43、合唱コンクール
「では只今から合唱コンクールを始めます。では最初に校長先生の挨拶です。」
会長が放送室から進行している、放送ブース?の中には会長と補助の私だけだ。ここは学園ではなく公共のホールなので初めてだらけだ。
1年生の順番最終確認してきて!
会長が差し出したメモを見て静かに頷く、別にマイクは入っていないけど毎年、メモで意思疎通をとるらしい。なるべく音を出さずにブースの外に出る。ここは2階なので1階に様子を見に行く。
舞台裏の担当は佐原先輩と会計の高野先輩だ。舞台裏に行くと佐原先輩が居たので最終確認をする。
「先輩、会長が順番と曲の最終確認をって。この資料と変わりないですよね?」
「ああ、1年生と2年生はそのままで大丈夫だ。けど3年がなぁ。」
「どうしたんですか?」
「まだ順番揉めてるんだよ。会長に降りてきてもらった方が良いかもな。ちなみに1組と3組が揉めてる。」
「分かりました。伝えます。」
「頼む。だから昼からの放送、最悪俺が変わりますって言っておいて。」
「はい。」
メモをとっておく。大変そうだ。急いで放送ブースに戻ってメモを見せると、会長はメモを見た途端困ったように笑って分かったと私に口パクしてみせた。
「では今から3年生の部を始めます。最初は………。」
1年生、2年生は問題なく終わったけど3年生は未だに揉めていて生徒会の3年生2人は未だに1組と3組の代表と話し合っていて放送は佐原先輩が行っている。なんてこったい。
くじの時にそれが取りたかった、最初に取ったとか言い合っているらしい。結局、どちらがラストを歌うかを揉めている。
ちょっと3年生の様子見てきて。
佐原先輩からメモが渡される。めちゃくちゃ字が綺麗!さすが眼鏡。って偏見かごめんなさい。頷いてブースを出る。
「あのねくじを引いたでしょ、もうそれで行こうよ。クラスの子達待ってるよ。」
会長が困ったように諭している。ふむ、相手はまだ気に入らない様子。高野先輩も黙って様子を見ていたけど私に気が付いてくれて、こちらを向いて首をふる。
仕方なくブースに戻る。佐原先輩がこちらを向いたので、高野先輩がした様に首をふる。佐原先輩は呆れたように音を出さずため息をつく。
ありがとう。もう先生に言うしかないね。お願い。
わざわざお礼を言ってくれるのかぁまめだなぁ。モテるな。舞台裏を悠斗と副会長が代わって誘導しているので佐原先輩の言う通り審査員の先生の所に行く。ちょうどトップバッターのクラスが歌っている。終わったタイミングで伝えよう。ブースを出ると会長が前まで歩いて来ていた。
「収めたよ!」
私に笑顔でピースしてくれる。
「良かったぁ。ありがとうございます。じゃあ放送お願いします。」
「うん。佐原と裏に降りて手伝ってあげて。」
「はい。」
放送ブースから出てきた佐原先輩と一緒に階段を降りていると佐原先輩が綺麗系の女性の先輩に話しかけられた。
「佐原君、クラスの打ち上げ来るよね?」
「ああ、どうかな?片付けもあるし無理かも。ごめんね。生徒会の打ち上げあるかもしれないし、なあ国分。」
と私をみる。えっ生徒会の打ち上げ?片付けはあるけど…。
「はあ、そう…ですね。」
と答えておく。
「えー佐原君が来ないと楽しくないじゃん!」
あぁ、そういう感じか。
「佐原先輩、先に行きますね。佐原先輩はゆっくりで大丈夫ですよ。」
と笑顔で言うと女性の先輩は嬉しそうに佐原先輩の腕を掴んだ。佐原先輩は優しく腕を引き剥がして、
「ごめんね忙しいから、また今度ね。」
と言って走って逃げた私に追いついて、
「ああいう気は使わなくて大丈夫だから。」
とぶっきらぼうな表情で言った後隣を歩き始めた。
「すみません。」
「嫌、良いよ。でも大丈夫だから。」
いやぁでもあの先輩、あなたを好きなんじゃ?そして私また何かに巻き込まれるんじゃ?
「あんたさぁ調子に乗ってない佐原君が優しいからってさあ!あんな狭い放送ブースで佐原君と2人きりでしかも、私よりあんたを優先させたよねぇ!」
ほらぁ、佐原先輩のばかぁ!!
「いつもご指導いただいててそれで!」
「何よ!意味わかんない事言って!頭がいいからって馬鹿にしてるんでしょ!」
「してません!」
「うるさいわね!ここで一生暮らしな!」
そして閉じ込められた倉庫の中。合唱コンが終わって片付けをしてたら突き飛ばされてこんな事に。
はーい倉庫にお泊まり決定でーす!




