04 こちらのリリア事情 その三
リリアは昨日、隆成の自宅マンションにて、転移一日目を終えた。
男性の身体になり、混乱することは多々あったが、それ以上にこの世界の技術力に圧倒されていた。
電気で動くテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンなどなど、この世界には電気は必須なのだと知った。
向こうが魔力が日常的に必要なように、こちらでは電気をはじめとする資源エネルギーを活用していることにリリアは感心した。
それを説明していた隆成も、リリアの理解力には圧倒されるものだった。
頭の回転が速く、物事への理解度も並外れていた。
だからこそ隆成は疑問に感じた。何故自殺しようと考えたのか。
だが、あの極度な人見知りや挙動不審な態度などを見て考えると、合点がいったりする。
考え過ぎて答えが集約してしまったのだろうと。
――そんなこんなで翌日を迎え、朝から股間のテントに驚き、大混乱状態のリリアに――男性限定の生理現象だからとだけ伝えて放置した隆成は、リリアが憑依している勝平を連れて、自宅に返すことにする。
勿論、事情を話すためだ。
日差しが強く差す中、相変わらずベッタリなリリア。
野郎がピッタリくっつく光景は勘弁してほしいと思う隆成だが、事情が事情だけに口には出さない。
「どういう反応するんだろうな」
「あ、あの……かっちゃんさんのご両親って……どんな方です?」
さん付けはやめられないようで、
「両親とも結構マイペースな人だよ。特に母親はおっとり天然系」
「は、はあ……」
「リリアちゃんのご両親はどんな感じ?」
隆成としてはここの情報は割と重要。
自殺をするほどに追い詰められた家庭環境であったなら、引き返す必要がある。
家族という関係そのものに恐怖を持たれる可能性があるからだ。
ただ普通についてくるあたり、そうでもないようにも考える隆成だが、異世界に来て感覚が麻痺している可能性も視野に入っている。
何事にも確認は大切である。
「え、えっと……ママはとても怖いです。いつもビクビクしてる私に怒鳴ってきます」
もう少し具体性が欲しいと望む隆成。
愛を持って怒鳴ることと横柄な怒鳴り方をしているでは、捉え方が変わってくる。
リリアは元々常に怯えた態度を取っているせいか、判断が難しい。
「パ、パパは優しいですよ。た、たまに怖いことも言いますが……」
「……?」
優しいのに怖いことを言うのは矛盾しているのではと首を傾げる隆成。
もう少し具体的に訊いてみる。
「母さんにはどう怒鳴られてるか、訊いても大丈夫か?」
「は、はい。え、えっと……ひ、引きこもってばかりいるなぁ、とか。なんで能力はあるのにそんなに卑屈的なのぉ、とか……あ、後は……」
「ああー、悪い悪い。もういいよ、オッケー」
どうやら悪い怒鳴られ方をされていたわけではないようだとホッとひと息。
これだけでは自殺の要因はわからないと隆成は、
「お父さんはどういう人?」
今度は父親について尋ねた。
怖いかとを言うと言っていた一言が引っかかる隆成。
「パ、パパはとにかく褒めてくれるよ、いっぱい。だけど、学校のことを話すと、お、男の子達は狼だから食べに来ちゃうとか、お、女の子達はわ、私が嫌いだから意地悪するからって……パパが守ってあげるって言ってくれたけど、やっぱり怖くて……」
隆成は思わず呆れて、その場で固まった。
要するにはリリアを溺愛していた父親が、余計な口出しばかりして、リリアの被害妄想を広げたのではないかと考えた。
実際、隆成はリリアがどれだけ酷く人見知りの激しい人物なのか、まだ一日目が終わったくらいなのに理解できる。
背後にしがみつかれているのが証拠だ。
本当は触れることに躊躇していたが、やはりハッキリさせた方がいいと隆成は尋ねる。
「なあ? なんで自殺なんてしたんだ?」
「……」
リリアは少し影を落とし、熱し始めるコンクリートを眺める。
「……逃げたかったんです」
「何から?」
「全部です。色んな人から色んなことを言われて、考えれば考えるほど、訳がわからなくなって、で、でも、みんなは言うことをやめなくて……」
リリアは容姿のこと、双属性のこと、性格など、褒めたり貶されたり、色んな言葉を浴びせられてきた。
『こんな卑屈なくせになんでこんなに綺麗なのよ。ムカつくわね』
『リリアちゃんはめちゃくちゃ可愛いよな。守ってやりてえー』
『双属性なんだって。火と闇の……』
『チッ。才能の塊ね。あーやだやだ』
『闇属性ってお似合いっ!! 根暗なアンタにピッタリね』
『これは凄いことですよ! 双属性なんてそうそうありません! 誇っていいですよ、オルヴェールさん』
幼い頃から恵まれた才能を持って育ったリリア。
だがその卑屈的で頭の回る彼女が幼い頃より、あらゆる感情の乗った言葉を無数に投げつけられ、困惑、混乱した。
考えが早くとも、行動や言動にするのが人よりも遅いリリアが自分の意見を聞かれることはなく、飲み込むことがほとんどだった。
故に、誰にも本心を告げられずにいたリリアのとった行動が自殺行動だった。
これならば嫌でもリリアに向けられる感情は制限される。
もうその結論に達した際には学校へは行かなくなり、迷惑をかけ続けてきたのは、両親と村の人達に限定されていた。
だがそんなリリアの背景を知るよしもない隆成だが、
「まあわかるよ、その気持ち」
「えっ?」
隆成なりの解釈からリリアの気持ちに寄り添う話を始めた。
「心無い言葉とか意図のわからない言葉とか、他人がどう受け止めてるかなんて、わかんねえもんな。俺もさ、特に何もしてないのに、男にはとことん嫌われててな……」
隆成も幼い頃より才能と、そして生まれた環境に恵まれていた。
両親は成功者、自分も容姿や能力に優れ、他の男子より達観した印象を持たれていた。
それでも当初は特に男女比関係なく、人間関係を築き上げていた隆成だったが、成長していくうちに周りが変わってきた。
『『『『きゃあーっ!! 八葉君、カッコいい!!』』』』
『……なんかアイツ、澄ましてるよな。ムカつく』
『ねえねえ、お母さんから聞いたよ。八葉君のお父さんって、有名なんだね!』
『アイツ、あんなデカイマンションに住んでんだって。羨ましいなぁー』
『オレ知ってる。アイツみたいなのって、七光りって言うらしいぜ。ドラマとかでさ、贅沢三昧して鼻にかけるような態度の奴で、最終的には主人公に思い知らされる引き立て役』
自分は自分ができることをやってこなしてきただけなのに、周りの見る目や情報はどんどん塗り替えられていく。
子供の頃は色んなことを吸収してしまうことを、その当時から理解していた隆成。
それと同時に隆成は、この好意と悪意が自分を見ていないものだと気付いた。
どちらも『八葉隆成』という個人ではなく、『八葉隆成の環境』しかほとんど見ていないものだと気付いた。
だから隆成はテキトーに遇らうことにした。相手にすると面倒くさいからと。
彼女を作ったのも、テキトーに周りに合わせるのもそのため。
だが、
「そんな時な、学校にゲームを持ち込んでた奴がいたんだよ」
そんな奴はクラスに何人かはいただろうと語る。
「まあ興味本位で覗いてみたのよ。そしたらさ――」
『ん? お前も精霊戦記知ってんの? これは名作でな……』
『今時、ゲームボーズを持ち歩いてんの、かっちゃんくらいだぜ?』
『仕方ねえだろ? 今度これのリメイクが最高グラフィックで出るんだぜ? やっとかないと……』
「――古いゲームやってんなって思った。あの当時でも古臭いドットだぜ? ってわかんねえか」
ドットは理解できないリリアだが、自分に似た境遇の人物なのだと認識はできていた。
「だからちょっと面白そうだしって話を合わせて混ぜてもらったらさ、いつの間にか救われてた」
「……!」
十年も前のゲーム機を楽しげにプレイする勝平と、それを何気なく見て笑う大介と慎一郎の姿があり、その光景は、今まで隆成が遠くから眺めるだけの景色だった。
どれだけ可愛い女の子にモテていようが、馬鹿みたいにはしゃぐ姿には、何故か心惹かれていた。
こんな気を使って、本心を誤魔化して生きることのない、正直な生き方ができないものかと。
隆成が救われた背景にも、周りの変化が要因となっている。
隆成が関わることで隆成にではなく、勝平達に心無い言葉が陰口として叩かれていた。
『なんで八葉君があんなキモオタ共と一緒にいるわけぇ? 生意気なんですけど……』
『八葉が可哀想だからって相手してやってんだろ? 八葉も自分が優れた奴だって考えてんだろ? 狡猾だよな』
それに対して、嫌悪感を抱いた隆成だったが、勝平達はこう話してくれた。
『いや、普通にムカつくけど?』
『は? でもさ……』
『うーん、だって関係ないだろ? アイツらと俺達』
大介と慎一郎もその意見に頷くと、
『言いたいだけだって。自分はあんなつまらなさそうな奴じゃないってさ』
『僕らから言わせてもらえば、個性も無く、群がっていい気になってるあの連中らの方が良くわかりません』
『まあそれはそれで偏見だと思うぞ、しんちゃん。まあでも人なんてそんなもんじゃないか? 自分に関わることには良く考えて行動、発言するけど、自分から遠い存在のことは、テキトーに扱うだろ? そんなもんだって』
隆成は確かにと思った。
ニュースでよく放送される殺人事件や災害、事故。
可哀想だとか同情心が湧いたりはするが、本気で関わろうとは思わなかった。
というより思ったところで、遠い場所の遠い出来事だから、気にしたところでどうしようもないと考えていた。
だがその当事者達にとっては、人生の転機となっていることが多いだろう。
殺人ならば死亡もしくは重傷し、当事者、家族の心境の変化に言葉が欲しいことがあるかもしれない。
災害、事故が起きた場合も同様なことが言えるかもしれない。
だけどこれらの大きな出来事も当事者より離れれば離れるほど、自分が歩んで進む人生に関係ないのが常ではないだろうか。
陰口なんかはその典型ではないだろうか。
関わろうと思って発言していることではない。基本は愉悦感に浸りたい穢れた感情からくるものだろう。
ネットに書かれている誹謗中傷もそうだろう。
あれは顔が見えないという理由も後押しするせいか、尚更タチが悪い。
その発信する人物達はスッキリするかもしれないが、言われた方は一方的に傷付く。
じゃあ向こうの目的は何かと問われれば、その人物を貶めたい。その人物を蔑むことで、自分は優れた人間であると自己満足したい。ただ単に悪口を吐き捨て、ストレス発散したい。
貶めたいという理由以外であれば、こちらが構う理由は必要ないのだと勝平は語ったのだ。
ムカつくし、思うことはあるけれど、気にするだけ無駄だと。
『俺達は悪口言う奴と仲良くなりたいとは当然思わない。悪口言う方だって仲良くしたいわけじゃないだろ? だったら考える必要ないだろ? 自分が大切にしたいもんが傷付くなら戦うかもしれないけど、そうじゃないなら、一緒にいて楽しいことしてれば、そのうち忘れるさ。それで忘れることなら、大したことないだろ?』
『おっ、かっちゃん名言』
『バーカ。そんな大仰なことじゃねえって。人によって大切なもんは違うだろって話。大切なもんがしっかりわかってるなら、そのことだけ真剣に考えて、うじうじでもなんでもすればいいさ』
その時、隆成の気持ちは晴れやかになっていったように感じた。
大切なものと問われれば、イマイチなかった隆成だが、こうして助言してくれた友人達は大切な存在であると気付く。
『それにさ、人の趣味をキモいだのなんだの文句言う奴の気概が知れない。ちゃんと中身、理解してから罵倒しろってんだ』
『そうですよ。キャロット・プリプリ・メルキュアがどんな神作なのかも知らず、その製作陣の苦労や演者達のプロとしての技量なんて、まるでわかってませんね』
キャロット・プリプリ・メルキュアとは日曜朝に放送されている、本来は女子向けの人気アニメ。
人参型の変身道具や武器片手に、フリフリドレスコスチュームで戦うアクションアニメ。
その中身を知っている勝平と大介は、そんな発言をした慎一郎の奇行を知っている。
テレビの前で、明らかに男性が見るには可愛らし過ぎる絵面に全力応援している姿は、
『まあ、そこはわかってるけど、お前の熱量と行動はキモい』
『俺も大好きだが、お前みたいに腰振りながら応援はしない』
『んなっ!? あ、貴方達も僕をキモオタ呼ばわりですか!?』
『わかってるから、呼ばわりするんだろ?』
『ガーン!! き、傷付いた』
そうは言っているが、本心では傷付いていないのだろう。
信頼し合っているからこそ、本心で語ったとしても、何か意図があるのだろうと、自然に感じとれるのだ。
それはとても羨ましい感性だと隆成は微笑んだ。
『しーんちゃん! 俺にも見せてくれよ。その……キャロットってヤツ』
隆成はそんな言葉に救われたとリリアに語った。
「周りの声が気にならないかと言われれば、どうしても気にするのが人の心情だろうが、自分の信じてるもんがちゃんとあれば、迷わないだろ?」
「は、はい。だけど……その……」
リリアにはそんなものを見つけられるのか、不安になる。
「今、リリアが信じられるもんはさ、俺じゃない?」
「えっ?」
「そうじゃなきゃ、しがみついたりしないだろ?」
そう言われて思わず、パッと手放す。
「今、リリアはこっちに来たばかりで、大切にしたいもんはほとんどない。だけど、知り合ったばかりの俺達を手放すと不安でしょうがないなら、とりあえずは俺達やこれから事情を話すかっちゃんの両親を大切にすればいい。ダメか?」
「そ、それは……」
信頼ではなく、利用だと考えてしまうリリア。
それは隆成が説明してくれたものではないだろうと。
だが隆成はリリアのそれを表情から読んで、
「最初のきっかけはなんだっていいさ。ほとんどは自分が社会に馴染んでいくために、グループ作りするもんだろ? それは利用さ」
「へえっ!? な、なんでわかって……」
「リリアはポーカーフェイスって言葉を顔に覚えさせた方がいいぞ」
そうクスクスと笑うと、
「関係性を築くのはどうしたって時間が必要になる。だから焦らなくたっていいよ」
リリアは色んな情報に惑わされて、途中で考えるのに疲れて、自殺に走っていたのだと気付く。
その中で誰かが助けてくれるのではないかと、他人任せになっていたことにも気付く。
行動がどんなに遅くても、行動すれば応えてくれる人がいてくれることに、異世界に来て気付いた。
「わ、私、頑張ります」
「ん。じゃあかっちゃんの親御さんときっかけ作りと行こうか!」
***
鬼塚家に到着したリリアはガチガチに緊張していた。
その様子を横目に見ていた隆成達は、どうしたって別人に見えるくらい固まっている。
その異様な態度に勝平の両親は首を傾げたものの、何か悪いことをした程度に考えていた。
リリアがこの状態では話が進まないと、隆成達が説明することに――、
「……信じられない、が……」
ぶるぶるガタガタと震えている勝平の姿をしているリリアを見ると、どうにも嘘ではないと現実味が増していく。
「本当のようだね」
「は、はい。それで……」
「――ほ、本当に申し訳ありません!!」
リリアはテーブルに思い切り頭をぶつけて謝罪した。
「あ、あの死んでお詫び致しますので……」
「昨日、説得したばかりだよな!?」
もはや癖みたいになっているのだと呆れ果てる。
君彦もさすがに息子の身体で死なれては困ると動揺しながらも、隆成と同じことを言う。
「そんなことはいけない。死んでしまっては、君を大切に想っている人が悲しむ。君だって大切な人と離れ離れになってしまったんだ、わかるだろ?」
「うう……」
リリアも両親が嫌いで自殺を図ったわけではない。
むしろ好きだからこそ、居なくなってしまった方がいいと、自分勝手な考えを起こしてしまっている。
だからここにいるのだと、改めて目が潤む。
「パパぁ……ママぁ……」
「もっと自分のことを大切にしよう。そうすれば家族やみんなをもっと大切にできるはずだ」
「かっちゃんさんのお父さん……」
すると春美は涙でグズグズになっているリリアを抱きしめた。
「よしよーし。辛かったね、頑張ったね。今日から私のこと、ママだと思って甘えていいからね」
「……私のママより、全然怖くない」
「あらぁ?」
そんな二人を横目に隆成達は、元に戻れない可能性の方が極めて高いことを話し、今後のリリアの扱いについて語る。
「君彦さん、夏休み中はまだいいですけど、リリアはこの状態です。それに話を聞く感じ、学校にも心の傷があるようです」
「……それならしばらく休学させて様子をみよう。ただ……異世界、転生? だったかな? よくわからないから出来る限り、顔を出してくれると有り難い」
「わかりました」
こうしてリリアは自分のペースでこちらの生活に馴染ませていくことに決まり、
「コラー。そんなことぉしちゃいけません。めっ! ……どう?」
「も、もっと堂々として怒ってきます」
「うーん……難しいわぁ」
「あ、あの……別にリリアママに似なくてもいいですよ?」
そう隆成達が困ったように微笑んでいると、
「あらぁ? そうかしら? 私だって、怖いお母さん、できるわよぉ」
ぷりっとのんびり頬を膨らませる姿を見た一同は――いや、多分無理と思った。
「とにかくご飯を作ってくれないか? 勝平……じゃなかった。リリアちゃんも美味しいものを食べれば元気になるさ。君達も食べていくといい」
話し込んでいて、気付いたらもう夕方。
隆成達はせっかくの好意だからとご相伴に預かることに。
「「「ありがとうございます!」」」
「ふふ。作りがいがあるわね。何を作ろうかしらぁ? リクエストある?」
大人数ということもあり、カレーなんかが良いと言うと、春美は買い出しへと向かった。
「……」
「どうした? リリア」
「い、いえ。もっと怒られるものかと……」
息子を奪ったも同然の状況のはずなのにと、リリアは俯く。
するとそれを聞いていた君彦は、
「怒って勝平が帰ってくるならいくらでも怒るよ。だけど、そんな顔されて理由を聞けば、まあ怒る気にもならないよ」
「ていうか君彦さん達が怒るところなんて、想像できないです」
「そうだね。あまり怒らないかも」
元々温厚な性格に加えて、突拍子のない話だからか、怒る気は失せたという。
「まあそれに、子供が親を困らせるのは特権みたいなものさ。無事でさえいてくれれば文句もないよ」
リリアは自分の両親もそうだったのかもと、頭を撫でられながら考えた。
「……凄いですね。俺はそんな風には考えられないです」
「まあ考え方は人それぞれだからね。隆成君のおうちのご両親がどんな方か知らないけど、大切には想ってくれているはずだよ。勿論、君達もね」
大介と慎一郎にも不意打ちが飛んできたと大介は、
「う、うっす」
奇妙な返事をした。
「だからリリアちゃんも勝平の姿ではあるけど、無事でいるなら、きっとご両親も許してくれるさ。だから、しっかりと守ってあげるよ」
「う、うう……わああああーーっ!! ごめんなさい!! 本当にごめんなさい!! パパぁっ!! ママぁっ!!」
君彦達ではなく、今は届くはずもない両親への謝罪。
隆成達はこの謝罪がいつか届けばいいなと、心の底から思った。
 




