心したのか小さく頷くと眠りに入ったのか体の力が抜けた。その重さすら愛おしいのだから重症だ。


 この小さな保護対象はどこまでも庇護欲を掻き立てられる。それは愛情深い獣人だからとは思えないような……まさか、な。


 「おい、リオン。」


 「姫のご所望だからな。このまま連れ帰る。」


 そう言えば反論のしようもないのだろう。特に止められることもなく部屋を出る。


 「そのままでは寒いでしょう。」


 気を利かせたネージュが自分の上着で俺の腕ごとイズナを包む。


 待機させていた馬車に乗り込むと用意のいいネージュが毛布を差し出す。膝の上で横抱きにしたイズナを何重にも包み込んでやっと宿舎に帰ると迷うことなくいつもイズナが寝ている俺の客間に寝かせる。


 「ひとまずこれで落ち着けますね。食堂で何かつまむものをもらってきます。」


 足早に出ていくネージュを見送って洗面室に飛び込むと桶に水を張って、手拭いを落としすぐにイズナのもとに戻る。


 手拭いを絞って額に乗せてやると長い息を吐きだした。


 爪で傷つけないように気を付けながらそっと頬を撫ぜる。


 「イズナ…。」


 まるで迷子の子猫のようだ。寂しく恋しく親を求めるように名をつぶやいたとき、耳がその音をとらえる。


 「リオン、食事をもらってきました。心配なのはわかりますが少し食べましょう。夜は交代で詰めますか?」


 「……ああ、もらう。夜は俺が見る。ネージュは明日の昼に頼む。」


 「わかりました。」


 言葉少なに流し込むように食事をとるとネージュは空の食器を持って部屋を出ていった。


 一度イズナの様子を見て寝室の奥にあるシャワー室に向かうも落ち着くことはできずにさっと浴びるだけで体を振るって水けを落としてぬぐい、新しい下履きにスラックスを履いてシャツは手に持ち鬣を手拭いで押さえながらイズナの元に戻る。


 熱の具合はどうかと首に手を当てると汗で湿っている。幼体特有の匂いは特にしないので問題はないとは思ったがどうも本人が寝苦しそうだし、汗と涙で後の残る顔は痛々しい。


 服は簡素なワンピースになってはいるが寝返りを打てばそれも煩わしかろう。


 異性といえども相手は幼体。これは看病と自身に言い聞かせて着替えを用意し手早くワンピースを脱がせた。その下にきているタンクトップに手をかけようとして手が止まる。なぜだ。


 これは看病。相手は子供。


 そう呟いて一気に脱がす。


 それから残った下履きに手を伸ばして思わず喉が鳴る。


 「ぐ……。」


 なんだかわからんが罪悪感がこみあげて目をつぶって下履きを脱がせると、これまで感じなかった甘い香りが立ち込めた。


 「は?なっ!?」


 瑞々しい果物のようで甘い蜜のようでもある。心臓がやたらと早く動く。


 慌ててイズナに掛け布を首までかぶせる。いくらか匂いは緩和されたもののそれは消えることはない。


 「なんだ?どういうことだ?」


 幼体相手だぞ。まさかそんなはずは……。番の確認ができるのはメスの初潮が始まってフェロモンが発するようになってからだ。それだというのにこれは……。


 信じられぬものを見るようにイズナを凝視していると、掛け布に浮かぶシルエットに変化が起きる。手足が伸びて幼い顔立ちがまろみを帯びて大人になる。


 「イズナ?」


 ベッドの端に腰かけて呼びかけると、その瞼が震える。


 ぼんやりとした瞳が開かれたがやはりそれはどこか夢見心地で。


 「イズナ……?」


 こちらを通り抜けてどこか遠くを見ている。


 「夢を、見ました。」


 幼体のときとは違うはっきりとしたしゃべりではあるが熱のせいかかすれていて、もっと彼女の声が聞きたくなる。


 「イズナ?水を飲むか?」


 「……はい。」


 ゆっくりと体を起こして支えてやれば、先ほど引き上げた掛け布が重力に従ってするりと滑り、思わずごくりと唾を飲むが、幸か不幸か掛け布はしっかりと出た二つの丘の先端に引っかかり止まった。


 安心したような残念なような。


 しかし、起こすために手を添えた腰は細くて肌は吸い付くように滑らかで立ち込めた香りにこちらが倒れそうだ。


 ふっくらと艶やかな唇に吸い寄せられるようにコップの水を口に含むと、顎に手を添えてその無防備な唇にそっと口づける。


 ゆっくりと流し込むように水を口移せば、こくりこくりとしゆっくり喉が動き飲み干していく。最後の一口を小さく注ぎ込んで唇が閉じる前に舌を潜り込ませる。逃げ惑う舌先をそっとつついてやれば戸惑いながらも寄り添ってくる。たまらずそれに舌を絡めると甘い味が広がり、もっと味わいたくて思わず啜る。


 「ん、ふぅ……。」


 くぐもった声に我に返り、そっと離したものの、離れるのは惜しくて額を付ける。


 「もっと飲むか?」


 「はい。」


 もっと飲むかなんてただの口実で、もっとその唇をむさぼりたい。しゃぶりついて舐めて啜りたい。


 「は、うまい。癖になる。」


 三回目を飲ますとイズナは首を横に振る。


 「なんで急に成長?成長なのか?」


 疑問が頭から離れず呟くと、はやり夢見心地のイズナが焦点の合わない目でささやくようにつぶやく。


 「神様が新月だけ元に戻してくださるとおっしゃいました。」


 「神?」


 「本当は元の姿で移すはずだったのに召喚者の魔力が足らず失敗した。お詫びと……。」


 「イズナ……。」


 「体が慣れるまでは負担をかけない程度って。」


 「そうか。」


 それでもいい。月に一度の逢瀬でも構わない。


 よかった。


 無理にでも今日連れ帰って。ライオネルの子倅がこの姿を先に見ていたと思えば嫉妬で狂いそうだ。


 そっと抱き寄せて腕に囲みこむ。


 「あったかい……。」


 つぶやきとともに縋りつくように胸毛にすり寄られればたまらない。


 「ああ、イズナ。俺の愛しい人。」


 その頭に顎を載せて擦り付ける。腕の中にいるだけで幸福に包まれる。


 「イズナ、イズナ。」


 気が付けば腕の中には幼子の体が力なく俺にもたれていた。


 変化が落ち着いたせいか熱はすっかり引いていて、呼吸も穏やかになっている。元に戻った小さな体に頬ずりしてから体を濡れ布巾で清めて手早く新しい下着と夜着を着せるとゆるりと寝かせたイズナの横に横たわり包み込むようにして目を閉じた。



ご覧いただきありがとうございます。


イズナちゃんがまさかのもとの姿に!!マッハで子供に戻ったけど……。

せっかくリオンさんが自覚しましたがなんとネコ科って番がないんだぜ!!特定の相手を決めるのはライオンのハーレムだけなんだ!!あれ?リオンさんライオン……。

 あ、でも、ハーレムは番じゃないからね。うん。解決たぶん


 


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