32、大和の気持ち
「おい、菖蒲ちゃんと何かあったのか?」
放課後、昇降口で珍しく和真が話しかけてきた。少し移動しようとあまり人がいない体育倉庫の裏まで歩いた。
「急に何だ?」
「菖蒲ちゃんにベッタリだったろ!それが最近そうでも無いって聞いたんだよ。大丈夫か?」
「何の心配だよ。余計なお世話だ。」
「お前はさ!昔からズルいよ!普通あんなにクラスから班から一緒で何にも疑わずに休みにも付き合ってくれて!分かってるのか!菖蒲ちゃんの優しさが!」
「分かってるよ!分かってるから好きなんだろ!」
「じゃあ負けるなよ。」
和真は完全に俺を馬鹿にして笑っている。こいつ腹立つけど良い奴だから話してみるか。
「…何だかおかしいんだよ。最近、あいつにイライラするんだ。何で俺以外に笑うんだ?俺以外の奴と話してるのを見るとイライラする。楽しそうにしてるだけで、どこか誰もいない所へ連れて行って閉じ込めたくなるんだよ。あいつの笑顔を、いや笑顔以外も全て誰にも見せたくない。俺おかしいんだよ。」
和真から目をそらす。
「良いだろそれで。」
「えっ!」
俺はびっくりして顔をあげる。
「なんだよその顔は、お前さぁ馬鹿なの?好きな人には多かれ少なかれそういう気持ちを持つだろう。」
「そういうもんか?」
「お前は良いよなぁ。告白しても友達と思ってるから、バサッって切られなかったんだろ?本当にズルいよ!」
「お前には、もう姫野がいるだろう。」
「まあそうだな!あんまり考え過ぎるなよ。菖蒲ちゃんもそうだけどお前ら2人共頭で考え過ぎなんだよ。もっと衝動に駆られてみろよ!じゃあな!」
和真は俺を置いてさっさと姫野のところへ行ってしまった。
「俺は時間潰しかよ。」
衝動に駆られろか。和真も変わったな。菖蒲も変わった気がする。どんどん綺麗になって優しくて賢くて皆から好かれてて。
それなのに俺だけどうして変われない。




