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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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51 はっきりしないゴーレム

 

「あれは隊長さんが言った通りなら、あれはルーンゴーレムだよ。ランクはA。かなり危険な魔物だよ」


 魔物の危険度はまだうまく把握してないが、高い事は分かる。でも、あんなに大きかったら、すぐに気付くもんじゃないかな?


「ルーンゴーレムは自然発生するゴーレムと違って、人工的に作られた魔物なんだよ」


「は? あれが人工的に!?」


 走って馬車に向かいながらゴーレムを指差す。


 あんなものが人工的にとかふざけている。作っている間にバレるだろ!


「正確に言えば召喚魔。多分、本体はあの中だと思う――」


 何でもルーンゴーレムの正体は魔石そのもの。おそらく襲う場所に近づくと周りの岩や土などを身体として構築してきている。


 ルーンゴーレムの魔石に魔術式を組み込む事で構築した身体に魔術が施される仕組みだ。


 その施された魔術によって強さが変動する。優れた魔術師がこのゴーレムを作れば、一体で国一つ滅ぼすのも容易いだという。


 ただ、そもそもゴーレムは地属性の魔術師しか作れない、ルーンゴーレムの魔石の加工が複雑と作成自体が難しい為、ランクはAとの事。


 要するに遭遇自体が稀なのだ。


「――てことは何? あれはここの騎士を攻める為に来てる可能性があるって事?」


「多分……」


 あのゴーレムが人工的に作られている。しかも、ルーンゴーレムは作成が難しいことから、優秀な魔術師もしくは集団的に作られた可能性から、何処かの国、もしくは何処かしらの組織が絡んでいる可能性が高い。


 だからあんな剣幕で対応してたのか。そう思って少し振り向くと発射音が聞こえる、魔法攻撃を開始していた。


 距離がまだ少し遠いのかあまり効いていない様子。ゴーレムの歩く地鳴りの足音が変わらない。


 でも、あれだけの火力にも対応したゴーレム。確かにここは逃げた方がいい。森の中の魔物も荒くなっている可能性もあるが、あんな巨大兵器みたいなヤツとやり合うよりマシだ。


「バトソンさん!!」


「ああ……リリアちゃん、早く乗って!」


 バトソンは珍しく声を張り上げる。荷馬車に入ろうとすると布の仕切りをかき分け、ひょこっとザーディアスが顔を出す。


「おい……何事だ? ドンドンとうるせぇな……」


 ほろ酔い状態のザーディアス。そのおっさんを荷馬車に戻そうとするラッセとクリルの姿もあった。


「おい! おっさんダメだって……」


「今はヤバイですから!」


「うるせぇな……ちょっとくらい、いいだろ」


「いいからおっさんは入ってろ!」


 俺はザーディアスを荷馬車の中へと押し込む。だだんと倒れ込む音が聞こえる。


 だが、俺達も乗り込もうとした時、ザーディアスは何か思い出したように目をパチっとさせる。


「ちょっと待てよ……」


「何やってんだよ、おっさん。あれは騎士にまか――」


「ああああーーっ!!」


「――ちょっ! 何!?」


 急に大声を出したかと思うと素早く荷馬車から飛び降り、騎士達の元へ駆けていく。


「ちょっと、おっさん! ……私、追いかけてくる。みんなはここで待ってて!」


 様子が変わったザーディアスを追いかけようとすると、アソルが待ったと肩を掴む。


「僕も行くよ」


「いや、でも……」


「女の子一人では行かせられない」


 正直、悩んでいる時間もない。あのおっさんは強いがあれを相手にするのは流石に無理だろ。


「……分かった。行こう!」


 リュッカ達の止める声も聞かず、俺達二人はザーディアスを追いかけた。


 ――騎士部隊は魔法攻撃を続けている。前衛部隊は魔法攻撃を行っている後衛部隊の護衛だ。


「くっ……流石にあの大きさのゴーレムは厳しいか……」


 高層ビルほどの大きなゴーレム。余程の高出力魔法攻撃でないと倒れもしないだろう。


「それにあのゴーレム、魔法攻撃もある程度弾いています」


「ああ、そのようだが、引くわけにはいかない!怯まず攻撃を続け――」


 イケメン隊長が勇ましく命令をしようとしたその時。


「――ストォーーーープッ!!」


 その大声に騎士達は振り向く。ザーディアスは攻撃を止めるように言う。


「騎士の兄ちゃんら……ストップ、ストップ」


 騎士達の側に着くなり、どうどうと落ち着けと促す。


「何故お止めになるのです。避難をなさるよう言ったはずですが……」


「まあ待てよ兄ちゃん。もしかしたらあれ……うちの知り合いのもんかも知れない」


「はあ……はあ……おっさん、速いよ……」


 俺達もおっさんに合流する。アソルも息切れている。


「君達! 何故戻ってきた!?」


「いや、このおっさんが走っていくから……止めに……」


「騎士の兄ちゃんら、ちょっと攻撃をやめてくれ」


「しかし……」


 顔をくいっと動かし、ゴーレムを示す。


「それによく見てみろ。奴の大きさからそろそろ反撃があってもいいだろうに、攻撃の意思を感じないだろ?」


 ふとゴーレムを見る。確かに前進はしてはいるものの、一心不乱に歩いている感じだ。


「おっさん何か知ってるの?」


「ほら、言ったろ。お前さんらとは別に仕事してるってよ」


「ゴブリン狩りの事?」


「そうそう、それだ。その依頼主が地属性の天才魔術師なんだわ」


 ゴブリンから出る魔石が欲しいっていう変り種だって話だったか……そんな話を思い出す。


 その話を側聞きしていたイケメン隊長が尋ねる。


「その魔術師が作ったゴーレムだと?」


「おう。おそらくな」


「おそらくって……」


 騎士部隊はザーディアスの言う通り、一先ず攻撃を停止。ザーディアスはちょっくら確認してくるとたんっと軽く飛んでゴーレムの方まで向かっていった。


「こんなゴーレムを作る依頼主ってどんなヤツだよ……」


 ――少ししてゴーレムに動きがあった。


「動きが止まったぞ」


 ザーディアスが森の中へ姿を消した所の直線上辺りだろうか。さっきまで前進せていたゴーレムが停止した。


 するとゴーレムはゆっくりと跪き、右手の平を広げて差し出す仕草を取った。


「何が起きてるんだ……」


「おそらくだが、ザーディアス殿の知り合いのゴーレムというので正しいのであれば、今現在、ザーディアス殿はゴーレムと接触しているのではないか?」


 人工ゴーレムは基本、主人には忠実とのこと。ザーディアスとの接触が目的なら、動きを止めた事にも頷ける。


「とはいえ油断はできない……警戒態勢を怠るな!」


 その命令に身構える騎士部隊。俺達も思わず身構える。


「おい! 何だ!?」


 騎士の一人が声を上げる。ゴーレムの右腕がゆっくりと上がっていき、振り下ろす態勢に入った。その様子を見た魔術師が呪文を唱えようとする。


「待て! だが、警戒は続けよ!」


 怒鳴るような声で待ったをかける。ザーディアスを信じての命令だろう。このイケメン隊長、いい人だ。


 攻撃を止めたのは正解だったのだろうか、その振り下ろす態勢のまま、ゴーレムは止まってしまった。


「一体、何なんだ?」


 このはっきりしないゴーレムの動きにやきもきしていると、森の中からザーディアスが姿を見せた。


「ザーディアス殿! 無事でしたか?」


「おう、兄ちゃん。悪いな、心配かけて」


「で? 結局、依頼主だったの?」


 あのゴーレムの意図を尋ねる。こちらはどうすればいいのか分からないんだ。はっきりしてほしい。


「そうだったんだが、まあ、その……なんだ……」


 こちらもゴーレム同様、歯切れが悪い。イラッとしたので怒鳴る。


「何なの!! はっきり言う!!」


「あー分かったよ、銀髪嬢ちゃん。そんなに怒るな。あれだ……お前さん達との旅はここまでだ」


「……は?」


 急にさよなら宣言されてしまった。

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