50 迫る巨人
「――そろそろ寝ようか」
ひとしきりお喋りをすると疲れてきたのか、二人はウトウトとしている。
「ふわぁ〜……そうだね」
あくびも出た。俺は向こうの世界にいた頃は、夜更かししてゲーム三昧だったから、まだ眠くないが、この世界には娯楽がなさ過ぎる。そういう意味では向こうが恋しい。
魔石の入ったランプを消し、寝袋へ入る。キャンプみたいな生活が続いてたせいか、家内での就寝は不思議と安心する。
――灯りを消して少し経ってからであった。何やらズズーンと大きな地鳴りのような足音が聞こえ、揺れる。心地いい具合に眠気が来ていたのを邪魔される。
「……ん……何だ……?」
眠い目を擦り、のそりと起き上がる。少し外が騒がしく聞こえる。すると、誰かが激しく扉をノックする。
「何?」
「……どうかしたの?」
その音で二人は目を覚ます。急を要する激しい音に俺は足早に扉へ向かい開けた。
「どうかしたんですか?」
そこには焦った様子のアソルがいた。
「寝てるとこごめん! でも、緊急なんだ!」
「その様子見れば分かるよ。で? 何があったの?」
「向こうの方から巨大ゴーレムが来る!」
ビシッと指差す方には大きな黒い影があった。月明かりを明らかに遮っている人型の影……さながら巨人のようだ。
「ゴ、ゴーレム!?」
まだ距離はあるが、こちらに迫ってきているのが分かる。木々が次々と激しい音鳴らし折れて破壊されている。
「とにかく外へ!!」
アソルに言われるがまま、素早く支度を整えると外へ。そこには慌ただしく騎士達が戦闘準備をしている。
「前衛部隊は前へ! 戦闘態勢を整えろ! 魔法攻撃部隊は呪文詠唱準備!」
名も知らぬイケメン隊長が勇ましく指示を出す。そんな彼はこちらに気付く。
「君達! こんな時間にすまない。でも、見ての通り緊急事態だ。君達はこの場を離れ、避難するんだ」
「避難って……おっさん達は?」
「荷馬車にいるはずだよ。クリルが向かってるよ」
遅い足取りだが、確実に迫ってきている。すると、イケメン隊長に真剣な表情で隊長と同じ歳くらいの青年が報告にくる。
「隊長! 戦闘態勢整いました! しかし、対城壁魔法が使えるものは少ないので戦力が乏しいですが……」
「構わない。しかしどうしてゴーレムなんて。しかも、ルーンゴーレム……」
「ルーンゴーレム?」
よく見ると何やらゴーレムの身体に水色の文字のようなものが光って見える。
「確かにあれはルーンゴーレムですね……」
リュッカも分かっている様子だ。只ならぬ表情で向かってくるゴーレムを見る。
「君達はとにかく、自分達の馬車へ向かうんだ!」
そう力強く言われるとバトソン達が待つ馬車へと向かうことに。だが、あれのヤバさも知っておきたい。
「ねぇ、リュッカ。ルーンゴーレムって何?」
迫り来る危機を脱する為に必要な情報が必要だとリュッカに尋ねた。




