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46、勇気


「迎えにきたよ菖蒲。」


「ゆ、悠斗。どうして?」


何故家の中に?勝手に入ったの?窓から?それにあの格好。ゲームをしていた時悠斗ルートのエンディングを全て見てスチルも全て出すとスタート画面に悠斗が王子様の格好で現れて私はそれが嬉しくて写真を撮って携帯の待ち受けにしてた。その王子様の格好そのままだ。

でも悠斗ルートは全て見た私でも寮の部屋に夜中に忍び込んでくるイベントは知らない。


「どうしたのじっと僕を見て。ああ、やっぱりこの格好が好きなんだね。菖蒲はやっぱり変わってないんだ、あの頃のまま、僕だけを好きなんだね。」


悠斗はベッドに腰掛けて横に座るように手で促す。私は足がすくんで動く事もできず、ただ怖いという感情に支配されている。


「どうして僕の隣に来ないの?前はあんなに僕がする事は何でも喜んでくれたのに?」


「なっなんの話?」


「なんの話って……。」


すくっと立ち上がりこちらへ歩いてくる。私は紅茶を持っていたのも忘れ手を離してしまった。カップが割れるっ!と思ったけど悠斗から目を離せない。一瞬の静寂の後カップが割れる音はしなかった。ゆっくり下を見ると悠斗がカップを持ってくれていた。手は熱い紅茶がかかったらしく少し赤くなっている。


「冷やさないと!」


急いで悠斗の手をとってキッチンへ。水を出して手を冷やすと悠斗は私を抱き寄せた。


「手冷やさないと。」


私は小さく呟く。


「手なんてどうでもいい、君に怪我が無くて良かった。」


「ありがとう。」


離してくれないので動く事もできない。


「僕はねあの時君が好きと言ってくれた時からずっと君を待っていたんだよ。」


「あの時って竹林の事覚えていたの?」


「あれよりずっと前さ。まだ僕達が触れ合う事も出来なかった時からずっと。君に触れたくて手に入れたくておかしくなりそうだった。」


「あれよりも前?」


どういう事?子供の頃?それとも……。


「戻ってきてくれてありがとう大好きだよ。今日もたくさん一緒にいようね。」


このセリフ、ゲームを起動した時に攻略キャラが言ってくれるセリフ。って事は。


「ゲームの時から?」


「そうだよ。君をずっと待ってた。だから僕もお願いしたんだ君がこの世界にくるようにずっとお願いしていた。だから君を竹林で見つけた時は死にそうな位嬉しかったよ。それこそ早く会いたくて転校する程に。」


悠斗は少し離れ私にキスをした。ゆっくり唇を押し付け感触を味わうように。少し湿ったそれを2度3度とされたところで我に返り慌てて離れた。


「どうして離れるの?僕を好きなんだよね?ゲームの時は僕としか時間を過ごしてないし、あの時も一目見ただけで僕と気が付いて好きだと言ってくれたじゃないか。」


そしてまたキスをされる。今度はさっきと違う口を開かされて舌が入ってくる。やめてと突き飛ばす。悠斗はニヤリと笑って私の手首を掴んだ。どう足掻いても逃れられない。

悠斗は唇以外にもキスをおとす。耳や頬、目じりや首筋。


「ああ、やっぱり耳が好きなんだね。そっか僕の声が好きなんだもんね。良いよもっとしてあげる。ふふ。可愛いね。もう絶対に離さないよ何処にも行かせない君はこれから僕と住むんだ。これから君の全てが僕だけになるようにしてあげるね。んふふ。」


ああこんな事になるならあの時乙女ゲームの世界なんて願うんじゃなかった。もっと違う世界の脇役を願えば良かった。そしたら普通に恋愛してホワイト企業に就職できたのに。今日はあの事件のせいで全然頭がまわらない。これからどうするべきかも分からない。


でも君が望んだ事でしょう。


突然、声が聞こえてきた。悠斗の声ではない悠斗は夢中で私にキスをしている。


君は心の奥で誰かに死ぬ程愛されたいと願ってた。だからこれで満足でしょう。君は今彼に愛されている。


「誰なの!やめて!」


「菖蒲?急にどうしたの?大丈夫怖くないよ。」


ふむ、だったら助けを呼んであげよう。でも君にとってそれが助けになるかどうかは分からないけど。


「えっ。」


そしてバタンとドアが開く音がして悠斗も手を止めた。そして玄関から入ってきたのは大和だった。


「菖蒲!どうしたんだ?大丈夫か?おいその手を離せ!」


「嫌だよ。僕は彼女と愛し合っているんだから。」


「愛し合って?菖蒲本当なのか?」


分からない、でも確かに悠斗が大好きだった。会社で疲れたり人間関係でストレスを感じた時いつも悠斗の攻略をしてデートをして。


「ねっ?彼女とはずっと前から君と出会う前から愛し合っているんだ。でも。」


「でも?」


「菖蒲はね君の事も愛しているんだよ。深くね。」


「俺を。」


私は訳が分からなくて悠斗を見上げる。


「可愛い菖蒲、泣かないでその事で君をもう責めたりしないよ。僕もそれが分かってとてもイラついた。でも思ったんだ。もし君が僕か彼か悩んで僕を選ばなかったら?君は永遠に手に入らない。」


「お前何を言っているんだ?」


大和は怒っているのか泣きそうなのかよく分からない表情だ。私はもう訳が分からない。


「気付いたら怖くなってしまった。僕は選ばれなかったら…もし万が一選ばれなかったら。それなら選ばさなければいいんだよ。大和君。彼女に選ばさない。僕ら2人で彼女と一緒にいよう。彼女を守ろうこの世界から。」


何を言っているの?分からない。


「お前何を言っているんだ?」


「じゃあ聞くけど大和君はその勇気があるのかな?選ばれなかったら君はもう2度と彼女には触れられない。一緒にいられない。それが怖くて友達なんて馬鹿げたものを選んできたんだろう。結局、告白も断られるのが嫌でちゃんとした返事も聞かぬまま傍にいるんだろう。そんな意気地無しの君にここで僕か大和君か選んでと言えるのかい?」


「………。」


大和は黙っている。私は声も出せない。


「ほらね、君も怖いんだろう。選ばれない側になるのが。だったら君も僕に協力するんだ。このお姫様を2人で守ろう。」


「ごめん、菖蒲ごめん。」


私の耳に大和の泣きながら謝る声が聞こえてきてその後また静寂が訪れた。


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