10 女の子に尋ねるって割と勇気、いるんです
「――じゃあ……準備も出来たし、出発するよ」
「はーい」
軽やかに、しかし少しテンポを早く、しかし怪我人に響かない程度に馬車を走らせる。
要するには要領良くってことだ。
「予定よりも着くのが遅くなりそうですか?」
「まあね。夜にはなるかな」
それを聞いていた三人は申し訳なさそうな表情をするとこちらへ向いた。
「……ごめんなさい、私達のせいで――」
「はい、ストップっ!」
俺は待ったをかける。三人はポカンとほうける。
「そんなの言いっこなし。三人とも無事ならそれで良し」
「そうだよ。リリアちゃんの言う通りだ。少し遅れたって町は逃げたりしないよ」
「……ありがとうございます」
さて、そろそろ名前を訊かないと不便だ。しかし、女の子に話しかけるのってどうすればいいんだっ! 今までは返事しただけだからできたけど。
くそっ! チキンだった俺! 今の俺に謝れ! 必要なんだぞコミュ力!!
こんな事を考えながら、こんな事を悩んでいるのを気付かれないようにと俯きがちになる。背中は汗でびっしょりだ。
そんな時、助け舟が出た。灰色髪の女の子がばっと右手を上げた。
「はいはーい! そろそろ名乗らないとダメだよね? お世話にもなる訳だし……」
「あっ! そういえばそうだった……。気付かなくてすみません。こんなにお世話になってるのに……」
「中々聞き出すタイミングがなかったからね――」
グッジョブ! ありがとう! 灰色美少女! 元とはいえ男にとって初対面の女の子の名前とか訊くのってハードルめちゃくちゃ高いので助かります。
まあでも、自分から名乗って尋ねるのが普通ですが、それにも気付かない主人公です。色々考えが空回っています。
「じゃあ私から。初めまして私の名前はアイシア。アイシア・マルキスだよ。よろしくねっ!」
元気良く自己紹介したのは灰色髪の美少女。女の子として出ているところはちゃんと出ている。リリアもだけど、この世界の女の子って発育いいの?
「初めまして私はリュッカ・ナチュタルと言います。この度はご迷惑をおかけしました……」
「いえいえ、本当にもういいですから……」
詫びを入れながら自己紹介したのは赤毛の女の子。第一印象は素朴なイメージ。アイシアとは違い、発育の方もあまりよろしくない様子。
やっぱり遺伝かな?
皆さんも中学くらいの時、居ませんでしたか? やけに発育のいい娘と悪い娘。成長期って侮れませんね。




