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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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39 体内魔力

 

「……美味しかったのに、なんか気持ち悪い」


 シチューの感想を述べるアソル。あの凄まじい光景を見た後にその肉のシチューを食わされれば、そんな感想も出てくるだろう。


 さらにリュッカは美味しくなるからとトマトで煮込んだ為、アイシアを除いた一同の食欲が落ちたのは言うまでもない。


「女って怖え……」


「はは……おじさん、今まで生きててこんなにつらい食事は初めてだったかも……」


 ラッセもこれで流石に襲おうとは考えないだろ。荒療治にもほどがある気がするが……。


 これ以上、この空気でいるとシチューを連想し続ける気がしたので話題を変える事にする。


「で、でもおっさん強かったね。走りながら魔物をボコボコに……か、カッコよかったよ」


 思わず絶対口にする事はない言葉が吐き出る。


「そ、そうだろ〜。おじさんカッコよかったろ〜」


 ザーディアスもこの空気と言われ慣れない言葉に動揺を隠せず、いつもの余裕がある喋り方ではない。


「でもホントですよ! ザーディアスさん、カッコよかった〜!」


 アイシアが俺の感想に乗っかる。


「あそう、そうだよね〜おじさんカッコよかったかぁ〜……いやぁおじさん照れるな〜」


 女の子二人に褒められ気分が良くなったのか調子を戻し始めた。


「ま、伊達にSランクじゃあねぇからな……惚れた? 惚れちゃった?」


「調子に乗るんじゃない!」


 ぼかっと軽く殴る。


「しかし、銀髪嬢ちゃんもやるじゃねぇか。あの時の闇魔法は中々良かったぜ」


「ありがと……だけどおっさんも随分強かったね」


「何? また褒めてくれるの? おじさ――」


「調子に乗るな!」


 今度は強めに殴る。このおっさんに訊きたい事を改めて尋ねる。


「おっさんはさ、どうして走りながらあんなに戦えたの?」


「そりゃお前、魔力操作を上手くやりゃあ……あれぐらい余裕だろ」


「魔力操作?」


「あ、あの……」


 その話を小耳に挟むリュッカが食いついてきた。


「コツとかありますか? 私も肉体型なんです」


「ほう、嬢ちゃんはそうだったか。てっきり銀髪嬢ちゃんと同じ、精神型かと……」


 肉体型? 精神型? 何の話だ? 魔法を使うことに一生懸命で大まかにしか確認していなかったからな。


「あっ! 精神型は私です。リュッカは騎士科、私は魔術科に入学するんです」


「王都の学園には通うって聞いちゃあいたが……そっか」


 同じ学園に通うのに知らないのはアレだと恥を忍んで聞いてみる。


「あの、肉体型だの精神型だの何?」


「……」


 少し沈黙が流れる。だがすぐに冗談だろと笑われた。


「そこまでの使い手のくせに、知らないなんて冗談だろ?」


「そうだよ、リリィ」


「……悪かったね」


 彼がこの世界に来て、まだ数日しか経ってない。体内魔力など詳しい魔法原理は全て把握などしていない。勿論、この世界では初歩的なものでも。


「じゃあ、おさらいしようか」


「そうだね。せっかくだし……」


「嬢ちゃんのためにもな……ぷっ」


 俺をバカにするような視線で見る。しかも小さく笑った。


「おっさんは……黙っててくれない?」


「お、おう」


 杖をゆっくり懐から出す仕草をすると黙ってくれた。


「えっと、体内で操る魔力の事を体内魔力って言うのは――」


「流石にそれは知ってる」


「ああ、うん、そうだね。で、体内魔力には二種類の操作型があるんだよ」


「それが肉体型と精神型」


 呼び名を聞くだけでもある程度、想定はできるが、当たっているか分からない以上、訊いた方がいい。


「そう。肉体型は体内魔力を身体に馴染ませて筋力、体力、瞬発力などの影響を受けやすい体質の人のことを指すの」


 つまりは肉体強化の魔法が無くても肉体型の才能がある人間は、従来の人間より遥かに強い力で戦えるわけだ。


「精神型は基本、体内魔力を術に込めやすい体質の人を指すの。リリィはこのタイプだね」


「なるほど……」


 この世界の人間は属性だけでなく、体内の魔力タイプでも才覚が別れるのか。


 酷な話だ、そんなの将来なんて決められてるようなもんじゃないか?


「だが、あくまでそういう体質ってだけだ。鍛えようによっちゃあ、おじさんみたいに万能な戦い方ができるんだよ」


 ザーディアスはアイシアの説明に補足をつけた。それに驚く一同。


「えっ!? そうなんですか? 教科書にはそんな事――」


「ちっちっちっ……教科書に載ってる事が全てじゃねえのさ。つか嬢ちゃん達は高等部なんだろ? そこで言われるんじゃねえか?」


「おっさん……万能って言ったけど、おっさんも私みたいな魔法使えるの?」


 当然の質問だ。ザーディアスは近接での戦闘こそ行っていたが、魔法は使っていない。


「おう、使えるぞ。つかおじさん――」


 ずいっとこちらに寄る。


「闇属性持ちだから……」


 一同、目を丸くする。


「ええええぇぇっーー!!」


 森の中に若人達の声が響き溶けていった。

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