ネージュSide
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イズナがこの世界に召喚されて早くも一ヶ月が過ぎた。見知らぬ土地で過ごしてるとは思えないくらいに快活でくるくる動き回る愛らしい姿とその幼い容姿からは想像できないほどの知性と観察力に驚かされるばかりだ。
何より……。
リオン隊長よりあてにされているのが、実は気にいっているのは内緒だ。もちろん隊の副団長であり隊の事務方トップとして報告の義務があるのできちんと報告はするが、いつもイズナを抱き上げているリオンよりも先に行動確認をしてもらえるというのは嬉しいものがある。
と、いうのも先日の公開訓練の件である。
食堂でリオンたちの会話を聞いたイズナはなにか思うところがあったのか珍しい筆記具であの小さなふにふにの手からは想像のできない速さで文字を書いていく。
リオンたちは気づいていなかったようだが、私にそのメモを見せたイズナは小さな声で「ことばももじもなんでつうじるんだろう」とつぶやいた。
その言葉に雷に打たれたような衝撃が走った。
この幼子は言語の異文化性を真っ先に見抜き違和感なく通じるそれらに疑問を持った。
大陸の外には別の言語があると聞いたことがあるが少なくとも全くの異文化はこの国にない。が、もちろん訛りは存在する。特に種族が違えば大分聞きにくい言葉もある。見習いや新人の最初の難関は訛りだ。聞き分ける能力と自分が矯正していくことを覚えないと円滑なコミュニケーションが測れず、団体の中に置いては致命的だ。
しかし、それはそれまでいた種族の集団から抜け出し異種族に混じって初めて己と周囲の違いを感じるのだ。これは地方出身のものほど大きく、子供の頃から王都住まいのものは気づきにくい。
双方にとって異物が入ったときに初めて気づく違いなのだ。それをこの少女は誰に言われるでもなく異世界にやってきた数時間後には懸念していたというのだろうか。
それほどまでに教育もしくは文明の進んだ世界から来たということだろうか。
それなら過去に躍起になって召喚しようとするわけだ。だがそれらは禁術となってしまったからにはデメリットもあるのだろう。そのあたりの記述がないことも疑問だがこれは王弟殿下が仕事をしてくださるだろう。
で、その賢いイズナが公開訓練の準備を手伝ってくれると言い出したのだ。
深夜にその内容をリオンに報告した翌日、訓練場や受付設置箇所を見終わったあとで提案書を書く姿はあまり見られたくないから部屋に籠もりたいと申し訳なさそうに言われた。
今にも泣きそうな顔で言うものだから焦ったリオンがワタワタしてた。この男にもこんな一面があったのかと驚かされたものだが、それは秘密である。
その後の言葉には別の意味で言葉を失ったわけだが。
「でも、いせかいじんがひとりでこうどうするのはふかいをあたえるとか、こうさくやはんぎゃくのうたがいとかけねんされてだめだったらしかたないのですが……。」
不快?!
工作員?!
反逆?!
もしや監視されていると思われていたのか!?
召喚者といえば国王にも匹敵する待遇。護衛の必要はあれでも監視などあり得ない。
どうやら我々が仕事もせずにそばにいるのは監視のためだと思われていたらしい。
誤解です。誤解ですよイズナ!
お願いですから認識を改めてください!そんなこと思われていたなんて己の不甲斐なさに胸を掻きむしり引き裂いてしまいたくなります。
何なんですかねぇこの感覚は。
とにかく誤解を解くべくリオンとアルタと共に言葉を重ねてなんとか誤解は解きました。
彼女の要望に応え1日そのままにしてみました。
すると今滞在しているリオンの客間から1日出て来なかったようです。密かにアルタをリオンの部屋に置いていたので間違いありません。
おまけに夜リオンを尋ねれば静かな部屋からは確かに人の動く気配がします。
翌日の朝ノックしてみれば「あれ?もうあさ?」なんて声が聞こえて3人顔を見合わせたのは言うまでもありません。
どうやらほっとくと寝食を忘れるタイプのようなので、日中は私の執務室に招くことにしました。もちろん人払いも忘れません。
「イズナ……。」
「は、はい!なんでしょう……か…」
いつものようにリオンによって私の執務室へ連れてこられたあと、応接のソファに降ろされたイズナがリオンの訓練に向かう姿を見送った直後のことでした。
バツが悪そうに顔を合わせない少女の前に跪いて膝に乗せられた小さな柔らかな手を両手で包み込みました。
「何日寝てないのですか?」
幼い双眸の下に子供には似つかわしくないくっきりとしたクマがそれを物語っていました。
「えっと……よっかくらい、かな……。」
「イズナ?」
「あの、けしてねないようにしてたわけじゃなくて、ベッドに入ってもねつけなくて、それならなにかしてたほうがいいかとおもってていあんしょつくってて、もちろんそのあいまにウトウトはするんだけどベッドにはいったとたんめがさえちゃって……その……。」
「すみません、もっと早くに声をかけるべきでした。あなたが眠れていないのは気づいていたのですが……。提案書を作ることに夢中になっているとばかり、明るく笑う姿が気丈なのだと気づくべきでした。」
俯いた姿が痛々しい。
見開かれた瞳に膜が張ってゆらゆらと溢れるのを耐えるように空を見上げた姿にどれほど胸を締め付けられたか。
「すみません、見知らぬ場所、誰一人知人のいない場所で不安にならない人はいない。まして、貴方はその容姿のせいで感情が引っ張られると教えてくださったというのに……。」
「ち、ちが……ごめん、なさ……。てつやはなれてるし……」
しゃくり上げる声を聞いて、私の体はいつの間にか動いていてその小さな体を腕に掻き抱いていました。
不謹慎にも泣きじゃくる彼女の甘やかな薫りに満たされた自分がいました。
「謝ることは何もありません。私では何も救いになどならないでしょうが、いつでもそばにいます。大丈夫です。」
一体何が大丈夫だというのか。彼女の心を救える方法など時間と慣れしか存在しないというのに。それでも寄り添いたいと思う自分はなんと滑稽で浅ましいことか。
「みなさんが、やさ、しくしてくれて、ヒッ、わかってる、のに、どこかで、フゥ、じぶんは、ヒッ、ひとりなきが、して、なれない、てんじょうにめが、さめて、ねれな……」
悲鳴のような声に耳が痛いのに震える背中が愛しい。初めて見せる弱々しい姿が獲物を捉えたときのようにゾクゾクと背中に走る衝撃に耐えて、ゆっくりと撫でているといつの間にか穏やかな寝息が腕の中から聞こえます。
見知らぬ土地で今までの姿を捨てさせられ、違う種族の大柄な異性に囲まれて正常でいるほうが難しいだろう。むしろこれまでよく耐えていたといえる。
「ああ、こんなに窶れてかわいそうに……。」
穏やかな寝息とは裏腹に疲れ切った顔色は青く落ちくぼみ始めた目とクマがなお痛々しい。
その日私の仕事は彼女の寝具係でした。
ま、一日くらい仕事しなくてもどうということはありませんしね。
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なんと不詳の身ながら感想をいただけるようになりました!同時進行作、夫婦仲良く異世界転生したので生産を楽しみますhttps://ncode.syosetu.com/n0649fu/ のほうは結構頑張ってもからっきし(泣)だったのに(笑)こっちの読者様優しい!
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