05 遺書
遺書とは――死後に家族や友人、知人などに言い残した言葉、メッセージなど書き記すもののことを示す。
鬼塚 勝平は自分の身体となってしまった少女の遺書を手にしている。その心境は複雑なものだ。
ここが何処だかわからないが、魔法陣らしきものがあるのだ、ここは異世界であろう。
挙句、元々女の子ぽかったとはいえ男だったのに、性別は変わり女の子になってしまった。
そこから更にこの身体の元々の持ち主が自殺志願者だったとは、常識的な神経の持ち主にはキツい現実だ。
「…………」
ひどく複雑な心中を落ち着かせる為か胸に手をやると柔らかい感触がする。
「――おおっ!? あ、あれっ? あ……」
男だったら無い、たわわに実った胸を触った。思わず顔を真っ赤にして一人、手を離し、わたわたと慌てる。
彼女いない歴イコール年齢は伊達ではない。
だが、おかげで少しは冷静になった俺は、今一度深呼吸を行う。
「すうーっ、はあーっ! ……よし!」
そして今一度、遺書に目を通す。
彼女の心の中にある闇が記されているなら、余計なお世話かもしれないけど、受け止めてあげよう。こんな美少女の気持ちを受け止めるだなんて出来ないことだろうからね。
前向きに物事を考えると意を決して遺書を読み始める。
『拝啓、パパ、ママ、先立つ不孝をどうかお許し下さい。私はこれから先を生きていく希望が持てません』
この娘、パパママ呼びなんだ。益々可愛いな。なんて不純なことを考えながら続きを読む。
『せめてこの世界に貢献できるよう、この哀れな魂を魔力にすることで逝きたいと思います』
えっ!? 魂を魔力に! どういう事だ?
いちいちツッコミを入れる主人公ですがお許し下さい。
『私のような不幸な人生を歩む者がでないよう、これを残します。私はどうやらおかしな体質の持ち主のようです』
自殺の原因はそれかな? 家族に迷惑をかける体質なら後ろめたい気持ちが限界を越えれば、そういった行動を起こすものだろうか。
家族はそんな事、きっと気にしないだろうに。
『そのせいで私はひそひそと後ろ指を指され始めます。学校には馴染める訳もありませんでした。いつも独りぼっちでした』
これだけの容姿の持ち主でありながら、その体質のせいで周りから陰口を叩かれていたなんて。
『ある時はクラスの女の子に呼び出され、調子に乗るな! と身に覚えのない文句を言われ……』
そっか……うん、うん。
『ある時は顔を真っ赤にした男の子から好きです! 付き合って下さい! といった私を困らせる遊びが流行化したりもしました』
…………ん?
皆さん、ここから様子がおかしくなります。