23 闇の魔術師の扱い
「て、テメェ、闇の魔術師か?」
「そうだけど……」
酷く怯えた様子のラッセを見下すように見る。闇属性持ちはそんなに珍しいのかな?
「な、何だよっ! 何だよ! くそぉ!!」
「――はいはい。そこまでそこまで」
パンパンと手を叩く。音から察するに手袋をしている音だ。声がする方へ視線を向ける。
そこには顎髭がダンディなロングのトレンチコートで決めた、上から下まで真っ黒なおじ様が立っていた。
「銀髪嬢ちゃん、その辺にしといてやりな。受付ちゃんもビビってるからよ」
こちらへ来ると受付カウンターで肘をつき、親指で受付嬢を指す。
「あ……」
俺も少し血が上ってきてたのだろう、気付かなかったと我に帰る。
「す、すみません……」
「い、いえ。揉め事はしょっちゅうですから」
「でも、嬢ちゃん、新米さんだろ?」
「えっ……何でお分りに――」
「おじさん分かるんだ。スケベさんだから……堅いよ、応対が」
受付嬢に対して軽くウインクしてフランクに喋りかける。ナンパしてような口ぶりと態度。
「あのっ!」
「んー?」
身長差があるせいか見下ろすように見られる。でかいなこのおっさん。
「止めに入ったのはその受付嬢さんの為なら、まあ、悪かったなって思いますけど――」
「バーカ。おじさんの本命はお前さんだよ」
「は?」
両肘をカウンターに置き、こちらを向いてもたれかかる。
「今はたまたま運が良かったが、ギルドは色んな国の人間がきやがる。闇魔法なんて簡単に見せちゃあダメだぜ」
「どういう事?」
確かに闇属性は珍しいとは聞いてたけど、使うなとは言われなかったぞ。
「はは。この国じゃあ大丈夫だが、他の国じゃあ闇属性持ちは忌み子とか呼ばれてるとこもあるんだぜ。下手な逆恨みとか買いたくねぇだろ?」
「そ、そうなんだ……」
このおっさんの言う通りならギルドは世界中から色んな事情を持って介入するところだ。確かに変な恨みとか買いそう。
「この国にいる分には大丈夫だろうが、ギルドや冒険者の前で使う時は気をつけな。おじさん、こんな可愛い嬢ちゃんが暴力に会うなんて想像もしたくないからね。……まあ別の暴力はちょっと見たいかも……」
別のってエロ方面だよな。ジトッと睨むと、
「スケベ」
一言吐き捨てるが、
「おう! おじさん、スケベよ」
にかっと笑いかけてくる。
くそっ……開き直りやがってこのおっさん。
 




