定食屋
「先輩ビビり過ぎですよ」
『ぜ、全然ビビってなんか無いんだからね』
「どう見てもビビってますって」
『そうだよ。もうかなりビビってるよ』
「そんなにビビるんなら来なければいいじゃないですか」
『だってここの定食屋が好きなんだもん』
「耳を塞げばいいんじゃないですか?」
『そんなことしたら余計に楽しく食べられなくなるでしょ』
彼女はこの定食屋が大好きだ。
そしてこの子持ガレイの煮付け定食が大好きだ。
でも彼女は、この定食屋で子持ガレイの煮付け定食が注文される度にビクッとなる。
それは彼女の名前が友近玲だからだ。
【子持ちガレイ】と【友近玲】
物体としては似てないが、発音が似すぎている。
「子持ちガレイ定食3つください」
「はい、かしこまりました。『子持ガレイ3』」
『今のはどっち?』
「カレイの方ですよ」
『本当に?』
「はい。子持ちガレイ3って言いました。友近玲さんとは呼んでませんよ」
『そう。よかった』