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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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43 全力で生きる

 

「銀髪嬢ちゃん……どうだ?」


「異常ないよ」


 俺達はおっさんから教えてもらった感知魔法を実践中。


 この感知魔法は詠唱の必要が無い無属性の魔法。というのも自分の体内魔力を活性化させて外の魔力に干渉。そこから外の魔力の異常を感知できるというもの。


 魔物はこの世界の魔力事情の要な為、膨大な魔力を魔石に秘めている。なので、感知できるという事。


 だが、この感知魔法は精神型の方が正確だ。何せ魔法を発動する際、周りの魔力に深く干渉する為である。つまり、慣れである。


 熟練した魔術師やザーディアスのような実力ある肉体型なら、瞬時に感知魔法が発動できる。鍛錬の賜物とはこういう事である。


 ちなみに属性を乗せることで、感知能力も変わる。なんとも臨機応変に対応出来るのが無属性魔法の特徴と言えるだろう。勿論、術によるが。


「シアちゃんも異常ないか?」


「ないよー」


「……すみません。私は上手く出来なくて……」


 他二人は出来るのにとしゅんとヘコむリュッカ。


「何、嬢ちゃんは肉体型だろ? 本来なら精神型の二人の方が出来るのが普通なんだ。むしろ出来なきゃ魔術師の才能無しとまで言われる」


「そ、そうなんですか!? じゃあ私は――」


「おいおいおい!? 嬢ちゃんがそんなに落ち込むこたぁねぇの! ……何でも出来りゃあいいってもんじゃねぇのさ。嬢ちゃんには嬢ちゃんの出来る事をやればいい」


 自分の事をだいぶ悲観しがちなリュッカを励ます。そんな中、俺とアイシアは何かを感知する。


「おい! おっさん」


「……何かくるね」


「おっ……! やれば出来るじゃねぇか。エライエライ!」


 おっさんも気付いていたのか、わしゃわしゃと俺とアイシアの髪を無造作にかき回す。


「止めろ、おっさん! そんな事してる場合か!? 数、結構いるぞ……!」


「バトソンさん! 馬車止めて!」


「ああ、分かった」


 魔物が襲ってくると感知した時、この森の中では馬車を止めて対応する。


「あんた達は引っ込んでて!」


「私達がやるから!」


 俺とアイシアは荷馬車から飛び降りる。その後、リュッカも降りてくる。


「よし、頑張るよ!」


 意気揚々と戦闘準備する女子三人。だが、一応男のプライドが許さなかったのか、止めに入る。


「そ、そりゃあ……その情けない限りだけど、やっぱり! その……」


「あんたには悪いけど、あんな危なっかしい戦い見せられたら、任せられないよ」


「……っ!」


 悔しそうに歯ぎしりを立てるアソル。他二人はささっと荷馬車へと避難する。


 やはりアソルだけはまとものようだ。他二人は悪びれもせずに女の後ろに隠れる。


 俺も男だった時、別にここまで正義感も使命感もなかったよ。それは否定しない。でも、ラッセ達みたいな臆病者ではないとも言い切れる。


 女の子が……人が困ってたら助けてあげる。力になれなくても祈っては挙げられる。それぐらいの小さな優しさくらいできる人間ではあるよ。俺は!


 だから、男としてアソルの悔しい気持ちは分かる。そりゃそうだ、女の子に守ってもらうなんて……カッコ悪いもんな。


「……だけど、あんたはまだマシみたいだからさ、次は一緒に戦ってくれる?」


 アソルの俯き悔しがる表情がゆっくり解けていく。


「あ、ああ! これ以上、情け無いところなんて見せるもんか!」


 何かを決意した男の目だ。あっちの世界じゃこんなやる気のある目をするヤツっているのかな?


 少なくとも俺の周りにはいなかったと思う。習慣的な生活の中にこんな目をするほどの出来事なんてそうそう無い。俺だってそうだ。


 そんなの夢を全力で追っているヤツだ。今を全力で生きてるヤツの事だ。そんなヤツはきっとこんな目をしている。


 今の俺はどうだろう? 一人、誰も知らない世界で生きていくと決めて、その世界で新しい出会いをして、その友達と共に魔物と命を賭けて戦う……。


 大袈裟だって言うヤツもいるかも知れない。そりゃあ大袈裟さ! 命を奪いにくる魔物と戦うんだ! 大袈裟にだってなる。


 でもこれも全力で生きるって事だろう。不謹慎かも知れないが……異世界って最高だ!


 本当に不謹慎だ。今から魔物と戦うのに高揚感がある。一応おっさんが後ろにいるとはいえ、Sランク(おっさん)抜きでの初戦闘。


 ここまではおっさんの後ろで魔法を撃ってただけ、ホワイトグリズリーは不意打ち、まともな戦闘はこれが初めて。


 バンバンと聞き覚えのある足音が聞こえる。跳ねるような音だ。


「――来るぞ!」


 俺達、三人はしっかりとした眼差しで戦いに臨む。

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