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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
9章 王都ハーメルト 〜明かされた異世界人の歩みと道化師達の歩み〜
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21 暗殺計画

 

 目を覚ますと、見慣れない天井を眺めた。


「ん……」


「リリィ! 良かったぁ。起きたんだね?」


「リリアちゃん……!」


 俺が寝ているベッドの隣にはアイシアとリュッカが居てくれた。


 アイシアに至っては手を握ってくれている。


「私……」


 俺はゆっくりと起き上がると、どうして寝ているのかを思い出す。


「! そうだ、ママは!?」


 俺はミリア村での報告の冒頭を聞いて気絶したのだ。


 すると事情を知っているのか、二人は少しばかり目を逸らす。


「……ま、まさか……!」


 青ざめていく俺を見て、アイシアが両手を忙しく振って否定。


「違う違う! みんな無事……だよ。ホントだよ」


 無事の間が気になったが、嘘がつけない性格のアイシアのことだから、真実なのだろう。


 だがタダでは済んでいないことも同時にわかったことだった。


 隠していてもすぐわかることだからと、リュッカが少しずつ教えてくれた。


 ――先ず、ミリア村にバザガジールが襲撃してきたとのこと。


 そこにいた冒険者達もバザガジールとは相手にできるはずもなく、騎士達の誘導の下、村人達と共にクルーディアへ向かい、避難したとのこと。


 その後は騎士達や魔術師団ではまったく相手にならず、リンナが攫われそうになったところ、アリアが暴走。


 その激しい戦闘の末、ミリア村は壊滅。南大陸(むこう)での妖精王の奮闘の残骸のような光景になったという。


 その時、ギルヴァは右腕を失い、アリアは半魔物化状態から元には戻っておらず、この二人より怪我が浅いリンナやガイツさえもまだ意識が戻っていないそうだ。


 同行していた騎士達によると、バザガジールとの戦闘での負傷もそうだが、アリアの魔人マンドラゴラの能力による後遺症もあるのではないかと言っている。


「――そ、そうか……」


「落ち着いたら様子見に行こ。殿下達から許可もらってるから……」


「ありがと……」


「とりあえず今はリリアちゃん自身も休もう。それも言ってあるから……」


「あ、ありがと……」


 情けないと思いながらも、やはり心が騒つく。


 あの時の行動が正しかったのかどうか、みんなからはあれが最善だったと言われてはいたが、こうして被害を見ると、違ったのかもしれないと不安が(よぎ)る。


 本当はあの場で、レイチェルを死守しながらクルシアと戦った方が得策だったのではないだろうか?


 異世界人だとバラした際、敢えてクルシア達の元へ行き、協力するフリをして、解決策をじっくり検討した方が良かったのではないか?


 いっそのこと、死んだ方がよかったのではないか?


「――リリィ!」


「――は、はい!?」


 ぼおっと考え事をしていた俺に大きな声で呼びかけられ、我に帰ると、アイシアはギュッと抱きしめてくれた。


「アイシア?」


「大丈夫。リリィは悪くないよ」


「! ど、どうして……」


「わかるよ。顔に自分が悪いんだって書いてある」


 リュッカも少し眉を曲げて、同意するように困った様子で微笑んだ。


「私達も今のリリアちゃんにどう声をかけていいのかわからないけど、不安になる気持ちは誰にでもあるよ。リリアちゃんの今の状態なら尚更ね……」


「……」


 俺が本当のリリアでない状態で、この出来事の数々での心境に、かける言葉が見つからないと語るリュッカ。


「だけどリリアちゃんは一人じゃないよ。貴女のことを理解してくれる人達がちゃんといる。どうしても吐き出したいことがあるなら、ちゃんと受け止めるから……」


「そうそう!」


「……! ありがとう、アイシア。リュッカ」


 そうは言ったものの、


「でもリリアちゃんの本当の性別って男性なんだよね? 気持ちを吐き出したいなら、男性と相談した方がいいのかな?」


「……」


 せっかく良い話で区切られそうだったのに、余計な気遣いが飛んで来た。


 そんなこと気にしなくてもいいのにと思う反面、確かにそうかもと思ってしまった。


 実際、俺はシドニエを中心に男性への話し方は割とフランクな気がする。


 そういう意味では合っているだろうが、女性の身体をしている俺が、男性に親身になって相談して欲しいなどとなると、相手が勘違いを起こす可能性は大いにあり得る。


「でもリリアちゃんは女の子だよ? やっぱり相談してくれた方が嬉しい」


「うん。それは私も同じ気持ちだけど、やっぱり内容によっては話にくいこともあるよ」


「そっか……」


 いや、普通に相談に乗ってくれるよ、だけで良かったのに、変に気遣ってくれてるせいか、変な方向に路線がズレていく。


「私達に話したかったら聞くよ! でいいかな?」


「とりあえずはね?」


「う、うん……」


 俺は一体、どんな返答が正しいんだ?


 外見と中身が違うだけで、これだけ考えさせて申し訳ないと、困ったように返事をしてしまった。


 アイシア達も善意で気を遣ってくれている手前、要望するわけにもいかなかった。


 ***


「事態の整理をしようか」


 運ばれて来たギルヴァ達の様子を見てきた一同は、陛下の応接室での会議を始めることに。


 王宮騎士第一隊長であり、陛下の側近騎士にもあたるオリヴァーンが集めた情報を報告。


「はっ! 西大陸ではパルマナニタにて、ザーディアス、リュエルを確認された、五星教ミナール様とデューク様一行が――」


「フン」


 紹介に預かり、ミナールはお辞儀し、デュークは不機嫌そうにそっぽを向く。


「交戦し、ザーディアスにシモン様が攫われ、リュエルは五星教ヒューイ様とヴィ様により、氷漬けとなった状態で捕虜とされております。続きまして、ほぼ同時期にミリア村にてバザガジールを確認。辛くも退けましたが、甚大な被害が確認されております」


 それはギルヴァ達の様子を見て、把握している一同。


 無事に意識を取り戻してくれることを願うばかりである。


 特にアリアは、半魔物化状態で運ばれ、ヴァートがテテュラを調査している際のノウハウを活かし、治療を進めている。


 目覚めたとしても、どのような状態で目覚めるかわからないため、厳重な警備態勢の下、戻ってきたばかりのアライスもサルドリア達を呼び寄せるよう、向かわせもした。


「……あちらに与えられた損失は、リュエルの死亡とバザガジールの疲弊といったところか……」


「大した成果でもないな。危うく黒炎の魔術師の母親も連れて行かれそうになったんだろ? 運が良かっただけだ」


「まぁたあんたはそんなこと言う」


「事実だ」


 陛下が目の前にいても憎まれ口は健在。


「これを踏まえて、これからの対策だが――」


 この後の防衛について語ろうとした時、


「奴らのアジトに乗り込む」


「「「「「!?」」」」」


 憎まれ口から無謀な提案が飛んできた。


「はあっ!? 馬鹿なのあんた? リュエルってあの獣人と戦ってわかってるでしょ? あんなのがゴロゴロいる組織のアジトなんて行ったら、殺されるだけだって……」


「馬鹿はお前だ、ヴィ。奴らは少数組織。その主戦力であるリュエルは仕留め、バザガジールは負傷させた。……話によれば回復も時間がかかりそうなのだろう?」


「あ、ああ。部下の話によると、魔人マンドラゴラの影響でかなり神経感覚をやられてしまったと報告を受けている」


 それは戻ってきた騎士達の容体からも判断ができることだった。


 気を失い、地面に伏せていた彼らにすら、影響のある音波攻撃をモロに食らっていたバザガジールが、万全の状態に戻すのは、多少の時間はかかるだろう。


「なら仮にバザガジールが現れたとしても、仕留めるチャンスにもなり得る。攻め時だろ」


「待ってくれ、デューク。彼らのアジトの構造も上手く把握できていない挙句、ザーディアス殿とドクターは健在だ。いくら抵抗ができないクルシアを仕留めることとはいえ、あまりに危険だ」


 ハイドラスが最も懸念しているのはザーディアス。


 地の利がやっとでさえ向こうにあるのに、空間移動を容易くできるザーディアスは脅威の一言である。


 乗り込むには万全を期す必要があると語るが、デュークはキッと睨む。


「敵のアジトに乗り込むんだ、安全の確保なんて馬鹿なことを考えるな」


「!」


「むしろこのチャンスを逃す方が無能だ。奴らの戦力がここまで削がれたことがあるか?」


「そ、それは……」


 クルシアは契約魔法で抵抗できず、バザガジールは負傷、リュエルは仕留められており、主戦力がザーディアスとドクターの二人のみ。


「向こうに行ける転移石があるんだろ? 乗り込むべきだ」


「あのクルシアのことだ、何かしらの対策をとってないとも考えられない。奴の狡猾さをお前は知らない」


 デュークとハイドラスの両意見がぶつかる中、陛下が尋ねる。


「……具体的な作戦はあるのか?」


「ち、父上!?」


 存外聞き分けがないわけでもないらしいと、鼻で笑うと、


「そんな難しい作戦は考えてないが、兄さんを救うことも考えれば、陽動と暗殺を両立できると考えただけさ」


「……つまりは陽動役を買って出ると?」


「ああ。クルシアって奴とは面識ないんだ、オレ達。そうするしかないだろ?」


 不敵な笑みを浮かべながら、陽動作戦を提案するデューク。


「それこそ危険過ぎる!」


「そ、そうだよデューク。そ、それにその言い方だと……」


「オレ達が陽動役だ」


「「や、やっぱりぃ〜」」


 ネイとヴィは予想通りの返答に、身を寄せ合ってわかりやすく怖がる中、


「その陽動役、我らも買いましょう」


「えっ? ミナール殿」


「正確には陽動だけでなく、暗殺の方にも協力させていただきたい」


「しかし、ミナール殿……」


 陛下達側からすれば客人であるミナールに、そのようなことをさせるのは忍びないと、苦悶の表情を浮かべる。


「私達がここへ来た理由はご存知のはずです。リュエルを確保しており、事態をお伺いしに来た次第。クルシアのことは最早、ハーメルト(あなたがた)だけの問題ではありません」


 南大陸では戦争の火種役として、西大陸では龍神王の死からなる魔力の減衰問題に直結。


「それに個人的にも因縁のある相手。このような機会を逃す手はありません」


 共に国のためにと働いていたリアンの死は、やはりこたえた。


 あの日のことを後悔しない日はないほどに。


「どうするよ? 陛下、殿下……」


 ナタルもデュークとミナールの意見を尊重するように、覚悟を秘めた瞳で訴える。


 デュークの問いに答えを求められるハーメルト王族。


 ザーディアスからもらった転移石はこの国が管理している。


 かなり悩む二人だが、確かにこの好機を逃すことはリスキーだと考え始める。


 するとハイドラスは父に決定権を委ねるように、視線を送った。


「……わかった。どうか協力をお願いしよう」


「よし!」


「ありがとうございます」


 ならばと早速、作戦会議を進める。


「先ず、ハイド。転移石のコピーはできているのか?」


 ザーディアスから確保してから、万が一のため複数個作っておくことにしていたハイドラス。


「まあ二、三個ほどの確保はあります」


「あのサイズと魔力量だと一つにつき、二、三人程度までか?」


「はい。そうなりますね」


 つまりは道化の王冠(クラウン・クラウン)のアジトに向かえるのは、六人から九人ほど。


 暗殺をメインとするなら、十分な人数だろう。


「それでデューク殿は陽動に出られると?」


「ああ。派手に兄さんを探し回れば、牽制にもなるだろう」


 なんとも行き辺りばったりな作戦内容だが、バザガジールの回復を待たないためにも、迅速に内容を決めるべきだろう。


 そういう意味ではわかりやすい作戦の方が、対応もしやすい。


「その陽動要員には、うちの派手な者を用意しましょう」


「派手……ですか」


 心当たりがあるナタルは、その人物が当たっていますよと微笑むミナールと視線が合った。


「リンスちゃんとメルちゃんを(よこ)します」


「その二人を割いて、西大陸は大丈夫なのですか?」


「ご心配には及びません、勇者。ナジルスタの騎士団やユネイルさん方も居られますし、私もいます」


「お前は来ないのか?」


 自分から作戦に入りたいと割り込んだわりにはと、首を傾げるが、ミナールはしっかりと自己分析をしていると解答。


「私はそのような任務には向かないと理解しています。どちらかと言えば、今まで闇属性を抹殺してきた三人の方が適任かと……」


 メルトア達は、今の前の環境では隠れていた闇属性持ちの暗殺をしていたが、ミナールは魔術師ということもあり、たまにしかしなかったそうだ。


「なるほど。彼女らが協力してくれるなら、頼もしい」


 陛下は激励するも、クルシアとの格差を見せつけられているのを知ってる者達は、少し困った表情を見せた。


「では暗殺の方には……」


「ヒューイに任せようかと……」


 リンスは性格や戦い方から向かず、メルトアは三属性(ドライ・エレメント)であるが故に、どうしても目立ってしまう。


 結論として素早い動きと最速の剣術が使えるヒューイとなる。


「残りの暗殺要員は……」


「是非! 私にやらせてくださいな」


「お前……」


「陛下や殿下の仰りたいことは承知しております。ですが、どうか私にもやらせて下さい!」


 ナタルはいつもより冷静な立ち振る舞いで、懇願する。


 すると、ひょいっとフェルサも挙手。


「私は鼻が効く。ぶっつけ本番の場所での融通が効く。ただ冷静な判断ができる人間が欲しい」


「フェルサさん……」


 そう言われてしまうと中々拒否ができないと、ため息が出る。


 はっきり言うと、ハーメルトの人員を割くことは難しい。


 クルシアの狙いの本命である、リリアとアルビオを守らなくてはならない。


 そのため、ハーディスやウィルクは勿論、オリヴァーンを始めとする騎士達も送れない。


 更にはアイシアやリュッカも、リリアの親友という面では、人質になり得るため却下。


 不向きそうなシドニエなどは論外である。


 それを考えれば、普段は冷静な判断ができ、適応力のある風魔法使いは適任だが、


「……」


 今までのナタルの成果を考えれば、微妙なところ。


 それでもフェルサのサポートは必須。


「わかった。それでいこう」


「ありがとうございます!」


「それでは早速戻り、この話を……」


 ミナールはすぐさま自国に帰らなければと、立ち上がる。


「アイシアの龍を使うといい。西大陸の御仁ならば、ドラゴンには乗れるでしょう」


「それは有り難い。感謝致します」


 ミナール達はここまで、海路と陸路を辿って来ている。


 ドラゴンでひとっ飛びは有り難い。


「うーん。最近、私、便利屋扱いされてませんか?」


「! マ、マルキス……」


 ぶっすーっとした表情で仁王立ちするアイシアとそれを苦笑いしているリュッカが部屋に入る。


「私、別に魔術師団でもなんでもないんですがぁ?」


「ま、まあまあ……」


 ハイドラス達からすれば、アイシアのドラゴン部隊はとても魅力的。


 将来的なことを見越しておきたいところ。


「それで? なんでホワイトちゃん達を使うの?」


 不機嫌そうに文句を言いながらも、引き受けてくれるアイシアに事情を話す。


「――わかりました! じゃあすぐにでも……」


 聞くや否やあっさりと召喚すると、エメラルドを含めた数体の風龍(ウィンド・ドラゴン)を貸した。


「ありがとうございます。それでは……」


 ミナールはそのまま飛び去っていくと、アイシアは当然の発言をしようとする。


「殿下! 私も――」


「ダメだ」


「あっさり!?」


「……えっと、私もダメってことになりますよね?」


「ああ」


 リュッカとアイシアは、リリアの精神面的な支えになっている以上、向かわせることはできない。


 そもそもアイシアは隠密には向かないだろう。


「一応聞きますが……」


「聞かなくてもわかってほしい。狙われてる本人がわざわざ向かうことは愚の骨頂だろう?」


「は、はい……」


 アルビオも勿論ダメ。


「マルキスとナチュタルには、オルヴェールの側にいてやって欲しい。……ここへ来たということは起きたのだろう?」


「はい。今休んでます」


「オルヴェールは今、かなり精神面が不安定のようだ。できる限り支えてやって欲しい」


 その会話を聞いたデュークがフンと鼻を鳴らして尋ねる。


「なら良かったのか? あの女を交えず、勝手にこの話を進めて。責任を感じているから、倒れたんだろ?」


 提案しておいてと難だがと語ると、ハイドラスは少し険しい表情をする。


「そうだ。それがおかしいのだ。オルヴェールは自分の責任だと考えているようだが、クルシアの問題はオルヴェールだけの問題ではないというのに……」


 リリアが自己責任を強く感じ過ぎていると、不安に駆られる。


 以前ならばもう少し楽観的な部分もあっただろうにと語る。


 だがリリアが不安定なのは、やはり自分の正体を明かしたことも作用していると考えられる。


 周りは大丈夫だといくら語っても、本人の中で解決してくれなければ、いつまで経っても解決にはならない。


 そのための周りの支えや時間が必要なのだと分析する。


 それを考えれば、親友であるアイシアとリュッカに危険地へ向かわせることは、どうしてもさせられない。


「リリィ、責任感も強いからね」


「うん。だからこそ、今度は私達がね」


「うん!」


 幸い、献身的な二人を見れば安心するハイドラスだが、どうにも不安定な理由が他にあるような気がしてならない。


 思い当たることはいくつもあるが、確信的なものではないため、余計なことは言わず、


「オルヴェールの母が目覚めたか、確認してくるといい。母が無事なところを確認できれば、落ち着きもするだろう」


「わかりました。ではっ!」


 しゅぱっといなくなるアイシアだったが、すぐに戻ってくる。


「ナッちゃん! フェルサちゃん! 私達の分まで頑張って!」


「ええ。必ずクルシアを倒してきます」


 リュッカもお辞儀をしてその場を去ろうとすると、


「では僕も失礼します。万が一もあるでしょうから、また明日から鍛錬します」


「フン……」


「デューク兄さん……」


 アルビオは真剣な眼差しを向けると、デュークは見向きはしなかったが、


「言われずとも、シモン兄さんは救ってきてやる。ついでに弱りきったバザガジールも仕留めてきて、お前の鍛錬を無駄にしてやるよ」


「……無理しないでね」


 そう言うとアルビオとリュッカも部屋を後にした。


「……いい弟さんね」


「はっ! 昔はべそ描きの金魚の糞だったがな」


「あんたは可愛くないわねぇー」


「お前も可愛くないだろ?」


 デュークとヴィはいつもの喧嘩ができるほど、余裕があるようで何より。


「デューク、ああ言っていたが……」


「言葉の綾だ。さすがにそれで仕留められるとは思ってねえよ」


 話がまとまったようなので、陛下は任務内容を語る。


「貴殿らの目的は、シモン殿の救出ならびに、クルシアの捕縛もしくは殺害とする。此度、世界を振り回す元凶を取り押さえてくれ」


 その陛下の言葉に返事をすると、一同は急ぎ準備を整える。


 西大陸からの援軍が到着次第、向かうこととなった。


 正直、不安要素はある。


 ザーディアスにドクター。それにクルシアが契約魔法中とはいえ、何も考えていないはずもないと考えられる。


 だが戦力が落ちているのも事実。


 この好機に全てを賭けたいと思う一同であった。

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