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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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59 記録石の間違った使い方

 

 そう提案してくるクルシアに当然の疑問を投げかける。


「これはどういう効果がある魔石なんですか?」


「これはねぇ、記憶石って呼んでるものだよ」


 名前から想像するに便利そうな印象を持つが、運び屋であるバトソンはさらに驚く反応をする。


「これが記憶石かい!? ほぉ〜……」


 少し興奮した面持ちでそれを見る。


「知ってるの? バトソンさん」


「ああ。噂にしか聞いたことはないが、貴族とかが買い求めると聞いているよ」


「貴族が? 何で?」


「夜の営みを記録したりする趣味のいい貴族が買うんだって。だから、結構ぼったくれるって言ってたよ」


 悪〜い顔でクルシアはわざとらしい言い方で話してみせる。俺は少し想像してしまい、頰を赤らめ恥ずかしいそうに、


「あっ……そ」


 そっけない返答をした。


 今の話を聞くあたり、カメラで動画を撮るイメージだが、取引をする以上、訊くところは訊かなければならない。


「それはいいとして、効果を説明してよ!」


 クルシアはケラケラと軽く嘲笑うと説明を始めた。


「はいはい。これはね、周りの空間を記録できる魔石だよ。使い方はまず、これに魔力を一定量流し込む。すると、これが少し光って記録を始めるよ」


 この感じだと、都合良く止められないのだろう。元いた世界のカメラとは違い、文明の違いを思い知る。


「その注いだ魔力が尽きるまで、記録を行うんだ。その後は記録はできなくなるけど、次に魔力を込めると記録されたものが見られるよ」


 要するには録画だ。だが、カメラと違って空間というのが気にかかる。


「記録できるのは空間と言ったけど、この魔石から半径数メートルくらいを隈なく映像として記録できるって事?」


「そうだぴょん!」


 ウサギ耳が生えているように手で仕草を取る。だから、仮にも二十歳超えてるならそんな事するな。


 正確にはもう少し広い範囲を記録できるとのこと。カメラの場合はレンズ越しに写したものをモニター越しに見ることしかできないが、これは映像を映し出すと、幻影となって記録したものが現出するらしい。


 正直、衝撃的な効果だ。ありとあらゆる角度から見られるというのは大きい。


「……これ、スゴイですね」


「えっと、つまり?」


 ここまで聞いても少し考えが追いついてないアイシアに今一度説明する。


「要するに、ここは一つの部屋です」


 自分の杖を取り出し、地面に四角の形を書き出し、それを部屋と認識してもらう。


「この真ん中にこの魔石を設置。魔力を一定量注ぐとその魔力が無くなるまで、この部屋を記録し続ける。記録を終えると、今後この魔石は記録はできないけど、魔力を注げば記録した映像が出て、この記録されたありとあらゆる場所を歩いたりして確認できる……って事だよね?」


 クルシアに確認を求めるが、何やらバトソンを除く若い男衆が屈んでひそひそと話し込んでいる。


 俺がアイシアに図を描いて説明している間にクルシアはアソル達に呼びかける。その呼びかけに応じ、屈んで身を寄せる。


「何だよ……」


 説明を聞くのが面倒臭かったのか、ラッセは投げやりの言い方で突っぱねる。それに対しまあまあと宥めながらクルシアは話を始める。


「これは男の子にとってすごくいい物なんだよ」


 とそろっと悪巧みをするように魔石を見せる。


「というのは?」


「これをランプ用の魔石とすり替えてみなよ。シャワー室の……」


「!!」


「女の子があられもない姿でその魔石に魔力を注いで使おうとしてみなよ……壊れたと思って沢山注いでくれるはずだよ。しかも、これはぼんやり光るからね……」


 話を聞く三人は息を呑む。


「しかも、これは記録された映像をどの角度からでも見ることができるんだよ! そう! どの角度でも……」


「ど、どの角度でも……」


 ラッセとクリルはやらしい目つきでクルシアに確認を取る。それに応えるようにさらに二人に顔を寄せ、悪いお代官様のようなに答える。


「そう。どの角度でも、どこからでも……だよ♩」


 実に楽しそうに話す。それに対しアソルは耳まで真っ赤にして注意する。


「ダ、ダメだよ! そんなの! そんな事に使っちゃあ――」


「バカ言ってんじゃねえよ! 最高じゃねえか」


「う、うんうん」


「これは男の子にとって最高のアイテムなのさ!!」


「へ〜……それは実に楽しそうだねぇ〜」


 屈んでいたからなのか、話に夢中だったのか、途中から話を聞いていた俺に気付かなかった。


 俺に気付いた四人はこちらを向き、クルシアを除く三人は青ざめた表情で見る。クルシアは、


「あ……てへ♩」


 とぼけてみせた。


 ゴッ!!


 男四人の頭を殴りつけた。中身が男の俺としては女の裸を見たいという欲求はわからんではないが、それは立派な盗撮だ。盗撮は犯罪! やってはいけません!


 まあ、貴族達は合法的に記録するんだろうが、どちらにしてもロクな使い方じゃない。こんな使い方以外にも有効な使い方はいくらでもあるだろうに。


「いってぇ……」


「何で僕まで。止めたのに……」


「いったぁ!! たんこぶできたらどうするのさぁ」


 四人に対し、両手を両腰に当てて、ずいっと顔を寄せて言い放つ。


「それは盗撮! 犯罪です!」


「……覗きは感心しませんよ」


 その様子を見に来たリュッカも呆れた様子だ。

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