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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
7章 グリンフィール平原 〜原初の魔人と星降る天空の城〜
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20 小さき住人

 

 翌日、ディーガルは俺達を見送った。


 何もしなかったことに疑問を抱きながらも、護衛をつけた馬車は同盟国ゴンドゥバへと向かう。


 まあ護衛という名の監視はつけているので、何もしてないことはないが、


「いやぁ〜! 嬉しいなぁ。黒炎の魔術師ってのが、君みたいなこんな可愛い()だなんて! あの豚さんにお手付きされてないよね?」


「は、はい。大丈夫ですよ」


 一応、自分が仕えているはずの国王を豚呼ばわりし、俺達の馬車の屋根でぷらぷらと足を揺らしている男の子が一人。


 歳は十二くらい、見た目は完全にクルシアぐらいの少年。


 あどけない少年の表情が黒いフードからチラつく。魔術師の風貌だが、それ以上に気になったのは瞳。


 片方の目には光が宿っていない。義眼だろうか?


 これでも彼はヴァルハイツの特殊部隊、ジャッジメントの一人だという。


 要するにはディーガルの手足として、裏でことを成す部隊のようだ。


「まあ護衛は任せてよ! 君は僕が守るよ」


 可愛らしいウインクまで。腐女子やショタコンなら喜ぶ光景だろうか。


 俺に少年の可愛いらしさを説かれても困る話だ。


 そんなことより、気になったのは、


「あの歳はいくつ?」


 その質問にポカンとした表情がフードの影からでもわかった。


「見た通りくらいの歳だけど? 十二」


 前例(クルシア)があったので確認。


 ――そんな馬車を見送った後、ディーガルが城へと戻る時、一匹の子蜘蛛が肩に乗る。


「……アミダエル殿か」


「ああ、そうさね。いいのかい? アタシのことを知ってる奴らを取り逃しても……」


「別に構わない。生物兵器のことは他国の者も知っていることだ。むしろアミダエル殿の技術だと言われることにも納得がいく」


「あの娘かい?」


 ディーガルが向かう先には、ニコニコと微笑むファミアと側近のユーキルがいた。


「ご安心を。貴女の居場所は教えませんので……」


「そりゃあそうだが、あの娘はアタシに寄越しな」


 ファミアを見て、彼女かと問うが違うと怒鳴りつける。


「あの銀髪の娘だぁ! あの娘ぇ……アタシの可愛いマンドラゴラちゃんを殺しよってええっ!!」


「彼女が焼き殺したマンドラゴラは貴女のでしたか……」


「そうだよぉ! だが元はと言えばぁーっ!!」


 ディーガルの肩の上で怒りに狂うアミダエル。


「黒炎の魔術師を殺すのは、少しお控え願いたい」


「なんだとおっ!?」


「……人間の英雄が必要なのだ……全ての亜人種共を殺すために……」


 ディーガルは憎悪を孕んだ声でそう呟くと、


「あんたぁ……奴が好みそうな性格をしてるねえ……」


「奴とは?」


「アタシから魔人をくすねた小僧にだよ」


 そう言うと、子蜘蛛はカサカサとディーガルから離れていった。


「お待ちしておりましたわ」


「宜しかったのですか? 一緒に行かなくとも……」


「構いませんわ。わたくしはこの国の政策に興味があると言ったでしょう?」


 ディーガルはどうしようかと苦悶の表情を浮かべる。


 自分としてはアミダエルのことのこれ以上は伏せたい。ファミアの洞察眼の鋭さ、柔軟な思考は昨日の馬車内で把握している。


 ファミアに対し、下手な情報の提示は首を絞めると理解できる。


 この笑顔を浮かべるこの女の考えが読めない。


「どうかされまして?」


「……その話は後ほどに致しましょう」


「それではせめて地下を見せて頂いても?」


「貴女様の御身に何かあれば、ハーメルト殿下様が悲しまれるのでは?」


「あら? ご心配には及びませんわ」


 ユーキルがぺこっとお辞儀すると、悩んだ末に……、


「わかりました。ですがその前に野暮用を済ませても構いませんか?」


「別に構いませんわ。どうせハイド達が帰って来るまでは帰れませんので――」


 妥協案としてそれは認めるのだが、それでもこれ以上の情報を与えないためにも、王族をそんな場所に案内するのも否定したいところなのが本音。


 しかし、


「――時間はたっぷりありますので……」


 立場上、含み笑いを浮かべる女性とは接触する機会の多いディーガルでも、これほど悪寒の走る笑顔は味わったことがなかった。


 ***


 カッカッと靴を鳴らす音が反響する地下道を昨日から入り込んでいるジードとバーク。


 薄暗い地下を黒いフード付きローブを着用しながら、ジードの魔法で照らして進む。


「しかし、広いですね」


「まあね。この国の住民に訊けば、ほぼこの国の全域に広がっているという話だ」


「ほえ〜っ!」


 聞かなきゃよかったと両腕をだらんと伸ばして、怠そうな態度をとる。


 事前に情報の収集はそうだが、一番重要な地下については念入りに調べてくれと言われている。


 地下の地図はあるだろうが、それを入手することは、他国から来た人間には困難だろう。


 だからこうして地下の構造を確認しつつ、地図を作成しているわけで、途方もないと脱力したのだ。


「とりあえずサニラさんとの合流地点へ行こう」


 その進む道中、すれ違うのはカンテラを片手に背中には大きな荷物を背負う亜人種達。


 エルフ、獣人、ドワーフなどが生気を失い、絶望感を宿した表情で通り過ぎる。


 上の町との落差が酷いと思いながらも、サニラと合流。


 地下で軽く食事を摂りながら、サニラはハーディスから預かったメモを手渡す。


「……なるほど。これは仕事を急がないとダメかな?」


「ですね。いつでも動けるように、まとめておかないと。で? どうなんです?」


「まあとにかくは……」


 バークは向こうの通りを彷徨(さまよ)うゾンビのような、よたよたと覇気なく歩く姿を見る。


「胸糞悪い地下道だってことだけは、すぐわかる。だろ?」


「まあ……そうね」


 それをサニラも眺めながら同情する。


「それと亜人種達の逃亡対策だけど、これも聞いたとおりだった。ここからは見えないが魔物が放たれていた」


「とんでもないことをするのね」


「問題はその魔物だ。とにかく普通じゃない」


「普通じゃない、ですか?」


「おそらくは生物兵器だろう。実験も兼ねてるみたいだ」


 ジードはある一体の魔物の行動を観察していたところから、行動がパターン化していたようだと考えるところが見受けられる。


 詳しいことはその魔物を見つけて説明するといい、探し出すと、


「いた! あれだね」


「なに……あれ?」


 地下道を流れる浅い下水をバシャバシャと歩き彷徨(さまよ)うワーウルフがいる。


 だが、頭の数がおかしい。


 黒い狼の頭が二つあるのだ。その二人の首は何かを探るように、辺りを見回しながら臭いを嗅いでいる。


 この異臭のする地下道の臭いを嗅いでも情報になるのかと疑問を抱く。


「本来なら変異種と判断するが、それにしては行動が落ち着いているように見える」


「そうですよね。希少種なら考えられる行動ですが、変異種はもっと凶暴ですものね」


「つまり故意的にこの魔物は置かれてるってことですよね?」


「まあこの状況を考えればね……」


 この二つ頭のワーウルフを横目に通る亜人種達を見ていれば、そう判断もできる。


「ジードさん。これが例の生物兵器……」


「だと考えてもいいね」


「どうします? 一匹くらい狩りますか?」


 その発言にゲンコツを決めるサニラ。


「馬鹿バークっ! ダメに決まってんでしょ! これがヴァルハイツが放ったものなら、コイツらに何かしらの術が施されてるはずよ。下手に手を出したら、ヴァルハイツにバレる挙句、おそらく他の魔物も駆けつけてくるわ」


「そうだね。方針としては地下のマップを作りつつ、魔物の種類に数とその行動の観察をできる限りやっていこう」


「了解です!」


「はい! でもこれは大仕事になりそうですね」


「まあその分、はずんでもらってるからさ。頑張――」


「グアアアアアーッ!!」


 魔物の叫び声が地下道に大きく反響する。


「な、何?」


 すると先程から観察していた二つ頭のワーウルフも何かを感知したのか、迷いなく走り出す。


「何かあったみたいだ、行こう!」


 ジード達もそのワーウルフを追いかける。


 さっきまでゾンビみたいだった亜人種達も血相を変えて、避難部屋があるようで、


「誰だ!? 一体……!?」

「これじゃあジャッジメントが来るじゃない!?」


 そう恐怖の声を上げながらすれ違っていく。


 そして追いかけた先では、幼い声が聞こえる。


「や、やめてぇ!? 逃げてぇ!?」


 そこには(いびつ)な泥みたいな人型の口だけののっぺらぼうが、エルフの少女を掴み上げている。


「――オオオオオッ!!」


「ひっ!? た、助け……」


 一方でバーク達が追いかけていたワーウルフは、獣人の少年と対峙している。


「グウ……アアアアアアッ!!」


「な、舐めんなよっ!!」


 そしてその様子を二人の男女の少年少女がすくんでしまったのか、震えながらその光景を見ているしかなかった。


「くっ! マズイじゃねえか!」


「バーク!! 貴方はそのままエルフの()を助けて! サニラは援護!」


「わかりました」


「――うおおおおっ!!」


 バークはその作戦を聞かずとも、最初から掴み上げられているエルフに狙いを定めていた。


 素早く剣を抜くと刀身に魔力を宿し、その腕に思いっきり斬りかかる。


「オオオオッ!?」


 ズバッと簡単に斬り落とすと、そのまま落下するエルフの少女をお姫様抱っこで救出。


「おい! 大丈夫だな!?」


「は、はいぃ……」


 無事を確認するとゆっくりと下ろして、しっかりとそのエルフの少女の眼を見る。


「よし! だったらいい子だから、あの子達のとこまで行け! いいな?」


「は、はい」


「――バークっ!?」


 急を要する声にハッと振り向くと、先程斬りかかった魔物からズルっと簡単に腕が生えた。


 さらにはその斬り落としたはずの腕もモゾモゾと動いてたかと思うと、口だけが生えてキィキィ鳴きながら、近寄ってくる。


「ゲッ!? あれなんだよ!?」


「あれはクレイマンよ、泥人形。だけど……ジードさん!」


「わかってる。こっちのワーウルフを任せたい! そのクレイマンは私が……!」


 ジードは水属性の魔術師だ。クレイマンの対処はサニラより対応できる。


「とにかく形成を整えるわ! ―― 地の精霊よ、我が声に応えよ! 地を荒らせし災いを捕らえよ! ――ロック・バインド!」


 早口に詠唱を唱えると、二体の魔物の動きを捕える。


 その光景をボロボロになっていた獣人はボーっと見ていると、グイッと引っ張られる。


「何ぼさっとしてるの!? さっさと来なさい!」


 サニラが獣人の子の手を引いて、ジード達はその場を離れる。


「はあ、はあ……貴方達、何があったのよ」


 息を切らしながらそう尋ねると、エルフの少女は涙ぐみながら、獣人の少年は悔しそうに謝る。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


「わ、悪りぃ……」


 その二人を庇うように人間の少年少女が叫ぶ。


「こ、コイツらだけが悪いわけじゃないんだ! オ、オレ達だって……」


「そ、そうなの!」


「そ、そんなに一斉に言われるとぉ……!?」


 子供達が自分の意見を聞いてほしいと、収集がまとまらないのを困るサニラを、バークが少年少女達の目線に合わせるように屈むと、


「わかったわかった。聞くからちょっと落ち着け」


「に、にいちゃん……」


 子供達が落ち着きを取り戻すと、ジードが優しく尋ねる。


「何があったのか詳しく話してくれない?」


「じ、実は――」


 この子達は脱走を計画していた。


 というよりは子供の浅はかな考えで、この地下から抜け出そうと行動した結果がこれであった。


 この人間の少年少女は、親達の目を盗んでこの二人に度々会いに来ていて、助けたいと思う一心で行動したとのこと。


 この亜人種の二人も、この暗い地下から脱出して日の光りの元で彼らと楽しく過ごせたらと思ったとのこと。


「――そっか……」


「それで外に出ようとしたら魔物達にそれが見破られたと?」


「あ、ああ。魔法陣をかいくぐったつもりだったのに……」


「もしかして、あれのことかい?」


 ジードが視線を向ける先には、壁に張り付いた魔法陣が両通路の壁に展開している。


 探索する中で気になっていた魔法陣で、調べようとも考えたが、下手に感知されても困るからと後回しにしていた。


 だが、知っている様子なので、この際だから尋ねる。


「あの魔法陣は何だい? 多分、感知系の魔法だろうけど……」


「は、はい。あの魔法陣はその……エミリちゃん達がしてる首輪に関係してて、許可をしていない人があの魔法陣と魔法陣の間を通ろうとすると、徘徊してる魔物が襲ってくるの……」


「なるほど……厄介ね。つまりはこの区画内はあの魔物達の管轄ってわけ?」


「ど、どういうこと?」


 バークの質問にさらっとサニラは答える。


「この地下道を調べた時、所々にこの魔法陣があった。それは奴隷達の行動範囲を限定してたのよ。色が違うでしょ?」


「言われてみれば……」


「貴方達はどの色の奴隷区域が行動範囲なの?」


「あ、赤だ」


「どうしてその赤の魔法陣のところから外に出なかったんだ?」


「奴隷の刻印の効果は知ってるでしょ? 多分、正しい場所から外に出ると彼らを管理している人間にわかる仕様になってるんだわ」


 ジードのその推理が正しかったのか、こくりと少年少女達は頷く。


「だからこの子達は違う色の魔法陣の区域まで向かって、脱出を試みたってところかしら?」


「は、はい……」


 でも失敗したと気を落とす一同。


「いい? あの魔法陣はそんな単純な仕様じゃないわ。貴方達は対となってる円形の魔法陣に隙があるように見えたんだろうけど、目に見えてるものだけが全てじゃないの。あの通路を塞ぐくらいにあの魔法陣の効果範囲はあるの。どう通り抜けようとしても、必ず感知されるわ」


「そ、そうだったのか!? お、俺が読んだ魔法陣の本とか、兄様に聞いた話だと魔法陣の上でしか効果がないって……」


「基本的にはね。あの魔法陣は対になってることで重複作用が発生したのよ。その影響ね」


 少年少女達はポカンとサニラの話を聞いた。


「おい、サニラ。難しい言葉、使ったんじゃねえよ」


「はあっ!? わ、悪かったわね!」


「コラコラ。喧嘩してる場合じゃないから……。だがこれで、方針は固まった」


 するとジードは自分の考えを四人の少年少女達に、特に亜人種の子供達に真剣な眼差しで語る。


「いいかい? 君達の選択肢は二つだ。一つは君達の区域に戻り、ほとぼりが冷めるのを待つことだが、詳しい仕様を理解していない私達が提案するのは野暮なことだ。だから二つ目を勧める。私達と共にこの区域からの脱出を試みる」


「つまりはこの区域の魔物を戦闘不能にして、トンズラってわけですね」


「ああ。警備用に魔物を放っていることを知っているなら、外へ脱出しても追いかけてくる可能性がある」


 この国の住民から聞くに、以前起きた脱走事件の際にも魔物が地下の入り口から這い出てきたとのことだが、人間を襲うようにはなっていなかったという。


 だとしても魔物が町に離されるのは問題なことで、すぐに騎士団やジャッジメントが現れ、対処するという。


「君達が覚悟を持って脱走を試みたのは知っているが、私にもその意思があるのか、聞かせて欲しい。どうだい?」


 すると子供達はお互いに視線で強い意思を確認すると、


「ある!」


「私達、外に出たい!」


 するとバークが亜人種の二人の頭をガシッと掴むと、無造作にくしゃくしゃとかき乱す。


「よく言った! じゃあお兄さん達も期待に応えなくちゃな!」


「そうだね……」


「ったく。でも、時間もないですよね?」


「ああ。恐らくはもうヴァルハイツが動いている頃だ。モタモタしてられない……!」


 モタモタしてられないのは、それだけではなかったと暗闇の中から光る瞳と唸り声が迫る。


「「ガアアアッ!!」」

「オオオオッ!!」


 接近するまで時間がない中、口早に人間の子供達にも提案。


「いいかい。君達はすぐにこの地下道から出るんだ」


「はあ!? な、なんでだよ!」


「わ、私達も……」


「ダメよ。貴方達、あの魔物を前に震えてたでしょ? 足手まといよ」


「お前……ガキにも容赦ねえな」


「当たり前よ。この状況なら尚更ね!」


 何もできずに、万が一のことがあってはいけないからと、憎まれ役を買って出るが、


「このお姉さんの言う通りだよ。君達がいるとこの二人が地下から出られない。お兄さん達も四人を守りながらはさすがに無理だ。聞き分けて欲しい」


 魔物達が迫る中、決断が迫られる。


「わ、わかった」


「う、うん!」


「よし、いい子だ」


 ジードは優しく撫でると、彼らにも役割を与える。


「君達。脱出したらこの二人を安全に匿える場所の確保を頼むよ。その道も安全なのか、しっかり確認するんだ」


「……!」


「君達にしかできないことだよ。できるかい?」


 人間の少年少女は真剣な眼差しでこくりと頷いた。


 自分にやれることができれば、子供は素直に言うことを聞く心理をついた見事な計略。


「子供にはこんなに気遣いできるのに、どうして結婚できないんすかね」


「……!!」


「アンタはその無神経さを治しなさい!!」


 バークの一言にドーンと落ち込むジードの背中は、とても寂しげであった。


「ジードさん。私達がとりあえず二体とも抑えますから、その間にその子達と一回、外へお願いしても?」


 いくら人間で地理もこの子達の方があるとはいえ、この魔物達がどんな暴れ方をするかわからない。


 二次被害から怪我をする恐れだってある。


「……その方がいいのはわかるけど、大丈夫かい? その魔物は変異種でも希少種でもない。未知の特性を持つ」


「何言ってんですかっ! 子供達の安全が最優先! ジードさん、頼みます!」


「……わかった。すぐ戻る。ここから一番近い出口、わかる?」


「こっちだよ!」


 そう言うと二人を連れて外の出口へと向かった。


「さてエルフの嬢ちゃんに獣人のガキ。その怖い姉ちゃんの後ろにいるんだぞ」


「は? 誰が怖いですって……」


 ゴゴゴゴっと怒りのオーラ全開の彼女が物申す。説得力がない。


「ほらぁ! そういうとこ!」


「はいはい。わかったから、さっさと突っ込んで来なさい! 馬鹿バーク!」


「おうって、それじゃあまるで俺がバカみたいじゃないか!?」


「馬鹿って言ってんでしょ?」


 二体の魔物が迫る中でも平常運転の二人を初めて見る二人は、サニラにしがみつきながら、迫ることを指差しながら伝える。


「ねえ!? 喧嘩してる場合じゃないって!? 来る、来るよっ!」


 ワーウルフの方が速かったのか、上から大振りの爪で襲いかかる。


「――わかってるよ!」


 ガイィンっとバークは剣を横振り、弾き返すとワーウルフはバランスを僅かにズレる。


 その隙を逃さず、バークはそのガラ空きの胸腹を斬り裂く。


「おおおおっ!!」


「「ガアアアッ!?」」


 二頭の頭が悲痛な叫びを上げる中、それを(かわ)し、クレイマンが泥の腕を伸ばす。


「オオオオッ!!」


「――ストーン・ポール!」


 バークに狙いが定められていた腕を下から迎撃。その腕が水を叩きつけるパァンっという音が鳴り響く。


 そしてそのポールの外周を回りながらの遠心力の斬撃。


「ちったぁ、黙ってろ! この泥人形がっ!!」


 スパーンとクレイマンの首を斬り裂く。


 亜人種の子供達は、おおっと感心した様子で、キラキラした視線を送る。


「さて、腕試しといこうじゃねえか!」

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