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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
10章 王都ハーメルト 〜帰ってきた世界と新たなる勇者〜
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31 新たな勇者とこれから

 

「――ハイディルさん、どうでしたか?」


「……とりあえず、わたくしの伝えたいことは伝えましたので。きっとこれからですね」


 そう言ったハイディルさんの表情はどこか懐かしい和らいだ様相だった――。


 ――あの事件から一ヶ月が経った。


 先ず、一番被害の遭ったラージフェルシア王国だが、王都ハーメルトをはじめとする同盟国や隣国の助けを借りて復興に励んでおり、それをきっかけに次期国王のエリンが率先するかたちが出来上がっていた。


 おかげさまで、元々そこまで評判も悪くなかったエリンの印象は、飛躍的に向上し、国民の信頼を強固なものとなった。


 被害者に対しても手厚い支援などを行うなど、あらゆる対策を進めている。


 襲われそうになったドゥムトゥスもまた、その復興に貢献しつつも、今回のような事件の背景から、龍操士(ドラゴン・ライダー)の育成の見直し等も進められることとなった。


 ドラゴンという最強種の魔物の乗り手でありながら、不甲斐ない結果に終わったと反省している模様。


 俺達としては全然そんなことはなかったと思うのだが、それではいけないと色々考えているらしい。


 そのことから、アイシアを指南役として来てくれないかと熱の入った説得に押され、アイシアは時々だがドゥムトゥスに行く機会が増えたという。


 今回の事件の象徴ともなるデス・フェンリルに関しては、北大陸の研究機関に運ばれ、歴史的遺物として保管、研究がされることとなった。


 然るべきところに預けられることになったとはいえ、不安が残るため、デス・フェンリルに関しては、完全に動かないようにベリアルに封印魔法を施してもらった。


 これで利用されることはないだろう。


 次は道化の王冠(クラウン・クラウン)について。


 先ずドクターの死体は確認できず、アイシア達の話からデス・フェンリルのどこかに落ちたとのこと。


 後にわかることだが、テテュラと同じ成分の魔石が発見されることとなり、ドクターが確実に死亡したことが確認されることとなる。


 次はバザガジール。


 戦場を駆けた仲間や戦い合った相手などは軒並み亡くなっているためか、ほとんど情報がなく、彼の遺体はハーメルトが対処することとなった。


 アルビオのその時の表情が、凄く悔しそうだったのを覚えている。


 分かり合えていたならばといった、少し悲しげな表情で、オリヴァーンに遺体を手渡していた。


 道化の王冠(クラウン・クラウン)の生き残りであるザーディアスは、ある程度の事情聴取はあったものの、解決に貢献してくれたということで、またアソル達の指南役として、気楽な冒険者生活を楽しむとのこと。


 何だかんだ、あのおっさんにも居場所が出来たようで良かったと思う。


 そしてもう一人の生き残り、クルシアに関して。


 恨みを持っているナタルや関わってきたフェルサやジード達冒険者一向とも多少は揉めたが、俺の反省させるという意見に納得してくれた。


 ナタルは渋々だったが、ナタルの両親はとりあえずはほっとした様子を見せていた。


 これからじっくりと傷を癒していって欲しいものだ。


 そのクルシアだが俺は宣言通り、ギチギチの縛りを施し、もう初期魔法の一つも使えない状態にし、王都ハーメルトが所有する監獄塔の地下深くに投獄した。


 それを知る者は、デス・フェンリルでの祭壇にいた一同と、監獄塔を管理する者。そしてハイディルのみである。


 ハイディルに教えた理由としてはクルシアの唯一、話ができそうな人物だからである。


 ご両親も兄も健在のようだが、未だにクルシアに対する心の傷(トラウマ)がある以上、ハイディルしかいなかったのだ。


 ハイディル自身もクルシアについて、酷く後悔することがあるとのことから、月一の面談が許可されることとなった。


 勿論、ベリアルや監獄塔を管理する人物が同行の元である。


 そしてそのクルシアの様子だが、さすがにいつもの調子ではなかった。


 あまり生気を宿していない暗い表情へと変わっていた。


 面談したハイディルの話だと、軽い問答をしたくらいとのこと。


 あの幼い頃から距離を詰めるには、相当時間がかかりそうではあるが、少しでもクルシアには反省してもらい、人としての良識というものをハイディルから感じ取ってほしいものだ。


 ――そのハイディルはペコリとお辞儀をすると、迎えに来たメルトア達の船へと乗り込んだ。


 後、ギルヴァ達のことだが、ギルヴァに関してはメルトアと同様、義手を向こうの人に用意してもらい、生活している。


 そして治るかもとされていたアリアだが、見事に治療に成功した。


 魔物化の侵攻が酷かったことが幸いしたのか、魔力の循環、細胞操作などテテュラの時の技術に加え、ベリアルの魔法などが通りやすかったことが要因とされている。


 魔石を引き抜いた痛みも、魔物化によってある程度は我慢できたようだ。


 こっちの世界にも軽い麻酔魔法みたいなものはあるが、向こうほどではないからな。


 ハイドラス達と扉の向こうでうめき声を聞いた時には、肝を冷やしたものだ。


 そんなこんながあり、一ヶ月が経ち、今現在の俺は――、


「――転生! 魔神アスタロト!」


 ハイディルを見送り、王都の学園に戻った俺はハイドラスから受け取ったウィンティスの魔石を使い、転生術を試みた。


 すると小学生くらいの可愛らしい男の子が現れた。


主人(マスター)。新たな姿とお役目をワタクシめに与えて下さり、感謝致します」


 どこかクルシアに似ているのは、元がそうだったからだろうな。一人称も『ワタクシ』だし。


「お、おう。よろしくな」


 あっさりと転生術を使ったことにハイドラス達一同は呆れ返る。


「おい、オニヅカ……」


「はい?」


「お前のやろうとしていることは理解しているつもりだが、やはり不安が残るぞ。あと、あっさりそんな大精霊くらいの存在を作るな」


「はは」


 俺はあれから勇者校へ転入というかたちで入り、学園生活を送っているが、あることを行おうとしている。


 それはケースケ・タナカが封印したという悪魔達の転生である。


 大精霊の代わりをさせるつもりなら、全ての属性の悪魔をそうした方が良いと考えての提案。


 ハーメルト陛下ならびにハイドラスやファミア、ギルドマスターなどお偉いさん方と話し合いの末、決まったことだ。


 決まっていたこととはいえ、あっさりと転生させてしまうことには、ハイドラスも不安があるようだ。


 まあ確かに、国一つ、簡単に滅ぼせる存在をポンポン作られたんじゃあ、気が気ではないだろう。


「で、でも鬼塚さんは凄いですよ。元とはいえ、魔石から悪魔の魔神を生み出すことができたのですから……」


「まあ、どっかの誰かさんのおかげで異世界転移させられた影響だからね」


「す、すみません……」


 軽い冗談で言ったつもりがかなり落ち込んでしまった。


「じょ、冗談だから! 冗談!」


 すると俺はアスタロトに早速指示を出すため、


「ベリアル」


「は!」


 魔神となったベリアルは一応、俺と契約はしているが、もう完全に自立できてしまっている。


「後輩君にご指導頼むよ」


「アスタロトと申します。ベリアル様とお呼びすれば良いですか?」


「様付けはよい。我と貴様は対等の立場にある。ベリアルと呼べ」


「畏まりました、ベリアル」


 呼び捨ての割に敬語というのは違和感あるが、まあいいだろう。


「それにしても勇者……でなかったですわね。異世界人の力というものは凄まじいですわね」


「あれにはさすがに勝てる気がしない」


「私は見てないけど、クルシアですら一瞬だったとか?」


「うん。クルシアのお腹をドスッて……」


「へ、へえ……」


 その光景を想像したナタルは少しいい気味だと嬉しそうだが、その会話を聞いたハイドラスは将来のことが気になるようで、


「オニヅカ。本当に大丈夫だろうな」


「しつこいな。大丈夫だって……」


 ベリアルを転生させてから、何百回と聞かされた質問だ。


 何のことだと、リュッカ達と会話していたアイシアが尋ねる。


「なに? どうかしたの?」


「いや、殿下が魔神が暴れることはないだろうかって……」


 心配する理由も大いに理解できるが、それにしたってしつこい。


「ま、まあそうだよね。これを相手にするのはちょっと……」


「アルビオでも無理そうか?」


「あ、当たり前ですよ! フィン達もバザガジールよりヤバいって……」


 そういえばベリアル達と顔を合わせるようなことはしてないな。


「何時ぞやの約束は無理そうだね」


「や、約束?」


「ほら、インフェルだった時に約束したアルビオとの――」


「「「「「やらせられるかぁ!!」」」」」


 アルビオが先にツッコむより、フィン達が顕現してツッコミをして来た。


 インフェルが俺と契約するにあたって、俺が勝手にした口約束。アルビオとの死闘であるが、とてもじゃないが、俺も無理だと思う。


 勝負にならん。


 するとベリアルがアルビオ達を見た。


「な、なんだよ! やるか?」


「馬鹿! フィン!」


「安心せよ。我にもうそんな気はない。むしろ今となってはケースケ・タナカに封印されたことに感謝している」


「感謝?」


「封印されていなければ、このような魔神という存在となり、世界に貢献する役割を担うことがなかったでしょう」


 巡り巡って、この運命を辿ったってやつだね。


 だとするなら、


「それならリリアにも感謝しないとな」


「へ?」


「リリアが誤って魔法陣が発動したから、俺はここにいるわけだ。まあ、やった内容については褒められたものじゃないけど、結果としていい方向に巡ったってことだろ?」


「は、はい」


「だから殿下もそんなに心配するな」


「し、しかし……」


 魔神達の性格を見ても不安が拭えない様子に、今度はリュッカが尋ねる。


「殿下、何がそんなに心配なのですか? 転生させた本人がこんなに……」


「その転生させた本人が亡くなった後の話を心配しているのだ」


「あ……」


 殿下の懸念に気付いた一同は、確かにと言葉を失った。


 確かに俺は異世界人であり、膨大な力を有してはいるが、あくまで人間だ。ケースケ・タナカも普通に亡くなってる。


 今は俺がいるから、安定的ではないのかと不安になっているのだ。


「だーかーら! 大丈夫だって言ってるだろ? ベリアル達はもう魔物じゃないんだ。無闇やたらに人類種を殺すようなことはしない」


「魔物じゃないの?」


「ああ。魔神という別の存在になってるからな」


「魔物の神だから、魔物ではないのか?」


 まあそうなんだけど。何と説明したら良いか。


 すると、


「えっと正確には魔物の神ではなく、魔神という種族と考えた方がいい、です。魔物から魔神になったから誤認するようですが、転生、つまりは生まれ変わったので別の種族となったと考えられます」


 リリアの説明には俺は納得がいったが、アイシアやフェルサは余計にわからなくなったようだ。


「うーん?」


「まあ、つまりは進化のベースとなった魔物の個体はそのままに、別種族に進化を果たしたってわけ。インフェルの時の属性とか記憶とかを継承してるから、そう誤認してるわけ」


 異世界転生者が前世の記憶を持ってるのと同じ原理だね。


「だからベリアルには魔物としての、殺戮本能とかはもうないはずだ。ね?」


「はい。正直、あの感覚は覚えてはいるのですが、今となっては、何故あそこまで殺害欲に駆られていたのか、不思議でならない」


「だからたとえ俺が死んだとしても、ベリアル達はこの世界の調律者として君臨してもらうつもりだ。原初の魔人や大精霊を頼ることなく、新たな存在として……」


 それが大精霊の目論見かまではわからないが、少なくとも魔物に魔力の循環を任せるつもりだったのなら、ベリアル達の存在については許してもらおう。


 フィン達からも大精霊が、あーだのこーだの言ってきてるという情報はない。


 とはいえ、


「まあ殿下の懸念通りになる可能性もなくはないよ。ベリアル達はあくまで調律者、つまりは中立の立場とさせるつもりだから……」


「なに?」


「ベリアル達にはこの世界を守るように言ってある。つまり行き過ぎた行動が行われれば、それを止めるように言ってある」


「つまり、人間がまた人精(じんせい)戦争のようなことをすれば……」


「調律者として、人間の殺害もあり得るだろうね」


 まあ勿論、人間に限った話ではないが、それでもそういうことをする可能性が高いのは、やはり人間だ。


 人は本当に業が深い。


 たとえベリアル達のような存在がいるとわかっていても、そんな愚かな行為に走れるのが人間だ。


 我が種族ながら浅ましい。


「だからこそ、そういう人を作らないように、より良い国、より良い世界を作るために殿下みたいな人がいるんだろ? 頼むよ! 次期国王殿!」


 そう言われたハイドラスは、少し困った表情をしたが、


「ああ。そうだな」


 柔らかな笑顔で返答した。


「まあでも俺が生きてるうちは、俺もベリアル達に意見することもあるし、ベリアル達自身も学ぶことはある。だろ?」


「はい」


「だからさ。そんな心配しなくても大丈夫だって……」


 正直、人……魔神に指南できるほど出来た人間ではないが、少なくともベリアル達よりは人間の善悪の判断はできる。


 ベリアルも今はどちらかといえば、世界の魔力の循環についての調整の方が忙しい。


 そういうのはどちらにしても六人揃ってからだ。


「更に言えば俺が生きてる間は、ベリアル達はこの国の守護神みたいなもんだ。仲良くしようぜ」


 するとハーディスは、


「そ、それはそれで他国とのパワーバランスに問題が……」


 と、困ったように返された。


 まあその言い分もわかるけどね。


 平和同盟を結んでいても、各国同士のパワーバランスはあって然るべきだろうからね。


 まあ勇者を囲ってた時点でどうかとも思うが。


「それで? 他の悪魔さん達をいつ魔神化させるつもりなの?」


「んー……予定としては早めにはしておきたいかな? ベリアルやアスタロトに任せきりというわけにもいかないから」


「オニヅカ。魔神化させることには納得してやるが、一斉に魔神化させるのだけはやめろ。絶対だ!」


「はいはい。わかってますって……」


 正直、面倒だが、どうせ殿下達は着いてくるつもりだろうし、大人しく従っておこう。


 魔神の話はどうせ追々詰める話だろうしね。


「でもお前が来て、もう一ヶ月か……」


「はは。俺からすれば、リリアだった時を踏まえれば、特に懐かしむこともないけどね」


「そういえばリリアちゃんだったんだよなぁ? 羨ましいなぁ!」


「それもしつこい! あれは完全な事故だって言ったろ!!」


 まあウィルクが妬む理由にも、男として納得がいくところ。


 個人的にも惜しいなって感情があるし。


 それを読み取られてか、たまにナタルの視線が痛い。


「で、でも私は本当に馴染まれたか心配です」


「リリア……」


 リリアとしては俺がここにいるのは、罪悪感が残ることだろう。


 本来なら自分が異世界との繋がりを絶たなければいけなかったところを俺が絶った。


 家族、友人、向こうでの将来など、リリアにどれだけの罪悪感を背負わせることになるのか、俺自身も理解している。


 だが俺は理解した上で、リリアの覚悟を踏み躙った。


「ならこれからもずっと俺の側にいてくれればいい。そんな心配が杞憂だったって思えるくらい、幸せに生きてやるよ」


『大丈夫』とか『心配するな』なんて散々言ったし、言ったところでリリアが納得する答えにはならない。


 だったらリリアが納得するまで、側にいればいい。


 その罪悪感が消えるまで。


 それが俺がリリアの覚悟を踏み躙り、出した答えだ。


 すると、何故かリリアは湯気が出るほど赤面した。


「どした?」


「い、いいいい、いえっ!! あ、あの……」


 するとハイドラスが代弁するようだが、かなり呆れられている。


「……お前、それ捉え方によってはプロポーズだぞ、それ」


「あっ!?」


 た、確かに殿下の言う通りだ。実際、リリアはそういう受け止め方をしてらっしゃる。


「い、いや!? あの、そのだな……」


 実際、俺が今までのリリアだったって、先日、王都に現在も住んでるリンナさんに報告に行ったら、リリアの目の前で――、


『娘のことを()()()()()で知り尽くしてるし、こんな社交性も無い娘だ、責任を取るという意味でも、是非、うちの娘をもらってくれ』


 どうせ他に男なんて作れんと、父親が横で血涙するほど落ち込む中、さらりと娘さん渡すと言い放った。


 そんなこともあってか、リリアが変に意識してしまったようだ。


 俺としても、半分冗談みたいな言い方をしたリンナさんの言ったことを魔に受けはしなかったが、こう露骨に脈がありそうな反応をされると、俺まで意識してしまう。


 そういうのは当人同士の問題だと思うのだが、


「え、えっと……」


 そのリリアは俯き気味で返答を待っている。


 い、いや。確かにリリアのことは一年以上もその身体だったわけだから、リンナさんの言う通り、知り尽くしてるし、少しは解消したとはいえ、まだまだ人見知りなところ、人間不信なところはあるから、放ってもおけないのも事実だ。それに父さんや母さんのことを考えると、こっちで結婚とか子供を残すということはしておきたいし、隆成ともそんな約束もした。しかもリリアは大介達に言われずもがなの銀髪ロリ巨乳美少女。男としてそんな彼女が出来るというのは、非常に男冥利につくというところ。しかもオルヴェール家の権力者であるリンナさんからも許可も得ている。


 だがしかし、リリア自身の気持ちはどうだ? この赤面ぶりは脈ありだとは思うが、そういうのって男の勘違いなんてケースはよく聞く話ではないだろうか? それに俺自身には結構コンプレックスもある。周りの殿下やウィルクみたいな整った容姿ではないから、リリアの好みとは違うのではないか? そもそも俺は異世界人だし、それ自体を嫌がらないか? 更に言えばリリアの罪悪感につけ込んで付き合ったり、それ以上の関係になるのはズルいのではないか? 恋愛ってのはもっとこう……お互いの関係や気持ちを尊重するべきものではないか?


 ……色々とごちゃごちゃ考えた結果、


「と、友達として……だよ」


 ビシッと周りの空気が凍りついたように静まり返ったのを肌で感じた。


「で、ですよね……」


 俺の馬鹿ぁ!! 完全に選択肢を間違えてるじゃないかぁ!! ここは勢いに任せても良かったところだと思うよ!! 周りにみんないるけど!!


 童貞チキン野郎っぷりが拭いきれない自分が憎い!!


 と、心の中で嘆いていると、


「ヘタレ」

「ヘタレですわね」

「ヘタレ〜」

「ヘタレさんですね」


「――うぐっ!?」


 女性陣全員からのヘタレ発言。男性陣からも呆れ果てられる始末。


「魔神を創造できる奴が、女ひとり口説けないでどうする」


「殿下。それとこれとは違う緊張感があるものです。まあ、情けないとは思いますが……」


「俺は別に構わないぜ。リリアちゃんが、こんな男に盗られるのは好かん」


「は、はは……」


 アルビオだけはわかるといった同情心が表情から読み取れるが、殿下達は言いたい放題。


「――ひ、人にはそれぞれのペースがあるもんなんだよぉおおおお!!」




 ――人にはそれぞれのペースがあると発言した通り、俺のこの先の未来もきっと、俺のペースで作っていくのだろう。


 リリアとして過ごした意味。魔神達を創造する意味。俺が異世界に来た意味。


 これからの俺の糧となり、俺が俺らしく生きる未来がきっと見えてくるはずだ。


 色んな希望も絶望もあったが、それらを超えていけるための力と仲間、見送ってくれた両親と友達もいる。


 俺もまたその大切な仲間達に恩返しができる生き方をしていけるように考え、努力しよう。


 ――問おう! あなたならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?


 新たな世界との出逢いに希望を膨らませ、歓喜することができますか?


 その世界の中で傷つき、絶望する未来の中でも、互いに助け合い、手を差し伸べられる仲間と共に、その絶望を超えていけますか?


 俺は――大切な仲間と共に進んで未来に行けるなら、喜び合えるし、絶望も超えていけると信じている。

皆さま、ここまでのご愛読ありがとうございます。


第10章はここまでとなり、完結となります。


ここまで書き上げられたのも、評価をして下さった皆様、ブックマークをして下さった皆様、感想、ご意見、誤字脱字を指摘して下さった皆様、そして読んで下さった皆様のおかげだと思っております。


本当にありがとうございました。


次回作も長編モノを書く予定がありますので、読んで頂ければ幸いです。それでは。

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