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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
8章 ヴァルハイツ王国 〜仕組まれたパーティーと禁じられた手札〜
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23 勇者演説

 

「――皆さん、どうかそのままでお聞き下さい」


 まだ混乱が冷め止まぬ明け方。困窮(こんきゅう)するこの状況の中、一人の少年の声が響き渡る。


 俺達はアミダエルの残した出来損ないを行動不能にし、レイチェルが演説用に用意していた人工魔石――投影石を使い、アルビオがヴァルハイツ国民に呼びかける。


「私の名はアルビオ・タナカ。勇者、ケースケ・タナカの血を継ぎ、この――」


 バッと手を空へと(かざ)し、三人の精霊達を顕現(けんげん)。演出してみせた。


「精霊達と共に歩みし者!」


 中々ノリノリのアルビオに俺達は、むず痒そうに笑う。


 今の不安に駆られたヴァルハイツの国民達には、ハイネやオールド、ましてやあの豚王(アポロス)では民衆を説得させるにはパワー不足だと判断し、レイチェルの作戦を通しやすくするためにも、先手を打つ。


「今、この国で起きている事件の首謀者の一人である、この化け物はこの私、アルビオ・タナカが討ち取りました!」


 バッと手を向けた先には、ミイラのようにカピカピに乾いた老婆アミダエルが、縦に真っ二つに裂かれていた。


 後ろの精霊達はこの国中に暴れていた出来損ないの魔物達を駆逐した精霊。


 そして明らかに化け物と融合しているアミダエルが倒されている姿を見た民衆は、絶望が去ったと歓喜する。


 その歓声は国中から聞こえていることもあり、演説の実感というものが湧いた。


 だがアルビオの演説はこれで終わらない。


 歓声に潰されぬよう、声を張る。


「私は本来、東大陸の王都ハーメルトの勇者校にて在学している身ではありましたが、先祖たるケースケ・タナカの足跡を追うため、この国へ訪れました」


 まさかクルシアの悪事を止めるために、ハーメルトの殿下と共に裏で活動していたとは言えないための言い分。


「勇者ケースケ・タナカは亜人種も同じ心ある『人』として接した歴史に触れました。ハーメルトでもそれは多く遺されております」


 勇者の日記には確かに、南大陸での亜人種の争いについても書き記された事実がある。


 ヴァルハイツの民衆は亜人達の話へと変わったせいか、歓声が止み、話を聞き入る。


 だが決して嫌悪を持って聞く者はいなかった。


「正直、この国へ赴いた時、驚きました。亜人種と戦争をしていると聞いていた国。奴隷制度もあると聞いていたので、ある程度の覚悟を持って訪れました。するとどうでしょう……地下を移動し、管理していると聞きます。普通に奴隷として陽の光を浴びることの方がまだ良かったと考えます。……あまりの悲しい現実に僕は落胆しました。……ケースケ・タナカの意志は尊重されなかったのだと……」


 これは民衆を説得させるための言葉ではなく、アルビオ自身の本音だろう。


 落ち込んだ表情で語るアルビオに偽りはなく、その悲痛な想いも民衆にはしっかりと伝わっている。


「だから僕は亜人の里へも向かいました。そこではケースケ・タナカに感謝する種族もあれば、それでも人間を許せないと話す種族もいました」


 アルビオは民衆に問う。


「皆さんは――本当に亜人の方々について、どう思われていますか? 昔から(さげす)んでいたから、周りがそうだからと、自分の意志を殺してはいませんか?」


 その問いに、民衆のほとんどが俯いた。


 物心がついている頃には、日陰でこそこそと動いている亜人種の奴隷を見て育った民衆。


 平民はそれは貴族の所有物だと見て見ぬフリをし、貴族は奴隷とすることが当たり前だった。


 それでも一部の貴族は、それに対して後ろめたさがあった人達もいただろう。


 だが人間の集団心理とは恐ろしいもので、周りがそれを正しいような空気を作ることで、その後ろめたさを押し潰していたのだ。


「今回の事件はそんなところを突かれたものでした。この化け物アミダエル・ガルシェイルといって、私は勇者の末裔という肩書き上、この方を知る機会がありまして、私が欲しい情報を得ると同時にここ近年のヴァルハイツの成り立ちを聞くことにも成功しました」


 ここでディーガルの悪政を、そして――、


「ディーガル・アルマウト。そしてヴァルハイツ国王陛下アポロス・ヴァルハイツの悪事を暴くかたちとなりました!」


 ここからレイチェルが入り込みやすくなるよう、話を進めていく。


 これを聞いていたアポロスが驚愕することは当然のことであり――、


「な、何を言い出すのだ!? この小僧は!? わ、私がこの化け物共を先導したとでも言うのか!?」


 椅子にどっぷりハマったアポロスはジタバタし、ロピスも狼狽(うろた)えていると、カツカツと足音が聞こえる。


「お久しぶりです、お父様」


「お、お前は……レイ、チェル?」


 辺境へと追いやったはずのレイチェルがこの緊急事態に現れた。


 しかも、


「ほう? この豚が主の父か? 全然似ておらんのぉ」


 ひょっこりと悪態を吐いて獣神王が姿を見せた。


 勿論、この暴言にアポロスが黙っているはずなない。


「――何だと、このケダモノ風情が!! 豚だと? 誰に向かってこんな――っ!?」


 獣神王は穢らわしいと見下す視線をプレッシャーと共に与える。


「黙れ、小僧。ワシを誰と心得る……原初の魔人が一人、獣神王なるぞ」


 周りの騎士達もその存在に震え、動けずにいる。


 アポロスとロピスは泡を吹いて簡単に気絶した。


「やれやれ。これは確かに主が何とかせんとのぉ」


「慣れないことをさせてご苦労かけます」


「まったくじゃ! ワシはあまり権力を(かざ)しとうない」


 フンと口は文句を言いつつも、してやったりとニヤリと不敵に笑う。


 そこへ合流を済ませていたジード達が報告しにくる。


「ヴァルハイツの騎士達は抑えたぜ。獣人達もビックリだ」


「そうですか」


「レイチェル姫殿下。お迎えにあがらず申し訳ありません」


 オールドはそう跪くと、レイチェルは困ったように笑う。


「仕方ありませんよ。城門から入っては来られませんでしたから……」


「た、確かに……」


 城への出入り口は全てアポロスの命令の下、オールドがアポロスの信用を得るために従い、封鎖した。


 気付かれずに入り込む方法は用意してあるとは聞いていたが、内容までは知らないオールドは首を傾げる。


 するとサニラは呆れた様子でその感想を話す。


「まったく。まさか姫殿下の寝室に出るなんて聞いてなかったわよ」


「し、寝室!?」


 表情のあまり変わらないオールドの驚いた表情に思わず、クスッと笑った。


 元々アポロスの政策――というよりはディーガルの政策には反対だったレイチェル。


 ディーガルは父アポロスや兄ロピスとは違い、鋭い感性を持つ人物。


 暗殺や辺境に追いやられるなど色んなことを考慮し、対策をしていたのだが、そのうちの一つが身を結んだ。


 ゴンドゥバへと飛ばされたレイチェルは、城へと侵入できるよう、寝室のクローゼットの中に転移の魔法陣を仕込んでいたのだ。


 おかげでバークには平手打ちされた痕跡が残っているわけで。


「ああ。おかげさまでこの様です。感謝してますよ、レイチェル様」


 皮肉混じりにバークは赤く腫れた頬を撫でる。


 するとレイチェルの計画を知らない騎士達が警戒しながらも尋ねる。


「こ、これは一体……?」


「この国が変わる時が来たのです。オールド」


「は!」


「わたくしを勇者様の下へ」


 演説を続けるアルビオを見て、命令した――。




 ――そんなレイチェルが入り込んでいる間に、アルビオは事の顛末を民衆に伝えていた。


 ディーガルがアミダエルを利用し、亜人種を陥れ、国王陛下を傀儡の王として迎え、悪政の限りを尽くしたと。


 そしてここの国王アポロスは、そのディーガルの悪政に都合の良いように乗っかり、見て見ぬフリをし、国王としての義務を怠ったと発言した。


 あの天空城もその結果だったと無理矢理、話をこじつけた。


 正直クルシアの名を出したかったが、状況が混乱すると思い、全てディーガルとアポロスの怠慢が招いたということにした。


「――私はこの国の人間ではないが、見過ごすことなどできなかった。ケースケ・タナカが望んだ世界はこんな姿ではないと……」


 するとレイチェルとオールドを担いだ獣神王が跳んできた。


「この方のおっしゃる通りです」


 久しぶりにレイチェルの姿を見た民衆はどよめく。


 その姿を拝見するのもそうだが、隣には民衆からは獣人にしか見えない獣神王と一緒にいるからだ。


「なっ!? お前……」


「これは精霊様。勇者様の演説を邪魔してしまい、申し訳ありません」


 そう言ってフィンに一礼すると、レイチェルも参加する。


「先ずは皆様、我が父アポロス・ヴァルハイツの怠慢が招いたこと、ディーガルの悪政を防ぐことができなかったこと、重ねてお詫び申し上げます」


 レイチェルは誠意を込めて、深々と頭を下げた。


 民衆からもあのアポロスから追い出された経緯もあってか、そこまで低評価ではないレイチェルではあるが、王族が民衆にここまで頭を下げることはなかった光景だけに、唖然とする。


「事の解決が済み次第、この償いは必ず致します。ですから聞いて下さい。勇者ケースケ・タナカ……そしてこのお方、アルビオ・タナカ様が想い描く未来はきっと明るいもののはずです。獣と人が混じった姿だからなんです! 人よりも長い時を生きるからなんです! わたくしは心を通い合わせられるこの方達を『人』と呼びたいのです! 共に未来を歩みたいのです!」


 獣神王を獣人として扱い、民衆の心を掴むために本心から語る。


「わたくしは父より、獣人達の監視区域に指定されているゴンドゥバへと追いやられました。元よりわたくしは亜人種に対し、嫌悪感を抱いてはおりませんでしたが、この事態の解決に乗り出すところまでは考えていなかったように思います。ですが、わたくしはやはりヴァルハイツと同じように扱われる獣人達の嘆きを見ました。その幽閉された彼らの憎悪を秘めた瞳を今でも忘れることはありません」


 ゴンドゥバで捕虜とされた獣人の扱いはヴァルハイツほどではなかったが、ヴァルハイツの教えの下、歪んだ兵士達が(さげす)んでいたのも事実。


 それをゴンドゥバの兵士やレイチェルは何とかしたいと考えつつも、踏み出せないでいた。


「だから考えたのです。その瞳を生んでしまったのは誰なのかと……答えは簡単でした。わたくし達がこの憎悪を生み出してしまったのだと。ならば、作り出してしまったわたくし達が行動せねば道理が通りません。……この事件の大きなきっかけとなった天空城は確かにエルフの所有するものであり、今化け物として暴れているのもまたエルフが神と崇める存在であることもわかっています。しかしそれを策略し、貶めようとしているのは我々人間です! そして元を辿ってもその原因の根幹もまた人間なのです!」


 その必死の訴えに聞き入る民衆。


 そして亜人種達もその言葉を受け止める。


「憎しみは憎しみを呼び、そこに平穏などありません。断ち切るのは今しかないのです! 我が国は……我々の考えを今、改める時! ディーガルの悪政は暴かれ、その証拠もまたかの勇者アルビオ・タナカとその一行が倒して下さった」


 バンっと俺達にまでスポットライトが浴びた。


 そのアップになった瞬間、ハッとなりあたわたと慌てる。


「彼らは他国の人間ではあるからこそ、この国の悪政を追求して来られたと考えます。勇者様方がご贔屓にされているかの国、ハーメルトの殿下も足繁く通われておりました。勇者の意志を尊重し、違う種族であっても手に手を取って未来を歩めるのだと……」


 俺達がここに来たこと、ハーメルトを受け入れやすくすること。それらを見事にねじ込んでみせた。


「亜人種の方々。この国の姫殿下として皆様の人権をお守りできず、怠慢であったこと……お詫び致します。都合の良いことだとは存じておりますが、どうかわたくしの身勝手をお聞き下さい。一度、我々を信じてはもらえませんか? 今までの暴挙の数々を許せとは言いません。ですが共に歩むために、一度手を取っては頂けないでしょうか? わたくしはこの国を変えます。皆様が心より笑顔で居られる国に再建致します。このレイチェル・ヴァルハイツの名に誓いまして!」


 その演説に民衆は賛同し、喝采が湧く。


 今まで国王に虐げられてきたのは、亜人種だけではない。人間の民衆もまた蔑まれてきた。


 それをしていながらも国王は民衆のために動くことは絶対になかった。


 だがレイチェルのこの演説を聞き、未来の天啓が見えると支持する喝采となったのだ。


 その中には涙を流し、思わず膝を落とす亜人種達がいた。


 特にエルフ達はそうだ。


 あの天空城も妖精王も全ては一部の人間の仕業だと発言してくれた。


 何より、自分達の未来を考えてくれると口にしてくれたことは本当に有難いことだった。


 あの暗がりの地下は、まるで未来を映しているかのようだと錯覚させられていた。


 行っても行っても先の見えない暗闇。


 その中に光が差し込み、女神と勇者が現れた。そんな瞬間だった。


「……勇者様。貴方からも頂けますか?」


「えっ!?」


 演説を乗っ取られたアルビオはギョッとした。


 はは。頑張れ、アルビオ。


 俺達はこの空気の中、言葉を求められるアルビオに同情する。


「み、皆さん、僕……じゃなかった。私は――」


 動揺が手に取るようにわかる。


「これから良くなっていくであろうこの国と共に、未来を見ていきたい。私がお慕いするハーメルト陛下、殿下もまた望むところ。必ずお力となり、希望に満ちた未来を作り上げていきましょう! この――」


 ちらっと後ろに並ぶフィン、ルイン、ヴォルガードを見る。


「精霊達も見守ってくれることでしょう」


「「「「「――おおおおおおおおーっ!!」」」」」


 歓声に湧く演説はここで終幕した。


 ***


 この演説から自分達を支持するあまり、暴走する民も出るかもしれないと、オールドに信用のおける騎士達を筆頭に城を占拠することを命令し、民衆を抑えるよう指示した。


「しかし驚いたよ。このタイミングで来るなんてね」


「申し訳ありません。勇者様もごめんなさいね」


「い、いえ……」


 まあ内心はハラハラだったろうけどね。


「アルビオさん、素晴らしい演説でした」


「ありがとう、リュッカさん」


 リュッカが労いの言葉をかけていると、孫の成長でも見たかのように獣神王は近寄る。


「うむ。一皮剥けたようで何よりじゃ」


「獣神王様。ご無事で何よりです」


「うむ。しかし、すまんな。あの狐目……仕留められなんだ」


「いえ。あの男を何とかするのは至難の業ですから……」


 レイチェルはアミダエルの死体を見て、思わず顔を(しか)める。


「これが元凶の一つ……」


「はい。私達が追っていたクルシア、天空城を落下させた元凶の仲間です」


「そうですか……」


「正直、殺すつもりはなかったのですが、とてもじゃないが加減ができず……」


 この黒焦げ、死後硬直で固まったアミダエルを見て、みなまで言わずともと微笑んだ。


「皆さん。我が国のためにここまで尽くして下さり、本当に感謝致します」


「い、いえ! 僕らは元々このアミダエルに用があってきただけですので……」


「そうそう。クルシアの陰謀通り、乗せられてきたわけだからね」


 結局、そのクルシアはアルビオ達の前に姿を見せたきりである。


 ぶん殴ってやりたいところだが、姿を見せないでは話にならない。


「そういえばナッちゃんは? それに他の亜人さん達は……」


 そんな心配をするアイシアの下へホワイト達が降り立った。


「アイシア様! お会いしたかったです!」


「ホワイトちゃん達!? みんな無事だったんだね」


 その強力な魔人のなりかけに気さくに話しかけるアイシアには、獣神王と仲が良いレイチェルも驚く。


「アイシア様。亜人の者達はもう大丈夫です。預けた先の貴族の御子息がちゃんと守ってくれるそうです。それに先程の演説を見て、一緒に避難していた人間達も我々をアイシア様の下へ送り出して下さいました。もう大丈夫だと……」


「そっか」


「ねえ? それはどこ?」


 俺がその亜人種と人間が一緒にいる場所を尋ねる。


 先程の演説があったとはいえ、そう簡単に割り切れる話でもない。


 西大陸がそうであったように。


「えっと確か……ヨーデルとか、ゲーデルとか……」


 その名前に聞き覚えのあるバーク達はニカッと笑う。


「それなら大丈夫だ。あのガキンチョは約束は破らねえ」


「知ってる人?」


「ええ。ほら、私達が地下道で助けたっていう子供達の中に、ゲーデルって子がいたのよ。貴族のね」


 すると社交会で紹介のあった貴族だと(よぎ)ったレイチェル。


 それに対してアルビオとハイネも報告する。


「あのゲーデルという子に任せると言ってきました。お兄さんの方もしっかりされておりましたし、使用人の方々もサポートなされていました」


「バラダン家の屋敷にて、地下の亜人達を保護しております。如何されますか?」


 ハイネは忠誠を示すかのように跪き、指示を待つ。


 その姿に些かの苦悶を浮かべたレイチェルだったが、


「わかりました。その屋敷へ向かいましょう」


「それは良いが娘。肝心のディーガルとかいう小僧はどうする? 今妖精王の奴が相手をしておるのだろう? クルシアとかいうあの狐目小僧の知り合いに堕とされた……」


 それについては考えてはいたようだが、中々答えが出てこない様子。


 ディーガルは優秀な武人であり、暴れている妖精王も獣神王と同格の強さを誇る。


 しかも暴れ狂っているのであれば、手負いの獣神王を向かわせることもできないと悔やむが、


「……しょうのない輩じゃ。どれ、ワシが一捻りしてこようかのぉ」


「いけません! 貴女はその彼らにも狙われる身。迂闊にその企みに堕ちた者の場所へは行かせられません」


「ではどうするというのじゃ?」


 俺とアルビオは顔を見合わせると、考えていることは同じだと頷く。


「じゃあ私達が行くよ」


「っ!? そ、それこそ……」


「無関係とは言わせません。元々クルシアの誘いに乗って僕らはここへ来ました。その陰謀を止めに来たんです。向かわせて下さい」


「そうだよ。レイチェル様は今、この国を支えることがお仕事でしょ? あとの妖精王は任せて!」


「ディーガルさんも僕が何とかしてみせます。僕らには精霊も……」


「この子達もいるしね」


 アイシアも意気揚々と割って入った。


 ホワイト達は誇らしげにしていると、


「主ら、龍神王のところにおった奴らか、大きくなったのぉ」


「お、お久しぶりです。えっと……」


 ホワイト達は記憶にないようで、戸惑っているとケラケラと笑った。


「良い良い。大昔の話じゃ。覚えておれという方が無茶であろう。娘、此奴らとワシで何とかしてきてやる。主は主の役目を果たせ」


 レイチェルは俺達の話を聞いて、覚悟を決めたように目をつぶったかと思うと、


「わかりました。ディーガルのこと、妖精王のこと、お任せ致します。必ずやご無事でお戻り下さい」


 話がまとまったところでと、オールドが報告。


「ナタル様はご無事ですよ。一命を取り留めたそうです」


「――っ! よ、良かったぁ」


 本当に良かったと俺もそっと胸を撫で下ろす。


「それでは主らの心配事も抜けたところで、ケリといくかの?」


「うん! よろしくね、獣神王!」


 俺はグッと獣神王と握手を交わし、ディーガルが戦闘を続けているであろう――グリーンフィール平原へと向かう。

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