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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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28 変わった依頼

 

「でも、宜しいのですか。今、Sランクと……」


 恐る恐る尋ねるバトソン。ランクが高ければ高いほど、護衛とはいえお金がかかるかもしれない。バトソンやリリア達で払えるか怪しいからである。


「あ? いいよいいよ、構わねぇよ。元々野暮用でここに来てたんだ。それもDランクのお前さん達でも出来るような仕事をな」


 こんな町に野暮用って言ったらアルメリアの迷宮(ダンジョン)くらいだと思うが、ちょっと気になったので尋ねてみる。


「どんな仕事なの?」


「ん〜? ゴブリン退治さ」


「ゴブリン退治?」


 Dランク冒険者パーティは不思議そうな顔をする。その表情は正直理解できる。ゴブリンはそんなに強い魔物ではないのだろう。このおっさんもDランクでもって言ってたし。


「おじさんの今の依頼主がな、ゴブリンから取れる魔石をご所望なんだわ。それも大量にな」


「ゴブリン()()()()()魔石なんて、Eランクの小石程度の物しか取れないんじゃ……」


「だろぉ? なのにゴブリン()()()()()魔石が欲しいんだとよ。……全く、天才さんの考える事はわかんねぇな」


「は、はあ……変わった依頼主もいるんですね」


「だろ?」


 ザーディアスは依頼内容はしっかり見とけよとDランクパーティにアドバイスした。


 この辺りはゴブリンがよく出るのだろうか。


「さてっと、お嬢ちゃん達はお急ぎなんだろ? 準備始めようぜ」


「――はい!」


 ***


「……ほう。お前さんらにしては立派な馬車だなぁ」


 ザーディアスはあるものを見て感心する。Dランクの冒険者にしては立派な荷馬車がそこにあった。


 バトソンと同じくらいのものだ。確かにこれなら長期の護衛依頼も引き受けられるわけだ。


「半年くらい前に買ったんですよ。色んなところに行けた方が稼ぎもよくなるとか思って……」


「おいおい、安易だねぇ〜」


「まあいいんじゃないですか? Dランクだったらまともに魔物の討伐依頼とか厳しいんじゃないです?」


 俺が一応、フォローのつもりで声をかけると、ザーディアスはバンバンと茶髪剣士の男の肩を叩く。


「ははははっ! その腰についてる剣は飾りか? いっそ商人になった方がいいじゃないか?」


 そう豪快に笑われ忠告を受けると、茶髪剣士はぽつりと呟く。


「だから、言ったのに……」


 何食わぬ顔でこちらを見ないラッセ。おそらくあいつの案だな。


 確かにおっさんの言う通り、商人かバトソンみたいに運び屋になった方がいい稼ぎになるだろう。


「よし、準備は整ったよ。世話になったな、ヨッテ」


「おう! 悪かったな、飲ませ過ぎてよ」


 今朝、俺が起きた時ダイニングで倒れるように寝てた時は驚いたが。


「ていうか護衛はSランク(仮)さんだけでいいんじゃないの?」


「おい(仮)って何だよっ。証拠もあるだろ、ほら……」


 俺にカードを執拗(しつよう)に見せつけるおっさん。分かっていながら顔を逸らしスルーを決め込む。


「リリアちゃん、依頼を受けてくれたのはこの人達だし、信じてあげようよ」


「そうだよ、リリィ! それに人が多い方が楽しいよ」


「リ、リリィ?」


 聞き慣れないあだ名に驚く。多分じゃなくても俺の事だ。


「うん! だってあんなに心配してくれて、一緒に来てもくれて、友達って言ってくれて、嬉しくって!」


「で、可愛いあだ名って……」


「ダメ?」


 さながら甘える小動物のようなうるっとした眼差し。そんな訴えかけるように見られると、少し頬を赤らめて視線を逸らす。


「い、いいよ。リリィで……」


「――リリィ!! 可愛い!!」


「――きゃああ!! だから急に抱きつくなぁ!!」


 みんなが見てる中、盛大に親愛のハグをかます。


「おうおう、やっぱり華があると違うねぇ」


「……」


 おっさんは品定めでもするかのような仕草を取り、Dランクパーティの野郎共はチラチラと目を泳がす。おじさん達は優しい見守るような優しい視線を送る。


「ほら! 準備が出来たんなら行くよ! バトソンさん!」


「ふふ、はいはい。ほらみんな、乗った乗った」


 自分がまさか見る側ではなく、見られる側になるとは、ここに来て改めて女になったのだと自覚させられることとなった。

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