21、高校での決意
「菖蒲ちゃん今日は本当に助かったよありがとう!」
「ううん、良かった。」
案内して欲しいというのは本当に案内するだけで、本屋と図書館とショッピングモールの場所を教えるだけで終わった。その後今日のお礼にとジュースを奢ってくれて公園のベンチで飲んでそのまま別々に分かれて帰った。
「悠斗君とは高校で会うはずなのに、中学で出会ってしまったよ。でも私が悪いんだろうな京都で話しかけちゃったから。」
そういえば最終的に、あの学園に行く事が決まってしまった。ずっと勉強は頑張ってきたのであの学園以上の賢い学校にも行けたのに、いつもは何も口を出さない両親が頑なにそこに行けと父は帰国する程説得してきて、お兄ちゃんもいるしと結局押し切られる形であの学園に通う事になってしまった。
あの学園に行くと言う事はこれから本当にヤンデレ乙女ゲームが始まるという事だ。正直なところヤンデレが大好物なので楽しみではあるが、自分がその対象になるなら話は別だ。
いや、でも待てよ。今のところ告白されたのは和真君だけだし私は中学を卒業するとなってもモテている様子もないし、もしかしたら私は主人公じゃないのかもしれないぞ!
今和真君と付き合っている姫野さんがヒロインという可能性もある。だって和真君も大和も姫野さんが好きなのだから!これはもしかしたらもしかするかも?
「もしかしたら傍観者のまま生きていける?ていうか私はそんなに目立つ方じゃないし。私は恋などせずに勉強を頑張って目立たずいい大学に入りホワイト企業に入って実家暮らしのまま悠々自適に暮らす!」
そもそも私が国分菖蒲になる前から恋が上手くいった事なんて1度もなかった。
好きな人に好かれる為に努力をしなかったわけじゃない。1度とても好きな人ができて、必死に痩せてスタイルを保ち、化粧も料理も特訓して上手になって、本を読んだりモテる子に話を聞いて、印象が良く見える話し方や内容を教えてもらったり研究した。それでも大学の時1番好きだった彼は私の親友を選んだ。
彼も親友も私も誰が悪いわけじゃないけど、私と会ってくれていた理由が親友に会うためだったなんて少しだけ人間不信になって、私は人を好きになる事をやめて仕事とオタ趣味に傾倒した。
「そんな私が恋愛だなんて絶対にありえない。忘れてしまいたかったのに、結局高校生になってあの事を思い出すなんてね。」
だからこの世界に来たって私が恋愛する事なんてない。きっとね。そもそも乙女ゲームに転生してそっと見守る位の立ち位置が良かったのに、まさかのヒロインだなんて。高校生になったらとにかく目立たないようにしよ。デッドエンドだけは選びたくないし。悠斗君ルートしか分からないし。
「いや!うだうだ言っても仕方ない!全力で楽しむぞ!おー!」
「菖蒲、寮に移る準備はできてるの?1人部屋だしゆっくりできていいわよね。」
「え、お母さん何の話?」
「何の話ってあの学園は寮でしょう。」
「寮?」
「寮。」
「え、やだ。」
「いや、寮よ。3年間。」
「近いじゃん、なんで?」
ゲームにそんな設定あった?いやないぞ!
「できたのよあなたの年から!それで大人になる前にそういう事を経験させるのも良いわねってお父さんと相談したの。だからお兄ちゃんも2年から寮よ。」
「う、嘘だ!」
「もう決まった事だから準備なさいね。」
と言い残し笑顔でいってしまった。くそうっ!なんてこったい。寮生活なんて……。絶望的だ。




