08 内臓とかリアルで見たくなかった
「ふう……」
どうやら解体は済んだようだ。一息つく声が聞こえたが、俺は完全に視界を逸らしていた。
だって内臓とか平気で出てたんだよ! 逸らしてもくちゃくちゃって水音が聞こえてたけどさぁ。鳥肌が立ちまくりだったよぉ。
すると赤毛の女の子は少し血に汚れた魔石を布で拭くとこちらへ歩いてくる。
「はい、こちらは貴女の物です。少し血生臭いかもしれませんが……」
真ん中あたりが茶色く光る魔石を差し出した。その魔石は彼女の手いっぱいの大きさでごつごつしている。
「え? いいの?」
「勿論ですよ。ホワイトグリズリーを討伐されたのは貴女ですから」
「そうだよ! 受け取りなよ」
使い道が分からんが、助けた二人にこうも言われたら貰うしかない。
「あ……ありがとう」
こういうのって分かる人が持ってた方がいいんじゃないか? 後でバトソンさんにでも訊くか。
「残りなんですけど……」
上目遣い気味にこちらを見ながら何やら言いたげだ。
「えっと、何?」
実際女の子と喋るのなんて何年ぶりだろうか――他人行儀な喋り方をする。
「その魔石以外のこちらの戦利品はどうしますか? 一応全部貴女の物ですけど……」
そう言いながら解体したホワイトグリズリーを見せる。
正直モザイクっていらねぇとかネットサーフィンして散々思ったけど、ごめんなさい!! 今モザイクをかけられるなら是非、このグロテスクな数々にお掛けくださいませ!!
「い、いや……どうしろって言われても……今はとりあえず持ち帰ればいいんじゃないですか?」
「はい。それはそのつもりなんですけど――」
ツンツンと赤毛の女の子の肩をつつかれた。
「リュッカ、お店での癖が出てる。この人、顔引きつってるから……」
顔色が悪い俺を見て、はっとなり我に帰ると素早くぺこぺこと頭を下げた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。つい癖で……こういうの初めてですか……?」
「は、はい……」
「目の前で解体を見るのも初めて……ですか?」
恐る恐るゆっくりと聞いてくる。正直、あの戦闘よりこちらの解体の方が精神的にキテた俺は力無く答えた。
「はい……」
「ごめんなさい! ごめんなさい! ちゃんと確認してからやるべきでした。本当にごめんなさいっ!!」
ぺこぺこ謝る赤毛の女の子に灰色の髪の女の子はフォローを入れる。
「まぁ無理ないよ。あんなに簡単にBランククラスの魔物をあっさりと頭を撃ち抜いて倒した人が、こういうのが苦手だなんて思わないもんね」
「ううっ……」
「とりあえずさ、持ち帰れるものは馬車の方へ持っていかない? お……じゃなかった、私分かんないし……」
あまりにも精神的にキテたのか一人称を間違いかける。
「はい、わかりました」
二人は解体された戦利品を何気なく拾い、運ぶ。
本当なら手伝わなきゃいけないだろうけど、無理!
異世界でもリアルは現実なんだなと――ちらっと後ろの二人の戦利品を見る――鳥肌と共に感じた。




