01 普通の高校生なんてこんなもんでしょ
「なあ、今回のクラブラのダウコンの新キャラどう?」
ヒョロい丸眼鏡の友人がゲームの新キャラ考察を論争したいと語り始めた。
「動画を見るあたり、まあ中々――」
まるで評論家みたいな得意げな口ぶり。
この中では一番ゲーム下手のくせに……いるよね、ゲーム下手だけど情報通な奴って。
俺はいつも通り、いつもの友人達といつもみたいにゲームの話をする放課後。どれだけの季節が移り変わってもこの関係は変わらない。
じめっとした梅雨が明け、空気はカラッとして、日差しがコンクリートを焼く。上からは紫外線攻撃、下からはコンクリート熱攻撃。季節はもうすぐ夏だ。
背の低い俺にはキツい。空は高いから身長はあまり関係ないがコンクリート熱がキツい。
近ければ近いほど暑さを感じるのは言わずもがな。家の前に水をまく人の気持ちがわかる。地面を濡らし、熱を少しでも下げるという先人の知恵は凄い。
この炎天下の中、ゲームの新キャラ一つにここまで熱弁するのもどうかと思うけど、男子高校生の日常なんてこんなもんだ。
――ん? 部活? 彼女? ナニヲイッテイルノカワカラナイ。
「しかし、もう夏ですね。今年も講義にコミケに楽しみすぎ〜〜!!」
ちなみに講義とは動画配信のイベントである。その略称だけ聞くと、真面目かってなるけど。
「おいおい。来年は受験生なんだし、少しは抑えろよ」
「じゃあかっちゃんは勉強するのかよ」
う〜んとわざとらしく唸り、眉間にしわを寄せて見せる。
「うん、ないわ」
へらっと陽気に笑って見せた。
「だったら言うなよ」
「ははは――」
高校二年生だが将来なんて漠然としか考えていない。大体の人達はそうではないだろうか。
先生は口を開けばこう言わないだろうか――、
『今からしっかり将来のことを考えて勉強しないといけないぞ。自分がやりたい事をしっかり見据えて、目標を立てておけば、自ずと努力が出来るはずだ』
とか。
その物言いの方が曖昧なような気がする。高校生と言ってもまだ十五年から十八年しか生きていない。そんな若輩者がこれからの一生を十八年で決めろとは中々無茶苦茶だ。
こう思うのは自分だけだろうか? この年齢は遊び盛りでもある。そんな多感な時期に将来を考えろだなんて不条理である。
まあ考えている奴らもいるけどさ。
でも、これが普通だよ。自分と話が合う友人と馬鹿みたいにはしゃいで遊んで、学校には何となく通い、思い思いに過ごす。
うん! 何事も普通が一番。有名になりたい奴は勝手に頑張ればいい! 俺は普通でいい。
まあ、欲を言えば可愛い彼女くらいは欲しいけど、こんな遊んでばっかの努力も人並み程度しかしない奴に彼女なんてできる訳ないけど。
思わず苦笑した。
「どしたの? かっちゃん?」
「いや、別に。彼女もなしに高校生活終えるのかなーって思っただけ」
友人達が何とも言えない同情する表情で苦笑いする中、一人が言葉を発した……、
「それは言わな――」
瞬間だった。俺の人生の転機は。