32 魔法について学ぼう 実技編その六
結論として中級魔法以降は魔力を集める為に詠唱を長くしなくてはいけないため、詠唱に何かしらを追加する事は難しいのではないか、長くする上でそもそも追加されるのではないかという考えに至った。
若干話が逸れたが、魔法の速度を速める方法が分かったので、本題に戻る。
イメージとしては火の玉がマシンガンのように連発出来るイメージ。そんなイメージなら上手くいくはず。
「――火の礫よ、敵を打て! ファイアボールッ!」
二つに割れた岩の左側の方を集中的に攻撃してみる。魔力を杖に流し続ける。ボボボボボボボッとやっとイメージしたファイアボールが出る。出し続けている間、身体の奥の方が少し疼く。やはり、体内魔力を消費しているようだ。
「ふう……こんなもんか」
納得したファイアボールを出してか、達成感のようなものがあった。今までこんなに集中して物事に取り組むことはなかったから、不思議な感覚だ。
「少し休憩するか……」
大きな鞄を椅子にして腰を掛ける。座り心地は硬いが地面に直接座るよりはいい。最後に無属性魔法を練習するため、記述されている本を読む。
「無属性魔法は誰にでも使えるだけあって基礎的な感じだな」
物を浮かせたり、魔力障壁を作ったり、攻撃の抵抗をしたりなどなど生活面で役に立つものから戦闘用のものまで様々である。
「物を浮かせたりとか風属性しか出来ないとかじゃなくて良かった……ん? 待てよ、箒で空を飛ぶみたいな事も、もしかして――」
目がらんらんと輝きを放つ中、一心不乱に探し出す。
「おっ! 浮遊術はあるっぽいなって事は空も飛べるってことか?」
だが、よく読んでみると風属性持ちの方がやはりいいらしい。
「まあ、飛べるって分かっただけ十分。だけど、こうやって見るとやっぱすげぇな……」
改めて感心する。どの世界でも技術を発信する人間はこうも色んな事に着手して見つけるものなんだと思う。頭の作りが違うんだろうな。
当たり前のように使っている技術。俺の世界だと水道とか電気とかパソコンとか今の生活には欠かせないものも誰かが思い付いて、それが根付くまでどれだけの努力と運が、人が関わって来ただろう。
そして、その努力を当たり前のように使っている。こうやって考えると実に図々しい。
だけど、その当たり前を使い続ける事でさらに新しいものを発見できるのも事実だ。人間って凄い。
パタンっと本を閉じ、鞄から降りる。
「さて……もう少しだけやっていきますか」
この世界にいる以上、この世界の技術をある程度ものにしないといけないよな。
日が完全に落ちる前まで魔法の練習は続いた――。




