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31、副会長の変化


「はい、ではクラブ紹介は以上となります。では今から……。」


全ての紹介が終わって新入生に会長が説明をしている。体験入部を第三希望まで書いて提出して体験した後三日後最終的に提出するようだ。

私と悠斗は体育館のステージ裏でクラブ紹介の人達に出るタイミングや注意事項、時間が何分残っているかを伝えたりする仕事で今は全て終わって安心したところだ。


「菖蒲は部活入るの?」


隣にいた悠斗が話しかけてくる。最近やっと推しの声に慣れてきた。でも好きぃー!


「うーん、バイトがしたいから入らないかな。悠斗は?」


「僕は勉強しないといけないから興味がある部活は幾つかあるけど、生徒会に入ったしもう労力的に無理かな。」


「本当に最悪だね。」


「ううん、そうでも無いよ。菖蒲と一緒の時間が増えたから。」


「そう。ポジティブだね。」


危うく勘違いしそうになる。悠斗は皆にこんな感じだ。最近、自意識過剰だから気を付けよう。


「菖蒲ちゃんちょっとだけ良いかな?」


うーわ…。副会長。あれから存在をガン無視してたんだった。

少し悠斗から離れて体育館の外に出る。


「なんですか?」


「うん、反省したよ。それでもう一度チャンスをくれないか?」


「人として扱って貰えるチャンスですか?」


「いやそれはいらない。とにかく話を聞いて欲しい。」


「まあそこまで言うなら。」


「ありがとう、じゃあ放課後ここで。」


それだけ言うと中に戻ってしまった。いつもみたいに軽口も言わずに話し終えたところを見るとましになったのかな?




「菖蒲ちゃん、君に酷い事を言われる度に今まで感じたことの無い気持ちになった。酷い事を言われる度に、ゴミを見るような目で見られる度に、体が打ち震えてゾクゾクした。今もそうだその目、とてもイイ!ゾクゾクするよ。」


あれ?真面目な話をするのでは?何だったのさっきの態度は?


「ああイイよ!こんな感情初めてだ。いつも満たされなくて、君の言葉を借りるなら酷い事をして傷付けていた。でも俺は君に酷い事をされたい、傷付けられたい。もうこの感情を抑えられないんだ!さっきも菖蒲ちゃんが目に入るだけで……。」


なんだその恍惚の表情は!


「いや、私そういう趣味はないんで。」


「ああ、そういう態度もイイ!」


つよっ!こういうタイプつよっ!そして近付いてくる。よく見ると首輪を握りしめている。


「君みたいな子初めてなんだ。俺の為に怒ってくれて向き合ってくれた人。そういうとこ愛おしいよ、愛してる。」


「先輩それ以上近付いたら、怒りますよ。あなたは前科があるし。」


「菖蒲ちゃん、いや菖蒲様。どうか俺を傍にいさせてください。あなたと同じ空気を吸えるだけで俺は幸せです。」


腕を掴まれる。咄嗟に護身術で習った腕ぬきをして副会長をこかす。首輪は私の足元へ転がってきたので拾う。

結局護身術にハマって7日間通った後も週1回続けていてその成果が出た。多分、副会長は自分が何故座り込んでいるか分かっていないだろう。


「あはははは。本当に最高だよ。女の子に投げ飛ばされるなんて初めてだよ。」


いや投げ飛ばしてはないんだが。首輪は投げつけてやろうか!


「ふふっ。僕は君の恋の奴隷というやつだよ。」


いや、昭和か!


「無視されるのもいいね。放置プレイみたいで。」


「とにかく近寄らないで。」


「君の為に女の子とは皆別れたんだ。新しい僕を褒めてくれるだろう。君が俺のご主人様になってくれ。」


えっそれのせいでいじめられるフラグ立ったよね。予期せぬところでフラグが。

大人しく生きてきたのに色んな問題が降ってくるな。嘘やん!てかヤンデレは何処へ?

目がらんらんとしている副会長は本気のようで先程から目の前で犬のように両手を広げて首を差し出している。つけてほしいのは分かるけどせめてもう少し違うものがいい。

ふと思いついた。髪の毛を纏めているゴムを隠す為に黒いリボンを巻いている。それを髪から外した。


「じゃあ付けてあげますよ。」


何故か目を閉じている副会長をよそに、左の足首にリボンをまいて結んであげる。足首なら邪魔にならないし細めのリボンだし目立たないだろう。ミサンガとかしてる人もいるし。


「できましたよ。」


「あれ?」


不思議そうに首を触っている。副会長に足首を指さし教えてあげる。


「あれはあげます。」


「ああ、髪のですか?」


「ええ、そうです。もう気は済みましたね。金輪際…。」


「わぁ嬉しいです。今まで菖蒲様が身に付けていたもの…。イイ!貴方は本当に俺を喜ばせる天才だ!」


怖い。今までの人生で初めて会うタイプの人だ。


「ああ、まだ温かい、これが菖蒲様の温もり。」


いや温かい訳あるかい!お前の温もりやそれは!そう言ってリボンを撫でている副会長に新たな感情が芽生えた。


「ふふ、何それ面白いですね。」


何だか喜ぶ姿が可愛く思えてきた。見た目はカッコイイしね。


「じゃあ帰りましょう菖蒲様。俺が荷物を持ちますよ!」


「いや良いですよ。すぐそこなんで。」


「本当に最高です。その対応。今までの女子は俺に尻尾を振ってついて来ましたよ。」


うわぁ、中身はそのままなんだね。お兄さん。


それからというもの、副会長は休み時間の度に私のクラスに現れるようになった。

クラスの女子達は最初こそキャーキャー言っていたけどあの態度を見るとゲンナリとし始め遂にはそっとしておくようになった。

大和は最初からずっと怒っていたけど何日か経って、私があまり怒らないからか来ている間は寝たフリをするようになった。



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