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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
10章 王都ハーメルト 〜帰ってきた世界と新たなる勇者〜
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19 ラージフェルシア王国

 

 ―― ラージフェルシア王国。


 東大陸の国の中でも、ハーメルトと並ぶ国力を持ち、そのハーメルトとも友好的な関係が続く、平和を象徴された国。


 特にハーメルト同様、他種族の受け入れにも寛容で、特に闇属性持ちが多く、西大陸から逃亡してくる闇属性持ちの受け入れ先の有力候補にもなっていた国。


 そういう背景もあってか、他国からの技術を取り入れることもあり、地底都市アンバーガーデンや王都ハーメルトほどではないが、技術面でも優れている。


 それほどの手腕が奮われるのも、王族のカリスマ性によるところが大きい。


 その王位を継ぐであろうファミアの弟、エリン・ラージフェルシアは毎日、勉学に励んでいる。


「――人精(じんせい)戦争が起こった要因としては、人間の浅はかな欲望からなるとされていますが、我々のような政治を行なう人間からすれば、戦争も交渉の一つに過ぎません。当時の人間達はその政治的関連なる知識に乏しかったが結果、精霊との関係を断たれてしまいました。……殿下、この戦争において人間が精霊から得なければならなかったことは何でしょうか?」


 人精(じんせい)戦争を例として、国を担うものとして、戦争をあくまで手段と考えるならと教師よりエリンは問われていた。


「そうだね……ボクらは苦戦を演出すべきだったと考えるね」


 当時の人間達は生贄(サクリファイス)や古代兵器などで確実に精霊達を追い込んでいたことから、演出と口にした。


「精霊達からすれば人間は劣等種。先ずはそこの考えを改めてもらうために、多少なりとも技術を行使して対応、そして敢えて敗れることで、精霊の誇りを保ちつつ、寄り添える存在であると人間側がアピールし、相互関係を築くことが理想……かな?」


 すると教師はさすがですと一言。


「起きてしまった戦争での立ち振る舞いとしては見事で御座います。本来であれば、戦争を起こさず、交渉する時間が設けられれば尚良かったのでしょうね」


「そうだね。人精(じんせい)戦争に関しては、人の世の分岐点だったとも思うよ。戦争に勝った人間達は魔法や技術に特化した代わりに、精霊の力の恩恵というものを失った。その影響もあって、魔物の存在の認識も改められた。もし、精霊達が勝利していれば……」


「共存か服従か……どちらにしても、人の発展がここまで進むかは定かではありませんわね」


 エリンの教育係が教鞭を奮う中、ファミアがユーキルと共に入ってきた。


「姉上!」


「歴史のお勉強かしら? 今日も熱が入りますわね」


 口元に扇子を当てながら教師に視線を送ると、エリンの教育係は、勿体なきお言葉と一礼。


「でも姉上の仰る通りです。もし、戦争に負けていれば、精霊の力の恩恵はあったかもしれませんが、それにかまけて技術の発展は無かったかもしれません」


「逆に精霊の恩恵を利用し、今よりも技術向上していた可能性もありますわね」


「それを考えれば、戦争というのは常に人の進化を促進することなのでしょうが、やはり生き死にがある戦争を一概に肯定することは、ダメなのでしょうね」


 エリンは王族としての割り切りと、人として必要な思いやりも身につけている。


 ファミアはそんな出来る弟を誇らしく思うのか、


「そうですわね。戦争を起こす起こさないは、我々のような政治を動かす者が判断を担っているもの。相手にとって、そして自分達にとって何が必要で、何を切り捨てるべきなのか、過去の戦争を振り返ることは、それを参考にする良いことですわ」


 エリンの頭を撫でた。


 もう歳は十二歳になるエリンは、少しばかり気恥ずかしそうにする。


「あ、姉上。それは恥ずかしいのでやめて下さい」


「あらあら。寂しいこと言ってくれますわねぇ。可愛い弟を愛でることの何がいけないのかしら?」


 ファミアは悪戯げな笑みを浮かべながら、エリンの頭をわしゃわしゃと撫でる。


「あ、姉上〜!」


 可愛い弟を愛でるというよりは、反応を面白がっているようにしか見えないユーキルと教育係。


「ファミア様。此度はどのような御用件で?」


「あら? 優秀な弟の様子を見に来ただけよ。まあそれも貴女のおかげよね」


「そんなことは御座いません。エリン様の努力の賜物に御座います」


 するとエリンは余計なことを口にする。


「また最近、ハイドラス様に避けられているのですか?」


 ぴきーんっと頭に電撃が走ったファミアは、バッと扇子を開くと、


「あら? そんな面白いジョークを口にするのは、このお口かしらぁ?」


「おひゃめ! ひゃめて! 姉上〜!」


 もう片方の手でエリンをつねった。


「馬鹿なことを言わなくても結構。わたくしとハイドは上手くやれています」


「そうですか? 姉上は昔から気に入っている方への扱いが過剰だったりしますので、ハイドラス様も苦手とされて――」


「な・に・か・い・い・ま・し・て?」


「いふぁい! いふぁい!」


 再びギューっとつねる。


「今ハイドは、例の奴を追いかけるので忙しいらしく、南大陸(あれっきり)ですのよ……」


「ああ……例の南の戦争ですか? ヴァルハイツの国王が変わったとか……」


「ええ。まああれに関しては、ヴァルハイツの元国王が無能でしたからね。起こるべくした王位簒奪(さんだつ)でしょうね」


「国の管理を大臣や将軍に任せていたという……」


「ええ。ですから貴方も、傀儡の王になどなってはいけませんよ」


 エリンが王位を継ぐのはまだ先の話ではあるが、こうして教育係は勿論、専門的な教育者も用意されている。


 傀儡などと口にしたものの、エリンは十二とは思えないほど、賢い性格をしている。


 正直な話、ファミアはそんなに心配はしていない。


「勿論です! ボク、頑張りますよ」


「とはいえ、休むことも重要ですわね。貴方もハイドのように婚約者を放置するようなことは控えなさいね」


「は、はい……」


 説得力のある威圧感に、婚約者候補の中から吟味中のエリンは、たじたじな返事をした。


「そ、それで? ハイドラス様が追われている例の奴とは?」


「ハーメルトで魔人が襲撃した事件やわたくしも巻き込まれた建国祭の事件は知ってますわね?」


「はい」


「それの首謀者ですわ」


「なっ!?」


「更に言えば南での戦乱の狼煙を上げたのも、その男だと聞いてます」


 ある程度の情勢は耳にしていたエリンだったが、教育係も驚いている。


「ハイドラス様は大変な方を追っておられるのですね。ボクらにもできることがあれば良いのですが……」


「フン! ハイドはわたくし達にあまり関わらせたくはないそうよ」


 エリンは――とか言って、南大陸では押しかけたはずじゃなかったかなと苦笑い。


 ハイドラスも大変だなぁと、自分の姉の複雑な性格を知っているが故に案じる。


「何か言いたげですわね?」


「へ? い、いえ。そんなことは……」


 すると――、


「「「「!?」」」」


 ズズンっと大きなプレッシャーがのしかかってきた。


「姉上! これは……?」


「わかりませんが、何か起きているのは事実。ユーキル!」


「は!」


 何を指示されたかなど、瞬時に理解したユーキルはすぐさまその場から消えた。


 ファミア達が感じるプレッシャーの正体は魔力であることはわかっていた。


 だがこれほど身体にかかるプレッシャーが酷い魔力は初めてだと感じる。


 ファミアとエリンは国王の元へと向かう。


「国王陛下! これは何事ですの?」


「ファミアか? エリンも一緒だな?」


「はい、父上」


「このような場では陛下だ。エリン」


「し、失礼しました、陛下」


 王族として立場などのメリハリが必要だと指摘すると、このプレッシャーの正体につややいて話す。


「この魔力圧(プレッシャー)だが、どうやらミリシャー湖付近で発生しているようだ」


 ミリシャー湖は、ラージフェルシア王国付近にある湖。


 海を彷彿とさせる広さを持ち、観光名所としても有名なところであった。


 魔物の生息域にも関わらず、観光名所になっている理由としては、この湖に魔物が寄り付かないことが要因となっている。


 水質検査、地脈の流れ、湖の中の探索などの調査を行なってはいるが、未だに原因は掴めていない。


 魔物が寄り付かないのは良いことだが、生息域のど真ん中にあるにも関わらず、近寄らないことは逆に不気味であったが――、


「陛下! も、申し上げます!」


 報告に上がった騎士の言動により、明らかとなる。


「ミリシャー湖にて巨大建造物が突如出現。獣のような姿をしたゴーレムかと思われます」


「何だと!? 付近の避難は?」


 そのゴーレムが湖から出てきたのなら、災害レベルの洪水が発生しているはず。


「は! 只今対応しておりますが、何分(なにぶん)突然のことでして……」


「ならば急ぎ、被害報告。迅速に対応せよ!」


「は!」


「しかし何故、ゴーレムなんか……」


 この時、ファミアは嫌な予感が頭を(よぎ)った。


 巨大ゴーレムの襲撃。


 南大陸でもあったことだった。クルシアの陰謀により暴走した妖精王のゴーレム。


 まさかとは思ったが、胸騒ぎが止まらなかった。


「獣のようなゴーレム……」


「どうしましたの? エリン」


「姉上! 実物を見たことがないので断定はできませんが、先程勉強していた人精(じんせい)戦争にて使われていた兵器に、そんなゴーレムが実在していたと書かれていました」


「「!?」」


 それを聞いたファミアは、


「陛下! わたくしはハーメルトへ向かおうと思います」


「何故だ?」


「そんな古代兵器を扱おうなんて考える連中に覚えがあります」


 妖精王を暴走、エルフを滅ぼそうなんてことを成し得られる直前まで追い込んだ男ならば、古代兵器を扱うことなんて、容易に想像できた。


「わかった。エリンも連れていけ」


「ち……へ、陛下。何故ですか!? ボクもここに残り、陛下の……」


人精(じんせい)戦争の兵器なのかもしれんのだろう? そんな危険なところに次期国王を置いてはおけん。これは大人の仕事だ。お前には荷が重い」


「し、しかし……」


 するとファミアは、ガッとエリンの腕を掴むと、


「あ、姉上!?」


「参りますわよ。ユーキル」


「は!」


 強引に引っ張っていった。


「へ、陛下! ――父上えぇええっ!!」


 この場を去る子供達を見送りながら、騎士達や大臣に命じる。


「聞いた通りだ。先ずは国民の避難を最優先。確定ではないが古代兵器の可能性が高い。すぐに調査せよ。魔術師団には対城壁魔法を展開させ、迎撃する」


「「「「「は!」」」」」


 一同がバタバタと動き出す中、側近の騎士が跪く。


「陛下。貴方様もすぐに避難を……。指揮はこのわたくしめが……」


「よい。国の危機であるこの時に、一国の王が逃げ出すでは格好もつかん。私に恥をかかせないでくれ」


 子供達を見送った手前と、眉を曲げて微笑んだ。


 すると――。


「「――!?」」


 ズドドドドーンッ!!!!


 何かを撃ち込まれた激しい爆発音がラージフェルシアに響く。


 激しく揺れる地響きの中、


「な、何事だ!?」


「ぐおっ!?」


 国王達はその場で倒れ込みながら尋ねる。


 すると遅らせながら騎士が報告。


「へ、陛下……城下町の半分が……吹き飛びました」


「なっ!?」


 ***


「さっすがドクターだよ! こんな巨大ゴーレムを操れるなんてさ!」


「当然だ。私を舐めるな」


「作戦、わかってるよね?」


「ああ。この辺り近辺の魔力を吸い上げればよいのだろう? 後はラージフェルシア王国や王都ハーメルトも……」


「うん! よろしく!」


 クルシアはくるっと回転し、ドクターのいる祭壇を後にしようとした。


「待て、クルシア」


「なぁに?」


「お前にしては強引な手段に出たな。焦っているのか?」


「そう? 南大陸での妖精王みたいな手段とか大好きだけどなぁ」


 ドクターは何かしらの違和感は感じつつも、


「わかった。後、異世界への扉。開いたことを確認できれば……」


「わかってる! わかってるってば! ドクターが行ける分の魔力障壁(チケット)も用意しておくってば! 信用ならないの?」


「お前、自分が信用される性格だとでも?」


「じゃあ異世界に行けること、信用しない?」


 そう聞かれると、協力している意味がないと思ったドクターは、言いくるめられる。


「フン。約束だからな」


「はいはい」


 クルシアも異世界の扉を開けてから、ウン百回と聞かされたことに嫌気が差しており、ひらひらと手を振ってその場をバザガジールと後にした。


 クルシアは異世界の扉の魔法を用意するため、このゴーレムの最上階に向かっていた。


「これで異世界の扉は本当に開くのですか?」


「ん? まあね。正確には行けるようになるが正しい。王都ハーメルト(あの時)はハーメルトの地脈の魔力と冒険者共の命を供物とし、異世界の扉を開けることに成功している。つまり自分達を守る魔力を確保、もしくは注いだ魔力に応じて、緩和される可能性も高い」


 それについては首を傾げるバザガジール。何故かと尋ねると、


「ケースケ・タナカはどうやって来た?」


「さあ? それは誰にもわかっていないのではなかったですか?」


「でも仮説は立てられる。それは魔力だよ」


 バザガジールはふと鬼塚リリアの発言を思い返す。


「向こうでは魔力が無かったと聞きましたが……」


「向こうの人間が魔力を感知できないだけで、あったのかもしれない。そうじゃなきゃ、別次元の人間が拒絶反応をされるのに、ケースケ・タナカが拒絶されないのはおかしいだろ?」


 クルシアは今は治っている腕をひらひらと振って見せた。


 クルシアの腕を弾かれ、鬼塚リリアと本人のみ移動が可能となったのは、向こうの世界への向かう条件がケースケ・タナカが達していたからだという仮設は通る。


 ならばそのケースケ・タナカはどうやって来れたのか。


 リリア本人のように穴を開けられたわけでもないだろうし、そもそもどうやって来たのかも不明である。


 だが一つ言えるのは、ケースケ・タナカが訪れるまでは、飛躍的に時代が動くことは無かったということ。


 つまり前任者はいなかったこととなる。


 ならばどうやって来られたのかというと、魔力を帯びた身体で、無理やり来たと考える仮設は割と通るのではないかとクルシアは目をつけた。


「確かに……。つまり魔力を保護服代わりにすることで異世界に渡ろうというわけですか。それでこれ……」


「そう。『デス・フェンリル』」


「フェンリル……ですか」


 フェンリルとは狼型の魔物の一種で、一時では精霊の使いとも言われていた。


「これは対精霊用に用意されたゴーレム。デス・フェンリルなんて皮肉染みてて、当時の製作者の性格の悪さが滲み出てるよね?」


「貴方みたいに底意地の悪いね」


「あっ。それ、馬鹿にしてるでしょ?」


 そんな会話もそこそこに、性能について解説する。


「これは所謂(いわゆる)ルーン・ゴーレムの一種でね。外壁には無数の魔法術式が描かれているんだよ」


「その魔法が生贄(サクリファイス)というわけですか……」


「そ。中に入られたら意味は無いんだけど、入るまでに魔力が消失する方が早いから、魔力生命体である精霊は侵入が厳しいのさ」


 詰まるところ歩く魔力回収兵器といったところかと納得するバザガジールだが、いくつか疑問。


「味方の魔力まで吸うのでは?」


「それは問題ない。これだけの質量に施してある生贄(サクリファイス)に、同等の性能は無いからね。どうしても下位版になっちゃうのさ。だから魔道具なんかで対策は可能だ。それにバザガジールは元々耐性型だろ? 生贄(サクリファイス)の影響はあまり受けないから、心配要らないよ」


「なるほど。ではもう一つ、これを動かすのに本来はどれくらいの人間が必要なのだ?」


 これが対精霊用に作られた兵器ならば、ある程度の人数の確保が必要となると考えての質問に、クルシアはニッと笑う。


「そうだね。最低十人くらいはいるかな? 魔力量もそうだけど、ゴーレムを操るわけだからさ――」


「なるほど。貴方……ドクターを切り捨てましたね?」


 お互いニッコリ笑顔で見つめ合っていると、クルシアから笑い始めた。


「アッハハ! そうだよ。だってドクターってば煩いんだもん」


「フッ、フフフ……悪い方ですねぇ」


 ドクターには祭壇にてデス・フェンリルの管理を任せている。


 その発動の際にエネルギー不足を補うために、龍神王の魔石を使用している。


 それがバザガジールは引っかかっていたのだ。


「まあ、ドクターの代わりなんていくらでもいるさ。何せ異世界はこの世界より文明が進んでるんだろ? だったらドクターより凄い学者なんていくらでもいるさ」


「なるほど。では――ザーディアス()もそのように処分を決めたのですか?」


「ザーちゃんのこと?」


 ザーディアスのことを尋ねられると、少し物思いにふけたクルシア。


「ザーちゃんとは仲良くできると思ったのになぁ」


「まあ、仲良くされてはいましたね」


「でしょ? 何だかんだ付き合ってくれてたし、ボクは好きだったんだけどなぁ」


 少しもの惜しそうに語る。


「ですが、裏切っていた兆候はいくらか見えていたでしょうに……」


「まあね。向こうにも情報を渡してたみたいだし。だけど今回はダメだ。今回だけは許されない」


 異世界などという二度と行くことのない世界に行けるというチャンスに、裏切りはあってはならないとクルシアは語る。


「ちゃんと始末はつけてくれたんだよね?」


「ええ。私としても彼と戦う機会が設けられたことには感謝していますよ。彼は謙遜していましたが、かなりの使い手でしたし……」


「そっか。ならこの話は終わ――」


「クルシアぁああああああーーーーっ!!!!」


 何やら苦しそうに叫ぶドクターの声がデス・フェンリル全体に響き渡る。


「おやおや。どうされたんでしょう?」


「多分、自分が噛ませ犬にされたことに気付いたんじゃない? そのための餌を狼ちゃんに用意したわけだしさ」


 バザガジールは龍神王の魔石を思い出す。


「あーあ」


「今頃はドクターとデス・フェンリルの同化が始まって、そのままドクターの意識は消えるだろうね。そうなればもう止められない」


 クルシアはバッと両手を開く。


「――さあ! 神様(オーディエンス)共! 遂にボクはお前達の作った世界を越える時が来た! この世界の全てを吸い尽くしてでも、ボクはこの世界を越える。せいぜいボクらの踏み台になってくれよ! 世界共ぉ!! アッハハハハハハハハッ!!!!」


 するとバザガジールに手を差し伸べる。


「さあ、行こう、バザガジール」


「フフ……」


 この光景にはデジャヴを感じたバザガジール。


 クルシアに誘われて、知らない世界を知った。


 ただ強者を(ほふ)るだけの人生だったはずが、弱者を育てること、その弱者にも強者を一瞬だが超える瞬間があること、そして人の心の強さを知った。


 バザガジールは全て敵の意思など関係なく、倒してきたが、心の在り方によって強さが繁栄されることを強く学んだ。


 それによりバザガジールの視野が広がり、行動にも選択肢が増えた。


 そしてまた変わろうとしている自分にワクワクしている自分がいるとバザガジールは胸が高鳴るばかりであったが、


「私は何をすれば良いので?」


 いつも笑顔で残酷で優しく、狡猾で明るく、冷酷に楽しく振る舞うクルシア(この男)には何かしらの心境の変化はあったのかと疑問に思ったバザガジールだった。

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