03 容姿確認
鬼塚 勝平は確かにあまり男っぽくはなかった。小さい頃は女の子の格好をよくさせられた程である。
所謂黒歴史である。
――がっ!! そんな黒歴史が簡単に塗りつぶされる程の出来事が起きた。
遂に性別が変わってしまった。
「……待て。落ち着け〜俺!」
鏡の前の美少女は額に手を当て、考える仕草を取る。
あくまで冷静になったと自問自答する俺は、自分の姿を上から順に確認していこう。
頭髪は白ではなく銀髪。ぼんやりと明るい光が照らし、キラキラと反射して輝いているようにも見える。その輝き方から艶のある美しい髪質であることもわかる。
細い前髪から細い銀の眉毛が見える。後髪は長く、腰辺りまで真っ直ぐに伸びたロングヘア。
顔のパーツはまるでお人形のよう。先程も言った通り細い眉毛にパッチリとした大きな目。その瞳の色はブルー。透き通った綺麗な海のような色だ。鼻と口は小ぶりで童顔の可愛いらしい感じの印象。
肩も小さいが女性として大きくなる場所は大きくなっており、凹凸があるようで、鏡から視線を逸らし、少し顔を視線と一緒に下へ向ける。
女性のバストサイズなど平凡な男子高校生が分かる訳もないが割と大きい。おそらくだがCからDは確実にありそうだ。
横っ腹から腰にかけて手を軽く流してみる。ちゃんと凹凸がある。はっきりとではないがおそらくスタイルがいい。
鏡には映らない足を見る。すらっとしている白く綺麗な足だ。
総合して色素の薄い綺麗な童顔美少女。
そして、目線確認をし身長の判断を行う。この隣にある箒、向こうの世界とそんなに変わらない長箒。その箒を手に持ち確認してみる。
百五十センチ台かな? かなり小柄だ。
向こうの俺も男性としては小さい方だからな。この箒を持った基準に何となくわかる。
しかし、この低身長に対し、胸部が若干のアンバランスさがあるようにも捉えられるが、男の俺からすれば良しなナイススタイル。
結論――うん! 可愛い! 美少女だ。
「――何故だあぁーーっ!!」
叫ぶと同時に頭を抱えしゃがみ込む。
何処だか分からないため危険が無いように静かに叫ぶ。意外と冷静な部分もあるのだが、冷静でもいられない。
(えっ!? 何? 俺、本当に美少女になったの!?)
しゃがみ込んだと思いきやまた素早く立ち上がり鏡を真剣な眼差しでジッと見つめる。
間違いない、美少女になってる。
確認を終えると、途方にくれる表情へと変わる。
俺は数多くのゲームをしたり、アニオタの友人からよくアニメや漫画も借りて見たりするが、この銀髪美少女はまさにメインヒロイン級。何をさせても絵になりそうな女の子だ。
「本当に何でだ。何でこんな事になったんだ……?」
まだ、現実を受け止めきれない。だが、女の子になった原因はある程度予想はついていた。
まだ、俺が鬼塚だった時、周りが止まって頭と視界が激しく歪んでいた時に、確かに引っ張られる感覚があった。
おそらくだがその時、この身体へと俺の意識が吸い込まれたんではなかろうか。
まるでアニメとか小説の中の話の展開だと推論が立てられる。