12 恩恵
「それにしても凄かったですよね、オルヴェールさん。闇魔法なんて初めて見ましたよ」
「あっ……アレ、やっぱりそうなんだ」
「う、うん……そうね」
う〜ん……女子の喋り方が定まらん。彼女のイメージ〜〜彼女のイメージ〜〜。
眉間にしわを寄せ考えるも――、
「闇か……ちょっと似合わないよね、リリアちゃんには……」
「そ、そうかしら……」
あ〜〜ダメだ、なんか変だ〜〜っ! 彼女のイメージと俺の男としてのプライドがどうしてもぶつかる!
「む、無理しなくていいよ、オルヴェールさん……」
「うん、余計変だよ」
「ううっ……」
彼女達の会話の中で少しずつ慣れていこう。無理に変えようとしない方がいいかも。
「で? 何の話だっけ?」
「闇魔法が使えるんだねって話だよ」
「えっと……まあね。後、火属性も使える――」
「ええっ!? 火属性も使えるの!?」
「う、うん」
確かにニ属性以上持つ人は稀とは書かれてたけど、ここまで驚かれるとは思わなかった。
二人は両手を握り合い、その場で小さくぴょんぴょんと跳ねる。
「すごいっ! すごいよっ! 双属性の人になんて初めて会ったよ! しかも闇属性持ち!!」
「ホントにすごいですね……」
「そんなにすごいの……?」
正直、自分の強さをある程度は確認はしたものの、自分がどれだけのレアケースなのかまでは把握しきれていない。ここで聞き出せるなら聞いておきたい。
「スゴイなんてもんじゃないよっ! 世界でも百人いるかいないかくらいだもん。しかも、闇か光属性を持つのはさらに少ないんだよ」
この世界人口がどれくらいか知らないからパッとはしないけど、向こうの人口と比べたらまぁスゴイか。
「知らなかったんですか? 本当に?」
信じられないと言わんばかりの質問の仕方。でも、俺自身は知らないが、おそらくリリア自身は知っていたのではないだろうか。自分がどれだけレアな存在なのかを。そして、それも彼女を追い詰めた原因の一つだったのだろう。
俺がここにいる要因、しっかりと聞いておかないとな。
「うん。ほら、私はアルミリア山脈の麓の村出身だからさ、疎くて……」
これ、本当は嘘です。でなきゃ遺書にイジメの事なんか書きもしない。
「そっか。でも本当にスゴイ事なんですよ。普通は一属性しか持たないでしょ?」
「あのさ……無属性はカウントしないの?」
「しませんよ。無属性は人族であれば、みんな持ってますから。魔物なら魔属性を持つように。ですからこの話に出てくる属性はこの世界の属性を司る六つの属性を意味してるんです」
「学校で習わなかったの?」
「な、習ったよ。でもいつも疑問に思ってただけ」
「無属性も魔属性も世界から頂く恩恵の属性では無いことから数には入らないそうです」
恩恵ね……要するにこの世界の人間はまず、生まれ持って無属性を持ち、何らかの形で自分の中に世界の恩恵をどう受けたのか分かるようになるってあたりかな?
「へえ〜……」
うっすらと口元が開き、感心した。




