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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
9章 王都ハーメルト 〜明かされた異世界人の歩みと道化師達の歩み〜
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25 ドクターの罠

 

「随分と派手にやってる」


「で、ですわね……」


 一方のクルシア暗殺組は、慎重に進んでいるにも関わらず、派手な戦闘音が遠く響く。


 ナタルの感知魔法を使うことはせず、フェルサの五感頼りで先を進む。


 だがこちらでも違和感には気付いたようで、


「それにしても罠が少な過ぎますわね」


「少ないどころか無い」


「警備や監視もないしね」


 異常とも捉えられる事態に疑問を抱きつつも、この先から感じる魔力の気配を辿る。


「この先にクルシアがいるのですわよね?」


「うん。確かにクルシアの気配がする」


「にも関わらず、罠が作動されてないってのには気にかかりますわよね……」


 さすっと壁に掘られている魔法陣をさする。


「古代の魔法陣だから発動しなかったとか?」


「もしくは危険過ぎたのか……」


「だとしたら監視や警備が居てもおかしくないのでは? ドクターは地族性の魔術師で、ゴーレムを作れるのでしょう?」


 ドクターの情報は相変わらず少ないが、魔石加工師、地族性の天才魔術師、ゴーレムの生成、これだけの情報があれば、十分警備態勢が作れる人物であることは想像に固くない。


 違和感を感じつつも、目的の人物まで確実に近付いていることから、標的を目視してからと先に進む。


 そして――、


「着いたよ」


 とある部屋の前に到達し、そっと覗き見ると契約魔法の解除の魔法陣だろうか、その中心部にクルシアの後ろ姿があった。


「クルシアですわね」


「いや、顔が確認できてない」


「でも……」


 すんすんと鼻を鳴らす。


「クルシアの匂いが濃い。あれは間違いなくクルシア」


「気付いていないようですわね」


 寧ろ今騒ぎ立てている方向を見ているようだ。


 いい感じで陽動が成功していると言ってもいいと順調さを感じる。


「さて、ここからですわね」


 三人は未だこちらに気付いていないクルシアを仕留めることに重点を置く。


 先ず、部屋内を見渡すように見ると、特に変わり映えのしない遺跡の一室。


 おそらくは広域の魔法陣を張るために用意された部屋ではないかと推測される。


 そのせいなのか、ここまでの道のり同様、(トラップ)らしいものは見当たらない。


 たださすがに無防備というわけではないようで、ゴーレムが二体、クルシアを挟むように警護している。


 だとしてもお飾り程度にしか見えないのが、遺憾とし難いところ。


「作戦、どうする?」


「私に考えがありますわ。この部屋に三人で突撃しますが、先ず二体のゴーレムに私が牽制します」


 風属性の魔法であればゴーレムに有効であり、更には攻撃速度も早い。


「二体のゴーレムが怯み、バランスを崩したところにヒューイさん、貴女は真っ直ぐにクルシアを狙ってくださいな。ゴーレムは私とフェルサさんで押さえますの」


「なるほど……。了解」


 ヒューイの役目は獣人であるフェルサでも良いのだが、神速の剣技である抜刀術を使うヒューイの方が加速力があるため、この作戦向きだと判断した。


 元よりミナールはそのつもりで送り込んだのだろう。


「作戦は一度きりの一発勝負。しかも時間もない」


 現在進行形で陽動してくれているが、増援を呼ばれる可能性はあり得る。


 それは皆、承知しているようで、


「……いきましょう」


 先陣を切るナタルがひゅんと杖を取り出し、一呼吸すると、指を三本立てて、カウントしていく。


 三……二……一……ゼロ。


 手を振り、サインを出すと三人揃って部屋へと入る。


「!?」


「――ウィンド・アロー!」


 渾身の魔力を込めた風の弓矢がゴーレムへと向かうと同時にフェルサは駆け出し、ヒューイは抜刀術の構え。


 右のゴーレムは頭部分を、左のゴーレムは片足部分に命中し、バランスを崩した。


 フェルサは飛び上がると右のゴーレムに飛びかかり、かかと落としで地面に叩き伏せる。


 そしてフェルサの陰で隠れていたヒューイが姿を現すのを目視した瞬間――、


「抜刀」


 ザシュっとクルシアの首を刎ねた。


 ヒューイの抜刀術のタイミングを図られないように、フェルサがクルシアの視界を制限していたのだ。


「や、やっ――」


「ってないわ!」


「えっ?」


 首を刎ねたはずのヒューイが取り乱して後退すると、フェルサも一緒に後退した。


「ど、どういうこ――!?」


 ヒューイに確認をとるまでもなく、原因がわかった。


 クルシアだと思っていたものはペリペリと皮膚が剥がれていく。


 すると、見覚えのある半透明の姿になった。


「あ、あれは……!!」


「あれが何かわかるの? とりあえず斬った感覚は人体ではなかった。……おそらくは鉱物、ゴーレムね」


 身代わりだったかとヒューイは落ち込むが、ナタルとフェルサの様子は驚愕の表情だった。


「い、いえ……あれはゴーレムなんかじゃありませんわ!!」


 すると首の取れたクルシアもどきは立ち上がって振り向く。


 それはマネキンのようにクルシアの服を着せられたものだった。


「あれは……テテュラと一緒」


「人体の……魔石化!?」


「素晴らしい。やはり目撃者の証言を聞くと安心するものだ」


「「「!?」」」


 パンパンパンと拍手を鳴らす男の姿があった。


 白衣姿、明らかにドクターと名乗っていても遜色ないその姿を。


「貴女、ドクターで間違いありませんの?」


「ふむ。やはりこれが人体の魔石化か。なるほど……これはもっと調べる価値があるな」


「人の話を聞け!」


 ナタルの質問に対し、無視しているかのような発言にヒューイが斬りかかる。


「!」


 だが首の無い人体魔石は彼女の前に立ちはだかると、拳を打ち込む。


「――かっ!?」


「ヒューイさん!」


 その威力は凄まじいものだったらしく、放物線を描きながらヒューイは後退した。


「大丈夫ですの!?」


「けほっ、油断した」


「やれやれ。血の気が多い。私の思考の時間を妨げないで頂きたい」


「それが敵を前に現れた人間のセリフですの?」


 ドクターはこっちとの対話の意思を示したかのように現れたのだ、対峙するために出てきたのかと思うもの。


「君達の都合だろ? こちらにはこちらの都合がある。君達の話なんて私には微塵も興味も無ければ、合わせる気もない。君らだって私の都合など、微塵も興味ないだろう?」


 確かにドクターの都合はどうでもいいが、それじゃあ会話が成立しないだろうと、コミュニケーションを取る意思が全く無いことを確認した。


 しかし、こちらとしてはクルシアでは無かったこと、擬態させていたことに関しての説明が欲しいところ。


「だとしても答えてもらわねばならないことがありますわ」


「ふむ。ならば私の実験に付き合ってもらう。その限りで答えられることを答えてやろう」


 パチィンと指を鳴らすと、もう一人の人体魔石化の少女が現れた。


 半透明で全裸姿の彼女は、こちらへ襲ってくる。


「くっ……」


 三人の中心まで瞬時に来て殴りかかってくる。


 地面に打ち込まれた拳はその石畳を軽く破壊する。


「人体魔石化でこんな強度なんて……」


「アイツを仕留めれば……!」


「待って!」


 フェルサは人体魔石を操っているだろうドクターを仕留めればと、駆け出すが、


「!?」


 後ろから気配を感じた。


 バッと振り向くと、目を閉じたままの人体魔石が拳を振り下ろしていた。


「――がっ!?」


「フェルサさん!!」


 フェルサはその勢いのまま地面に叩きつけられたが、受け身を取って、ナタル達と固まる。


「大丈夫?」


「平気」


「それにしてもあの人体魔石……テテュラさんのものとは別物ですの?」


 テテュラの人体魔石化はあまりにも脆く、魔力を注ぐどころか、人が触れることも難しいとされていた。


 だがこの人体魔石はそんな要素など一切ない。


 実際、見る限りはテテュラと違い、ヒビ一つなく綺麗な透明感のあるグリーンの色をしている。


 そしてドクターは首が取れた人体魔石も修復が済んだのか、そちらの半透明の全裸姿の男性人体魔石もこちらへと向かう。


「どういうこと?」


「テテュラさんの時はあれほどの強度をしていなかったのです。あれは本当に――」


「クルシアからの情報の下、私なりに人体魔石を作ったものだ」


 自分の研究の成果をひけらかしたいのか、話したいことは話すようで、


「人体魔石を作ったですって……!?」


 だが人体の魔石化がどれだけ酷いものなのかは知っている二人の表情は険しい。


 ヒューイも人体の魔石化などと聞けば、あまり良い話ではないことくらい想像がついた。


「ああ。テテュラの場合は無理やり引き千切った後に、インフェルノ・デーモンによる魔力操作により、人体の細胞を確保されたとか。だから人体魔石化としては不十分だったのだ。まあ確かに、人の意思が宿る魔石というのにも、非常に魅力を感じるものだが……とりあえずは人体の魔石化を見てみたいと思ってね、幾人かを魔石化させてもらった」


 何の罪悪感も無く、けろりと話すドクターに苛立ちを覚える。


 おそらくはファニピオンの時のように勧誘した奴隷達を言いくるめて実験したに違いないと悟る。


「見てみろ。たった二体ではあるが、中々の成果の物が出来た。やはり魔石とは素晴らしく、その造形と性能を表現できるゴーレムは正に神秘の代物だ」


 自慢げに、完全に魔石化している二人の人間を紹介している。


 その全裸の男性と女性は静かに眠るような表情を浮かべ、佇んでいる。


「本来、ゴーレムとは魔石が本体であり、その魔石に施された術式、もしくは自然的に集まった魔力などで周りの土や石などから形成される。しかし、この人体魔石ゴーレム……とりあえずホムンクルスとでも名付けておこうか? こいつらは人間が魔石化したことにより、本来の魔力回路とは異なる性質を持つことが判明した。おそらくは人間と魔物、そして魔石の魔力循環率が作用し、まったく異なる魔力回路が生成されたのだろう。そこで――」


「そんな話を聞きにこんなところに来たんじゃありませんの!!」


 ナタルはドクターの話を一蹴するも、止まる気配がない。


「この魔石自体が自立できないかを試してみた結果がこれだぁ。さすが人間が素材となっているだけはおる、今までのゴーレムとは別格でね。それもそのはずなのだ――」


 こんな胸糞悪い話と人体魔石(もの)を見せられても腹が立つだけだと、ドクターを取り押さえるよう、攻め手に転じる。


「あの男を仕留めればいい?」


 抜刀術を構えるヒューイが尋ねるが、首を振る。


「あの男は何かしらの情報を持っているはず。できれば生捕に……」


「わかった」


 するとその場からヒューイはいなくなり、その長剣の範囲内でドクターに向かって斬りつける。


「!?」


 キィンと、硬い物に刃物が擦れた音が鳴った。


 男性型人体魔石(ホムンクルス)がその抜刀術の軌道を読んで、ドクターを守ったのだ。


「くっ……!」


 一度距離を置こうとするが、男性型人体魔石(ホムンクルス)が果敢に攻め、ヒューイも対抗せざるを得ない状態となる。


 激しい剣撃を与えるものの、男性型人体魔石(ホムンクルス)はそれを捌いては、隙をついて殴ってくる。


「ああ……っ!!」


 その威力は並の格闘家の魔力を宿した拳など簡単に凌駕するものであり、風圧だけでもバランスを崩される。


 何とか自分の不利な間合いから抜け出したいヒューイだが、男性型人体魔石(ホムンクルス)はそれを許さない。


 一方、女性型人体魔石(ホムンクルス)もフェルサと乱戦状態に入る。


 獣人の近接、風読みにも対応できるなど、凄まじい戦闘能力を披露する。


「こんなゴーレムが……」


 そんな戦闘中にもドクターの解説は続いていた。


「この人体魔石(ホムンクルス)は九割が魔力という化け物だ。しかも魔力の循環率は言わずもがなだ。ほぼ無尽蔵に戦うことが可能であり、精神型や肉体型でも差異が無いということも調査済みだ。つまりはこのクオリティを保った状態で量産できる可能性があるのだ」


 ナタルは自分の魔法の援護も意味がないと判断する。


 ゴーレムのような地族性に有効のはずの風魔法がホムンクルスには聞いていないのも、今の説明を聞けば合点がいった。


 身体能力が高すぎる影響もあるが、魔石は属性はあるものの、地族性に限定されるものではない。


 つまり魔石の身体である人体魔石(ホムンクルス)に風魔法は優位性がないのだ。


 その上で、胸糞悪い解説をやめない一人語りのドクターに問う。


「貴方のご自慢の人体魔石(ホムンクルス)とやら、何故人間のようなしなやかな動きができるのです?」


 人体魔石(ホムンクルス)は名の通り、石である。


 ゴーレムのように関節部を岩と岩の間で形成したり、土や泥のような柔らかな素材でない限り、人間のような動きを再現することは難しいだろう。


 だが二人が戦う人体魔石(ホムンクルス)はそれを成している。


 しかも攻撃の威力や刀を受けた際の鋼音がする辺り、鉱物のままだと判断できる。


 つまり矛盾が生じているのだが、ドクターはよくぞ聞いてくれましたとばかりに解説する。


「先程も言った通り、この人体魔石(ホムンクルス)はほとんどが魔力だ。魔石はそもそも魔力だということが重要なのだ。簡単に言えば魔力回路の変質により、魔力の性質を変化させ、人間の皮膚のようなしなやかさを再現しつつ、瞬時に硬質化も可能となったのだ。筋力については通常のゴーレムと異なり、これも人間のような筋肉を身につけることを可能としている。魔力操作により、魔力そのものを筋肉の役割としたのだ。そうすれば先の説明の性質に魔力操作による筋肉運動が加われば、ほぼ人体と変わらぬゴーレム――人体魔石(ホムンクルス)が誕生したというわけだ」


 その説明を聞いた二人は改めて対峙している人体魔石(ホムンクルス)を見る。


 確かに魔力の流れが異常をきたしている。


 繰り出される打ち出す拳の腕も、確かに筋肉運動されている。


 まるで人体の筋肉の動きをそのまま見ているかのようだった。


 ドクターは人体から魔石化したことも、それを可能にした要因ではないかと語ると、


「さて約束通り、私の実験に付き合ってもらっているのだ。聞きたいことを話してみろ。答えてやろう」


 上から目線で尋ねてくる。


「こんなことをしていいと思ってますの!?」


 この人体魔石(ホムンクルス)は元人間。これに対し怒りを露わにするが、


「それが聞きたいことか? そんな頭の悪い質問を続けるつもりなら、早々に切り上げるぞ」


「なに!?」


「時間は有限であり、私の気分も今は好調にある。この人体魔石(ホムンクルス)や異世界という探究心がくすぐられている今がな。だが、そんな感情任せな質問で食い潰されることは不愉快だ。お前達が来た目的は……これだろ?」


 男性型人体魔石(ホムンクルス)が着ていたクルシアの服をヒラヒラとたなびかせる。


 戦っている二人は質問ができる状態ではない。


 人体魔石(ホムンクルス)は許せないが、事情を聞けるというのならば、この好機を逃す手はない。


 怒りを殺すように、一呼吸置く。


「単刀直入に訊きますわ。これは罠かしら?」


 息を呑んで、いきなり確信をつく質問を投げかける。


 正直、罠であれば十分絶望的な状況。


 ドクターの返答は――、


「ああ。そうだ」


 こちらの覚悟をさらりと踏み躙った。


 するとダダダと走ってくる足音が聞こえ、


「くそおっ! おっさん、てめ……ってアレ?」


「リ、リンスさん!?」


 息を切らし、文句を叫ぼうとしたリンスと合流する。


「リンス……貴女どうし、って!」


 男性型人体魔石(ホムンクルス)の攻撃を凌ぎながら尋ねるヒューイに、リンスが混じる。


「あのおっさんに! 飛ばされちまってな。適当な道を走りまくってたら、ここに行き着いたってわけだ」


 リンスは複数の道を何度も往復したという。


 感知魔法が使えないリンスは、最早消去法でなければ元の場所に戻ることが叶わなかったのだ。


「行った道くらい覚えなさい」


「苦手なの知ってるだろ。だが丁度いい、多分これ罠だ」


「!?」


 二人掛かりでも苦戦を強いる中、リンスは先程メルトア達と罠ではないかということを報告する。


「ほう、見抜いたのか? まあここに来てからでは遅いがな」


「るっせえ!」


「それで罠かどうかの質問だったな? まあ元より貴様らが来ることは想定済みだ。ザーディアスが転移石を置いて来たと言った時点で、このような機会はあるだろうとな」


「くっ……!」


 悔しがる中、ドクターは次の質問は無いかと問う。


 この余裕のある表情と貫禄を見せつけられるのは、不快だが、


「ならクルシアはどこ!?」


 話すつもりがあるならばと尋ねると、


「今頃はお前達の国にいるだろう」


「「「「!?」」」」


 予想外の返答が返ってきた。


 ナタル達の頭に過るのは、クルシアは今現在、契約魔法により動けないはずだということ。


 たとえ動けるとしても、自分達にちょっかいを出すことは不可能であること。


 にも関わらず罠と答えたドクターに、更に質問する。


「何故、彼がハーメルトに? 何が目的で……?」


 すると答えるのも馬鹿馬鹿しいと、吐き捨てるように答えた。


「それは貴様らが一番よく知っているだろうが。――異世界の扉を開けるためだ」


「なっ……!?」


 リンスとヒューイは頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ顔をするが、相当マズイ状況だとわかったフェルサが女性型人体魔石(ホムンクルス)を振り切り、ドクターに殴りかかる。


「詳しく説明しろ!」


 ドクターの顔面の前で、ピタリと拳は止まる。


 決して殴るのを止めたわけではない。止められたのだ。


「ぐっ……」


 飛び込んだフェルサの腕を女性型人体魔石(ホムンクルス)は掴んでいたのだ。


 そのままナタルのところまで投げ飛ばす。


「大丈夫ですの?」


「うん!」


 フェルサも攻撃の手を緩めるつもりはなく、再びドクターに攻め入るが、行手は半透明の魔石に止められる。


「邪魔!」


 それを遂には愉快そうな笑みを零し始めるドクター。


「具体的に話せ、か。本来ならば一蹴して断るところだが、異世界の扉までもう少しのところまで来ている。……いいだろう」


 パンパンと手を叩くと、大量の召喚陣が展開する。


「こ、これは……!」


 召喚されたのは、魔石化が進行している人間がくっ付いた魔物だった。


「お前っ!!」


「フフフ。このゴミ掃除と引き続き人体魔石(ホムンクルス)の相手を任されてくれるなら、その片手間に話をしてやろう」


 一気に乱戦状態に持たれ込むが、リンスとヒューイは慣れた様子で魔物を狩る。


「はっ! くっついてる連中には悪りいが、障害になるなら消えてもらうぜ!」


「斬る」


「待って下さい! その人達はまだ……」


「馬鹿野郎! その躊躇(ちゅうちょ)が自分の首を絞めるんだ! どう見たって助からねえだろ!?」


 召喚された魔物にくっついた人達は、生気を宿してはいなかった。


「くっ……」


 こんなものを作り上げたドクターを睨むが、動じる様子はない。


「では語ってあげましょうか」

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