07 ノーマーク
――西大陸では龍神王の損失の影響が出始めていた。
魔力の枯渇による人間側の戦力の低下、結界石の無効化、魔物の凶暴化に繋がり、大きな環境問題へと発展していった現状。
その影響も相まって社会的変化も生じてきた。
先ずは例のファニピオンでの違法オークション取り締まり事件から、違法奴隷は数が激減した。
というのも魔物の凶暴化が拍車をかける形で、コッソリと仕事がしづらくなってしまったことが背景にあったりする。
とはいえ奴隷として生計を立てる人達もいたため、その者達は五星教やナジルスタの騎士団や各所の自警団などが雇い、戦闘訓練を施している。
魔物の凶暴化から自分の身を守る護身術を身につけることが暗黙の了解とされている部分があったりする。
だがこの戦力も雀の涙程度のもの。結局は元々自衛をしていた者達が魔物退治をするのが現状である。
このあたりの話でもう一つ変化がある事柄が、冒険者である。
魔物の凶暴化により、腕利きの冒険者達が金儲けのため、実力を高めるため、名声を得るためなど様々な理由で冒険者が集まっている。
だから各所にて集まるよう手配をかけたりもする。
ラセルブ山脈付近でも同じように収集がかけられていた――。
「――はあっ!!」
ザシュッと鋼の剣が魔物の肉を絶つ。
「――やあっ!!」
放たれた魔法にて複数の魔物を一網打尽にする魔法使い達。
「やれやれ、良い稼ぎになりそうですな」
「誰か知らんが、油断するな!」
「はっ! 真面目な兄ちゃんだ」
初顔合わせの冒険者同士のこのような会話も度々起きながらも、五星教から提示された区域の魔物の討伐を続ける。
東大陸特有の赤茶髪の短髪のキリッとした仏頂面の青年は、目の前にいるオークをバッサバッサと捌いていく。
「デューク! 相変わらずの二刀流捌きだな」
「兄さん、やはりオーク・キングがいたのか?」
「ああ。おかげさまでグリーンエイプとかとやり合わずに済みそうだ」
どちらかと言えば俊敏性のあるグリーン・エイプの方が厄介だと話すが、キリがないほど進軍してくるオークの軍隊を前にすると辟易してくる。
今回はオークの異常発生とのことで作戦を敢行中。
「よし! 一度後退する!」
そう指示を受けた冒険者達は作戦ポイントまで撤退。
するとオークの軍勢に向かって、五星教の魔法師団が高出力の対城壁魔法をぶっ放す。
「――放ちなさい!」
そうミナールの指示が飛び、即席の高台からオークの軍勢に向かって魔法が放たれる。
雪崩れ込むように魔物達は魔法に飲み込まれていく。
「前衛部隊! 残党及び戦力を削いで下さい!」
「「「「「わあああっ!!!!」」」」」
冒険者、騎士団等はその指示の下、戦力を削いでいく。
その間に後衛部隊は魔力の回復にマジックポーションを使用する。
一万は発生したであろうオークを倒す大規模作戦。
と言ってもやることはヒットアンドウェイ。
先ず、前衛部隊がオークの戦力を削ぎつつ引きつけては撤退、後衛部隊が一網打尽にし、また前衛が戦力を削ぎに行くの繰り返し。
撤退するごとにマジックポーションなどで魔力の回復。傷を負えば治療などを行う。
いくらオークが下級の魔物とはいえ、筋力と体力だけはある魔物。一万という数は油断できないもの。
確実なヒットアンドウェイで仕留めていく人海作戦である。
――この作戦は数日かけて行われて、多少の怪我人は出たものの、死者はゼロという形で幕を下ろした。
「……やれやれ。長い戦いだったね」
「もお〜っ! オークは見たくないかもぉ!」
どこか頼りない印象を覚えるボサ頭の赤茶髪の青年がジジ臭くだらけ、被った三角帽子と黒ローブが浮いたように見えるほどの小柄な金髪女性が文句をぶち撒けると、
「お前は後衛にいたからまだマシだっただろうが。獣臭くて敵わんのはオレと兄さんとネイだ」
「あぁによっ! あれだけのオークを遠巻きに見てたあたしの方がおかしくなるわよ! 集団恐怖症になりかねないわ、きっと……」
「なった方が良く回るその口も黙りそうだ」
「あんたの減らず口もね!」
デュークと金髪女性がいつものように火花を散らす。
「あーはいはい。デュークもヴィも疲れてるんだから、今日はそこまでねー」
喧嘩の仲裁はいつもこの、色素の薄い可憐な顔立ちのネイ。
だが服装やショートヘアの髪型から動きやすさを重視されており、体術を使う格闘家。肩見せの服装には周りの者達の目の保養にもなっているが、
「あーはいはい。ネイもせめて上羽織ってね」
「? ありがと、シモンさん」
そう言われて肩から上着を羽織らされたネイは首を傾げた。
「皆様、本当にお疲れ様でした」
一同は治療を受けながら、そう言い放つ女性に視線が向いた。
「この度のオークの異常発生から街を守ることができました。またこの大量発生の原因は我々が突き止めます」
原因のおおよそは魔力の枯渇による、オークがその魔力の飢えを満たすための行動だろうが、オーク種のみが集まった原因が別にあるとのことで、その調査はナジルスタの方で調べるとのこと。
「冒険者の方々には治療を終え次第、街へ帰還して下さい。報酬の方はギルドに話を通してあります。後日、お受け取り下さい」
ミナールのその宣言に、作戦に区切りがはっきりついたと喜び騒めく。
「あの娘よね? 今回の指揮」
「ああ。五星教のミナールだったかな?」
「どっかのやかましいだけの娘より、よっぽど慎ましやかでいいじゃないか」
「そのやかましい娘ってあたしのことを指してないでしょうね!?」
「自覚があるのはいいことだな。手本がいるんだ、見直してみるといい」
息をするかのように簡単に喧嘩をする二人に呆れるシモンとネイ。
「でも最近、五星教もそうだがナジルスタも変わりつつあるよねぇ」
「そうですね。私達が以前来た時はもっとピリピリしてた印象がありましたが……」
「そういえば検問が緩和されているように思えたな」
「そうそう! 全裸に剥かれなくなったね」
「それは良かったな。つまらん身体を晒さなくて済んで……」
「アンタはデリカシーってものを知らんのかあっ!!」
「黙れ……! あれだけの豚退治をしてストレスが溜まってるんだ。発散くらいさせろ」
「あたしでするなあ……!」
今日はいつになくデュークの毒舌が冴えていると思っていたら、ストレス発散だったようだとわかると、疲れているくせに取っ組み合いをする二人を引き剥がす。
「わかったわかったから。だったら早々に街へ行って、酒でも飲もうか」
「お酒っ!? やたぁーっ!」
「お前は飲むなよ、露出狂」
「誰が露出狂よ! 失礼な――」
ヴィの両肩にシモンとネイの手が乗る。
「程々ならいいよ」
「飲み過ぎないように見てるから……」
「えっ? えっ?」
二人の生暖かい視線とデュークの呆れた冷たい視線と発言に、自分の酔い方の想像をする。
「ま、まさか脱いだりとか……ないよね?」
「「……」」
ヴィはこのパーティーでは最年少で最近お酒が解禁された。
その酔った後の記憶は一切なかった。
「……お前、妙なところにほくろがあったんだな」
「「――デュークっ!!」」
ヴィのほくろの位置を知っているのは、一緒に湯浴みの経験のある同性のネイのみ。
男性のデュークが知っているわけがない箇所。
「……――っ!? なっ!? 何で知って……!! ――し、死ねええっ!!」
この後、赤面しながら魔法を放つヴィと無愛想で涼しげな顔で躱すデュークがこの駐屯地を荒らしたことは言わずもがな。
デュークのパーティーは追い出されるようにパルマナニタへと早々と帰還した――。
その次の日の夜、酒場にてオーク討伐の報酬が支払われた冒険者達は祝勝会を兼ねて飲み明かす。
「まったく。ほんっとデュークってデリカシーがないよね」
「女扱いしてほしいなら、お淑やかにしてろ」
「はっ! 女に夢を持つのも大概にしたら? だから相手にされないんでしょ?」
「黙れ。オレに相応しい女がいないだけだ」
酒が進むとこの二人の喧嘩もデットヒートするのだが、同じく酒を飲み交わすシモンとネイは慣れているせいか、二人を無視して話し込む。
「しかし西大陸に拠点を移して正解だった」
「そうね。魔力の枯渇が影響しての魔物討伐の依頼は報酬も大きいし、やり甲斐もある。それに鍛錬にもなるしね」
「鍛錬って。そんなに強くなる意味ある?」
「ん?」
ネイはどこかに嫁に行ってもおかしくない容姿をしている。
現にギルドにいてもシモンやデュークと少し離れただけでナンパやパーティーのお誘いがあるくらい。
「あっ……」
シモンはネイの表情と今の考えから結論が出た。
「ナンパ撃退?」
「まあ、そんなところです」
屈強な男性が多い冒険者業。意中の男性でもない限りはあまり言い寄られたくないと思う女性冒険者もいることだろう。
シモンは物騒だと苦笑いを浮かべながら、ちびっと酒を進めた。
「しかし魔力の枯渇ねぇ。……確かファニピオンのあの事件から、しばらくしてからだったよね?」
「ええ。違法奴隷の取り引き現場の差し押さえとそれに関与した関係者及び悪質貴族の大量逮捕だったかしら?」
リリアとクルシアが衝突し、ファニピオンの違法オークション会場での取り締まりのことである。
その後、バザガジールに龍神王が殺されるわけだが、これを知っているのはクルシアの現状を知る限定された人物のみである。
「それに加えて魔力の枯渇による魔物の凶暴化で、軒並み奴隷商や攫い屋も数が減る始末。皮肉だねぇ」
魔物の凶暴化は誰も望むところではないが、その影響で裏を牛耳っていた人物達が浮き彫りになっていくことは、中々滑稽である。
「その魔力の枯渇の原因は?」
「調査中だってさ。だけどこれには噂もあってね……」
シモンはひそっとネイの耳元に近づく。
「なんでも原初の魔人なんて説があってね」
「原初の魔人? いたら是非お目にかけてみたいものです」
ネイは馬鹿馬鹿しいと思いつつも、話題としては良いと話を聞く。
「いや、割とこの話は濃厚でね。最近ドラゴンの暴走もあっただろう? あれは原初の魔人である龍神王が殺されたことが起因してるんじゃないかって囁かれてるそうだよ」
「へえ……」
信憑性がありそうだと興味が湧いてくるが、
「フン! お伽話じゃあるまいし、本当の原因を突き止めてほしいものだ。これから活動していくにあたってこう、やりにくくて敵わん」
デュークは魔力の減衰を肌で感じるのだと文句を放つ。原初の魔人は否定派のようだ。
「原初の魔人かぁ。いるのかなあ?」
喧嘩をしていたはずの二人が、いつの間にか入ってきていた。
「まあ何にしても私達でどうにかなる話ではないわね」
「そうだね。俺らがやれることは冒険者として働くだけさ」
「そういえばその違法オークション会場の取り締まりに一役買ったのが、最近、東大陸で聞く『黒炎の魔術師』だそうね」
その東大陸という言葉をピクッと耳にしては、不機嫌そうに酒を飲むデューク。
「フン。あの王族の懐刀と噂の娘だったか?」
「らしいね。他にも建国祭の問題の鎮静化、魔人の襲撃の撃退、勇者が封印した――」
ダンっと机を強く叩くと、デュークはかなり機嫌が悪くなったようで、無言でその場を離れた。
「お、おい。どこ行くんだ?」
「トイレだ」
本当は行く予定にはしていなかったのだろうが、その話は聞きたくない様子。
するとネイが自分に指を差して尋ねる。
「私、いけないことを喋りましたか?」
「あー……まあね。できれば勇者の話はしないで欲しいかな? 特に今の勇者についてはね」
何故不機嫌になるのかもわからずに飲み直す二人だが、シモンはその様子を見守るだけだった。
そんなデュークが席を外した時、
「よおっ! 久しぶりだな」
どかっとデュークの席に座るダンディなおじ様が現れた。
「あの……どなたか知りませんが、そこは――」
「ザーディアスさん!」
「元気してたか? シモン」
***
「――ギルヴァ達とガイツにはミリア村へと向かってもらっている」
ギルヴァとアリア、そしてガイツ率いる火の魔術師団の一個小隊はリリアの母、リンナがいるミリア村へとアイシアの龍種に乗って向かった。
アイシアが龍の神子としてドラゴン達を使役するようになってから、長距離の移動も楽々である。
現に翌日には俺達もこうして王都ハーメルトへ戻って、ハイドラスと共に今後の対策を練られるというもの。
ただドラゴンの背に乗ることはやはり大変で、お尻が痛くなったり、筋肉痛が発生したりと、騎乗訓練を行なっていないとデメリットも酷い。
よくアイシアは平然と乗っていられるものだ。
「アルビオのご両親もしばらくは城での生活を余儀なくされるわけだが……」
話し合いの結果、アルビオの両親は城から護衛付きで仕事場に向かうこととなった。
中々物騒に見えるだろうが相手はクルシアだ、油断はできない。
「それについては感謝しています、殿下。二人もそれで構わないと言ってますし……」
「それで、肝心のリリアちゃんとアルビオさんはどうします?」
「アルビオに関しては両親同様、我が城からの生活をしてもらう。本当なら寮生活でもよかったのだが、ご両親が心配するのでな」
アルビオの両親は頑なにアルビオの入寮を許さなかった。
勇者の能力を継いだアルビオを守るという体裁をしっかりと見ておきたかった気持ちがあるのだろう。
王都の戦力がアルビオを守ってくれるという体が必要だったのだろう。
安心感を与えるという意味でも、アルビオはそれを受け入れた。
かく言う俺は、寮での生活となった。
基本的には俺の事情を知る人間は多いし、寮は学校からも近い。
更に何かあれば駆けつけることも可能なことから、再び寮生活となる。
随分と懐かしい気がする。
「それにしても久しぶりの学園ね」
「……元の生活には戻ってないけどね」
それは自業自得とわかりつつも、そろそろ学業というか、青春を送らせてほしいものだが、どうももう少しかかるようだ。
「そうだな。もう少し準備が整えば、テテュラを迎えに行く話もあるしな」
アイシアが行くと張り切っていた話だと話すと、
「お前達はどうする?」
俺達にも尋ねてきた。
「んー、私としてはついて行きたいかな? インフェルのこともいい加減気になるし……」
テテュラにインフェルを憑依させ続けていることに関して、非常に気になっている。
ほぼ自立できるくらいには回復した模様のインフェル。
これだけ離れていても吸われている魔力はほとんど感じないことから、テテュラからの供給で間に合っているか、インフェル自身が回復しているかのどちらかである。
今後のことを考えると、インフェルは手中に置いておきたい。
「そうだなぁ……。戦力は多いに越したことはないが、国から離れられても困るが……」
正直、そのあたりは微妙な考えを持つハイドラス。
極力、俺を目の見える範囲に置いておきたいのも事実。
「私は行きます。テテュラさんから情報を聞き出しませんと……」
「私はリリアちゃんの側にいます。今はリリアちゃんの方が心配だから……」
「ありがと、リュッカ」
ナタルはやはりと言うべきか、彼らの情報が優先のようだ。
フェルサも北大陸へ向かいたいと挙手。
「こちらからの攻め手があればなぁ……」
「無いことは無いですが……」
「!」
ハーディスが難しい顔でそう言うと、転移石を見せてきた。
「それは……?」
「奴らのアジトへと繋がる転移石だそうです」
そういえばザーディアスが酒場で情報提供してくれた時、机に転がしていた転移石。
「そ、それがあれば……」
「ダメだ」
俺達の言おうとしたことは、言う前にあっさり否定。
「何故です!?」
「先ず、これが本当に奴らのアジトに繋がっているんですか? これを渡された当初は中立と仰っておりましたが、向こう寄りとも言っていました。信用するには情報が足りません。それとそれを踏まえた上で、奴らが待ち構えていられては、こちらから人質になりに行くようなもの。正直、当てにはなりません」
だが今も持っているというのは、何かしらの手段のためなのだろう。
「正直、私も考えたさ。クルシアが動けないのなら、多勢に攻め込んでみるのも一興かとな。だが、そんな人海戦術がバザガジールやドクターに通用するとは考えにくい」
ヴァルハイツでのことを考えれば、中々冷静な判断だとわかる。
クルシアが動けないという好機を逃したくなく、ほぼ確実に奴らのアジトへ迎えるのは大きい。
しかし上記を考えると攻めあぐねるのも事実。中々歯痒い状況である。
するとリュッカがそろっと手を上げる。
「あの……そのあたりもテテュラちゃんに協力してもらうのはどうでしょう? テテュラちゃんは暗殺者だったんですよね?」
「!」
その意見にハイドラスは物思いに考える。
「確かにそうかも知れませんが、テテュラさんが本調子でなければ。それにテテュラさんの場合はクルシア自身に情が湧くのでは?」
ハーディスの言う通り。
テテュラはクルシアに恩義を感じているし、それはこれからも変わらないと話していた。
彼女自身に暗殺させることは不可能に思える。
「……ハーディス。北大陸行きの準備を急がせろ」
「殿下!? まさか……」
「クルシアがいつ契約魔法を解除するのかわからん。それにテテュラに暗殺させずとも、道案内やこの魔石の確認くらいはさせられる」
「わ、わかりました」
ハーディスは足早にその場を去っていく。
確かに元組織のメンバーであるテテュラを味方につけられることは大きい。
テテュラ自身も恩義は感じていても、こちらの味方でいるという宣言はしている。
仮にクルシアを殺すことが目的と告げられても、協力してくれる可能性は高い。
「オルヴェール、お前はやはりここにいろ。クルシアの動向がわかるのもお前しかいないのだ。極力、私の側にいろ」
「わ、わかりました」
契約魔法が確認できず、報告が遅れるのもマズイと判断された。
これで俺は実質、この王都から離れることは極力控えることになるだろう。
「あの……殿下」
「どうした? そんな真っ青な顔をして……」
アルビオは何かを思い出したように、青ざめた顔で挙手する。
「ぼ、僕には二人の兄がいます。ご存知ですよね?」
「!!」
えっ? 俺は初耳ですけど?
だがハイドラスは知っているようで、
「そういえばそうだったな。七、八年前に絶縁した二人だったか……」
「ぜ、絶縁って……」
「……以前、僕が勇者の力を継いだとわかった時、両親の態度が変わったことを話しましたね?」
「う、うん」
大体の想像がついた。
「上にいた二人に対する接し方も変わってきて、兄二人は両親と大喧嘩した末に、家を出ていきました……」
特に次男であるデュークの剣幕が酷かったようだ。
ハイドラス達も勇者ケースケ・タナカの力に目覚めたに等しいアルビオの保護で頭がいっぱいだったことも拍車にかけて、国元を離れたようだ。
「確か北大陸での確認したのを最後に消息不明とのことだったが……」
「兄さん達、デューク兄さんは陛下達のことも憎んでいたような発言をしていましたし、まいた可能性もあります」
「――ウィルク! ハーディスと合流し、すぐに情報をかき集めろ!」
「は、はっ!」
俺達は嫌な予感を孕みながら、焦り駆け出すウィルクを目で追った。




