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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
7章 グリンフィール平原 〜原初の魔人と星降る天空の城〜
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10 また忙しくなりそうです

 

「戻ってきたか。そして……確かレオンだったか?」


「は!」


「よく来てくれた。感謝する」


 レオンはハイドラスとの面識が二回目ということもあってか、最初出会った時のように自然とした態度を取る。


 アイシアを目の前にするのとは、えらい違いだ。


 俺達と普通に会話するあたりは、多少女子に対する免疫はあるようだが、まあ好意を寄せる女子にはね。


 男だったら動揺するのもわかるよ〜。うんうん。


 そんなことを内心考えながらも話は続く。


 先ずフェルサ達はやはりと言うべきか、そんな特殊な条件の合う龍操士(ドラゴンライダー)はいなかった。


 西大陸へ様子を見に行った一同は、思った以上の騒ぎにはなっていないようだと告げた。


 五星教と騎士団が統合した影響もあってか、迅速に魔物達の対応はできているとのこと。


 ただやはりドラゴンの暴走については、原因をはっきりとは突き止めてはおらず、具体的な対策案は講じられていない。


 とはいえ、接触した五星教のリーダー格だったミナールは、ザーディアスの発言からクルシア達の仕業だとはわかっている様子だった。


「それで? 貴女達の成果は彼だけ?」


「そう言われると耳が痛いけど、ホワイト達曰く、生半可な龍操士(ドラゴンライダー)じゃいけないことは説明したでしょ?」


「ですが報告によれば、彼は条件に合ってないと訊きますが……?」


「その辺は抜かりないよ! ハーディス君! リリィがちゃんと対策を用意したよ」


「ほう。訊かせてくれないか?」


 ハイドラスに俺のオリジナル魔法を説明すると共に、リュッカの同行をお願いした。


「――なるほど。わかった、許可しよう」


「ありがとうございます!」


 リュッカが嬉しそうにお辞儀をすると、アイシアも嬉しかったのか、ハグを交わした。


 まあ行きたいとも言ってたし、俺もリュッカがついていくなら安心だ。


「他国の人間とはいえ、彼女達を任せていいかな?」


「勿論です。彼女達の重荷に比べれば、お安い御用です」


 その発言を訊いて、ちらっと俺に向かい眉を(ひそ)めた。


「大丈夫ですよ、殿下。話していいとこまでしか話してません!」


 深いため息を吐くハイドラスだが、クルシアの件はハーメルト一国で何とかできるレベルを超えている。


 何せ伝説とされる原初の魔人を殺し、西大陸全土に影響を与える問題だ。


 ハーメルト側としてもクルシアの件があること、そして西大陸との交友関係を良好にするためにも、やむを得ないと考える。


「ではアイシア・マルキス、リュッカ・ナチュタル。ドゥムトゥスより支援を受けしレオン殿と共に、西大陸に起きた元凶である、龍神王の亡骸の弔いを命じる」


 今回に関しては王命のようだ。


 キリッとした緊張感を与える王族としての気迫を感じる命令に思わず立ちすくむ。


「お二人とも、殿下の(めい)です」


 ハーディスが我に帰させる発言をすると、リュッカは慌てて(かしず)き、アイシアはあわあわしながらもリュッカと同じようにする。


「そ、その(めい)、承りました」


「え、えと……う、承りぃ……ました!」


 するとハイドラスは普段の表情へと戻ると、クスッと笑った。


「すまんすまん。今回の件は、目にわかるほどの大事(おおごと)だからな。緊張感を持って欲しかったのだ。頼んだぞ」


「「は、はい!」」


「二人とも、頑張ってね」


「そう言うお前にも頑張ってもらうぞ、オルヴェール」


「へ?」


「お前には勇者の日記から、原初の魔人の記実がないか確認して欲しい。頼めるな?」


 俺はちょっとその光景を想像してみた。


 アルビオの地下書庫にて、あの頭が痛くなるような本の山を一冊ずつ、読みにくいひらがなまみれの日記をハーディスに監視されながら過ごす光景を……。


「えっ!? ご、拷問ですか?」


「……何故そうなる」


「だってハーディスが目を光らせながら、一冊一冊読み込んでいくんでしょ!? 拷問じゃない」


 言われてみればとハイドラスは考えるが、


「ま、日頃、迷惑をかけている反省としては丁度いいだろう」


 爽やかな笑顔でそんな台詞を吐いた。


「お、鬼ぃーっ!!」


「オニイ? 何のことかわからんが、引きこもれとは言ってない。普段通り、学校に通いながら無理なくやってくれればいい。我々が知る限りでは勇者が原初の魔人と接触したということは訊いてない」


 あまり期待はしていないが、念のためとのこと。


 とはいえ、このクソ真面目なインテリ君が監視につくのは嫌だ。


「あ、あの……ついていかないので、監視は――」


「つけるぞ」

「つきますので、どうぞよろしく」


「――信用してよ! 私が悪かったですぅ! ごめんなさいでしたぁ!」


「さ、アイシアちゃんもリュッカちゃんも殿下の王命を全うするためにも、しっかりと英気を養ってきなよ。あ、お前は出発の準備な」


 おーい、ウィルクさんやい。贔屓(ひいき)が過ぎるぞ。


 他国の協力者だというのに、扱いがあまりにも雑である。


「あ、あの私達も……」


「いいから、いいからね?」


「おい、ウィルク。いくら悔しいからと八つ当たりするな」


「だって殿下ぁ!!」


 女好きのウィルクからすれば、レオンの立場は羨ましいだろう。


 ハイドラスが呆れてしまうのも無理はない。


 とはいえ、準備はしなくてはいけないから手伝う意味でも応接室を後にしようとした時、


「すまないが、フェルサとオルヴェールは残ってくれ」


「「!」」


 ハイドラスの言われた通り、俺とフェルサは居残り、アイシア達は応接室を後にした。


 部屋にはハイドラスと側近二人、フェルサと俺だけになった。


「あの……またお説教ですか? マーディ先生からも散々――」


「エルフの二人の話をしよう」


「!」


 そういえばハイドラスの元へ、シェイゾとナディを送っていたことを思い出す。


 そう発言すると、ハーディスは黙って部屋を後にした。


 おそらく二人を呼びに行ったのだろう。


「……原初の魔人の情報を聞き出せたの?」


「……」


 あまり期待が持てる表情はしていないところを見ると、やはり情報が少なかったようだ。


 まあ念のためで勇者の日記を読み込む拷問をさせようというのだ、当然か。


「私、関係ある?」


「あ、そうだよね……」


 確かにエルフと獣人の仲がどれだけいいのかは知らないけど、そんな発言がポツリと出るくらいだから、関係がないように感じるが。


「原初の魔人が南大陸にいることは間違いない」


「ほ、ほんとですか!?」


「ああ――」


 ハイドラスはシェイゾ達が話してくれたことを説明してくれた。


 エルフの里では妖精王を神として崇めているという話だと説明する。


 何でもエルフという種族が生まれた頃からの付き合いがあるらしく、その強さから神と言われているようだ。


 とはいえ、シェイゾ達が知るのはあくまで神として(まつ)られているだけで、本当のところは曖昧だそうだ。


 居場所も知らなければ、生死も知らないとのこと。


 もし知っているとするならば、エルフの里の族長なら知っているのではないのかとのこと。


「――よくそこまで話してくれましたね」


「いや、情報らしい情報ではないよ。ある程度、想像通りなのが、証明されただけに過ぎない。神として崇められていることは予想外だったが……」


 まあエルフのトップに聞けってのは、予想できるわな。


 でも神と崇められるのにも説明はつく。


 伊達に原初の魔人に、龍神王だの獣神王だの付かないだろう。


「それで? その曖昧な情報の元、私とフェルサで日記を漁れと? フェルサは読めませんよ」


「いや、そうじゃない。フェルサには獣人の里に向かって欲しい」


「!!」


「――!! 殿下! それは……」


「わかっている。酷な頼みをしていることは……」


 フェルサは里を追い出された経験がある。そこをサニラ達に拾われているのだから。


「だが事が事だ。妖精王がエルフ達に神と言われているのだ。獣神王もまた崇められている可能性は否定できない。情報が欲しい」


「だけど殿下。それはアイツらもわかってるんじゃ……」


「だからこそだ。迅速に対応したい」


 すると扉からノック音が聴こえた。


「殿下」


「入れ」


 正に阿吽の呼吸。部屋に入ってきたのは、シェイゾとナディ。そしてアルビオだった。


「リリアさん、帰って来たんですね。リュッカさん達も……?」


「うん。西大陸に向かうために準備とかしに行ったよ」


「そうですか」


 俺達の近況はハイドラスを通じて知っていたようで、無事の報告を訊くと安堵のため息を吐いた。


「それで王子。俺達を里に帰すという話は本当か?」


「えっ!? 里に?」


「そうだ。ただし、アルビオとフェルサを連れてだ」


「……」


 軽く事情は訊いているようで、不機嫌そうにそっぽを向く。


 どういうことかと説明を求めると、アルビオが話してくれた。


「この二人を連れて、本来行けるはずのないエルフの里へ行き、注意勧告をしてくるってことだよ」


「この二人ならばエルフの里への道の案内もできるし、クルシアの恐ろしさも知っている……」


「えっ? それはどういう……」


「リリアさん。わ、私達が奴隷として向こうの人間の国にいたことは話しましたよね?」


「あ、うん……!!」


 俺はザーディアスの話を思い出す。


 人間絶対主義国のバックに、生物研究を行なっている奴の存在を。


「……気付いたな。そうだ。おそらくではあるが、彼らはアミダエルの奴隷だった。アミダエルと繋がりがあるのは……」


「クルシア……」


「そうだ」


 それならばシェイゾ達を里へ帰す理由にも説明がつく。


「なるほど。つまり妖精王を神と崇めるエルフの里に、妖精王を守るよう促すための説得力なわけだ」


「その通りだ」


「それは構わん! 構わんのだが……どうして人間まで連れて行かねばならない! 勇者の末裔で精霊様の信頼を得ているとはいえ……こんな……」


 少しずつ人間を信じられるようになったシェイゾだったが、やはりエルフの里へは踏み入って欲しくはないようだ。


「勇者ケースケ・タナカはエルフと交流があったそうじゃないか。それに精霊も君達が崇める存在であるのだろう?」


「そ、それは、そうだが……」


「兄さん!」


 煮え切らない兄の態度に痺れを切らし、ナディが声を上げる。


「殿下から訊いたでしょ? 原初の魔人を殺す人間がいること。この人達はそんな人達から妖精王様を守るために考えて下さったんだよ! いつまでも人間とかエルフとか言ってる場合じゃないよ!」


「ナ、ナディ……」


「兄さんの言いたいこともわかるし、里に人間を連れて行くことは私も怖いけど……それでも最悪を回避するために協力し合おうよ!」


 エルフの里は確かに大手を振って歓迎はしてくれないだろう。どんな言葉を投げつけられるか予想もつかないだろう。


 だけど勇気を持って、昔のしがらみを捨てるためのきっかけ作りにもなると、説得を試みる。


 そんな力強い説得を受けたシェイゾは、


「そうだな。わかった。俺も腹を括ろう」


 妹に言われっぱなしではいられないと覚悟を決め、エルフとしてのしがらみを捨てた。


「アルビオ。お前の肩書きを活かす形となり、不本意ではあるだろうが……」


「大丈夫です、殿下。僕、頑張りますから」


「ああ。ありがとう。……アルビオ、フェルサ。お前達には南大陸へと向かい、エルフの里ならびに獣人の里へと向かい、注意喚起と原初の魔人の情報を収集して欲しい。奴らもそのあたりは把握しているはずだ。最悪接触し、衝突する恐れもあるが任せたい」


 こちらの方がアイシア達より、圧倒的に危険かつ難しい任務なだけに、先程のような真剣な言い方ではない。


 心配で堪らないが、行かせねばならないと悔しげな表情。


 だがアルビオは膝を折り、


「殿下。その任務、お受け致します。任せて下さい」


 優しくも頼もしい表情を見せて答えると、ハイドラスの表情も和らいだ。


「まったく……頼もしくなったものだ」


「そんな……僕なんてまだまだですよ。でも、僕にできることがあるなら……」


「うむ、頼むぞ。……そういうことだ。フェルサも思うことはあるだろうが、獣人の里への案内を任せたい」


 フェルサの表情は相変わらず変わらないが、気を落としているのだけはわかった。


「フェルサ……」


「ん。大丈夫。……わかったよ、殿下。私も昔を引きずっている場合じゃないね」


「頼むぞ」


「それで? 私は?」


 フェルサを残した理由はわかったが、俺を残した理由はまだ訊いてない。


「お前にはアイシア達が戻り次第、私と人間絶対主義国であるヴァルハイツに向かうぞ」


「!! そ、それって……」


「ああ。クルシアの息がかかっている敵陣に堂々と乗り込むぞ」


 ハイドラスはニカッと不安混じりだが、やってやるぞといった不敵な笑みを浮かべる。


「思い切ったね」


「実はそうでもない」


「え?」


「元々、向こうとは何回か交流があったのだが、お前の魔人の事件を訊いて、一度会ってみたいと連絡があったのだ」


 つまりは向こうから直々にお誘いがあったので、乗っかることに決めたわけだ。


 この言い方からするとクルシアではなく、ヴァルハイツの重鎮からの連絡のようだ。


「なーるほど。つまりは公式にそのヴァルハイツに赴いて、秘密裏にアミダエルと接触し、先手必勝ってわけですね」


「そうあってくれると有り難いが、あのクルシアのことだ。そう易々とはいかないだろう」


「いや! ここらでアイツの鼻っ柱の一つや二つくらいへし折ってやらないと割に合わない。仮は返さないとね」


 俺の言葉遣いにちょっと違和感があったのか、


「お前、男臭いな」


 まさかのシェイゾからツッコまれた。


「う、煩い! 男勝りなだけなの!」


「そうだぞ! エルフ! リリアちゃんの可憐かつこの勇ましさこそが魅力なんだからな!」


 望んでないフォローをありがとう、ウィルク。


「シェイゾ殿。向こうでのこと、心苦しいとは思うが、話して欲しい」


 奴隷にされていた話を出来れば詳しく尋ねたいと話すが、


「俺達も詳しくは知らない。その女には初めて会った時に話したぞ」


 確かに奴隷として扱われ、監禁されていただけで、何をしていたかまでは見てないし、訊いてないと知っている。


 だが同族が戻ってきてないとも訊いている。


「まあロクなことじゃないだろうけどさ。殿下もヴァルハイツについては知ってることがあるんじゃないの?」


「まあな……」


 ハーディスやウィルクも落ち込んだ様子なあたり、あまり友好的な関係でもなければ、良い噂も聞かないようだ。


 まあシェイゾ達の扱いを考えると、想像通りだろうが、問題はアミダエルである。


 ドクターがテテュラに対し、魔物化ができる魔石を平気で組み込ませるあたり、アミダエルもそのあたりの外道のように思えてならない。


 ザーディアスの話を聞いても印象は良くない。


「あの国を説得するためにも、アミダエルを利用できればよいが……」


 中々逞しい考えではあるが、


「殿下。訊いてもいいですか?」


「なんだ?」


「他国にも関わらず説得って介入し過ぎでは? 人間絶対主義国なんて言われるほどの歴史があるんでしょ?」


 西大陸の闇殺しの大陸なんて言われるのと同じだ。


 規模が大陸全土と国一つじゃ違うだろうが、それでも真剣に取り組むべきは自国の利益とか安全とかではないだろうか。


 正直、ヴァルハイツと関わることでのメリットより、デメリットの方がでかいと考える。


「言いたいことはわかるぞ。だがな、あの国はあまりにも酷いのだ。我らがハーメルトの理念とは全く真逆なのだ」


 ハーメルトはどんな人種でも受け入れ、誰もが幸せになれる国づくり……そして将来的には世界中をもそんな世界にしたいと願っている。


 勇者の意志をついで。


 しかし、ヴァルハイツが理念とするところは、人間だけが幸せに暮らせる国づくりだと話す。


「まるで否定されているみたいじゃないか。我々の理念を。勇者の志しを……」


「殿下……」


「……」


 シェイゾとナディは、自分達のことに心を痛めてくれているハイドラスの想いが伝わってくる。


 かつて勇者が他種族を思いやり、守ろうとした意志を継ぐかのように。


 この人は本当に救いたいと思っているのだと気付く。


「……あの国とは根強く外交を続けているのでが、一向に芽が出なかったのです。ですがアミダエルという後ろめたさが芽生えた。それはこの国の在り方を否定できる武器となるとお考えなのだ」


「この好機は中々逃せませんね、殿下」


「そういうことだ。力を貸して欲しい、オルヴェール」


 いよいよ話の規模が大きく膨らんできたが、正直怯んではいない。


 正直、そのあたりの外交は殿下がやることだ。


 俺がやるべきことは決まっている。


「要するにはアミダエルを壇上へ引きずり出せばいいんですよね? 言われずともですよ! 殿下!」


 俺達としてもクルシアの一角を落とせるいい機会だ。逃すわけにはいかない。


 そんな話が盛り上がる中、コンコンとノックが鳴った。


「誰だ?」


 この話は密会の場である。


 聞き耳を立てられぬよう、結界を張られている話だが、もう訪れる人はいないはず。


「お兄様!」


「何だ、メルティか。どうした? 私はまだ大切な話の途中なのだが……」


 声をかけてきたのは、メルティアナ姫殿下。


 するとメルティアナは嬉しそうに報告する。


「お兄様、素敵な方がお見えになっていますよ」


「素敵な? 誰だ?」


「あら? わたくしですわよ」


「!!!!」


 おっ。これは聞き覚えのある品性のある上から目線の発言。


 扉越しから聞こえたその声に、ハイドラスは拒否反応だろうか、思わず座っていたソファから跳ね上がる。


 入りますわよと一言告げて、扉がゆっくりと開く。


 ハイドラスにはその扉を開ける音が、物々しく聴こえただろう。


 顔が引き()っている。


 その彼女はバサっと扇を開き、そのつり上がった眼でハイドラスに視線を向ける。


「婚約者がわざわざ会いに来たのに釣れない態度ね、ハイド」


「ファ、ファミア。どうしてここに……」


「あら? 二度も同じことを言わせるつもり? 貴方が心配で来てあげたのに……」


「お、お前が心配だと……」


 信じられないとの言い方に、ムッとしたのはメルティアナ。


「せっかく来て下さったのに、失礼じゃないですか!? お兄様!」


「あ、いやぁ……」


 あのしっかり者の殿下も婚約者と妹を前にするとたじたじのようだ。


「こちらにドラゴンが飛来したと訊いて様子を見に来てみれば……」


 この応接室にいる俺達に視線を泳がせると、不敵な笑みを浮かべた。


「なんだかそれ以上に面白そうな展開になってるみたいね」


 エルフに勇者の末裔、黒炎の魔術師に殿下だ。


 しかもこの面子で大切な話と言われれば、聡明な彼女には語らずとも重大な話をしていることに気付くのは容易なことだった。


「何を話していたのかしら? 詳しく訊いても?」


 この後、メルティアナに席を外してもらい、洗いざらい白状させられた。

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