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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
9章 王都ハーメルト 〜明かされた異世界人の歩みと道化師達の歩み〜
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15 信頼の得方は様々です

 

「暗殺とは……随分と思い切ったことをするつもりなのね」


 でもあのクルシアを暗殺するならば、ナタル達から聞いた契約魔法が執行されているうちに行なうのが理想だということも理解できた。


「確定ではありませんが、情報を。特にアジトの情報があれば嬉しいのですが……」


「ごめんなさい。アジトへは専用の転移石がないと……」


「それなら殿下が持ってるよ」


「え?」


 ザーディアスに渡された物があるよと説明すると、少し考え込んだ後、テテュラは自分が知るアジトの情報を語ってくれた。


「詳しい場所は知らないのだけれど、クルシアが言っていたわ。ここはある『兵器』の中だってね」


「兵器?」


「……人精(じんせい)戦争の時に使用された古代兵器だということだけ聞いたわ」


「はあっ!? なに? クルシアって奴はそんな兵器の中にアジトを作ったってこと? そんな馬鹿な話が……」


「いや、あったじゃないか。そんな兵器になりそうな物が。つい最近……」


 ジードは深刻そうにサニラを見る。


 君なら知ってるだろうと言わんばかりの視線に、つい最近の出来事を振り返る。


「ああっ!! 原初の魔人のゴーレム!」


 その答えに一同も驚愕すると、ジードは文献で見た人精(じんせい)戦争のことを振り返りながら、推測を立てる。


「諸説あるが、生贄(サクリファイス)で得た魔力を魔法のみならず、ゴーレムのエネルギーに使用していた記録もあると聞く」


「なるほどですわね。ゴーレムは魔物ではありますが、魔石を主軸にした魔物。人為的にも作り出せることから、兵器としての起用も可能ということですの」


「それに大精霊に対抗するならば、巨大ゴーレムの数十体ほどは用意するでしょうね。クルシアが根城にしているのは、そのゴーレムの遺物の一つと言っても過言じゃないでしょ」


「な、なあ? 確かにゴーレムの中が奴のアジトかも知れないのはわかったけど、それってそんなに深刻に考えることか?」


 バークは、あくまで敵対するのはクルシアであり、その古代ゴーレムではないのではないかと疑問を投げかける。


「馬鹿ね。バーク、あんたは見てたでしょうが! あの巨大ゴーレムがヴァルハイツへ向かおうとしていたのを。クルシアって奴は、天空城を落下させた挙句、原初の魔人まで暴走させられる奴よ。古代兵器の一つや二つ、動かされても納得できてしまうわ」


「そうね。楽観的に考えるのはやめた方がいいわ。地族性魔法使いであるドクターもいるもの。仮にすぐに動かせないにしても、方法は知ってると考えるべき」


 あの惨状が再び襲い来ると考えると、ゾッとしない一同。


 しかも妖精王が暴走状態で作った即席ゴーレムとは全く違うだろう。


 精霊達に対抗するために作られたゴーレムならば、全てにおいて原初の魔人のゴーレムを超えると想像することは難しくない。


「でもリリアに矛先が向いているなら、今は無視しても構わないでしょう。暗殺を考えているなら尚更ね」


「実際、行なうとしてテテュラさんはどれほどの成功率があると考えてます?」


 テテュラは一度オウラ達(こども)を見るが、構わず答えた。


「……ほぼ成功しないと考えるべきね」


「根拠は?」


「先ず、バザガジールやザーディアスといった強敵が構えてる現場よ。ましてやクルシアはリリアの契約魔法で動けない。いくらクルシアとはいえ、防御を疎かにするとは考えにくいわ」


「やっぱ、そこか」


「それにその契約魔法を解いているのがドクターなら、自衛のゴーレムくらい用意しているはず。簡単には近付けさせてはくれないわ」


 魔石加工師で、クルシアの部下ならゴーレムくらい作れるだろうと語る。


 そしてそのドクターだが、異世界の話が持ち上がったことで、クルシア自身を助けるメリットがドクターに出来ている。


道化の王冠(クラウン・クラウン)は個人を尊重する組織であり、仲間意識が手薄だったけど、異世界という材料で結束力が増したと考えるべき。一つの目標に向けて力を振るう人間の強さ、知らないわけでもないでしょう?」


 アイシア達はそのドクターやバザガジールが通信先で興奮していたことを聞いている。


 テテュラのその意見には納得がいった。


「その戦力を削ぐのが一番いい方法だけど、桁違いなのよね。特にバザガジール……」


「「……」」


「兄ちゃん?」


 バザガジールの力を目の当たりにしているバークとグラビイスは、どう足掻いてもあの領域に辿り着けるとは考えられない。


 心配そうにこちらを見るオウラとエミリに、悪いなと声をかけ、頭を撫でると、


「なあ、あんたはあの化け物とあったことがあるんだろ?」


「そうね。何度か戦闘訓練に付き合ってもらったことがあるわ」


「マジかよ……」


「それでテテュラさん、彼を出し抜けると思いますか?」


 一番の壁はやはりバザガジール。


 近接戦闘は勿論だが、遠距離であろうともお構いなしで攻撃が飛んでくる。


 しかも実践経験や殺人鬼を名乗ることから、対人戦はお手の物。


 それらを考えると、


「無理ね。あの男を出し抜ける人がいるなら、見てみたいくらいよ」


「難しいか……」


 すると改めてバザガジールのわかっていることをおさらいする。


「バザガジールは強者と噂の立つ人間を殺して回る殺人鬼。全国どこの戦場にでも現れ、敵味方問わず、戦乱を巻き起こす奇人。ある噂だと一国を一人で潰したなんて話もあるほどよ」


「よ、よくアルビオ君、無事でいられたね」


「まったくだわ……」


 このプロフィールを聞いているだけでも、十分に強さを感じると、身震いする。


「南や西の戦乱が落ち着いた頃には姿は見かけなくなるけど、クルシアに拾われていたってところね。その後に私とも会うわけになるのだけど……」


「一昔前は南と西では内乱もあったから、そこの経験者だとすると……」


「対人戦はほぼ無敵ね」


 魔物と戦うのと人と戦うのでは話が大きく変わる。


 対人の駆け引きなど、経験の豊富さがモノを言うもの。


 無類の強さを発揮していたバザガジールではあるが、そのような下積みがあったからこそ、今の強さなのだろう。


「他のメンバーについては?」


 他のメンバーも控えている可能性から、情報提供を求める。


「アミダエルは倒したのよね?」


「うん! 私達で倒した!」


「だとすると残りの戦力は、リュエル、ドクター、ザーディアスといったところかしら?」


「でも以前、お話していた時は、あまり面識がないと……」


「そうね」


 リュエルについては制限をかけられ、ザーディアスとはほぼ面識なし。


 ドクターには魔石を埋め込まれての定期検査などでしか会うことはなく、戦力の程を聞かれると首を傾げるしかない。


「リュエルについては私と同格くらいとしか聞いてないわ。ドクターについては地族性の魔術師ということから、その手の魔法使いか召喚士(サモナー)と予想するくらいかしら? ザーディアスについては貴女(アイシア)の方が知ってるんじゃない?」


「そうだね。ザーディアスさんはめちゃくちゃ強いよ。しかも私達と一緒に戦ってた時は武器を袋に入れたまま戦ってたし……」


「それってアテにならないんじゃない?」


「あっ、でも空間に穴とか開けてたよ」


「く、空間に穴?」


 アイシアがその場でぐるぐると空中で穴がある様子を再現。


「そう! その穴を覗き込むと……」


「別の場所だったんでしょ?」


「そう!」


 説明しようとしていることが読めたと、少し呆れ気味に答えたサニラだが、


「空間系の魔法が使えるとなると、結構厄介ね」


「そうだね」


「私達も見ましたわ。クルシアがヴァルハイツ城に来る際、ザーディアスさんが開けたと思われる黒い空間が……」


「ううー……やっぱり難しいんじゃねえか? あの兎とはやり合ったけど、やっぱ強かったし……」


 これだけの手練れ達をかい潜り、クルシアの元までたどり着くことは困難ではないかと誰もが思った。


「建物内はどうなの?」


 ならばと古代兵器の中身はどうなっているのかを尋ねた。


「そうね。詳しくは聞いてないけど、大部分は変えてないそうよ。ただ、中は結構入り組んでて、迷宮(ダンジョン)と言っても遜色ないわ」


「そうなの?」


「古代兵器ゴーレムは侵入者のことも考えて、一つの要塞として作り上げたとも言われている。人精(じんせい)戦争のみならず、他国への侵略にも使われたと書かれていたね」


 ジードはテテュラの情報に色を添えると、


「ねえ? そのジードさんが読んだ文献から、クルシア達のアジトのゴーレムを割り出すことってできないの?」


「う、うーん。私が読んでいたのは東大陸のゴーレムの話だし、特に有名なのは北大陸のゴーレムだ。あの大陸の土や岩は良質だからね」


 かの昔の戦乱事情は数あれど、基本的に大陸ごとの特徴は変わり映えしてないのが現状。


 西大陸ではドラゴンを使役する部隊、南大陸は亜人種が当時は支配権にあり、東大陸が人間の国とされていたが、北大陸では厳しい環境のせいか、争い事は少なかったそうだが、豊富な資源から主に東大陸からの軍事開発を協力させられていた節があったそう。


 そこにかつては滅びた人種、関係を絶った精霊、まだ若かりし原初の魔人など、錚々(そうそう)たる面々が戦火を繰り広げていたと文献には記されている。


「何か特徴的な紋章とか覚えてたりする?」


 そのゴーレムはあくまで国の兵器として運用されていた可能性が高い。


 なので当時の国の国旗や模様があれば、転移石を使わずとも侵入も可能になる話だろう。


 しかし、テテュラはあまり意識して見ていなかったと首を横に振った。


「ならやっぱり、今できることは奴らからの襲撃に対し、防衛を強めることくらいかしら?」


「おそらくね……」


「ねえ、テテュラちゃん? 龍の神子って知ってる?」


「龍の神子?」


 テテュラのポカンとした表情から初耳であることを悟った。


「知らないか……」


「ごめんなさいね。それで?」


「私、実は龍の神子の子孫らしくてね。今、たくさんのドラゴンと契約してるんだけど……」


「す、凄いわね……」


 事情を知っていそうな一同に、目を丸くして向けると、テテュラがほとんど外の情報は無かっただろうと説明する。


「クルシアが原初の魔人を追っていたのは知っているでしょう? その原初の魔人のうち、龍神王が殺されてね。その事件の影響を受けて、アイシアさんは龍の神子となったようで……」


「凄かったわよ。西大陸からアーチを描くみたいにドラゴンがハーメルト(こっち)へ来てたんだから……」


 そんな光景などまったく予想のつかないテテュラは、物珍しい表情を変えられない。


「みんな、強くて可愛いんだよ! 紹介――」


「「せんでよろしい!」」


「ぶー……」


 ナタルとサニラの素早いツッコミには、ぶーたれるアイシア。


 テテュラに話したいことはいっぱいあると、うずうずしていると、


「思い出話や近況報告するのは後よ。それで? 貴女はどう?」


「戦力になれるかってことかしら?」


 特にアイシアは期待感を持ってこちらを見るが、テテュラはゆっくりと首を横に振った。


「無理ね。さっきも少し説明したと思うけど、この身体は万全ではないの。やっと少し浮遊して動けるようになったくらい。北大陸(この場)を離れることも難しいわね」


「そっかぁ……」


「でも防衛ならそのアイシアのドラゴンとかは期待できないの?」


「まあ龍神王の側近だった子達が擬人化できるみたいだから、多少は戦力になるんだろうけど……」


「バザガジールとか相手だとどうかな? 獣神王さんでも難しかったみたいだから……」


 私の知らない間に随分と事が進んでいたのねと、少し置いてけぼり感を募らせる。


 何せテテュラが知っていたのは、原初の魔人を探していたところまで。


 原初の魔人と遭遇していた話を聞くと、時間の流れを感じてしまう。


「……本当に色んなことがあったみたいね」


「うん。本当ならテテュラちゃんにもいっぱいお話したいところだけど、リリィが心配だから……」


「そうね」


 リリアの話題が出てきて、ふと忘れていたことを思い出す。


「そういえばインフェルノ・デーモンはどうなってます?」


「あ……」


「我を呼んだか?」


「うおっ!?」


 テテュラの口調がいきなり変わった。


「あっ! インフェルちゃん?」


「……話は聞いていた。主人(マスター)が狙われているのだな?」


「ええ。だから貴方も戦力として戻ってきて欲しいそうですが、テテュラさんの状態が最優先と言われているわ。その辺はどうなの?」


「この娘に関しては、我が離れても問題ないだろう。何せ守るべき細胞とやらは全て精霊石化したのだからな。魔力の流れにも問題は見られない。姿形の維持も問題なかろう」


「ほ、本当に大丈夫だよね? インフェルちゃん……」


 インフェルの言うことを信用できないわけではない。


 リリアの命令に忠実なインフェルを知ってはいる。


 だが主人のピンチにこちらが疎かになっていないか、心配なのである。


「安心せよ、人間。我が主人(マスター)の命を裏切ることはない。この娘は無理さえせねば、我が居らずとも自立が可能だ」


「よ、良かったぁ……」


「なら直ぐにでもリリアのところへ戻れる?」


「戻れば良いのだな? ……わかった」


 するとテテュラから赤い魔力溜まりのようなものがオーラのように出ると、シュンっと何処かへ飛び去った。


 そしてテテュラの意識が戻ったようで、パチっと目を覚ます。


「どう? 大丈夫?」


「ええ、平気よ。ただ、今まで居た感覚があったものだから、違和感はあるけどね」


 やはり補助無しでは些か慣れないようで、ゆっくりと地面に座り込んだ。


「まあリリアを守るためだもの。本来のいるべき場所へ帰しただけ。戻ったらリリアにお礼を頼んでもいい?」


「勿論! ……だけど、やっぱり来れないんだね」


「残念だけど……」


 直接お礼を言えるのが一番良いのだがと思うが、状態が状態のため、これ以上は応えることができなかった。


「得られる情報はここまでかしら?」


「そうね。あまり力になれなかったようで、申し訳ないわね」


「そんなことないよ! クルシアのアジトの正体がわかっただけでも収穫だよ! ね?」


「そうね。だからリリアさんのことはこちらに任せて、貴女はご自身のことを考えてくださいな」


 するとドタドタと激しい足音が真っ直ぐこちらへ向かってくる。


「――私の人体魔石ちゃんはここかぁあああっ!!」


 バンっと激しく扉を開けられ、近場にいたバークに直撃。


「――ぶへえっ!?」


「兄ちゃん!?」


 そんなことなどお構い無しのサルドリアは、周りのことなど目にも入っていないようで、テテュラへ一目散。


「少し仮眠を取っている間に居なくなっていたから、心配したぞ! これはお前の研究が終わるまで一睡もできないな!」


「死ぬおつもりですか? サルドリアさん……」


「安心しろ! 身体に限界が来たと身体が感じれば、先程の仮眠のように倒れられる。人間の身体の神秘だな、問題ない!」


「大ありですよ。脳みそがダメと訴える前にちゃんと休んで下さい」


 噂以上に頭が飛んでると、この会話を聞いただけでも理解した一同は、サルドリアから若干の距離を取った。


 一名を除いて。


「あ、あの!」


「さあ、テテュラ。研究室へ戻ろう。これからもっと――」


「あーのーっ!!」


「――何だあっ!! さっきから!! 聞こえとるわあっ!!」


 耳元で叫ばんでも聞こえてるわと、返事もしなかったのに理不尽なツッコミを入れるサルドリアに対し、怯むことなく、アイシアは意見する。


「テテュラちゃんは人間です! 人体魔石なんて奇妙な呼び方はやめて下さい!」


「ああっ?」


「むむむむっ」


 サルドリアはガンつけるが、アイシアにも譲る気はないと、アイシアなりのガンを飛ばす。


「あのー、アイシア? 威嚇になってないわよ?」


 頬を膨らませ、むっと睨む表情には可愛げが抜けていないと、サニラが呆れ気味に指摘。


「え、えっと……じゃあこう!」


「――さっきよりも頬を膨らませただけじゃない!」


 そんな睨めっこ状態に思わず、


「ぷっ! あっははははっ! 貴女は相変わらずなのね、アイシア」


「テ、テテュラちゃん……」


「大丈夫よ。この人、頭はおかしいけど、人道からギリギリ外れてはいないわ」


「ギ、ギリギリなんだ……」


 今の会話を聞いてそう思わなかったと首を傾げて尋ねられると、一同は呆れた表情と無言で肯定する。


「お前が誰かは知らんが、私はこいつを正統に評価している。このような身体になって尚、世のためにと生きようとする。リスペクトに値するよ」


「……本当にそう思ってます?」


 日頃の行いを見れば、イマイチ信用ならないと思うが、


「お前もそう感じているから協力的なのだろう? 研究者と研究対象は対等でなければならない。対等を作り上げるのは信頼だ。違うか?」


 そう説得されれば、納得のいくテテュラ。


 最初こそ自分の状態にしか興味がないと感じていたが、思えば気軽にツッコんで話が弾むくらい、心を許していたのだと気付く。


 それくらいいつの間にか、アイシア達のように解きほぐされているのだと気付いた。


「……こんな身体になってから、人を信じられるようになるなんてね……」


 皮肉なものだと思わず笑みが零れる。


 本来の身体であった時は、自分のことだけで手一杯だった。


 だが人に頼らずを得ない身体になったからこそ、人の優しさや暖かさを、人の身体であった時以上に感じるのだろう。


「これからもしっかりその身を捧げてもらわねばな!」


 その言葉の端々に気遣いを感じずとも、その芯となる根っこの部分に思いやる心を感じられるのであれば、信頼に足ると感じた。


 アイシア達とは違うかたちの信頼を。


「……心配してくれてありがと、アイシア。私は大丈夫よ。それに私に何かあればハーメルトが黙ってないでしょ? 一応、私はハーメルトの所有物なんだから……」


「その通りだ。……というより、こんな貴重な存在を残材に扱うわけないだろ!? というか持ち出すな!」


「持ち出してないわよ」


「というか貴様らは誰だ!?」


「……説明しましたぞ」


 物凄い勢いで走り去っていったサルドリアに追いついたアライスが、呆れた表情で後ろに現れた。


「聞いてないぞ。誰だ?」


「貴女様がテテュラ殿を探し回っている中、ちゃんと説明しましたぞ」


 と言っても、一心不乱に研究室内をかきずり回っていたサルドリアの様子は、聞く耳を持たないといった感じだったのを理解していたからこそ、追いかけたのだ。


 そして改めて説明を受けたサルドリアの第一声が、


「テテュラを連れて帰るのは許さん!!」


「……無理だって本人からも聞いてるわよ」


 本当に人の話を聞いていたのか、疑うところしかない。


 というよりは、


「研究者って基本、人の話を聞かないわよね」


「そうだね……」


 アイシアはアミダエルも見ていたことから、納得が頭の上に落ちてきた様子。


「まあそういうわけだけど、また何かあれば来なさい。……リリアのこともお願いね」


「うん!」


 一同はアイシアの返事に同意をすると、戻ってきたアライスから数時間のうちに準備が済むと言われ、北大陸を後にすることとなった。


 テテュラの状態にはまだ不安はあるものの、改善傾向にあるというみあげを持って。

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