22 アミダエル・ガルシェイル
――何故だ……何故、こうなったんだ!
結界内に閉じ込められ、黒炎が身体を燃やしていく中、心に思うのは上手くいかなかった理由への問いかけだけだった。
それも自分のせいではなく、他人のせいにすることでしか理由を模索しない。
奇しくもリリア達が見る光景は魔人マンドラゴラと同じ光景。
彼もまた結界内に閉じ込め、黒炎で焼いて追い詰めた。
当時と違うのは、リリア自身が強くなった影響もあって、火力が上がっていることからアミダエルの喉は焼かれ、もはや抵抗の魔法を唱えることもできない。
その表情は鬼気迫る表情であり、アミダエルは何度もその目を見た。
誰からも認められず、そんな敵意や侮蔑の目で見られることがほとんどだった。
若い頃なんかは身体を売ってでも、自分の成果を発表するなんて枕営業すらやったほどだ。
アミダエルからすれば周りは全て敵だらけ。
だからなんでも利用してきた。
クルシアだってその一人――。
***
「君がアミダエル・ガルシェイルかい?」
その少年は鼻を摘み、手で臭いを追いやりながら当時の研究室に入ってきた。
辺りには解剖した生物の臓物と血が散乱しており、むせばむほどの生臭い異臭が部屋に篭っている。
「あんた、どうやってきたんだい? アタシのペット達が居ただろう?」
「あー……あれ? 壊しちゃった♡」
クルシアはへらっとその来た方向を指差して舌をペロリ。
物音一つしなくなっていた扉を見た後、激昂する。
「あんた! 何やってくれてんだい! やっとでさえアタシの研究は進んでないってのに、余計なことをするんじゃないよ!」
「まあまあ、そんなに怒らないでよ。あれ、見るからに失敗作でしょ? 別に壊しちゃってもさ――」
「黙りな! 実験体一人攫ってくるのに、どれだけの労力がかかってると思ってんだい! ふざけたこと抜かしてんじゃないよ!」
こんな実験を行なっているアミダエルに協力的な人間は少ない。
いくら裏稼業の奴隷商や攫い屋でも、夜な夜な獣のような叫び声が聞こえる研究室の主を恐れないということはなかった。
そんなアミダエルに朗報が入る。
「――だったら都合の良い研究施設と実験体が手に入る環境があるって言ったらどうする?」
アミダエルは目を見開いて、無邪気にニコニコと笑うクルシアを見た。
「は? 馬鹿抜かすんじゃないよ、小僧。アタシのことを調べ上げたならわかるだろ? アタシの居場所も悲願を叶える場所もこの世には存在しないのさ!」
クルシアのような発言をしてきた人間は数多くいたが、どれもアミダエルの望むものではなかった。
共に研究をしようと差し伸べた奴は、狂っていると罵り、自分の作り上げた研究成果に期待した連中は、望んでいたものではないと非難し、変わったところでは、治療に使えないかと藁にも縋り、場所を提供してくれた者は、その大切な者の残酷な死に精神を病んだ。
どいつもこいつも自分の理想を押し付けるばかりで、誰も認めようとはしなかった。
研究者として求められることは必然ではあるが、自分にも理想とする目的が存在する。
孤独を生きる道を選んだとはいえ、誰かに認めてもらわなければモチベーションが上がらないのも事実なわけだが、長い年月を無理して生きてきたアミダエルにそんなものを発表する機会も、ましてや同士を見つけることは更に困難を極める。
そんな自暴自棄な発言をするとわかっていてか、態度も表情もさほど変わった様子を見せないクルシアは交渉を始める。
「まあま、聞いてよ。君はさ、ヴァルハイツって国は知ってる?」
「南大陸にあるデカイ国じゃなかったかい? 亜人共とドンパチしてることくらいしか知らないよ。見ての通りの引きこもりにこれ以上を求めんじゃないよ」
日陰者の研究者は社会に明るくはないんだと、投げやりの返答。
「だろうね。だからわかりやすく説明するね。……最近、女王が亡くなったそうだよ」
「それで?」
「まあその国は亜人とドンパチする傍ら、それを平和的に解決できないかと女王陛下が動いてたんだけどねぇ……」
「毒殺でもされたかい?」
「うーん、どうだろ」
国のトップの暗殺なんて話こそありきたりなものである。
女王陛下の崩御については一般的には病死と伝えられているが、その実は定かではない。
だがクルシアにはそれは正直どうでもいいと、軽く流すと本題へと移る。
「それでまあアポロスって豚王が実権を持ったんだけどさ。まあそれが酷いのなんの……」
「豚王と呼び捨てるほどだからねぇ。大体想像つくよ」
アポロスは自分を管理していた女王が亡くなるや否や、欲望と権力の限りを尽くし、女王が築き上げてきたものを簡単に壊していった。
女王に仕えていた者を次々と反逆者と罵っては処刑し、自分に都合の良い大臣や部下に仕事を押し付けたという。
お陰でアポロスの機嫌を取れた者が国の実権を握るという悪政が出来上がり、女王が実権を握っていた頃より、民の暮らしが酷くなったことは言わずもがなである。
「それでね、その内の国を担う将軍閣下が居るんだけどさ。そいつの家族が殺されたのさ。ダークエルフの仕業にしてね」
「仕業? まるで違う輩がやったみたいな言い方だねぇ……」
「その将軍閣下は人望もあって硬派な堅物らしくてね。蹴落とす意味も込めて殺ったらしいよ」
「……その将軍を直接狙わなかったのは……」
「まあ純粋に勝てなかったんじゃない? 結構な武人さんのようだし……」
暗殺者を差し向けても返り討ちに遭うことを考えたのではないかと考察。
「で? そいつがなんだい」
「取り入れられるよ、その将軍」
「どういうことだい?」
「簡単さ。その将軍様はさ、手のひらを返したように亜人種を憎んでるそうだよ。それと同時に家族の死を受け入れられないでいる。そこをつけ入るのさ。――家族を生き返らせてやる。だから研究する施設を用意しなってさ」
大体この初対面のガキの考えが読めてきたアミダエルは、研究の手を止めて話を聞き入る。
「言ったろ? ヴァルハイツは実質、部下である大臣や将軍達が実権を握ってる。その将軍閣下を焚き付けてやれば、君はヴァルハイツという後ろ盾が手に入る」
「つまりアタシがその将軍閣下をたぶらかし、亜人種共を実験体として確保できる環境と、その戦争からアタシの実験体の試験運用も可能になる環境。挙句に将軍閣下に用意してもらう研究環境をヴァルハイツ国内に持てば、安泰ってわけかい?」
「そゆこと〜」
悪いことを考えるもんだと、アミダエルは楽しそうに笑うが、
「そのためにゃあ、その家族を蘇生させてやらないとねぇ……。だがその技術はまだ――」
「何言ってんのさ。別に本当に蘇生させる必要なんてないだろ? 君の目的のために利用すればいいってだけさ。そこは嘘でもいいから適当にすればいいのさ」
「……あんた、ロクな死に方しないよ」
「おやおや? 君はそういう人間だろ? それに他人を利用するなんて、みんなやってることさ」
アミダエルはクルシアの言う通りだと納得したが、それ以上に驚いたのは、自分の中にもまだ良心があったことだ。
本気で取り入るためには、その家族を蘇生させねばと下手に出ていたことに腹が立ってきた。
「そうさ、そうさね! 全てはアタシが利用する側の人間のはず。なのに何故!?」
「相当病んでるみたいだね。日陰生活が長すぎたんじゃない?」
全ては自分の考えや成果を認めない世の中が自分を狂わしていったんだと、怒りに震える。
「ああ……そうさね。その将軍を利用して、アタシはアタシの望みを叶える。死を恐れることのない身体を手に入れてみせる!」
「おおっ! 野心家だねぇ。パチパチパチパチ……」
「それで? 見返りはなんだい?」
「ん?」
「とぼけなくてもいいさね。その情報の見返りはなんだと訊いてんだい」
すると軽く笑って返答。
「そうだなぁ。ボクの組織のお手伝いをしてくれないかな?」
「あんた、組織の長なのかい?」
「まあ組織ってほど立派なもんじゃないのさ。面白いことや楽しいことをするにはやっぱり人が必要だろ? それも君みたいな野心家はさ。……伊達に長生きしてないんでしょ?」
クルシアは自分のことをフルネームで訪ねてきたことから、どれだけの年月を生きているのかまで知っていることだろう。
わかった上で話しかけてくる奴にロクなのはいなかったが、クルシアも別の意味でロクでもないと眉を顰める。
まだ年齢は十代前半。自分のように身体を弄った形跡は見られない。
だが洗練された魔力にその量もその年齢で得るには、異常とも捉えられた。
何より……。
「あんた、血生臭いねぇ」
「そう? 綺麗に拭き取ったはずなんだけどなあ」
自分の実験体の血の匂いもそうだが、この男の異質な雰囲気がアミダエルの中にある魔物の細胞が警戒している。
今まで出会った中で、トップクラスに厄介な存在であると。
とはいえアミダエルも年の功。
相手は一応敵意もなければ、好意的でもある。下手に騒がず慌てずに対応する。
「要するにはなんだい? アタシの生物兵器を起用して好き放題したいと?」
「ま、そんなとこだけど、基本は自由にしてて構わない。ボクが呼び出したりしたら、ちょっとお願い聞いてくれるだけでいいからさ」
はっきり言うと都合が良すぎると思った。
ちょっとのお願いというのがどれだけのことかは知らないが、一国の後ろ盾を作るチャンスをみすみすくれるというのは、どうにも胡散臭い。
組織は発足したてという、自分がそれにあやかればいいものをと考える。
「あんたの目的はなんだい?」
頭のキレそうなクルシアに、腹の探り合いをするよりは直接訊いた方がいいとストレートに尋ねる。
「あれ? 言わなかった? ボクは楽しいことが好きなのさ。特に人が好きでね」
「ほう……」
「ボクは西大陸のとある貴族だったんだけどね――」
クルシアから聞いた過去話、というよりは数ヶ月前に起こした事件を聞いたアミダエルは、異常だと自覚がある自分と同格ほどの異常者であると感じた。
いやな気配はこれだったのかと考えるくらいに。
「あんた……イカれてるねぇ」
「でもわかるだろ? ボクの気持ち」
「ああ、わかるさね」
クルシアを罵倒した者達は悪魔だの悪者だと罵った。だからクルシアはその通りにした。
だから正しいかと言われるとこれっぽっちもそうは思わなかったが、自身の価値観を勝手に決められることに抗って応えたことに同情心が湧く。
クルシアは敢えてそれに応えたことで、罵倒した奴らの中にある当たり前の反応を裏切ったのだ。
アミダエルだって思った。
そんな罵倒を浴びせられれば普通は怯えたり、逃げ出したりするものだと。
だが自分はどうだろうか。
他人に期待されて、裏切られたと勝手な文句を言われ、日陰に引きこもることになった。
細々と成功した成果を使い、寿命を長らえ惨めに生き続けた。
その成果はあっただろうか? この男のように抗うことはしただろうか。
「チッ……」
考えれば考えるほど惨めになり、腹正しくなってきた。
「わかったよ。アタシはアタシらしく生きるために、ヴァルハイツだったかい? そこを根城に望みを叶える。あんたを利用させてもらうよ」
「それでいいよ。ボクだってただ従うだけの奴なんて興味ないから」
クルシアはその後、アミダエルと将軍ディーガルとの接触の場を与え、ディーガルは面白いように転がってくれた。
クルシアの言う通り、復讐心に囚われたディーガルに都合の良い風に言いくるめると、簡単にアミダエルの望む環境ができた。
アミダエルはクルシアの評価を改めた上で、アイツとの関係を持つことが如何に上手く物事が運んでいくのかを知った。
とんでもなく甘い汁さね……。
***
だが関わってみればどうだ。この様である。
「ア、アア……」
クルシアは遊び半分に魔人マンドラゴラを持ち出し、目の前にいる銀髪の娘はその成果を殺した。
更には自分の領土に踏み入られ、窮地に立たされている。
この黒炎を解呪したいところだが、シドニエに破壊された箇所がジンジンと痛み、追い討ちをかけるように黒炎がその肉を焼く。
あまりの痛みと熱で集中できるはずもなく、結界を殴ることしかままならない。
そんなアミダエルの視界に更なる災厄が舞い降りる。
「……! アルビオ!?」
「アルビオさん!? 目覚められたんですか?」
ポチから降りたアルビオは軽く微笑みながら合流する。
「はい。おかげさまで……。それより――」
視線は結界に向けられる。
「あれがアミダエルですか?」
「そうだよ。シドがいてくれなきゃ、やられてた」
嬉しそうに笑いかけてそう語ると、当の本人は照れ臭そうに赤面する。
「そ、そそ、しょんなことは……」
「相変わらず締まらないね」
そんな談笑はこれくらいにと本題に入る。
「このまま生捕りですか?」
「いや、その予定だったけど、思った以上に頑丈だし、再生力もある。一度捕虜にして体力を回復されたら、また二の舞いになる可能性が高い。それに魔力を封じても身体自体が化け物なんだ、魔封じの拘束具は意味をもたないと思う」
今はその再生力が落ち、追い詰められている状況だからこそのこの状態。
次に同じように取り押さえることは難しいだろう。
「殺しちゃうの?」
アイシアはポツリと呟いた。
命を奪おうとした相手に対しても、可哀想だと同情心を見せる。
「私だって最初は生捕りつもりだったけど、一歩間違えれば本当に殺されてた。そうそう甘い相手じゃなかったよ」
「そ、そうですね。僕もちょっととは考えますが、この人を拘束させ続ける自信もありません」
俺はそんな会話を続けながら、アミダエルに反撃の機会を与えないよう、適度に火力を上げる。
「アタシを殺すつもりかぁ。この世界に対し、大きな損失になるぞお!」
「なるか! むしろ居なくなってくれた方がメリットしかない」
「こ、小娘えええっ!!」
アミダエルにどれだけの人達が犠牲となったかは、放たれた魔物達を見れば一目瞭然だ。
俺はそんな無念であろう念を込めて火力を上げると、情けない声をあげながら、命乞いをし続ける。
「ひっ! ひいぃ!? や、やめてくれ!! アタシが悪かった。殺すのだけは……死ぬのだけは……」
情緒がイマイチ不安定なアミダエル。不満だと声を荒げたり、酷く怯えてみたり。
俺だってできるなら殺したくはないが、クルシアがバックにいる以上、コイツは厄介ごとにしかならない。
「た、頼むぅ……これ以上はあ……!!」
それにしてもみっともないくらいの命乞いに、むっとして尋ねる。
「お前さ。散々人の命を弄んでおいて、それはないんじゃない? せめて最後くらい潔くさ――」
「煩いよっ! 小娘! 死を怖がって何が悪い!? 研究者にとって死とはどれほど恐ろしいことか……」
研究者じゃなくても怖いと思うがというツッコミはとりあえず保留にする。
言い分を訊こう。
「これ以上の好奇心の探究ができなくなることが、どれだけ恐ろしいか。アタシの研究成果がどのような影響を与えていくのかを見届けられないことがどれだけ恐ろしいことか。悲願を達することなく、半ば朽ちていくことがどれだけ……」
聞いてみれば……、
「くだらない」
「な、何……!?」
当たり前のことを口惜しく言われても説得力に欠けると呆れた物言いで返す。
「そんなの人として生きていれば当たり前の欲求だろ? 研究者なんて関係ない」
「誰もが不死の研究を望んでいるとでも?」
「そんなわけないだろ!?」
このババアの頭の中がどうなっているのか、見てみたいと本気で思った瞬間だった。
「人として生きていれば知りたいことなんて山ほど出てくる。知識を追求し続けることは人として当たり前のことだって言ってるの! 建築家であれば、建物の構造、歴史、技法について。料理人なら数多の食材の情報、異国の食文化についても知りたいかもしれない。魔法学の研究者ならその理や成り立ち、更なる技術の追求をするだろう。……お前が生物研究者として過ちを犯したように……!」
技術者は勿論、一般人にだって個人で知りたいことなんて山ほどある。
「お前が実験に使った人達だってそうだ。明日という未来にどんな楽しいことが、知らないことが見つかるのかという希望を奪った! 最悪の形でな!」
俺は辺りに転がる出来損ない達を見る。
歪な肉片にされて、自分の意思も正確に伝えられず、抵抗することもできず、他人には認めてもらえない存在と化せられた。
「他人の未来を平気で奪えるお前に、未来を見る資格なんてあるわけないだろぉ!! それをさも自分が不幸の窮地にいるような同情心を煽ぐみっともない真似はやめろ!!」
「ぐううっ、黙れ黙れ黙れええーっ!! アタシはそんな未来が訪れないように死を超越する技術を――」
「誰もそんなことは望んじゃいない!!」
アミダエルの言い分を一蹴する。
コイツの言い分は自分の考えは常に正しいのだと押し付ける毒親のような発言。
こういうタイプは基本、人の話を聞かず、自分の言い分を聞かなければ激怒する理不尽タイプ。
アミダエルは一蹴されても、死を逃れるために色んな引き出しを開けては、社会情勢を投げつけてくるが、どれも下手な言い訳だ。
「……お前はもういいよ」
俺はパチンと指を鳴らし、火力を上げる。
「――あぎゃああああっ!!?」
「魔人マンドラゴラと同じ末路を辿らせることだけが、せめてもの慈悲と思ってくれ」
するとアルビオがヴォルガードを顕現させると、俺の肩を軽く叩き、優しく微笑む。
「彼女は僕が殺してもいいかい?」
「……私が怖がっていると?」
「いや。これから僕らは彼女を利用するんだ。これから僕らは英雄と称えられるだろう」
「だろうね」
「……人を殺して称えられるのは、もう少し後が良かったけど、君はね」
「……!」
女の子だとと気を遣われたし、言い分もわかるけど、
「これを人と見るのは……」
俺は今一度アミダエルを見た。
結界に閉じ込められているその身体は黒焦げの肉片となっているが、上半身だけ人型のアミダエルが結界にへばりつき抵抗している。
「そうかもしれないけど、僕は勇者になるんだ。覚悟の証が欲しい」
「!」
つまりは驕ることのない覚悟が欲しいというわけか。
人の命と未来を守る覚悟を示すために、人を殺すか。
たとえ悪人であろうとその命は尊いのだと刻むための一歩。
勇者ケースケ・タナカにはきっとそんな覚悟はなかったと思うが、アルビオは優しく、勇者の武勇伝を知るが故に奪う覚悟を持っていたいのだろう。
「……わかった。でも黒炎は解呪しないよ」
「わかってます」
するとヴォルガードは剣へと姿を変えると、その結界ごと斬り裂くようで構える。
「ひっ! ひいいっ!?」
「アミダエル・ガルシェイル。貴女のおかげでこの国の未来を変えられそうだ――」
アミダエルがディーガルと組んでいると、叫び回ってくれたこと。出来損ないをばら撒き、ディーガルの悪政を明るみにしてくれたこと。
「けれど人々を恐怖に陥れ、非道の限りを尽くしてきたその罪、贖ってもらいます」
「や、やめっ!? やめてくれええーっ!!」
アルビオは大きく振りかざし、せめて苦しまぬようにと一閃。
「――ぎゃああああああああああっ!!!!」
熱を込められた刃は、アミダエルの身体を焼き千切るように裂く。
頭から下半身まで一閃したアルビオは、ふうと重い荷物を下ろしたようなため息を吐く。
「終わったの?」
「アミダエルについてはね。でも、まだやらなくちゃいけないことが残ってる」
クルシアの陰謀によって落とされた妖精王と、それの対処に向かったディーガルである。
 




