47 モテる男の極意とは
「さあ、こちらですよ」
イケメン隊長、わざわざ扉を開けてくれた。これが紳士というものか。俺が男の頃だったら、きっと恥ずかしくて出来ない。これが、できる男の嗜みか!
開けてくれた部屋の中は割と質素な造りだった。まあ、迷宮に入る前の滞在期間用ならこんなもんだろう。
ちょっと硬そうなソファーだろうか、座る場所と荷物置き用の籠があるくらい。
「あっちの仕切りの向こうに簡易シャワーがあるよ。自由に使ってね。後、結界も貼ってあるから多少の事が起きても大丈夫だから」
「それって覗き防止もあるんですか?」
一応、あのバカ共を警戒。これだけの騎士とおっさん達がいるから大丈夫だとは思うけど、念の為。
「大丈夫だよ。そういうのにも対応した結界だよ。それに我々は誇り高き騎士だ。誓って……そんな事はしないよ」
「す、すみません、騎士の皆さんを疑ってる訳ではないんです」
「いや、謝らなくてもいいよ。女の子だからね。これだけ男がいるんだ、当然の指摘だよ。実際、そういう意味で建てられた訳だし……」
イケメン隊長が気軽に話を弾ませる。まあ確かに騎士と聞くと男のイメージはどうしても拭いきれない。アニメやゲームじゃ女騎士も珍しくはないが。
「長話をするのもいけない。疲れているだろう? ゆっくりお休み下さい。では」
そう言うと極力静かに扉を閉めて出て行った。
この歩くモテ要素はなんだろう……ところどころから、できるオーラが滲み出ている。きっとこれがモテ男。俺にはなかったものをまるでドスドスと矢で貫かれ教えられているよう。
……なんだろう……涙が出てきそう。
「ステキな隊長さんだったね!」
「そうだね。とっても優しく対応してくれたし……」
二人はテンションが高い。よく向こうの世界で見た、女の子がきゃっきゃして騒いでいる。
この二人の反応を見ても、やっぱりモテる男とはそうなのかと実感が湧く。
「リリィもそう思うよね?」
「えっ!?」
中身が男の俺としては特に興味がない……どころかちょっと嫉妬すらしている。何だあの紳士的対応。狙ってるのかと思うくらい爽やかだった。
あんなのが自然に出来る男なんて数えるくらいしかいないだろ! むしろ不自然だわ!
だが、彼女達はおそらく同意を求めての質問。
「そ、そうだね〜。良かったよね〜」
苦笑いを浮かべながら少し棒読みに答えた。その答えにだよね〜とさらに話が弾んでいく。
俺としては早くシャワーを浴びたいんだが。何せここのところ、まともに水浴びすらしてない。正直、限界。
「あ、あのさ……」
「何?」
「先にシャワー、使ってもいい?ほら、一人用だろうし……」
「そうだね、ごめんね。話ばっかりして……」
「ううん。じゃあ先に使うね」
「それじゃあ私はザーディアスさんのところに行ってくるね。晩ご飯の事、聞かなくちゃ」
荷物から着替えを取り出して、仕切りの向こうへ行く。そこには個室のシャワールームがあった。
……正直、助かった。これがもし、普通のお風呂とかだったら、アイシアあたりが一緒に入ろとか言いそう。
リリアの裸はともかく、他の女の子の裸……ましてや友達になってくれた娘の裸を直視するのは、罪悪感が半端じゃない。
ふうと安堵するため息をつくと脱衣所からシャワールームへ入っていった。




