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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
6.5章 地底都市アンバーガーデン 〜ヘレンと愉快な仲間達と極寒の地と地底の神秘
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14 研究者って

 

「この循環度、確かに魔石のようだな。その魔力循環精度の影響もあって、人間の細胞体が活発に行動できなくなっている。しかも下手に食事も睡眠も取らないものだから、人間的治癒能力が減少していることにも要因が考えられるか……」


「はい。だからと言って人間的な生活をさせようにも、身体の構造がこうも脆くてはどうにも。しかも人間のような栄養摂取をしたところで、身体が以前のような状態に戻るとは考えにくいですね。そもそも彼女の身体自体が未知数な存在です。解決方法の着手が困難です」


「もっと色々なデータを取るべきだね。彼女が魔物化したというその情報もいくらか欲しいな。人間の魔物化に魔石化……どちらも恐ろしい。タナカさん、テテュラさん、協力感謝するよ」


「い、いえ……」


「私に関しては自分のことですし……」


 ヘレン達がこの場を後にし、ラミアという生物学者が合流してから、討論がデットヒートを続けている。


 アルビオとテテュラの記憶の中にある当時の出来事を、人工魔石でコピーを取り、それを眺めながらの激論を飛ばす。


「しかし、人を魔物化する人工魔石ですか。人の身体を変質させるほどの術式を施し、その維持にその人工魔石を擬似心臓に仕立てあげるだなんて……これを作ったドクターって男、相当の切れ者ね」


「そうかな? 俺はイカれてると思うね。テテュラさんの話だと魔石の研究に余念のない人物だと言うけど、魔石という源に対する敬意がない。ただただ魔石をおもちゃにして遊んでいるだけの人物としか思えない。品性を疑うね」


「それについては同意見だ。だが人の価値観なんてそれぞれだ。そのドクターって奴が邪道の道を走るなら、それはそれでいいさ。だがなぁ……」


 何か思い当たる節があるようで、ふと考え込むように顔を伏せた。


「おい、サドラ、ヴァート。ちょっと昔の資料を漁るぞ」


「わかった」


「は、はい」


 すると三人はパタパタと資料室へと入っていった。


 すると、この専門的な空気がまだ余韻を残す中、アライスが堪らず、アルビオにこしょっと話しかける。


「……ひと段落、着いたのですかね?」


「さ、さあ……?」


 すると、そのひそひそ話が聴こえていたようで、一人取り残されたラミアはニコニコと笑顔を向けている。


「あっ! いやっ!? その……」


 二人は動揺してあたふたとするが、クスクスと微笑まれると、


「いいえ。こちらこそ、ごめんなさいね。来て早々挨拶もなく熱弁してしまって。はしたなかったでしょ?」


「い、いや! そのようなことは……」


「ご挨拶が遅れました。私はラミア・カーミラと申します」


「こちらこそ、ご挨拶が遅れた。アライス・ワヤリーという。ハーメルトの騎士隊長の一角を担っている。そして、こちらがアルビオ・タナカ殿。そして部下達だ」


 アライスに紹介された一同は軽くお辞儀をして挨拶を済ませた。


「それでテテュラ殿の容体はどうですかな? 正直、我々は専門とするところではないので、なんとも……」


「そうでしょうね。良ければ質問に答えますよ」


 先程の表情を見ればわかると、微笑みながら質問に応じる対応を見せた。


「先ずはテテュラさんの状態ですが、簡単にわかってもらえる言い方をするなら、細胞の硬質化が正しいかしらね」


「硬質化でありますか……」


「カサブタみたいなものでしょうか?」


「面白い表情ですが、まあ再生治療という意味では似たような現象でしょうか? カサブタが出来る原理はご存知ですよね?」


「まあ……」


 外傷を受けた際に、その傷口が乾燥することで、表面の皮膚を構成する皮膚が再生しない代わりに、血の形状が変わりできるもの。


「つまりは彼女の身体のほとんどが魔石なことから、中で循環している魔力が彼女の細胞を再生し続けているのです。人体としてではなく、魔石として……」


「そ、そんな……」


「それを貴方達が言う、黒炎の魔術師の使い魔……インフェルだったかしら? その彼がテテュラさんの人体細胞を守っているのよ。その進行を妨げるために……」


「な、なるほど」


 テテュラの状態をわかりやすく説明されて、口をポカンと開けながら納得する一同。


「問題はここから。この状態から人へと元に戻すことは非常に困難な内容です」


「う、うむ。それは道中にヴァート殿が話をして下さった」


「そうですね。僕もヴァートさんから訊いてます。魔石化を解くならば魔力を解放すればいいが、その際にはテテュラさん自身が消滅してしまうこと。そもそも魔力の結晶体自体を人体の細胞にすることが困難であるということ……」


「ええ。その通りです。それが出来ればあらゆる治療にも使えますし、魔力の量によっては不老不死も可能となる技術となるでしょう」


「ふ、不老不死!?」


 突拍子もない単語が出てきて驚く一同だが、ラミアの説明を訊くと、納得のいく内容であった。


「魔石は魔力が解放、枯渇(こかつ)しない限り、消滅することがありません。身体のほとんどが魔石でなく、自分で細胞の維持ができれば、本格的に不老不死として生きることが可能でしょう……」


「な、なんと……」


 これならば秘匿しながらということにも説明がつく。


 不老不死なんて、寿命が八十年から百年の人間からすれば、欲しがる技術だ。


 それこそ国をひっくり返してでも、欲しがるだろう。


「彼女は人間として不老不死に近い存在。言うなれば、未完の不老不死……と言ったところでしょうか?」


「「……」」


 思わず絶句する二人だが、それを訊いたテテュラは、


「これが不老不死なら、いっそ消滅したいわね」


 静かにそう言い放つテテュラに視線が向けられる。


「……動くことは勿論、寝ることも、食事を摂ることも、表情を変えることすらままならない、こんな身体のままならいっそ……ね」


「テテュラさん……」


「貴女の気持ちもわからないではないわ。でも、辛いでしょうけど、貴女には生き続けてもらわないと困るわ。そのドクターという男が人を魔石化できる技術を持っているということは、逆の技術も必ず必要になる。解決策ができるまでは、申し訳ないけど……」


「わかっているわ。その覚悟はあるつもりで、ここにいるのだしね」


 ドクターの猛毒とも取れる技術を解毒する技術が必要とされる。


 できれば予防策(ワクチン)も欲しいものだと、被害者(テテュラ)の協力は不可欠である。


「や、やはり治癒魔法などでなんとかできそうなものではないなのですなぁ……」


「そう簡単なものなら苦労しませんね」


「今のところ有効な手段があったりしますか?」


 ラミアは調べ始めたばかりだがと小首を傾げる。


「……そうですね。生物学者であり、治癒魔法術師の立場から言わせてもらうと……ほぼ不可能と言っていいわね」


「そ、そんな……!」


「あっ、誤解しないで下さいね。あくまで魔石化した身体を人間に戻すのはというお話からです」


「どういうことですか?」


「過程がありませんでしたか?」


「過程……あっ!」


 わかりましたかと微笑むラミアは、わずかな希望を口にする。


「ええ、察しの通りです。彼女は一度魔物化しています。ついでに言うと半魔物であった時期もあります。その方面から解決策を見出すことができるのではないかというのが、私の見解です」


「なるほど。ですが……」


「はい。それでも雲を掴むような話です。ドクターという魔石加工師のように毒物を流し込み、変化を促すことは簡単ですが、それを治療する技術は極めて困難な話です。もっと詳しく調べると、もっと問題も出てくるでしょう」


 ヴァートがくまを作って研究し続けて、頭を抱えていたことが良く理解できた。


 無機物を命の宿る生命体へと変える技術など、それこそ神の所業である。


「とても一週間で考えがまとまるものではないですね」


「そうですね。正直に申し上げますと、どれだけ少なく見積もっても数十年はかかるお話です」


「す、数十年……」


「とても甘く見てでそれです。もっとかかるでしょう……」


 中々絶望的な内容だが、その当人はあまり動じていない。


「まあ気長に待つわ。だけど……戻る機会はあるわよね?」


「……ああっ! 東大陸にですね? はい。貴女のデータさえ取れれば、戻ることは可能だと思いますよ」


 テテュラにとって元に戻ることより、アイシア達との時間に当てたかったりする。


 やっとでさえ一人歩きもできない状態なのに、会いに来てくれないほど、遠いところに行くのも問題である。


 ラミアの発言を訊いて安堵していると、


「只今戻りました! 難しいお話は終わりましたか?」


「ルイスさん、ノックぐらいして!?」


 ヘレン達が戻ってきた。


「お疲れ様。そちらは収穫はあった?」


「ありましたとも! こちらが例の遺跡の資料になります」


「あっ! コラコラ。知らない人もいるんだから……」


 ユニファーニが見知らぬ白衣姿の女性がいると指摘すると、アライスが紹介する。


「こちらの方はラミア殿という。こちらでは生物学者……でありましたな?」


「はい」


「それじゃあテテュラさんの……」


「ええ。お邪魔なら席を空けるけど……」


「いや、それはこっちのセリフです。テテュラさんはどう?」


 そう尋ねるとアルビオ君達は、さっきまで話していた内容を話してくれた――。


「――そっか。やっぱり難しいか」


「改めて、すごい問題と向き合ってんだね」


「ぼ、僕達にできそうなこと、無さそうですね」


 ルイスはバンッと資料と共に机を叩いた。


「我々が今できることはこれですよ! アルビオさん。精霊さん方にこれからわかる直感力ってあったりしますか?」


「直感力?」


「そうです! 直感です!」


 むふっと自慢げに話すが、フィンは姿を見せると鼻で笑った。


「あのなぁ。これはあくまで人間が描いたもんだろうがぁ! 精霊の俺達に理解を求めるな!」


「ガーン! ていうか、威張って言うことですか!? それ!?」


 まあ言われてみればと納得する一同。


 精霊が関係しているならまだしも、関係してないのに、そのあたりが都合の良くわかるというのは、横暴だろう。


「よく資料を頂けましたね」


「うん。やっぱり遺跡が破壊されたことがショックだったみたいで。結構、協力的だったよ」


「そうですか」


 すると今度は資料室に(こも)っていた三人が姿を見せた。


「やはりこの資料ですかね」


「だな。あの野郎の研究つーことは……」


「これを元に方法を探るしか……」


「何かありました?」


 ラミアが話しかけると、放っておいたことを詫びた後に説明した。


「これを見てくれ」


 テーブルに広げられたのは複数枚のレポート。


「これは誰かの……!」


 その内容を見たラミアは驚いた表情を見せた。


 そこに記されていた研究テーマが、


「――魔石による生成理論について……」


「ああ。この研究書によれば、人間にも魔物のような魔石の生成などが可能なのかをまとめたレポートですね。さらには……」


「魔石による人体影響……」


「ここにゃあ、擬似心臓や特別な術式を施した魔石を体内で活動させるなど、人体実験を行なった形跡があるレポートがあるな。そこには、この娘に起きたような症状のものも書かれてやがる。ほれ……」


 それを見た私達は目を疑った。


 そのレポートは複数枚あり、そこにはその実験台となった被験体の経過記録や健康記録など、細かく書かれていた。


 特に吐き気を覚えたのが……、


「――この対象からは魔力の循環速度が向上し、体内で粒状の魔石の生成を確認するも、当人はその生成された箇所に痛みを感じる模様。経過観測対象、処置不要……」


「――この対象は未だ目を覚まさず。しかし、心臓としての機能はしており、体内の内臓部分は生命維持を確認しているため、経過観測対象、処置不要……」


「――この対象は聴力の回復を確認。ただ見た目がいかんせん魔物に近い姿へと変わった。魔力の波長に合わせて彼女と繋げた結果、魔物への変態ということを確認した。この実験に関しては今後も複数回行なうことで魔物への変態が可能なのを浮き彫りにしたこと」


 どれもこれも協力している人間を放っては、魔石が与える影響を楽しんでいる節のあるレポート。


「ひ、酷い。この心臓の人なんて、心臓に病気があったから協力したってわざわざ書いてある……」


「……こっちの方もそうだね。聴力の回復を約束する代わりに、新しい治療法の実験体になると承諾したって書かれてる」


 だがどれもこれもその実験体が望むような結果は生まず、しかも酷い観測結果が書かれてある。


 つらつらと魔石に対する反省点と改善点のみが書かれており、その実験に付き合い、被害に遭った人達のことは実験結果のみ書かれており、反省の一文も載ってはいなかった。


 レポートとしては正しいのだろうが、その悲惨な結果とその機械的な観測結果からは、異常性を物語っている。


「ああ。どいつもこいつも追い詰められた末に、(すが)るように求めたんだろうぜ。途中経過を見ればわかるが、とてもじゃないが実験対象を気遣っていることはないな」


 心臓の子に関してはその後、目覚めることはなかったという。


 抵抗すら潰されたのだ。心臓移植をする前はまだ意識はあるとも書かれていたのに……。


「これを書いた奴はどこ?」


 抑えられない怒りが漏れ出し尋ねると、ヴァートは首を横に振った。


「今、ここには在籍していないよ。三、四年前に行方不明になっているよ」


「顔写真とかあります?」


 テテュラがそう尋ねるとサルドリアが、んっと言いながらポケットから写真を見せてきた。


「……間違いありません。ドクターですね」


「「「「「!!?」」」」」


「そっかぁ。やっぱりか……」


 サルドリアはそう言いながら、不機嫌そうに椅子にドカッと座ると頬杖をかいた。


「まさか本当にドクターの情報が出てくるとは……」


「テ、テテュラさん? まさかとは思うけど、その人も……」


「はい。クルシアやバザガジールの仲間ですね。私をこんな風にした魔石を作った張本人です」


 ニナはまたかとショックを受ける。


「あの彼の詳細について詳しく訊いてもいいですか?」


「……ゲイン・バッカルビル。南大陸の出身で移住してきたようだね。こちらに所属したのが十五の頃。当時は天才と博され、より良い人工魔石の生成に期待されていたようだが、さっきのようなレポートや実験内容に変わってからは、その狂気じみた内容の影響もあって、二十歳には追放処分を受けている」


「そこからクルシアに目をつけられ、現在に至るってことかしら。ドクターはクルシアに対して恩義もあるみたいな話をちらっと訊いたから、間違いないわね」


 世間から認めないと摘み出された人間の説得は容易だったのではないかと想像できる。


 クルシアは犯罪者だ。


 実験体も実験できる場所の確保も、望むままに手に入っただろう。


 飛びつかない理由が出てこない。


「でもよく残ってましたね。このレポート」


「まあ基本的には残すものだよ。こういう被害者が来た時の発想としては利用できるしね」


「それからすると人間から魔物化することが、元に戻る手段の鍵に見えてくるな。そもそも魔物化する現象は、どうやら魔力の同調性を術式で促し、調整しているように感じるな。魔力や波長によっては全員が全員、魔物にはならないようだが……」


「はい。ほとんどが悲惨な結果を出していますね。中には汚物になったなんてものもあります。しかし、魔力によってこんな結果をもたらすだなんて……」


「ヴァート、これは多分魔力ではなく、術式と波長が関係していると思うよ。でなければ人体に直接影響を与えるのは極めて困難だ」


「付与魔法のような術式を練り込んだのでしょうか? このレポートにはその内容を秘匿している部分があるようで……」


「だな。ヤバいことをやってるって自覚があって続けてるもんだから、タチが悪い。とんだクソ野郎だ。それよりも――」


 もう途中から私達のことが眼中に消えた学者さん達は、無我夢中で討論合戦を行なっている。


「これ……どうします?」


「えーっと……」


 完全に置いてけぼりにされた私達は、


「アライスさん、私達が泊まる場所は?」


「こちらでお世話になるつもりだったのだが……」


 当分はそんな話をするどころではない様子。


 いつの間にか、あんなに怯えていたはずのヴァートですら、討論にしっかり参加している。


 部下達も呆然である。


「だったらさ。テテュラさんはここでしょ? 待っててもキリがなさそうだし、私達は私の実家にでも泊まってていいかな?」


「ご迷惑にならないか?」


「まあ多少の無理は訊いてくれると思うよ。それに私達が意見をするまでもないようだから、有意義に過ごしたいの。テテュラさんには悪いけど……」


 私達がここにいても遺跡の資料を眺めるだけだ。


 テテュラさんに関しては完全にお手上げなのだ、任せるしかないことは、あの学者さん達を見ればわかる。


「構わないわ。むしろ北大陸は観光もできるのだし、私のせいで嫌な思いをした分、楽しんでくるといいわ」


「そんなつもりじゃなかったけど、ありがと」


「そうですね。そうと決まれば、ヘレンさんのご実家へ向かいましょう!」


 意気揚々とルイスはアルビオの腕を掴んで、外に出た。


「アライスさん、ここは私の実家の住所。一週間はここにいるんだよね?」


「ああ」


「だったらたまに様子は観に来るよ。それでいいかな?」


 テテュラは優しく微笑み、こくりと頷いた。


「じゃあテテュラさん、また……」


「何かあればすぐにでも来るから……」


「ええ」


 そう言って、私達はテテュラが預けられる部屋を後にした。


 ***


「なんだか凄い人達だったね……」


「でも本当に良かったのかな? 放っておいて……」


「私達があの場でできることは、テテュラさんを心配することだけ。それで治るなら苦労しないよ。専門家に任せるのが一番だよ」


 アライス達は任務でもあるため仕方ないが、私達には私達ができることをしようと考えている。


「だから私達にできることをしよう」


「それだけど僕達にできることって?」


 私の意見にわからないと首を傾げるアルビオ君。


「ここがどこか忘れたの? 技術大陸とまで言われるところだよ? 強くなるための技術もここにある」


「「!」」


 強い反応をしたのはアルビオとシドニエ。


「そっか。魔法の技術や武器なんかも、私達のところじゃ手に入らないようなものがある!」


「そ。だから私の実家を拠点にとりあえずは一週間、徹底的に身につけられるものは身につけよ。特に男の子!」


「あ、はい!」


「そうですね。それにここなら勇者の強さの伝承とかもありそう……」


「ですね! 精霊のことに関しても調べられているかも! もしかして殿下、これも視野に入れてたのかな?」


「あー……多分ね」


 ハイドラスのことだからと簡単に浮かんだ。


 おそらくはリリアのことも視野に入れていたのではないかと考える。


「バザガジールって人の強さに少しでも近付けるには、必要なことだよね」


「それだけでは足りない気もしますが……」


「それでも自分を磨く技術があるなら、頑張るよ! 僕」


「そうだな。俺達を三人、四人と顕現(けんげん)できるようになれば、あるいわな」


 フィンがニヒッと笑った。


 私達は少しでも希望に近付けるため、この汽車のように走り続けなくてはならないのだと痛感した。

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