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ショートショート4月~

ぞろ目

作者: たかさば

今日も私は真夜中に目が覚める。


今何時だろう。


恐る恐る、時計を見る。


02:22


ぞろ目だ。



私はなぜだか、ぞろ目に取り付かれている。


また今日も、ぞろ目で目が覚めた。


気分が悪い。



再び、目を閉じた。


また、目が覚めた。


今何時だろう。



恐る恐る、時計を見ようとして、またぞろ目だったらいやだなあと少し時間をおく。


勢いよく、時計を見ると。


04:44


また、ぞろ目だ。



なぜだ。


なぜ、いつもぞろ目なんだ。



私は一時、二時、三時、四時、五時、十一時が、特に怖い。


数字が三つ、並ぶのが、怖い。


10:10も、少しだけ、怖い。


12:12も、少しだけ、怖い。


12:22も、けっこう、怖い。



私の心の平穏が訪れる時間帯は、六時、七時、八時、九時。


一日のうち、八時間だけ、落ち着いて時計を見ることができる。


六時まで、あと一時間半。



もう、時計は見ないぞと、心を決めて、眠りにつく。


心がざわついて、目が冴える。



・・・。


・・・。



眠れない。



チュンチュン騒ぎ出した鳥の声に、朝を感じる。


ああ、今日も、浅い眠りのまま、働かなければならないのか。


もう起きてしまおうと、布団から出たとき、時計が目に入る。


05:55


!!!!!!!



私の心が乱れてしまう前に!!


スマホで検索するのは、円周率。


3.141592653589793238462643383ああ、ちょっとやばいぞ、ここ!


2795028841971693993ここもなんとなくヤバイ!


75105820974944592307816406286208998ここもヤバイ!!


6280348253421170679821480865132823066470938446095505ここもヤバイ!


8223172535940812848111・・・ぎゃあああああああ!!!


745028410270193852110555・・・あああああああああ!!!


9644622948954930381964428810975665933446128475648233786783165271201909145648566923460348610454326648213393607260249141273724587006606315588174881520920962829254091715364367892590360011330530548820466521384146951941511609433057270365759591953092186117381932611793105118548074462379962749567351885752724891227938183011949129833673362440656643086021394946395224737190702179860943702770539217176293176752384674818467669405132000・・・ああ。


56812714526356082778577134275778960917363717872146844090122495343014654958537105079227968925892354201995611212902196086403441815981362977477130996051870721134999999・・・あ。



ああ、だめだ。



こんなにも、ぞろ目が私に襲い掛かってくる。


こんなにも数字に取り付かれた私。


この先無事に生きていける気がしない。



思えば、1999年も、やばかった。


だけど何とか生きてきた。


なぜならそのころ、自分の時計を持っていなかったから。



私のもっぱらの恐怖は、2022年2月22日。


この日が怖くて怖くて怖くて。


この日に02:22を見たら、たぶん私は息を止める。



あと二年。


あと二年で。



この恐怖に打ち勝てる。


打ち勝てるのか?


打ち勝つ必要、あるのか?



大混乱の世の中で、小さな偶然におびえて生きる小さい自分。



超越数をπと表す。


終わりのない数字の羅列を、一文字で表す便利で手抜きなこの手法。



なんという失礼な。


数字に失礼ではございませんかね。



そんなことを思いつつ、のたり、のたりと布団から這い出して。


足元の時計をふと見たら。


06:21


私の誕生日と、来たもんだ。



もう、生きていける気がしない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日常でよく見る数字って怖いですね。 主人公(世の中)は時計に囚われすぎなのかな…とにかく面白かったです。
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