31 茶番と茶番
「ほう。見張りを買って出てくれるのか?」
「はい! そりゃもう!」
機嫌を取るように明るく話してみせるラッセ。俺にはどう考えても見張りを買って出ると言った時点で魂胆が見え見えである。
コイツ、学ばないのか? バカだろ。
「この娘には悪いことしたなってずっと馬車の中で反省してたんだ……本当にごめんな」
ちらっとリュッカを見ると、信用してもらおうと同情を買うような喋り方をする。
その様子を見たリュッカは疑いもせずに素直にお礼を言う。
「いえ、ありがとうございます」
「だから、せめてもの罪滅ぼしに見張りを買って出ようかと――」
「魂胆が見え見えなんだけど……」
こんな子供でもわかるような茶番を終わらせようとラッセの言葉を遮る。
ほーら、顔が引きつってるよ。
「こ、魂胆〜? な、何のことだか……」
目が泳いで声が上擦って動揺している。誤魔化すの超下手だな。
「まあまあ、いいじゃねぇか。おじさんはそれでいいぜ」
「は? おっさん!?」
ザーディアスは何故かラッセの要望を受けるようだ。
「ありがとよ、ザーディアスさん!」
「なぁに、俺達おじさん達は夜は応えるからね。見張りは若いのに任せるに限る。なあ?」
「えっ? ええ……」
バトソンさんは便乗するように生返事をする。やっぱり気付いてないのはこの二人とそこの真面目そうな茶髪剣士さん。
アイシアとリュッカは何故揉めているか分からずきょとんとし、アソルは見張りをやる気満々のようだ。
「おっさん……?」
「ちゃんと反省した証ってのをちゃんと証明してくれるらしいしな」
こちらをバッチーンとウインクをかますおっさん。
このおっさん、やっぱりこの馬鹿の思惑分かってて言ってるなぁ。あえて乗ってやれってか。
「はぁ、分かりました……」
「へへ……ありがとよ」
バレバレなのにまるで上手くいったかのように声が心なしか弾んでいるように聞こえる。こっちはおっさんの考えに妥協して聞いてやったんだよ。
「任せてください。僕達、ちゃんと見張りしますから……」
小さく、ちっと舌打ちすると、コロッと表情を変えアソルに提案する。
「おいおい、名誉挽回をくれよ。俺に見張らせてお前は休みな。馬車の運転でも疲れてるだろ?」
「おい!? まさか一人で見張るつもりか?」
「流石にそんな危ねぇ真似しねぇよ。コイツも一緒に見張らせる……なあ?」
ラッセが親指で示す先にはクリルがいた。こちらは大いに焦りながら激しく頷く。
「う、うんうん。ま、任せてよ」
嘘隠す気あるのかこの馬鹿は……。
だが、アソルは間に受ける。
「分かったよ。ちゃんと反省してくれてたなんて……嬉しいよ」
このパーティダメそうだなぁと呆れ果てた瞬間だった。
 




