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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
7章 グリンフィール平原 〜原初の魔人と星降る天空の城〜
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06 可愛い弟の不安

 

「お姉ぇちゃんは〜まっだかな♩ お姉ぇちゃんは〜まっだかなぁ♩」


「……姉さんはまだまだ帰って来ないよ」


 デュノンは少しギュッとナルシアの手を強く握る。


 西大陸へ向かい、あの召喚テロを起こした元凶を止めに行きたいと家族会議を行なった。


 父も母も姉さんの気持ちを優先したが実際、不安の種は多い。


 あの時、ナルシアとフェノンはナディさんと遊んでいたから、姉の帰りを楽しみに待てるのだ。


 たまにこうして歌って、帰りを心待ちにしている妹を見ると、万が一のことがあったらと、嫌な方向ばかり向いてしまう。


「姉さん……」


 すると二人の前を影が通り過ぎた。


「ねえ? 今の影って……」


「あ、ああ……」


 あの夏のデジャヴが蘇った二人は、その影が向かった方向へと走り出す。


 デュノンの気持ちは以前とは別物だ。


 あの鬱陶(うっとう)しくも優しい姉さんが帰ってくるのだと、確信すら(うかが)えたデジャヴ。


 村へと駆け付けると、そこにはあの時と全く同じ光景が広がっていた。


 村中でアイシアとリュッカを迎え入れる光景を。


 ただ以前と違うのは、乗っているドラゴンと疲れ果てたリリアとリュッカがいる光景。


「あっ! デュノン! 久しぶり!」


「お姉ちゃん!」


 ナルシアは嬉しそうに駆け出し、胸の中へ。


「おおっ! ナルシアも久しぶり」


「えへへ。お姉ちゃん」


 何も変わりない様子に安堵を浮かべ、


「おかえり、姉さん」


「うん! ただいま」


 こちらも変わりないよと、いつも通り迎え入れた。


「それで姉さん。今日はまた何で帰って来たの? それにこの龍……」


 自分の姉がドラゴンを使役していることは知っているが、確かわかりやすい真っ赤なドラゴンだったと記憶している。


 これはどう見たって緑色だ。


 するとエメラルドは擬人化する。


「神子様、姉と慕うこの方々は……」


 集まった村人みんなが驚いた。


「あっ! うん。私の弟と妹でデュノンとナルシア」


「ね、姉さん……?」


「すごーい。人になった……」


 エメラルドは二人の方を向くと(かしず)いた。


「お会い出来て光栄であります。神子様のご兄妹方。わたくし、神子様の従者を務めます、エメラルドと申します」


「おおー!」


 ナルシアは興奮した様子だが、デュノンは引いている。


「紹介するね。私の新しいドラゴンちゃんだよ」


「あ、新しいって、姉さん……?」


「とりあえず詳しい事情は、リュッカのお父さんも交えてでいいかな?」


「は?」


 俺達はこの村での用事を済ませるため、アイシアの家にリュッカの両親を招き、事情を説明することにした――。


 擬人化できるドラゴン達に子供達を遊ばせながら、私達は集まった皆に事情を説明した。


「――まさかアイシアがそんな子孫だったなんて……」


「さっき、あのドラゴン達から聞いたんだけどアイシアのお母さんからその気配があったって……」


「あら? 私?」


 ホワイト達曰く、アイシアの雰囲気が当時の龍の神子に似ているという話を照らし合わせると、まあ母親かなとは思う。


 だがまったく先祖にはそんな人がいると、聞き覚えはなく、情報はここで途絶えた。


 とはいえ、あれだけのドラゴンを一斉契約できるところを目撃したのだ。


 アイシアが龍の神子の子孫であることは、ほぼ間違いないだろう。


 アルビオのように、才能の波があったのだろう。


「しかし、龍神王が殺されたってのは……」


(にわ)かに信じ難いな……」


 アイシアの父達は原初の魔人自体をあまり信じられないというが、シェイゾは信じ難いと発言した。


 原初の魔人の存在については否定的ではないところを見ると、エルフが原初の魔人についての何らかの情報を持っていることは間違いないだろう。


「でも事実だよ。あそこで遊んでいるドラゴン達は、アイシアに助けを求めに来た。これが何よりの証拠だよ」


「それでね、お父さん」


「ん?」


「解体ができる龍操士(ドラゴンライダー)なんていないよね?」


 リュッカ父は腕を組み悩むが、そんな知り合いなど思い浮かばなかった。


「その里まではどうしても相乗りできないのか?」


「彼らが言うには無理だと……」


 俺達は道のりを知らない以上、彼らの情報しかない。そうでなければ、龍神王はもっと簡単に見つかったはずだ。


 それを考えれば一筋縄ではいかないことも明白である。


「その通りだ!」


 バンとホワイトが扉を思いっきり開けた。


「子供達と遊んでたんじゃないの?」


「フ……少し休憩だ」


 不老とはいえ、疲れはするのだろうか。子供の元気パワーの前では肩なしのようだ。


「我らが里に赴くには、狭い渓谷道を進み続けねばならない。そこには障害物のように岩が突き出ており、強い風も吹く。並のドラゴンでも我らが里に来ることは難しい」


 本来は人を乗せて飛べるところではないと説明。


 熟練された龍操士(ドラゴンライダー)ならば、同伴も可能だろうとのこと。


 だからこそ、あの糸目男がどうやってたどり着いたのか疑問に抱いていたが、バザガジールならそんな渓谷、さらっと通ってきたんじゃないかと考える。


「だったらアイシアも難しいんじゃ……」


「エメラルドを操っていただろう? 神子様には龍に対する騎乗能力があるのですよ」


「そう言われてみれば、エメラルドちゃんがどんな風に飛びたいか伝わってきてたかも……」


 おいおい。いよいよチートじみてきたな。


 ドラゴン限定とはいえ、属性問わず使役可能。騎乗スキルまで習得とか。


 ていうか、ドラゴンでその能力はヤバイ。


「じゃあアイシアは大丈夫なのね?」


「はい。母上殿」


「うーん、とりあえず来た冒険者からも聞いてみるが、そんな器用な奴はいないだろうなぁ」


 龍神王の話が進んでいくが、痺れを切らしたシェイゾ。


「龍神王様は俺達じゃ、対処できない。俺達がここにいる理由はなんだ?」


「そうカリカリしないでよ。龍神王が殺されたってことは、他も狙われる可能性がある」


「!」


「だからね、殿下が原初の魔人の情報を知ってるかもって、二人に会いたいんだって……」


 そうアイシアが言うと俺は転移石を差し出した。


「他の原初の魔人……」


 二人の両親も大事(おおごと)になっているのだと、自覚せざるを得なかった。


 シェイゾもそれはわかっているようだが、転移石を手に取ることを渋る。


「ダメだ。人間に原初の魔人の情報は明かせない」


「まあそう言うとは思ったよ。だけどね、龍神王を殺した連中は、南にいるって目星をつけてるよ」


「な、何だと!?」


「龍神王の一連の事件は話したよね? 多分、これでもまだ片鱗だよ。西大陸はこのまま放っておけば、魔物が凶暴化していく一方になり、今までの魔力量じゃなくなった西大陸の人達にも、少なからず影響は出る。残りは南……そう言い切られてる。万が一、両方殺されたら、西の比じゃないよ」


 俺の説得に納得している自分がいる。


 だが、それでもエルフとして人間に情報を開示することがどれだけ恐ろしいことかも知っている。


 かつて人精(じんせい)戦争の引き金を引くきっかけを与えてしまった歴史がある。


 しかし、ここで過ごした時間も嘘ではない。


 向こうでは奴隷として過ごし、どれだけ人間を憎んだか。


 だがここで過ごしていたら、みんな馬鹿みたいに親切で暖かかったことに気付いている。


 特にアイシアの家族は、裏表もなく接してくれた。


 リリア達も向こうの人間と違うことくらい把握しているシェイゾは、


「兄さん……」


「ナディ……」


 信じようと訴えるナディに、自分自身の受け止めた人間の優しさに応えようと考えた。


「わかった。あの王子のところに行けばいいのだろう?」


 シェイゾは俺から転移石をぶんどった。


「ありがとう!」


「待て。あまり期待はするなよ。俺達が知ってることも少ないんだ……」


「それでも私達よりはマシでしょ?」


「フン」


 ツンケンした様子は相変わらずだが、葛藤してくれたところを見ると、少しは人間を信用してきたようだ。


 シェイゾはナディと共に、転移石を使って消えた。


「アイシア。お前……」


「大丈夫だよ、パパ。そんなに心配しないで。危なかったら、ちゃんと逃げるよ」


 俺の話を受け止めた二人の両親が心配そうな表情に変わることはわかっていた。


 西大陸の件もそこまで咎めなかったらしいが、親心としては止めたかっただろう。


「これからどうするんだい?」


「一応、この後にドゥムトゥスに向かって、アイシアと同行する龍操士(ドラゴンライダー)と条件の合う龍操士(ドラゴンライダー)も探します。それから準備ができ次第、アイシアは西大陸へ向かい、龍神王を弔いに向かいます」


 前回のように戦うことが前提ではないので、ほっとした様子を見せるが、さっきのホワイトの話を思い返した。


「リュッカちゃん達は一緒にいけないんじゃ……」


「そうなりますね……」


 だから熟練の龍操士(ドラゴンライダー)を探そうとしているわけで。


 ご両親からすれば、俺やリュッカが一緒ならと考えたのだろうが、ホワイトの話通りなら、その方が危険だ。


「一応、ヤキンさんっていうアイシアに龍の乗り方を教えてくれた人がいます。その人について来てくれるよう、お願いするつもりです」


「そうか……アイシア」


「なに? パパ」


「お前は今どんな状況にいるのか、パパは詳しく知らない。だからこれだけ訊いておく。……後悔はないか?」


 天然夫婦だと思っていたが、やはりお父さんはしっかりしてるもんだなと、リリアの父親(ガルヴァ)を思い浮かべ、見習って欲しいと感じた。


 この質問には色んな想いが込められているのだろう。


 クルシアのことに関わっていく過程で、これまでのこと、これからのこと。


 そしてアイシア自身の行動により、変えていくことの覚悟を説いているよう。


 龍の神子と急に言われ、その行動により、きっと周りは目まぐるしく変わっていくことだろう。


 その行動のひとつひとつに、責任を尋ねているのだ。


 アイシア自身も強くなったように思う。


 テテュラの時も、アルビットに立ち向かった時も行動を起こしていることから頼もしさを感じている。


 勿論、危なっかしいところも多々あるが、それでも俺はとても頼りにしている。


「後悔なんてしてないよ。そりゃ龍の神子って言われてもまだ実感ないけど、私にやれることがあるって――」


 ホワイトをチラッと見る。


「教えてくれたから……」


「み、神子様ぁ……」


 ホワイトは感極まり、アイシア父はその答えと清々しい表情に満足した様子。


「そうか、ならいい。お前は昔から人を引っ張っていく才能がある。自分の行動に自信を持て! ついてくるドラゴン達のためにも。そして俺達、家族のためにも……」


「うん! 私、頑張るよ!」


 このやり取りに触発されたのか、リュッカは父にお願いする。


「お父さん!」


「お、おう。なんだ?」


「私に……ドラゴンの解体の仕方を教えて欲しい」


「! リュッカ?」


 リュッカは真剣な眼差しで父親をジッと見る。


 アイシアだけじゃない。自分も覚悟を持って着いていきたいと言わんばかりの眼差しだ。


「……わかった。俺が持てる技術を教えてやるよ」


「ホント!? お父さん?」


「ああ……」


 もっと女の子らしいことを言って欲しいと母は困った表情を見せるが、特に口出しはしなかった。


「リュッカ? どうするつもり?」


「着いて行くこと自体は難しいと思うけど、やれることはやりたい。私だって二人の力になりたい」


「……リュッカには色々――」


「ううん! もっと頑張れるはずだよ。頑張らせて欲しい」


 リュッカは向上心なのか、やる気に満ちた発言。


 クルシアの事情が重くなってきていることから、もっとやれることがあると、自分を鼓舞している。


「そっか、わかった。確かに龍神王の死体を何も向こうで解体しなくちゃいけないってわけでもないだろうし……」


「ま、待て待て! 龍神王様はあの地で眠らせるべきだ!」


「だって相乗りも無理なんだろ? 最終的に条件の合う人が見つからなかったらそうなる」


 ホワイトは悔しそうに歯ぎしりを立てるが、最悪見つからなければそうなる。


 そういう意味では、リュッカが技術を身につけるのはありだ。


「ならどうしよう? すぐにドラゴンの解体の技術なんて身に付かないよね?」


 アイシアの言う通りだ。


 リュッカもある程度の知識はあるだろう。火葬を否定したほどだ。


 だが知識と技術は別物。経験がものを言う。


 一朝一夕に身につくなら、条件を満たすことだって容易いだろう。


 それにドラゴン自体レアなんだ。技術を身につけようと思っても中々難しい。


「悪いんだけど、二人でドゥムトゥスに行ってくれる? 私はお父さんと猛特訓するから……」


「特訓ってドラゴンは……」


「その心配なら要らない。リザードマンみたいな龍種は、客から来るからな。ドラゴンとは大きさや硬さは違うが、基本的には一緒だ」


「なるほど。場数を踏ませるわけですね」


 確かにドラゴンも、悪い言い方をすればトカゲに羽が生えただけだ。


 そのあたりの魔物達を捌いて感覚と技術を身につけさせれば、能力もあがる。


 しかもリュッカの実家はアルミリア山脈の迷宮(ダンジョン)からそういう魔物も多く運ばれると訊く。


 こちらの用件を済ませる頃には、真面目なリュッカのことだ、パワーアップしてくれるだろう。


「ならわかった、そうしよう。私もリュッカの頑張りが無駄にならないように、方法を考えておくよ」


「ありがとう、リリアちゃん」


 話の区切りがついた頃合いをまるで見計らったように、扉が開く。


「ホワイトー! 遊ぼー!」


「ホワイト!!」


「――ぎゃあっ!? み、神子様のご兄妹様!? ど、どうかお手柔らかに〜!?」


 フェノンとナルシアがホワイトの腕を強く引っ張る。


 この二人がホワイト達に懐いたようなので、今日のところは泊まっていくことにした。


 ***


 リュッカは少しでも時間が惜しいと、久しぶりに実家へと帰って行った。


 のんびりする時間も考えて欲しいと思うが、あのやる気を見ると、水を差すのも野暮というもの。


 むしろこちらは緊張感を持って欲しいと思うほど、呑気に過ごしている。


「おおー! お姉ちゃん、凄ぉい!」


「うん! 今度この子達以外の子にも会わせてあげるからね」


 大勢のドラゴンと契約したことをナルシア達に話すアイシアは、楽しそうだ。


 一人っ子だった俺には、この光景は中々微笑ましい。


 するとその一人、デュノンが俺に近付いてきた。


「少しお話いいですか?」


 きっと姉のことで相談だろうかと、隣に座るよう促した。


「なに? どうしたの?」


「姉さんは大丈夫なんですか?」


「……私は頼もしく思ってるよ」


「そうじゃなくて、龍の神子だなんて……」


 今後のことではなく、龍の神子と祭り上げられていることに心配になっているようだ。


「父さんも母さんもなるようになるって言うし、これからどうなるのかもわからないのに……」


「あのドラゴン達がアイシアに何かするって思ってるの?」


「それもわからないから、訊いてるんです……」


 まあ俺に訊かれてもという反論は呑み込もう。


 多分デュノンの心配はそこではない。


 この騒動からアイシアが遠い存在になっていくのではないかという不安があるのだろう。


 ドラゴン達から頼られ、その彼らと共にクルシアの問題の解決に繋がっていけば、きっと家族からしても誇らしいことになるだろう。


 だが、そこから家族の間に亀裂が入るのではないかと不安になっているのだろう。


 確かに勇者の末裔であるアルビオの例があるから、わからないではない。


 だがアイシアの性格を考えれば、それこそあり得ない話だ。


「そっか」


 俺はデュノンの肩に手を回して、ギュッと抱き寄せる。


「へ!? リ、リリアさん!?」


 顔を真っ赤にして胸に顔を沈める。


「寂しいなら寂しいって言えばいいのに……」


「ち、違っ!? ぼ、僕は……」


「大丈夫だよ。君のお姉さんは、龍の神子なんて肩書き、物ともしてないよ。むしろ、もう少し自覚して欲しいくらいだよ」


 デュノンの気持ちはわかるよ。


 龍の神子としての力があるとなると、戦線に立たされることになるだろう。


 クルシアの事情にも深く関わってしまっている。本人もそういう意思はある。


 だから家族として不安だし、遠くに行ってしまうのが怖いのだろう。


 デュノンとアイシアがどんな子供時代を送ったのか知らないけど、アイシアの性格を考えれば、デュノンにとって目標となる存在だったのだろう。


 子供の頃から中心的人物であり、鼻につかず、明るくて優しい、人を寄せ付けてやまない性格の持ち主。


 この姉がいるから楽しく過ごせてこれたし、これからもと考えたのだろう。


 だからこそはっきり言える。


「君のお姉さんは、家族みんな大好きだよ。でなきゃ……」


 俺は視線をアイシア達のところへ向ける。


 そこには楽しそうに兄妹じゃれ合う姿が見受けられた。


「あんな笑顔を見せたりしないよ」


「……」


 デュノンも心の何処かではわかっていたのだろうか、無言で俯いた。


 誰かに言葉にして欲しかったようだ。


 こうして見ると中々可愛い。子分……いや、弟でも出来た気分だ。


「そんなに不安なら私がギュッとしてあげようか?」


「なっ!? 何を言い出すんですか!?」


 反応が面白いものだから、つい普段は言わないような言葉を口にする。


 すると、俺達が楽しそうにしてると食い付いてくる。


「あれ? リリィとデュノン、いつの間に仲良くなったの?」


「ん〜? 弟君は何でもお姉ちゃんに甘え盛りなんだってさ!」


「ちょっ!? そ、そんなこと言ってな――」


「もう! それならそうと言ってくれればいいのに……」


 とたたた、とデュノンの隣まで駆け寄ると、渾身のハグを決める。


「ごめんね、デュノン! お姉ちゃんにいっぱい甘えていいよ」


「ぼ、僕は……」


 ここで悪戯心に火が付いた俺も、


「よーし! リリアお姉ちゃんにも甘えていいぞ」


 悪ふざけに俺もハグして、はさみうちにした。


 年頃の男子には刺激が強過ぎたらしく、頭から湯気が噴き出るほど顔が真っ赤になった。


 するとナルシアとフェノンも駆け寄り、ジャンプ。


「私達もー!」


「――おわあっ!?」


 そのままみんなで倒れ込んでしまったが、


「「「「――あっはははははは!!」」」」


 思わず可笑しくなって笑い合った。


 デュノンも思わず微笑んだ。


 自分が何をつまらない心配をしていたんだろうと、我に帰った。


 原初の魔人とか龍の神子とか王命だとか、大きな名前に踊らされていたと気付く。


 こんなに楽しそうに笑う姉を見て、不安に思う方がどうかしていたと。


「あのリリアさん……姉さんのこと、これからもよろしくお願いします」


「こちらこそ」


 俺としてもこれからもアイシアのことを頼るし、頼って欲しい。


 勿論、今も頑張っているであろうリュッカも。


 闇夜をほっこりと照らしてながら、家族の暖かな時間がゆっくりと過ぎていった。

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