16 エルフの里 ヴィルヘイム
翌朝、リヴェルドに人間に見える薬を飲んでもらい、朝食を取りながら、これからの行動についてアルビオの考えを話す。
「僕達はエルフの里へ向かおうと考えます」
「おおっ! 話がわかるじゃないか、勇者!」
こう都合の良い時ばかり味方してと、視線がシェイゾに集まるが、
「そう考える理由を訊いても?」
「はい。ただエルフの里に行くのに、確約が欲しいです」
「確約?」
「はい。皆さんに訊きます」
そう言ってアルビオはエルフ達に、特にリヴェルドの方を向いて尋ねた。
「獣人との関係は良好なのですよね?」
「まあそうだね。共通の敵がいるからね。仲良くさせてもらってるよ」
「でしたら、エルフの里の何人かに獣人の里への同行をお願いしたいのと、僕達の行動に対し、フォローをして頂きたい」
「それは原初の魔人の保護のことですね?」
「はい」
アルビオが警戒しているのは、エルフ達が自分達の行動を妨げることにある。
人間の言うことなど信用できないとエルフ達に足止めされては話にならない。
族長の側近であり、シェイゾから事情を聞いたであろうリヴェルドなら、説得もできるのではないかと考えたのだ。
そしてその確約がないと、エルフの里に戻るのは後回しにしたいと考える。
だがその意図をリヴェルドも理解したようで、
「わかりました。族長ならびに同族達の説得は、我々に任せて下さい」
「はい。アルビオさん達が悪い人じゃないって、ちゃんと説明します」
「……わかりました。ではその……」
「私達とはここでお別れね」
フェルサもそう言われると納得する他なかった。
確かにエルフの協力があれば、獣神王の保護も五人で行うより効率的だろう。
「そんな顔すんなよ、フェルサ。俺達と別れるのは寂しいだろうけど……」
「バークはどうでもいい」
「おい」
「ま、そうね。私達はちょっと寂しいわね」
「おいおい」
バークを置き去りにした会話に、断固講義したい構え。
「エルフの里に向かうなら、十分気をつけることだ。私達はさすがにあの森には詳しくない」
「ご忠告感謝します、ジードさん。皆さんもお気をつけて」
朝食を済ませると、またの再会を約束し、サッパリとジード達と別れ、リヴェルドと共に、徒歩で小一時間ほどで迷いの森へと到着した。
「懐かしいな、この森……」
「そうだね、兄さん」
「そういえば二人は奴隷の刻印は?」
「向こうにいる闇の魔術師に解いてもらった」
「とても良い方々なんです。事が落ち着いたら紹介しますね」
「ありがとう」
「でも、問題はその刻印ですよね」
リヴェルドについている奴隷の刻印が迷いの森からエルフの里へと向かわせていないなら、同伴する自分達にも影響が出るのではと懸念する。
「いっそ、解いちまえばいいんじゃないか?」
「僕が?」
フィンの提案に、指を差しながら驚く。
「ザドゥもルインもいるんだ、どうとでもなるだろ」
「まあ確かに……」
奴隷の刻印、しかも南大陸の人間のものなら、強力な闇魔法での縛りだろうが、精霊の補助の元なら可能かもしれない。
「でも下手に手を出して、トラップが発生するかも……」
「それは問題なかったな。あの闇の魔術師に解いてもらったが、そんなことはなかったぞ」
「はい」
アルビオは少しは警戒しなよと、リリアに心の中でツッコむ。
亜人種を嫌うヴァルハイツが、解除した際のトラップを怠るとは考えにくいが、アミダエルの奴隷だったことが影響しているのかと考える。
下手に実験台に使う身体に悪影響を与えないためだろうか。
「わかりました。解けないに越したこともないですからね」
正直、魔法使いとしての研鑽をあまり積んでいないアルビオだが、アンバーガーデンでの特訓の成果を見せたいところ。
霊脈を感じれば、奴隷の刻印の解呪も不可能ではない。
「――ディスペル・コード」
苦手意識のある魔法を精霊の力で無理やりゴリ押すと、すうっと解けていった。
だが首筋が見えないリヴェルドは、首あたりをさわさわと触りながら確認する。
「と、解けました? どうです?」
「無事に解けましたよ! リヴェルド様!」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「い、いえ」
これならデメリットの少なそうな獣人の里から向かえばよかったかなと思ったアルビオ。
「これで案内もさせて頂けます」
「そうですね。懐かしいの故郷へ帰ろう!」
「もう! 兄さんたらはしゃいじゃって……」
少しばかり浮かれ過ぎだと思ったが、事情を聞けば浮かれている理由にも説明がつく。
シェイゾ達は今から向かうエルフの本里の出身ではないらしい。というより本里から別の里へと移り住んだというのが正しい。
ここは人間からは迷いの森と言われているが……。
「――エルヴィントの森と言われ方が正しい。初代エルフ族長様がこの地のエルフやその派生達を守るために作り上げた森なのです」
「派生って……」
「ダークエルフとかな」
「へえ……」
そんな森の中をエルフがアルビオとフェルサを囲む形で進んでいくと、霧が発生し始める。
「こ、これは……」
「まさか……!」
すると木の上から襲いかかってくる人影が見えた。
咄嗟にアルビオは隣にいたナディを突き飛ばすと、腰の剣を抜き、剣を交える。
防がれたとわかると後方へ跳び、こちらの出方を窺うように、ゆらりと距離を取る。
「ま、待って下さい! 話を……」
「ディーヴァ!」
「わかっている。この人間があっ!!」
金髪ポニーテールのエルフの女剣士が果敢に攻めようとした時、
「待って下さい! ディーヴァ!」
アルビオを庇うように前に出たリヴェルドの喉元に刃が止まる。
「リ、リヴェルド様!?」
物陰に隠れていた複数人のエルフ達も姿を見せ、リヴェルドの姿を確認する。
本当にエルフ族の中では重鎮のようで、皆がその再会を喜ぶ。
「ご無事で良かった、リヴェルド様。ヴァルハイツに捕まったと聞いた時は肝を冷やしました」
「ああ。私はこの通り、無事だ。君達も変わりないようで何よりだよ」
そしてエルフ達はシェイゾ達の無事も喜んだ。
「シェイゾにナディじゃないか!? お前達も無事だったか!?」
「ああ。心配をかけてすまない」
「あの里の者達は皆、無事なのか?」
「……全員はわかりませんが、一部のエルフ達は無事です。散りじりになってしまいましたが……」
積もる話もあるのだがと、早々に再会の喜びを切り上げる。
「……獣人族はわかる。だが人間が同伴しているのは、どういうことだ?」
この部隊の隊長らしき男性エルフが、怖い顔でアルビオに対し、剣を構える。
「ま、待って下さい。事情を聞いて欲しい……」
――アルビオの約束通り、シェイゾ達は説得を試みた。
事情を聞いたエルフの戦士達は警戒はしつつも、鞘から手を離してくれた。
「なるほど。勇者の子孫か……」
全員がケースケ・タナカと会ったことがあるわけではないため、その聞いていた特徴を品定めでもするように見る。
すると、
「信じねえなら、俺達はどうよ!」
フィンがこれなら信用できるだろうと、姿を見せるとエルフ達はどよめく。
「こ、この魔力……まさか精霊様!?」
「そうだ。俺はこのアルビオと契約している精霊。この世で精霊の恩恵を受ける血筋は一人しかいねえだろ?」
「た、確かに……」
すると男性エルフは失礼のないようにと、キリッとした表情で名乗る。
「これは失礼した。私の名はウィント・ダーウィン。エルヴィントの戦士隊、緑の隊長として務めている者だ」
そう言って握手を交わそうと手を差し出した。
アルビオも応えようと手を出すと、ヒュンと短剣が飛んで来た。
「!?」
「――レン! やめないか!」
そこには酷く興奮した前髪が鳥のくちばしのように下ろしたエルフがいた。
「隊長こそ、何を考えている! そいつは人間だ! 我ら同胞を皆殺しにし、奴隷にまで貶める悪の権化だぞ!」
「落ち着きなよ、レン。この人はかつては里を救ってくれた勇者の子孫なんでしょ?」
「だからなんだ!? コイツは関係ない!!」
「レン」
「なん――」
パァンと頬を叩いた音が響く。
「ディ、ディーヴァ!!」
「貴方の気持ちもわかるけど落ち着きなさい。感情に流されすぎよ」
「……っ」
「人間は衝動的で、猟奇的で、同胞すらも陥れる悍しい存在。そんな業に呑まれる人間のようになるつもり?」
レンは強く歯ぎしりを立てると、
「――くそおっ!!」
苛立ちを近場にあった木に当たる。
エルフは穏やかな性格が多いはずなのだが、どうもその様子はない。
先程、襲ってきたことといい、人間に対する印象といい、エルフの里にいるものはこうなのだろうかと疑問を抱く。
「あ、あの……」
「ごめんなさいね。レンは父を戦場で失って、母と妹を奴隷にされているの」
「そ、そうですか……」
それを聞くと何も言葉にすることはできなかった。
ディーヴァの言う人間の印象についても、これからの話をすれば、否定もできない。
部下が失礼したと謝罪する。
「……それでここには何用で?」
「実は――」
エルフ達が神と崇める妖精王に危険が迫っていることを説明すると、案の定というべきか、レンが怒鳴り声を上げる。
「――ふざけるなっ!! 妖精王様に危険だと。馬鹿をほざくのも――」
「ほっんといい加減にして〜!!」
レンをもう一人の女エルフに引きずられる。
「……レンではないが、俄かには信じられない話だ。妖精王様に危険が迫っているなど。リヴェルド様は納得されたので?」
「……私もシェイゾ君から聞いた話でね。ただ、龍神王様が殺されたと聞いたよ」
「なっ!? 龍神王様が……?」
エルフにとって原初の魔人は、神仏化されていることがわかる反応であった。
「龍神王様が死んだというのは……」
「本当だ。俺が言えば、説得力もあるか?」
アルビオがまた口を出すと、煩い奴が騒ぐとフィンが肯定すると、精霊の言葉なら信用があるようで、エルフの戦士達は黙り込んだ。
「……わ、わかりました。エルフの里へと案内します。ついて来て下さい」
深刻な空気が漂う中、目的地であるエルフの里へと向かった。
――数十分後、霧が晴れてエルフの里が顔を出す。
「ここがエルフの里、ヴィルヘイムだ」
懐かしの故郷へ戻ってきて、嬉しさが込み上げる三人の目は涙ぐんでいた。
町並みは一言で言うなら農村。
味気のない質素な家とのどかな田園風景が広がっていた。
森の住民と呼ばれるだけあって、作物を作る技術に特化している姿であった。
アルビオはてっきり魔法も得意とするため、もう少し文化の進んだところかと考えたが、的が外れたよう。
「ここがエルフの里……」
「意外って感じの反応ね」
「フン! 人間は着飾るのが好きだからな」
「レン!」
「はは。まあその魔法の技術も長けていると聞いていたので……」
「勿論、その技術もあるわよ」
これ以上は何も言わなかった。
魔法の技術を大昔に人間に奪われた経験のあるエルフとして、口外できないのだろうと踏んだ。
「それではここで待っていて下さい。今、族長と話をしてきます」
そう言うとウィントとリヴェルドは、この里の中で一番大きな家に入っていった。
「それにしてものどかだね」
「そうね。獣人の貴女がそう言うなら嬉しいわ。大変だったでしょ?」
「……? 大変、だったけど……?」
ディーヴァ達は自分の事情を知らないはずだよねと、疑問を抱きながら答えるが、彼女もその反応に疑問持った。
「ん? あっ! そうか、そうよね。勇者の子孫と来たのなら、今の獣人族の事情を知らないのよね」
その一言にアルビオ達は食いついた。
「獣人族の事情って!?」
「えっ!? そ、そうね。元々ヴァルハイツの侵攻が進んでいたのだけれど、更にここ最近、獣人族を襲う攫い屋が出たと聞くわ」
深刻な表情を浮かべるアルビオ達を見て、ディーヴァは気付いた。
「もしかして……獣神王様も……?」
「……は、はい」
それを聞いて、事の深刻性が浮き彫りになっていくことにディーヴァ達も意識していく。
「ね、ねえ。その原初の魔人を狙ってる奴って――」
「お待たせしました。族長がお会いになるそうです」
その案内に預かり、族長が待つ部屋へと招かれた。
「……」
そこで待ち受けていたのは、眉間に沢山のシワが寄ったとても頑固そうなご老人。
圧のある不機嫌そうな表情でこちらをジッと見ている。
「族長。お久しぶりです」
「無事に戻って来てくれて嬉しいぞ、シェイゾ、ナディ。お前達の里を守れずすまなかったな」
「いえ。我々の力不足でもありますから……」
シェイゾ達とは穏やかなトーンで会話を続けるが、先程のアルビオを見る表情から察するに、勇者の子孫とはいえ、やはり歓迎されている雰囲気はない。
「そこの獣人の娘も大変だったろう。最近、そちらの里の者達もヴァルハイツ共に侵略されておるでな。何とかしてやりたいのは山々だが、こちらも……」
「私はその里から来てない。東から来た」
「むっ。そうであったか。では何用で来られた?」
アルビオの話がメインのはずなのに、完全にスルーされている。
「私はアルビオについて来ただけ。獣人の里の場所は知ってるから……」
そう答えると、表情を険しくして睨む。
「えっと……そういうことです」
「……俄かには信じ難いが、リヴェルド、精霊様がそう仰ったのだろう?」
「は、はい」
「ならば話くらいは聞かねばな。話してみよ」
再びアルビオはここまでの経緯を話した――。
「ふむ、事情はわかった。要するには今までと変わりないということだな」
「……」
「身勝手に支配の限りを尽くさねば満たされぬという、穢れた心を持った者が暴れておる。ヴァルハイツと同じではないか。我々に貴様らの価値観を押し付けるでない!」
そう怒鳴りつけてくる族長の意見には、ぐうの音も出なかった。
ここにいるエルフ達の視線を見ればわかる。
人間の欲望がエルフ達の生活を脅かし、略奪されているのだと。それによってどれだけの悲しみや苦しみを背負っているのかも。
レンのあの取り乱し方を見れば、痛いほどに理解できるが、同情の言葉など出るはずもない。
「……安心せよ。貴様が案じずとも妖精王様は早々やられるお方ではない。それどころか、人間に見つけ出すことなど不可能だ」
「この里に居られるのでは?」
「貴様に語ることではない」
「で、ですが彼らは本当に危険なんです! お会いすることは……」
「できん! 場所を知る者はほとんどおらぬ。同族でも限られた者しか知らん。その者達がたどり着くことはない」
「で、でも……」
「くどい!」
互いの危機感の違いという溝は中々埋まらない。
それを思ってか、
「あ、あの……」
ナディがそっと手を上げた。
「何だ? ナディよ」
「族長様。私の話を訊いて頂いても?」
良いぞと答えると、ナディは今までの人間について語り始める。
「私達は人間の恐ろしさを知っています。里を襲われ、奴隷へと身を堕とされたあの日……どれだけ怖かったか、今でも震えが止まりません」
ナディはギュッと身体を抱きしめながら震えている。
「奴隷として生活していた時も、失ったものを数えながら生きていくことに絶望も感じました。それに戻らなかった同族達のようになってしまうのかと……怖かった。でも、脱走した先であった人間さん達は優しかった」
暗闇で覆われていた空が晴れ渡るように、表情も明るくなっていく。
「私達はしばらくとある人間のご家族の方と生活していました。そこの家族の方々は私達を家族のように迎え入れてくれました。周りの村の方々も……苦労したんだね、頑張ったねって、心配も……してくれたんです」
人の温もりを思い出したのか、ポロポロと涙が零れてきた。
「族長様! あの人達と今、原初の魔人を襲おうとする人達を一緒にしないで下さい! アルビオさんもこれ以上の被害が出ないようにと、受け入れられないことを覚悟の上でこうして来られたのです」
「ナ、ナディ……」
ナディの必死の説得に、兄であるシェイゾも意見する。
「族長。確かに一括りにするには、あの家族はとても馬鹿でした。疑うこともなく、嫌がることもなく、むしろ鬱陶しいくらい仲良くなろうとせがんできました。我々兄妹は直に人間を見て、体感したからこそ申します。この者の気持ちをしっかり受け止めて頂きたい」
「……」
「族長様、龍神王が亡くなって、西大陸は今、大変な事態とのことです。アルビオさんはその懸念をされているのです。エルフである、我々に被害が出る前にと。だからどうか……」
二人の必死の説得に、族長もさすがに無下にはできないと、真剣な表情で悩むと、アルビオをジッと見て、
「……尋ねたい」
軽く質問する。
「何でしょう?」
「お前はどのような意思があってここへ来た?」
ハイドラスの命令ってのがあるが、今まで関わってきた中で芽吹いた気持ちは確かにあるわけで。
「僕の意思はケースケ・タナカと同じです。守りたいから守る。それだけです」
すると族長は、小生意気なと鼻で笑った。
「そやつもそんなことを言っていたか……」
「えっ?」
「お主、奴の子孫だろ? わしは会ったことがある」
「本当ですか!?」
どれだけ生きておると呆れたため息を吐く。
「お前は子孫というわりに奴とは性格が全然違うな。奴はこちらの話など一切聞かず、頼みもしなかったのに、勝手に救いおって……」
「そ、そうだったんですか……」
「正直、わしほど長生きすると考えはそう簡単には変わらん。人間に対する嫌悪感は消えん。だが勇者には借りがある。ここで返すのも良いだろう」
「では……」
「だがそれでも妖精王様の場所は教えられん」
教えてくれそうな流れだった割に、やはりそこは頑として動くことはなかった。
「だがお主の忠告通りに危機が訪れた時は力を貸してくれるか?」
「は、はい! それは勿論!」
でも歩み寄ってはくれるようで安堵する。
「さて、ならばウィント。他の隊の者達を呼び集めよ。対策を打たねばな」
「はい。すぐにでも……レン」
するとレンはこの場をさっと後にした。
「さてお主らはこれからどうするつもりだ?」
「そのことなんですけど。僕達は獣神王についても……」
妖精王について忠告するくらいだ。それもそうかと悩む素振りを見せると、
「ウィント。お主らの隊の彼女らを一時、引き抜いても構わんか?」
「それは……?」
「ディーヴァ、エフィ、お主らにはこの者らの同行を命ずる」
「「!」」
「族長さん……」
「今、獣人族は危機に瀕しておる。だが、こちらもヴァルハイツに貴様の言う連中も警戒せねばならん。裂ける人員はここまでだ」
「あ、ありがとうございます!」
あくまで獣人族のためだと言ったが、少しは信用してくれたようで嬉しい。
命じられた二人も嫌がる様子はなく、了承してくれた。
「シェイゾ、ナディ。お前達は此奴の事情を知っておろう。残ってもらうぞ」
「あ、はい」
こうしてエルフ達との話し合いは終了。他のエルフ達が来る前に出て行けと言われてしまった。
「それじゃあ彼らを送ってきます」
「うむ」
「ではここでお別れですね。シェイゾさん、ナディさん、リヴェルドさんも……」
「……感謝しているぞ。私やナディを救ってくれたこと。あの王子にも伝えておいてくれ」
「あとナルシアちゃん達にも、必ずいつか遊びに行くと伝えて下さい」
「お、おいおい。また人間の国に行くつもりか?」
「兄さんは行かないんですか?」
クリッとした目で見つめられると、どうにも弱いシェイゾ。
「ま、まあお前が心配だからな」
「フフ。お二人がこの様子なら、もっと人間を信用しても良いかも知れませんね」
「フン! 何をほざいておる、リヴェルド。ほら行くぞ」
族長は嫌味口を吐きながらも、ゆったりと家へと戻っていった。
「お伝えしておきます。それでは……」
アルビオとフェルサは三人と別れを告げ、エルヴィントの森へと入っていった。




