9、5年生 朔視点
「菖蒲は昔はああじゃなかった!」
「まあまあ落ち着けよ朔。」
僕達は6年生になった訳だが、あれからますます菖蒲の事が分からなくなってきた。
5年生になった菖蒲は勉強は申し分無い、もしかしたら僕よりも賢いかもしれない、いつも晩御飯の後寝る前まで毎日勉強しているあの集中力は妹ながら尊敬できる程だ。
だけど寄り道したりどこかに遊びに行ったり未だに勝手な事ばかりしている。
菖蒲は僕に、私の行動を制限する資格はない!と偉そうに言うけど僕が言わないと、誰が言う?父さんはいないし母さんは甘い。だけど母さん曰く、
「あの子は大丈夫よ。」
だそうだ。信じられない!いつか危ない目に遭うはずだ。それに1番仲がいいのが男だなんて考えられない!いつも休みの日に朝から弁当を作って釣りに行くなんて!
でもあの時、
「女なのにそんなのおかしい!」
と言った時、菖蒲はいつもならふざけて逆ギレするのにあの時は違った。ただ静かに、
「お兄ちゃん、私それは許さない。お兄ちゃんの過保護は許すよ、お父さんもお母さんもうるさく言わないから、私に気を付けるように言ってくれてるんだよね、いつもありがとう。でも女の子だから、男の子だから、だからなんなの?何がどうおかしいの?自分の考えでおかしいって言ったなら理由を教えて。でも周りからの考えならそれは今すぐにやめて。それは私は許さない。」
僕は菖蒲のあまりの剣幕に少しビビって口を閉じた。あんな風に僕に言ってきたのは初めてだったから。そのまま部屋に戻ろうかと思ったけど、菖蒲は答えを待つように真っ直ぐにこちらを見ている。
「分かった。それはもう言わない。悪かった。」
そう言うとにっこりした菖蒲だが僕には分かるあれは本気で怒っていたと。学校で何か言われた事があるのだろうか?そうだとすれば僕は菖蒲の逆鱗に触れたのだ。
来年は中学生になる、菖蒲を小学校に残す事が心配でたまらなかったが、この事をきっかけに菖蒲への拘束を少しゆるめる事にした。
「もういつも後ろを付いてすぐに泣いた菖蒲はいない。あの菖蒲はとても強い自分を持っている菖蒲なんだな。」
母さんはちゃんと見えていたのかもしれないな。僕もちゃんと菖蒲を見よう。
「お兄ちゃん、おかえりなさい!」
「ああ、ただいま。」