34 衝撃的な朝
「――きゃあああ!!」
朝、悲鳴から始まる。まだ、眠い目を擦り、呑気に大きくあくびをする。
何故こんなに冷静かって? 悲鳴の原因が分かっているからだよ。
「あっ! リリアちゃん!!」
「リリィ……!」
二人は縛られた二人を見てあわあわと慌てている。だが、そんな二人の心境もさるや呑気に朝の挨拶。
「……おはよう」
「おはよう……じゃないよリリィ!! まだ、寝ぼけてるの!?」
アイシアに激しく揺さぶられる。そんな中、悲鳴を聞いてか外から声が聞こえる。
「何かあったの!? ラッセ達もいないようだし……」
動揺を隠せずに話すアソルを横目に、入るぞとおっさん。
断りもなく女の寝床に入ってくんなよ。あんたはある程度どうなってるのか想像ついてるだろ。
「ははっ! こりゃあまた派手にやったな! 銀髪嬢ちゃん」
「……ったく、このおっさんは……」
ザーディアスは縛られた二人を見て大笑い。アソルとバトソンはポカンとしている。
「こ、これは一体……」
俺は事の顛末を説明する事に――。
「本当に申し訳ありませんでした!! ほら、お前達も謝れ!!」
「申し訳……ぐすっ……ありません……でした」
「……さーせん」
「――ラッセ!!」
いつもの優しい感じはない。今まで見た事ない剣幕でラッセを叱る。
「ごめんなさいでした!!」
三人とも土下座して謝る。この異世界にも土下座ってあったんだ。
「まあ、やんちゃな事はいい事だ。な、銀髪嬢ちゃん?」
「……おっさんは全身縛ろうか?」
懐から杖を取り出す。
「嘘だって嘘嘘。おじさん怖〜い」
ふんと鼻息を軽くすると、俺は二人にも注意する。
「リュッカ達は随分信用してたみたいだけど、もし私やおっさんが居なかったらこの二人に襲われてたんだからね」
「う、うん。リリィがギルドで反対してた理由が分かったよ」
「ごめんねリリアちゃん。また迷惑かけて……」
いやいやと再び頭を下げるアソル。
「全面的にこちらが悪いんだ。君達が彼女に謝る理由なんて無い。本当に申し訳なかった」
深い誠意を見せる彼を見て、言葉をかける。
「アソルさんこそ、そこまで謝る事ないよ。そういう誠意を見せなきゃいけないのは、そこの二人だよね? ちゃんと反省……してくれた?」
ギロッと睨み、怯えさせるとぺこぺこと謝った。
「してます! してます! 本当にごめんなさい」
「もうしません!! だから……許して?」
「あ?」
「ひっ……」
コイツ、まだ反省してないな。ったく……。
「当面はこの二人も見張っておくのでご安心下さい。ザーディアスさんにもお願いしていいですか?」
「……しょうがねぇな。ガキのお守りなんざしたくないが、断ると銀髪嬢ちゃんが怖えからな」
面倒くさそうに頭をかきながら話すザーディアスに無言の笑顔を見せる。
「……マジで怖えから止めろ、その笑顔」
「でもそっか。だからリリィ、寝る前に何かしてたんだ」
「やっぱりすごいねリリアちゃん。私達だったら気が付かなかったよ。今度から気をつけようね、シア」
中身が男の俺だからこそ過剰な警戒をしたとも思うのだが、ここの女の子はこんなにも警戒心というのがないのだろうか?
「……疑い過ぎるのも良くはないけど、ちゃんと警戒はするんだよ。今回の事、教訓として学んでね」
「うん! 分かった」
「ありがとう、リリアちゃん」
心配そうな横目で見るそのアイシアの表情は、無邪気な笑顔だ。
はあ、分かってるのかねぇ。
「苦労が絶えんな。銀髪嬢ちゃん」
「……そう思うなら、最初から止めろ!!」
人ごとみたいに言い放つおっさんに足蹴りをかます。おっさんにとっては人ごとだろうが。
「――痛っ!」




